Sato Lab.

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Original articles

  1. <2023>
  2. 54. Yokoi A, Sano T, Nagase S, Tanino A, Egas M, Sato Y (2023) Sperm-depleted males of the two-spotted spider mite can replenish sperm in a few hours. Experimental and Applied Acarology 91: 251-262.

  3. 53. Sato Y, Egas M, Schausberger M (2023) The operational sex ratio experienced by mothers modulates the expression of sons’ alternative reproductive tactics in spider mites. Behavioral Ecology and Sociobiology 57: 95.
    プレスリリース:「母親が経験した社会環境が息子の繁殖戦術に影響を与える」

  4. 52. Onuma M, Sato Y, Sawamura K (2023) Habitat and seasonal occurrence differ among closely related species of the Drosophila auraria species complex (Diptera: Drosophilidae). Applied Entomology and Zoology 58: 35-44.
    プレスリリース:「菅平高原のカオジロショウジョウバエ姉妹種群は生息地や発生のピークを少しずらして共存する」

  5. <2022>
  6. 51. Kobayashi H, Sato Y, Egas M (2022) Males mate with females even after sperm depletion in the two-spotted spider mite. Experimental and Applied Acarology 86: 465-477.

  7. <2021>
  8. 50. Schausberger P, Yano S, Sato Y (2021) Cooperative behaviors in group-living spider mites. Frontiers in Ecology and Evolution 9: 745036.

  9. 49. Sato Y, Fujiwara S, Egas M, Matsuda T, Gotoh T (2021) Patterns of reproductive isolation in a haplodiploid mite, Amphitetranychus viennensis: prezygotic isolation, hybrid inviability and hybrid sterility. BMC Ecology and Evolution 21: 177.
    プレスリリース:「ハダニの生殖隔離にはどれくらいの遺伝距離が必要か〜半倍数体における種分化研究のモデルとして〜」

  10. <2020>
  11. 48. Ohsaki B, Shingyouchi T, Sato Y, Kainoh Y (2020) Host recognition by the egg–larval parasitoid Chelonus inanitus: effects of physical and chemical cues. Entomologia Experimentalis et Applicata 168: 742-751.

  12. 47. Schausberger P, Sato Y (2020) Kin-mediated male choice and alternative reproductive tactics in spider mites . Biology 9: 360.

  13. 46. Sato Y, Alba JM (2020) Reproductive interference and sensitivity to female pheromones in males and females of two herbivorous mite species. Experimental and Applied Acarology 81: 59-74.

  14. <2019>
  15. 45. Schausberger P, Gotoh T, Sato Y (2019) Spider mite mothers adjust reproduction and sons' alternative reproductive tactics to immigrating alien conspecifics. Royal Society Open Science 6: 191201.

  16. 44. Schausberger P, Sato Y (2019) Parental effects of male alternative reproductive tactics (ARTs) on ARTs of haploid sons. Functional Ecology 33: 1684-1694.

  17. 43. Saito Y, Sato Y, Kongchuensin M, Chao J-T, Sahara K (2019) New Stigmaeopsis species on Miscanthus grasses in Taiwan and Thailand (Acari, Tetranychidae). Systematic and Applied Acarology 24: 675-682.
    下記42の論文により、台湾に分布するススキスゴモリハダニ(Stigmaeopsis miscanthi (Saito))は日本に分布する本種と遺伝的に異なり、生殖隔離も発達していることから、異なる形質を見つけてタイペイスゴモリハダニ(Stigmaeopsis formosa Saito, Chao & Sato n. sp.)として記載しました。その他、タイから採集されたスゴモリハダニ(Stigmaeopsis inthanonsis Saito, Kongchuensis & Sahara n. sp.)も記載しています。かつてスゴモリハダニは、タケスゴモリハダニ1種と考えられていました。しかしこれまでの研究により、行動・生態に違いが見つかり、そして齋藤先生による記載によって、今では15種となりました。スゴモリハダニ種群は、種分化を研究する上で、非常に魅力的な生き物だと思います。

