Ethnic Tension and Coup in the Solomon Islands

−6月分(2000年)−



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*2000/6/30--------

今日国会で行われた首相指名選挙で、野党リーダーのマナセ・ソガヴァレ(東チョイスル選挙区選出)が23票を獲得し、対立候補の連立与党のレスリー・ボセト師(国務大臣、南チョイスル選挙区選出)の21票を破り、首相に指名された。全議席は50議席。この選挙には、ウェスタン州都ギゾにとどまっていた議員や一部のガダルカナル州出身議員あわせて6人が交通手段の問題で欠席した。そのことに関連して、今日、ウェスタン州都ギゾに待機する国会議員を迎えに行くため政府が飛行機をチャーターしていたが、パイロットが、ホニアラ・ヘンダーソン空港でMEFのメンバーから銃で脅され、離陸が大幅に遅れたことが原因であるとして、政府関係者は野党側を激しく非難した。空港にいるMEFメンバーらによると、パイロットに対する脅迫は、野党に属する複数の政治家からの指示であったという証言もあるが、ソガヴァレ自身、SIBCの取材に対しそのことに対する野党の関与を全面的に否定しており、詳細は不明である。

MEFのアンドリュー・ノリは、政治家たちが現在の紛争を政治的に解決する意志を示さない場合、今後もMEFは警察との共同行動(joint oreration)によって武力行動をとることになる可能性を示唆した。その武力行動は、IFMの排除あるいは要求が通るまで戦いを続けるということである。ノリはさらに、MEFは現在、当事者能力のある政府が存在しない状態での停戦や和平会談にいっさい応じるつもりはないと述べている。

ラプリ総督はすでに、今日の首相指名選挙をオーストラリア鑑上でおこなうと発表していたが、昨日、与野党間の協議によって、国会内で30日午後から行うことで合意した。

*2000/6/29--------

ソロモン諸島のラプリ総督は、憲法において認められた権限に基づき、2000年6月30日(金)午前10:00から、ホニアラ沖に停泊するオーストラリア海軍艦Tobruk内において首相指名選挙を行うことを決め、すべての国会議員へ通達した。同時に、ラプリ総督は、ソロモン諸島議会議長に対し、そのために必要なすべてのアレンジを行うよう命じた。

ウルファアル暫定首相によると、昨日の国会に与党議員が2人しか出席しなかったのは(首相選挙に立候補していた与党議員も欠席)、実際に議員がMEFのメンバーから脅迫を受けていたからであると述べた。与党議員の中には飛行機でホニアラに到着していた者もいたが、空港でMEFのメンバーから銃口を突きつけられ、野党リーダーのソガヴァレ候補に投票するよう脅されたという。

MEFのアンドリュー・ノリは、与党議員の大量欠席によって昨日の首相指名選挙が延期されたことを受けて、首相が選出されなければ和平へむけた話し合いが行われることはあり得ない現状からみて、与党議員の行動は現在までの危機的状況をさらにエスカレートさせるものであると非難した。

*2000/6/28--------

本日午後2:30(ソロモン時間。日本時間午後12:30)からソロモン諸島議会において首相指名選挙が行われる予定であったが、ラプリ総督が選挙の延期を宣言した。全国会議員50名のうち、今日出席したのは半数以下の22名で、しかもそのうち20名が野党議員であった(野党以外の出席者は、ウルファアル暫定首相とアルバート・ラオレ議員のみ)。

首相指名選挙後の身の安全に対する恐怖感からホニアラへ戻ることを拒否している国会議員が多数いるなかで、ソロモン諸島における主要なキリスト教教派によって構成されるソロモン諸島キリスト教協会(Solomon Islands Christian Association)は教会関係者(司祭など)自身が議員のホニアラにおける安全を保証する声明をだし、指名選挙への出席を渋る議員がいる地域へ迎えのチャーター機を送った。教会関係者は、ソロモン諸島のデモクラシーに対する強い危機意識からでた行動である述べる。

