Ethnic Tension and Coup in the Solomon Islands

−9月分(2000年)−



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*2000/9/28--------

以下は、ホニアラで発行されている『WANTOK PRESS』紙に掲載された記事(Duran Angiki署名記事、9月24日付)からの部分的引用。原文はhttp://pidp.ewc.hawaii.edu/PIReport/2000/September/09-27-02.htm を参照のこと。

MEFが6月5日に「クーデター」を起こして以来、ホニアラは事実上MEFと警察部隊の連合組織によってコントロールされてきた。そして、同時に窃盗などの犯罪もエスカレートしてきた。武装集団の他にも、公共物や私有物の略奪は毎日のように白昼堂々と政府機関の目の前で(ときに外国公館のすぐ近くでも)おこなわれてきた。これまでオーストラリア、ニュージーランド、英国などソロモン諸島と関係の深い国々は自国民の観光渡航自粛を勧告してきた。ニュージーランドは緊急のビジネス上の必要がある場合のみ、渡航を認めている。そのような外国からの警告にも、MEFの犯罪行為は止まらなかった。彼らのコンペンセーションの要求はどんどんとつり上がるばかりで、今や2億ソロモンドル(約40億円)に上るという。外国人はMEFの主要なターゲットにはなっていないが、外国人の存在が日常的な被害に対するわずかな希望として残されているようである。とはいっても、外国人の住居などが安全というわけではない。事実、家が荒らされ、家財道具が盗まれたという外国人もおり、ソロモンを後にした人も少なくない。ソロモンスター紙の編集者の1人は、ホニアラの状況について「それほどひどい状態ではない」と述べるが、同紙のウェスタン州出身の記者たちは、生命の危険を感じ無期限の休暇(無給)をとらざるを得なくなったという。結局編集部に残っているのはマライタ出身者だけという状況のようだ。ソロモン諸島放送協会(SIBC)のニュース・エディターによると、ホニアラの無法ぶりはいかなる人も安全とはいえず、ジャーナリストもそのような理解のもとで活動する必要があると述べている。

MEFがホニアラをコントロールし始めてから、MEFなどのマライタ人は無差別的にビジネスオフィスや商店などをねらうだけでなく、他州出身者、とりわけウェスタン州とチョイスル州出身者をターゲットにしてきた(ホニアラにはすでにガダルカナル人はいない。ガダルカナル人はホニアラの外をコントロールしている)。MEFが両州出身者をねらう理由のひとつは、両州が7月に州(province)からより独自色を強く打ち出した「州」(state)への移行宣言を発したことがあげられる。MEFは、両州のその宣言を、MEFの権威やMEFによるホニアラのコントロールを否定するものとして受け止めたのである。MEFは、ホニアラにおけるガダルカナル人の排除の加えて、他州出身者に対しても矛先を向けるようになった。当然このようなMEFの行為は、ホニアラから多くの住民が出身州へ戻っていく事態をもたらした。被害を被っている人などは、ホニアラに平和が戻る日が近いなどとはとうてい信じられない状況である。政府自身も、来月10日にオーストラリアで行われる和平会談が、平和の復活へ向けた唯一の光明とみているようである。IFMスポークスマンのヘンリー・トバニやMEFスポークスマンで弁護士のアンドリュー・ノリはともに和平の実現へ向けて政府に協力する旨の発言をおこなっているが、その発言を保証するものはない。とくにホニアラを現在支配しているMEFのリーダーシップは、苦痛だけしかもたらしてこなかった。

その他にも、ホニアラでは、6月以降、住民の半数が水道供給の問題に直面している。度重なるMEFによるIFM支配地域への侵攻に対する報復として、IFMが水源を爆破したのがその原因である。水道局もホニアラの現状から十分な復旧作業ができないでいる。

さらに、そのような問題に加えて、MEFのコントロール下におかれた中で生活することに対する精神的苦痛に見まわれ、トラウマに陥っている人もいるという。フランシス・ビリー=ヒリー元首相は、政府が武装解除を貫徹しない限り、ホニアラにおける住民に対する犯罪行為は止まらないだろうと述べる。