  18. 42. Sato Y, Tsuda Y, Sakamoto H, Egas M, Goto T, Saito Y, Zhang Y-X, Chao J-T, Mochizuki A (2019) Phylogeography of lethal male fighting in a social spider mite. Ecology and Evolution 9: 1590-1602.
    プレスリリース:「ハーレムをつくるハダニは最終氷期に南から日本に渡ってきた 〜小さなハダニの雄間闘争から見えたきたダイナミックな歴史〜」

  19. <2018>
  20. 41. Kawamata R, Sato Y, Suzuki M, Kainoh Y (2018) Color Preference and associative color learning in a parasitoid wasp, Ascogaster reticulata (Hymenoptera: Braconidae). Journal of Insect Behavior 31: 523-534.
    近年では、農作物の害虫をコントロールをするために、化学農薬だけでなく、害虫を食べてくれる天敵の利用が広まっています。しかし、生物をコントロールするために生物を利用するわけですから、化学農薬のように適したタイミングで適量まけばいい、という訳にはいきません。天敵にがんばってもらうには、利用する天敵の能力や好みなど、生態や行動を知って、それを利用する必要があります。本研究では、お茶の害虫であるチャノコカクモンハマキの天敵として重要視されている寄生蜂、ハマキコウラコマユバチの、産卵時における色の好みと、色学習能力について調べました。もともとの色の好みを知るべく、まずは産卵経験をもたない雌に色紙(チャノコカクモンハマキ卵付き)を2択で選ばせたところ(常に選択肢の一つは葉っぱの色である緑)、黒と青は好きではないが、赤と黄は緑並みに好き、という結果が得られました。ハマキコウラコマユバチは比較的新しいチャノコカクモンハマキの卵に産卵すべきですが、チャノコカクモンハマキの卵は古くなると黒っぽくなります。そのため、この色の好みは理にかなった行動であると思われました。次に、色学習能力を知るために、特定のチャノコカクモンハマキ卵付きの色紙を事前に経験させた雌を用いて、同様の2択実験を行いました。その結果、黒と青を経験させると、未経験の雌に比べて、黒と青を選ぶようになることがわかりました。しかし、もともと嫌いではない色、赤と黄に関しては、事前に経験させても、未経験の雌よりも選ぶようになる、という傾向はみられませんでした。色によって学習できたりできなかったりする理由については、ハマキコウラコマユバチの色覚センサーを調べるなど、更なる研究が必要だと思われました。

  21. 40. Hinomoto N, Sato Y, Yara K, Shimoda T (2018) Population structure of the phytoseiid mite, Neoseiulus womersleyi, in an experimental organic tea field. IOBC-WPRS Bulletin 134: 54-59.
    日本の茶畑で害虫となっているハダニ類を防除するためには、化学農薬の使用は避けられません。しかし環境を考えると、できるだけその散布回数を減らしたいところです。そこで、害虫ハダニ類を食べてくれるカブリダニ類が頼もしい存在となるのですが、上手にカブリダニ類を害虫管理に使うためには、彼らがどれだけ移動分散しているのかを知る必要があります。本研究では、バンカー植物(農作物の病害虫防除に役立つ天敵を保護するために耕作地周辺に植えられる植物)を使ってケナガカブリダニを有効活用することを最終目的に、農薬が使われていないお茶圃場における本種集団構造を、マイクロサテライト遺伝マーカーを使って調べました。その結果、このような撹乱要因の少ない圃場では、ケナガカブリダニの活動範囲はせいぜい5m圏内であり、それほど移動していないということがわかりました。たとえバンカー植物でケナガカブリダニを温存したとしても、その恩恵は圃場中心までには届かないであろうことから、茶畑にてケナガカブリダニを使った害虫管理をするためには、バンカー植物の利用だけでなく、人工的にケナガカブリダニを分散させるなどの工夫が必要と考えられました。 日本における生物的防除(病害虫の天敵を使って作物などの害虫をコントロールする方法)の発展と普及を支える3人の研究者(農業・食品産業技術総合研究機構)が中心となって行った研究です。