3人の立候補者のうち、現・野党リーダー(元蔵相、チョイスル州出身)のマネセ・ソガヴァレは、現在の紛争において両武装集団に共通する問題としてある「賠償金(補償金)」(compensation)および「不逮捕」(amnesty)の問題に対して、全面的にMEFとIFM双方の主張をとりいれるという公約を出した。彼は、「人々はMEFとIFMを犯罪者集団と決めつけるかもしれないが、彼らもソロモン諸島国民であり、これまでの政府の無策によってフランストレーションが高まり、その結果武装闘争というかたちに帰結してしまったという認識にたち、対処していきたい。必要なのは理解であり、法的措置ではない。IFMとMEFのすべてのメンバーに対し、現行法の改正を経た上で特赦を与え、逮捕を免除するつもりである」と述べる。

*2000/6/27--------

MEFのアンドリュー・ノリは、明日に予定されている新首相指名選挙において、特定の人物を推しようなロビー活動をいっさい行っていないと述べ、立候補している3人のいずれが選出されてもその結果を尊重すると述べた。立候補者は、国務大臣のレスリー・ボセト師(チョイスル出身)、野党リーダーのマネセ・ソガヴァレ(チョイスル出身)、元首相のフランシス・ビリー=ヒリー(ウェスタン州出身)である。

*2000/6/25--------

オーストラリアのドウナー外相は、ガダルカナル島沖のオーストラリア鑑上において、数人のIFMリーダーと会談した。しかし、現在ホニアラを事実上コントロール下においているMEFは出席しなかった。そのほか、出席したのは、マライタ州のオエタ知事、ガダルカナル州のレニ副知事をそれぞれ代表とする一団である。MEFの不参加により、この会談は本来目的としていた「停戦協議」(ceasefire talk)ではなく、それを行うための予備会談(停戦協議時期と場所などに関する事柄をそれぞれの州の武装集団と話し合うことに関する事前協議)という性格のものとなった。

*2000/6/24--------

ソロモン諸島議会議長のトヴアは、来週28日に予定されている首相指名国会の実現が危ぶまれていると述べた。それは、ほとんどの国会議員がホニアラを離れ地元に帰ってしまっており、職務執行内閣の首相であるウルファアルでさえも出身地のマライタ島へ帰郷しているという。議員の中には、首相指名選挙によってMEFの意にそぐわない人物が選出された場合、MEFはフィジーのクーデターのように議員を人質にとってたてこもる可能性を指摘する人もいるという。しかし、MEFのアンドリュー・ノリは、MEFがいかなる人物に肩入れするものではなく、ただ国家の秩序回復に目指すばかりであると述べている。

*2000/6/22--------

オーストラリアのドウナー外相は、ソロモン諸島の政治リーダーおよび武装集団リーダーたちとの和平会談に臨むため、今週土曜日にホニアラへ向かうことになった。会談は、オーストラリア海軍のトブルク鑑上で日曜日に行われる予定。同鑑は21日にオーストラリアのタウンスビルを出航し、ホニアラへ向かっている。現在、ホニアラ周辺で戦闘行為は行われていない。

*2000/6/21--------

昨日、武装闘争を続けているIFMとMEFの関係者がはじめて、停戦に向けて直接交渉を行った。この会談は、ソロモン諸島で活動するキリスト教教派のほとんどが加盟するソロモン諸島キリスト教協会(Solomon islands Christian Association)の仲介で実現し、ホニアラ沖のオーストラリア海軍の上陸用船艇内で行われた。会談に参加したのは、MEF側が6月5日のクーデターを指揮したアンドリュー・ノリ、IFM側がスポークスマンをつとめるHenry Tabaniである。アンドリュー・ノリはメディアに対し会談の事実を認め、次週再びIFMとの間で交渉の機会をもつ予定であることを表明した。会談の詳しい内容については不明であるが、停戦(終戦?)と継続的対話について話し合われたことは間違いないようである。

*2000/6/18--------

ソロモン諸島のラプリ総督は、新首相の指名選挙を、6月28日におこなうと発表した。立候補の受け付けは6月23〜26日まで。

オーストラリアとニュージーランドの外相を中心とするコモンウェルス代表団がホニアラを訪れて以来、ここ1週間ほど目立った戦闘は行われていない。

*2000/6/17--------

パプア・ニューギニアの航空会社エア・ニューギニは、ソロモン諸島との間で運行している定期便(週1便)を再開すると発表した。これで、ソロモン諸島における国際線の発着が、6月5日のクーデター以来約2週間ぶりに再開されることになった。しかし、ソロモン諸島にとって、国際線の主力路線はソロモン航空(Solomon Islands Airlines)のオーストラリア線である。しかし、同路線に就航しているB-737機(ソロモン航空のペイント)を所有するカンタス・オーストラリア航空が機体の使用を認めておらず、再開の目処は立っていない。