*2000/9/25--------

ソロモン航空機をハイジャックし、パイロットのエリック・ロヴェを人質にとっているIFMのハロルド・ケケらとの交渉をおこなっていた政府交渉チーム(メラネシア教会のメンバー)は、先週金曜日に一時ホニアラに戻っていた。その時点で、ハロルド・ケケと政府との間にいくつかの合意が達成されたことを明らかにしたが、その内容までは不明。いずれにしても、ケケが政府に200万ドルを求めていることにかわりはない。交渉チームは先週土曜日に再びババナキラへ戻った。ケケらの要求に対する政府の回答を用意しているものとみられる。政府は、交渉が完了した時点で交渉内容を明らかにすると述べている。

*2000/9/20--------

IFMのハロルド・ケケが率いるグループにハイジャックされ、身柄を拘束されているソロモン航空のソロモン人パイロット、Eric Rove(ウェスタン州ロヴィアナ地域出身)の無事が確認された。この情報は、ソロモン航空がRove本人と無線で接触したことによる。政府が派遣した交渉団(メラネシア教会のメンバーによって構成される)は今日(9/20)か明日(9/21)の早朝にもホニアラへ戻る予定。

ウェスタン州出身のパイロットが拘束されている事態を受けて、ウェスタン州では、同州に居住するガダルカナル出身者に対する脅迫が相次いでいる。そのパイロットの夫人Florence Roveは、そのような報復的な行為が事件の解決に何ら寄与しないことを訴え、問題を複雑化しないよう求めた。

政府は、さきにMEFメンバーのマライタ島帰還費用を拠出した例にならい、IFMメンバーの出身村への帰還にかかる費用も支払うことになった。これまでに約1,800人のMEFメンバーがホニアラを離れている。MEFメンバーは、1人につき1,000ソロモンドル(約2万円)を受け取っている。

政府の発表によると、今週月曜日と火曜日の2日間、ホニアラ市内およびその周辺地域で一切の犯罪行為が発生しなかったと述べた。しかし実際には、あるホニアラ住民によると、昨晩だけでも3軒の家に武装した男が押し入り、金品を奪取していったという。このような住民に対する嫌がらせは続いており、政府が状況を改善するための積極的な方策を打ち出すことが求められている。

2年間におよぶガダルカナル島を部隊にした紛争を解決するための和平会談が、来月10日、オーストラリアのケアンズで開催されることになった。

*2000/9/18--------

ソロモン諸島政府は、先週土曜日にガダルカナル島南部ババナキラ地区でソロモン航空機をハイジャックし、そのパイロットを拘束しているIFM最高幹部の1人、ハロルド・ケケおよびその一派との交渉を開始した。交渉にあたるアルフレッド・マエスリアによると、ババナキラへ向かう政府代表団はメラネシア教会(英国国教会系、ソロモン諸島最大のキリスト教派)のメンバーで構成される。それは、ハロルド・ケケが同教会関係者以外との交渉を拒否しているためである。

オーストラリア海軍の駆逐艦「ニューキャッスル」がソロモン諸島へ向けて出港した。これは、先頃ホニアラを出港したニュージーランド駆逐鑑「テ・カハ」に代わり、ソロモン諸島政府とIFMおよびMEFとの「中立的な」交渉場所として使用することを主目的とする。

*2000/9/17--------

IFMの一部のメンバー(最高幹部の一人であるHarold Kekeに率いられているとみられるグループ)が、9月16日土曜日、ソロモン航空の国内線用プロペラ機(「アイランダー」)をガダルカナル島南部ウェザーコースト地域でハイジャックし、ソロモン人パイロットを人質にとった。人質解放の条件として、20万米ドルを要求している。ソロモン航空の発表によると、犯人側は、要求に対する回答期限を9月19日の火曜日に設定しているという。事件をおこしたIFMの一派とは、政府の国家安全保障委員会があたっている。IFMとMEFは、先週木曜日(9/14)に、来月第1週にオーストラリアのケアンズ沖で和平会談を開催することに合意したばかりである。

政府の交渉チームは、身代金の支払いを拒否したという。

*2000/9/14--------

10月の第1週に、オーストラリアのケアンズ沖で和平会談が行われることになった。これは、アラン・ケマケザ副首相の記者会見で明らかにされた。ケマケザ副首相によると、残されている作業は、和平合意内容の実行とソロモン諸島をよりよい状態に導くことだけであると語った。しかし同時に、彼は、いかなる実行も挑戦であり、困難さを伴うものであると付け加えている。とりわけ、武装集団の武装解除期間の設定に関しては慎重な対応が必要である。ケアンズ会談では、いつ、どのようにして、どこで武装解除を行うかが議論されることになろう。いずれにしても、武装解除は一晩で達成されるものではない。