  22. 39. Sato Y, Sakamoto H, Gotoh H, Saito Y, Chao J-T, Egas M, Mochizuki A (2018) Patterns of reproductive isolation in a haplodiploid – strong post‐mating, prezygotic barriers among three forms of a social spider mite. Journal of Evolutionary Biology: 31: 866-881.
    生殖隔離とは、ある生物集団の間で交雑ができないような状況になることをいいます。生殖隔離がなければ、異なる環境におかれて異なる形質をもつ集団に分化したとしても、出会えば再び一つに戻ることができます。しかし、生殖隔離が確立してしまうと、分化した集団は再び同じ集団に戻ることができません。そのため、生殖隔離は、種分化や生物多様性を理解するうえで、重要な機構と考えられています。生殖隔離の発達メカニズムとしては、自然選択や遺伝的浮動などにより、集団間で遺伝的変異が蓄積された結果であるといった、副産物的な見方が主流です。しかしその一方で、生殖隔離は不適な雑種形成の妨げにもつながるため、自然選択により強化されうることも、明らかになりつつあります。本研究では、山岳域を含むススキ草原に分布し、雄同士の攻撃性の強さが異なる3型をもつススキスゴモリハダニを対象に、個体群間の生殖隔離のステージと強度、遺伝距離、地理的分布の関係を調査し、本種における生殖隔離の発達メカニズムを検討しました。その結果、生殖隔離のステージとして、交尾前隔離、交尾後接合前隔離(交尾はするが、受精しない)、接合後隔離(受精はおこるが雑種が正常に発育しない、または不妊)の3つのうち、交尾後接合前隔離が個体群間の生殖隔離に最も貢献していることを明らかにしました。また、隔離の強さは遺伝距離と正の相関関係にあり、生殖隔離の発達メカニズムとしては主流の見方を支持する結果が得られました。一方、隔離の強さと地理的分布の間には、はっきりとした関係性はみられませんでしたが、攻撃性の弱い型では生殖隔離の強化の可能性がみられました。生殖隔離の強化については、更なる調査が必要だと考えています。

  23. 38. Saito Y, Sato Y, Chittenden AR, Lin J-Z, Zhang Y-X (2018) Description of two new species of Stigmaeopsis, Banks 1917 (Acari, Tetranychidae) inhabiting Miscanthus grasses (Poaceae). Acarologia 58 (2): 414-429.
    ハダニ類は、クモ綱ダニ目ハダニ科に属する、体長0.5mm未満の植食性の節足動物です。どこにでもいる生き物ですが、観察にはルーペや実体顕微鏡が必要であり、大学で生物学を専攻しないと扱うことの無いような生物です。しかし、その行動・生態はとても興味深いのです。今回、新種記載したのは、ススキに寄生し、集団で共同営巣する社会性のハダニ、ススキスゴモリハダニ(Stigmaeopsis miscanthi (Saito))の仲間です。これまでの研究により、ススキスゴモリハダニの雄は、雌だけでなく巣をめぐって殺し合いをし、ハーレムをつくること、この雄同士の殺し合いの頻度(=雄同士の攻撃性)には地理的変異があることが、さらには、攻撃性の異なる集団間では遺伝的にも分化していることが明らかになりました。そこで本研究では、形態の違いを見出して、雄同士の攻撃性が低く、西日本の標高の高いところや東日本といった寒冷なところに分布するタイプをトモスゴモリハダニ(S. sabelisi Saito et Sato n. sp.)、攻撃性はよくわかっていないけれど、形態的には中間的な攻撃性を示すと思われる中国福建省に分布するタイプをビンスゴモリハダニ(S. continentalis Saito et Lin n. sp.)として、記載しました。前者のトモスゴモリハダニは、殺し合いをするだけでなく、雄同士が協力して、巣に侵入する天敵(主に捕食性のダニ)から巣の仲間を守る行動が観察されています。そのように、優しく頼もしい性格をもつハダニであることから、命名には、私の恩師であり、第一著者の齋藤裕先生のご友人でもある、アムステルダム大学(オランダ)教授のモーリス・サベリス博士(Prof. Maurice W. Sabelis、2015年1月に他界)から名前をいただきました。