*2000/6/16--------

MEFリーダーのアンドリュー・ノリは、新首相が国会で指名され、マライタ人の財に対する補償金問題に決着がつくまでは、MEFの武装解除はあり得ないと言明した。MEFのこの姿勢は、ガダルカナル側(IFM)との武力対立が今後しばらくは継続されることを意味する。新首相の指名選挙は今月末に行われる見通しとなった。

*2000/6/15--------

オーストラリアとニュージーランド両政府は、ソロモン諸島にたいする軍事的介入を改めて拒否した。現在ホニアラに繋留されているニュージーランド海軍艇および出動態勢にある空軍機は、あくまでも不測の事態が発生した場合にホニアラ滞在中の自国民や第3国民を救出するためのものであり、介入を目的としていない。

両国は、ソロモン諸島における秩序回復への協力を否定するものではないが、その前に、ソロモン諸島人が何をしたいのか、どのようにそれを実現しようとしているのか、それにたいするどのような外国からの協力のあり方が考えられるか、問題の出口はどこにあるのかということについて、さらによく知る必要があると述べている。

*2000/6/14--------

MEFは、ウルファアル首相が辞任しても、すぐに武装放棄することはないと述べた。あくまでも、IFMに破壊された土地などの財にたいする補償金問題の解決を、武装解除のための最優先課題としている。

昨夜7時(ソロモン時間)、ソロモン諸島国のバーソロミュー・ウルファアルが首相を辞任した。6月5日に発生したMEFによるクーデター以後の交渉において、明日(6月15日)ウルファアル首相の不信任決議案の投票がおこなわれることになっていた(それが、ウルファアル首相を軟禁状態から解放するための条件だった)。不信任案は否決される見込みが強かったが、その後の政治的、社会的混乱を予想して、総辞職する道を選択した。明日、新首相の指名選挙が国会で行われ、ウルファアル内閣はそれまでの職執行内閣となる。

ソロモン諸島のオティ外相は、オーストラリア政府が平和維持活動要員の派遣要請を拒否したことに対し、遺憾の意を表明した。これまでソロモン政府は、コモンウェルス代表団(オーストラリア外相とニュージーランド外相からなる)との会談の機会を含めて、オーストラリアによる介入を再三にわたって要請してきたが、ことごとく拒否されてきた。オーストラリア、ニュージーランド双方は、あくまでもソロモン諸島政府を含めて同国内の関係機関(武装集団を含め)自身による解決を優先すべきという姿勢である。

ソロモン諸島人の元政治家カウシマエ卿は、SIBCのインタビューにたいし、植民地時代に旧宗主国イギリスがマライタ島に何も経済インフラをを作らず、ホニアラ一極集中化を推進したことこそが、マライタ人のガダルカナル島移住を促し、今日の事態を招いたと述べ、今回の紛争にたいし、イギリスがソロモン諸島やフィジーで発生したクーデター騒ぎに沈黙を守り通している現状に驚きを表明している。

一昨年から本格的に始まったガダルカナル島における金採掘・輸出事業(オーストラリア資本)は、紛争の激化に伴い操業が停止された。現在、金鉱の地域は、IFMによって占領されている。オーストラリア海軍艇で帰国した鉱山会社のオーストラリア人マネージャーは、ソロモン諸島に民主主義が回復されないかぎり、永久に事業は停止されるだろうと述べた。現在、この事業はソロモン諸島国にとって、木材、アブラヤシ油とならび最も重要な輸出品目のひとつであった。

*2000/6/13--------

パプア・ニューギニアのブーガンヴィル革命軍(BRA)は、一昨日ソロモン諸島ウェスタン州で発生した武装集団による襲撃事件に無関係であるという声明を出した。BRA事務局長は、この行為はブーガンヴィルの安定化に向けた平和的努力を攪乱するものとして非難した。