IFMとMEFは、昨日(9/13)に終わった和平会談の間、行政システムの改革と土地問題については共通の理解が得られたものの、武装解除やコンペンセーション、不逮捕問題において見解の相違がみられたという。これらはケアンズ会談にもちこされる。

ソロモン諸島政府は、IFMとMEFの法律顧問に対する報酬を肩代わりすることを決めた。現在、MEFは2人の弁護士を抱え、IFMは1人の法律顧問を雇っている。

ソロモン諸島中央銀行のリック・ホウ総裁によると、ソロモン諸島経済の一般状況は極めて憂慮すべき状態にあると述べた。とくに外貨獲得に関しては深刻な状況であるという。2000上半期の輸出は前年の約40%にまで落ち込んでいる。ソロモン諸島の主要産業であるアブラヤシ農園が現在の民族紛争によって一時閉鎖に追い込まれていることが大きく響いている。原木輸出だけが輸出品目として稼働している状態である。

政府がMEFメンバーのマライタ島帰還に係る費用を拠出したことにより、すでに約200人のメンバーがホニアラを去っている。

*2000/9/12--------

政府は、MEFメンバーをマライタ島の各出身地へ帰還させるための資金として、これまでに23万5,000ソロモンドル(約470万円)を支出してきた。そしてさらに政府は、今日(9/12)、27万5,000ソロモンドルを同一の目的のためにMEFに支出した。合計51万ソロモンドルが支払われたことになる。MEFメンバーの中には、今日の午後、紛争処理を扱うMinistry of National Unity, Reconciliation and Peaceや警察司法のMinistry of Police and Justice の庁舎近くの屋外で無差別に発砲する者もおり、これまで政府がなかなかマライタ島帰還資金を拠出してこなかったことに対するフラストレーションの現れとみる見方もある。

和平会議の共同議長を務めるピーター・ケニロレア卿とポール・トヴア国会議長は、明日(9/13)までに和平合意のドラフトを作成する見通しを語った。今日午前、和平会議がニュージーランド鑑「テ・カハ」上でおこなわれた。その席上、IFMのスポークスマンをつとめるフランシス・オロダニがIFMとガダルカナル州政府双方の書簡を出席者に提示した。その内容は不明だが、明日午前、「テ・カハ」がホニアラ港を出港する前にもう1度会議が招集される見通しである。「テ・カハ」は、8/24にホニアラ入港以来、「中立地帯」として和平交渉の場として利用されていた。

*2000/9/10--------

和平会談の共同議長をつとめるピーター・ケニロレア卿(初代首相)とポール・トヴア国会議長は、和平実現のための解決すべき重要課題として、コンペンセーションの支払い、ガダルカナルにおける土地権の問題、武装解除、和平合意の監視の4点を指摘した。和平会談は月曜日(9/11)に再開される予定。

ニュージーランド政府は、自国民に対し、ソロモン諸島への観光渡航の自粛を勧告する発表をおこなった。これは、8月初旬に武装集団間で和平合意が締結されたにもかかわらず、散発的に合意違反の戦闘行為がおこなわれている事態を受けての措置である。

*2000/9/8--------

ガダルカナル州のエゼキエル・アレブア知事(元首相)は、昨日ニュージーランド海軍の「テ・カハ」鑑上で行われた和平会談の冒頭で、ソロモン諸島国民に対し、ガダルカナル島でおこってきた民族対立を原因とする諸問題について謝罪した。謝罪の中でアレブア知事は、マライタの人々に対し、ガダルカナル島民の謝罪を受け入れるよう要請した。同時に、すべての人が民族対立の背後にある諸問題の解決に取り組む必要を強調した。また、家屋や財産を失ったガダルカナル島民に対してアレブアは同情を寄せる発言を行ったが、それを支払うべき代償とも述べている。アレブアは、謝罪とともに、ガダルカナル島民の権利、自由、財産、生命の尊重を繰り返し述べていた。