  24. <2017>
  25. 37. Sato Y, Mashimo Y, Suzuki RO, Hirao AS, Takagi E, Kanai R, Masaki D, Sato M, Machida R (2017) Potential impact of an exotic plant invasion on both plant and arthropod communities in a semi-natural grassland on Sugadaira Montane in Japan. Journal of Developments in Sustainable Agriculture 12: 52-64.
    世界中で外来植物として問題となっているオオブタクサの侵入が、植物群集と(地上部)節足動物群集に与える影響を、菅平高原実験所が所有するススキ草原(半自然草地)にて調査しました。この草原は、年一回の草刈りにより80年以上維持されてきましたが、10年ほど前からオオブタクサが侵入し、一部の場所で繁茂するようになりました。そこで、オオブタクサ区とススキ区で植物相と節足動物相の調査を行い、比較したところ、植物群集に与える影響として、先行研究と同様、植物の種数が減少するといった負の効果が懸念されました。一方、節足動物群集に与える影響としては、節足動物の個体数が有意に増え、種数も増えるといった正の効果とも受け取られる結果がえられました。最後に、なぜこのような結果が得られたのかを、節足動物の視点から先行研究を参考に議論しています。 本論文は、平成26年9月に当実験所が下田臨海実験センター(筑波大学)と連携して行った「全国公開 海山連携公開実習」で得られたデータに基づき執筆したものです。受講した学生の皆様(奥津君、池田君、相羽君、山田君)、TAの皆様、その他実習をサポートしてくださった皆様、英文校閲してくださったレアーン先生、ご協力ありがとうございました。本論文の謝辞に、皆様への感謝の気持ちを述べさせていただいております。また、本論文内容の参考として、当実験所で発行している「生き物通信 第48号(2016年6月)」も、是非ご覧ください。

  26. 36. Knegt B, Potter T, Pearson NA, Sato Y, Staudacher H, Schimmel BCJ, Kiers ET, Egas M (2017) Detection of genetic incompatibilities in non-model systems using simple genetic markers: hybrid breakdown in the haplodiploid spider mite Tetranychus evansi. Heredity 118: 311-321.
    ハダニは体長1mm未満の植食性節足動物であり、飼育が容易で世代期間が短いなど、進化を研究する上で便利な生き物です。そういった便利な生き物としてはショウジョウバエが有名ですが、ショウジョウバエが2倍体であるのに対して、ハダニは単数倍数体(雄がハプロイド(n)で雌がディプロイド(2n))であり、アリ類やハチ類といった単数倍数体生物における遺伝や進化を知る上で、また、2倍体のショウジョウバエで得られた知見の一般性を確認するうえで、とても有用な存在です。しかしそれだけではなく、単数倍数体だからこそ、倍数体で観察された現象をより明確に検証できるといった利便性もあります。例えば、ハダニでは雄がハプロイドであることから、雑種雄に致死や不妊がある場合、優性や劣性といった対立遺伝子間の相互作用の影響に悩まされることなく、「雑種崩壊は遺伝子座間に生じる相互作用によりおこる」としたベイトソン・ドブジャンスキー・ミュラー(BDM)モデルを検証することができます。本研究では、個体群間で雑種雄の致死といった雑種崩壊が不完全な形で観察されるミツユビナミハダニを対象に、マイクロサテライトマーカーを用いてBDMモデルを検証しました。その結果、BDMモデルの予測通り遺伝子座間でネガティブな相互作用がみられただけでなく、ポジティブな相互作用も検出され、また、核と細胞質間の影響も検出されたことから、雑種致死にはBDMモデルだけではなく、他にも様々なメカニズムが関与していることが示唆されました。  アムステルダム大学の集団生物学研究室の若きホープ(博士コースの学生さん)が中心になって行った研究です。また、本研究で用いたミツユビナミハダニの写真が、掲載雑誌Heredityの2017年4月号の表紙に選ばれました。