MEFリーダーのアンドリュー・ノリは、現在のソロモン諸島における秩序回復に際し、コモンウエルスか国連の多国籍による平和維持グループの受け入れには前向きな考えを示したが、少なくともオーストラリア単独の軍事介入は断固拒否すると述べた(多国籍部隊が結果的にオーストラリア軍主体になることは容認するが)。

*2000/6/12--------

ニュージーランド政府は、ソロモン諸島で起こっている事態を解決するため、マライタ人がこの紛争の過程でIFMの武装行動によって奪われた土地などの財に対する補償金(MEFの主要目的はこの補償金獲得にある)を、ソロモン諸島政府に援助する提案を行った。

ソロモン諸島警察の長官(代理)は、昨日、ブーガンヴィル人武装集団がウェスタン州都ギゾを襲撃したことを受けて、オーストラリアの迅速な支援を求める発言を行った。ギゾをおそった武装集団はすぐにその場を去ったが、警備員1人を殺害している。長官(代理)は、ソロモン諸島にやってきているオーストラリア海軍がソロモン諸島におけるさらなる民族紛争の拡大を防ぐためにもソロモン諸島の治安と秩序を守るために行動することを必要としていると述べた。

*2000/6/11--------

ソロモン諸島ウェスタン州の州都ギゾが、37人の武装集団によって一時占拠された。その中にブーガンヴィル人(パプア・ニューギニア領。ブーガンヴィル島はソロモン諸島最西端にあるショートランド諸島からわずか5kmほどに位置し、ウェスタン州の島々と伝統的に緊密な関係にある)が含まれている。武装集団の声明によると、彼らはマライタ・イーグル・フォースからウェスタン州を守るために蜂起したと述べている。武装集団の武器類は、ギゾ占拠に先立って行われたチョイスル州都タロ島の警察襲撃において奪取されたものである。

ホニアラ西郊カカボナ地区のコミュニティリーダー、フロンシス・オロダニは、IFMにホニアラ侵攻の意思がなく、カカボナ地区の防衛にのみつとめることを表明。同時に、IFMがホニアラ市内の「水瓶」であるホワイトリバーに毒を流したという噂を否定。

ホニアラのオーストラリア大使館(ハイ・コミッション)は、オーストラリア軍による軍事介入の可能性を強く否定。海軍艇の派遣は、あくまでもソロモン諸島に滞在する自国民および第3国の人々を必要に応じて救出するための措置である点を強調した。

*2000/6/10--------

本日、オーストラリア外相、ニュージーランド外相がホニアラへ向かい、事態収集のための会談に臨む。午前11:30、ホニアラ中心部にあるソロモン・キタノ・メンダナ・ホテルで、英連邦特使とアンドリュー・ノリ(MEF代表、クーデター首謀者)、ウルファアル首相ほか関係者との会談が始まる。

*2000/6/9--------

敵対する武装集団双方は、事態収集を目的とする英連邦代表団(オーストラリア外相とニュージーランド外相らで構成)のソロモン諸島滞在を受け入れ、滞在期間中の一時停戦に合意した。代表団は明日土曜日に到着する予定。ホニアラのヘンダーソン国際空港は、月曜日(6月5日)以来、閉鎖中。

オーストラリア海軍は、ホニアラに滞在するオーストラリア人および他の外国人(主にニュージーランド人、カナダ人)を救出するため、昨夜、軍輸送船トブルクを派遣した。

*2000/6/8--------

6月5日にウルファアル首相を自宅で拘束し、辞任に追い込んだマライタ・イーグル・フォース(MEF)は、ガダルカナル島民によって構成されるゲリラ的組織イサタンブ・フリーダム・ムーブメント(IFM)に対し徹底的に抗戦することを宣言した。

クーデターの首謀者で、MEFの実質的なリーダーであるアンドリュー・ノリによると、MEFの戦闘対象はあくまでもIFMであり、一般のガダルカナル島民ではないことを表明。IFMに対するこの宣言は、首都ホニアラをIFMの侵入から守るための闘いであることを強調した。

MEFは、政府所有の警備艇をIFMとの戦闘に使用し、50mm砲4発をルンガ川沿岸地域(ヘンダーソン国際空港付近)に展開するIFMに向けて発射。この戦闘で50〜100人のIFMメンバーが死亡した。地上でも、空港近くでIFMとMEF(警察部隊含む)との銃撃戦が続いている。