  27. 35. Sakamoto H, Matsuda T, Suzuki R, Saito Y, Lin J-Z, Zhang Y-X, Sato Y, Gotoh T (2017) Molecular identification of seven species of the genus Stigmaeopsis (Acari: Tetranychidae) and preliminary attempts to establish their phylogenetic relationship. Systematic and Applied Acarology 22: 91-101.
    体長1mm未満の植食性節足動物であるハダニ類の中には、集団で共同営巣し、子育てする社会性のハダニがいます。その社会性ハダニを含むスゴモリハダニ属は、かつては単一種だと考えられていましたが、近年の研究により、日本国内に分布するものだけでも行動・生態が異なる5種1変異型に分類できることが明らかになりました。さらにこの属のハダニが東南アジア、中国、韓国においても分布し、日本と同様に多くの種に分化していることがわかりつつあります。これまで、11種が記載されてきましたが、見つけたスゴモリハダニがどの種なのか特定するためには、スライド標本を作成して顕微鏡下で観察し、形質を調べるなど、専門的知識と経験が必要となります。本研究では、だれでも同定できる手法として、遺伝子配列を使った同定手法の確立を、本属7種を対象に試みました。その結果、行動・生態・形態の変異の研究が現在進められているススキスゴモリハダニを除けば、ミトコンドリアDNAのCOI領域やリボソームRNAの18Sと28S領域の遺伝子配列で種ごとにグループ分けすることが可能であることがわかりました。また、ヴォルバキアやカルディニウムといった宿主の生殖システムの操作可能な共生細菌の関与もみられるなど、おもしろいことがいろいろとわかってきました。  もともとはアリ(もっと発展した社会性をもつ真社会性昆虫)の研究をされている坂本洋典さんが、その知識とスキルを活かして植物ダニ学分野で活躍された研究の一つです。今後の活躍が期待されます。

  28. <2016>
  29. 34. da Silva FR, de Moraes GJ, Lesna I, Sato Y, Vasquez C, Hanna R, Sabelis MW, Janssen A (2016) Size of predatory mites and refuge entrance determine success of biological control of the coconut mite. BioControl 61: 681-689.
    農業害虫の多くが、植物体の微細構造を、捕食者から身を守る避難場所として使っています。例えば、ココナッツを加害するフシダニ類であるココナッツダニ(Aceria guerreronis)は、捕食性カブリダニ類が入ることのできないココナッツの花被と果実の間に身をひそめ、そこでココナッツを加害しています。一方、捕食性のカブリダニであるNeoseiulus paspalivorusは、ほかの捕食性カブリダニ類より体サイズが小さいことから、ココナッツダニをコントロールする天敵として期待されています。しかしそれでもココナッツダニよりは体が大きく、若いココナッツでは花被が果実にぴったりとくっついているため、果実が熟成して花被がある程度開いてこないと、花被の下に侵入してココナッツダニを捕食することができません。でも早い時点でココナッツダニを捕食してもらわないと、ココナッツダニが爆発的に増えてしまい、捕食の効果は焼け石に水の状態になってしまいます。そこで本研究では、様々な大きさのPVC ブレード(ポリ塩化ビニルでできた差込片)を花被の下に差し込むことで、ココナッツダニの避難場所の入り口を広げてみました。その結果、PVC ブレードを差し込んだ場合、差し込まなかった場合に比べて、N. paspalivorusの花被下への侵入が数週間早く観察され、かつココナッツダニの個体数の増加も抑えることができました。今後は改良を加えたうえで、PVC ブレードの実用化につなげたいと思っています。

  30. 33. Sato Y, Alba JM, Egas M, Sabelis MW (2016) The role of web sharing, species recognition and host-plant defence in interspecific competition between two herbivorous mite species. Experimental and Applied Acarology 70: 261-274.
    ナス科植物に寄生するミツユビナミハダニは、南アメリカ原産ではあるものの、ここ20 年間で急速に世界中に分布を広げ、侵入害虫として世界各国で問題となっているトマトの害虫です。一方、同属に属するナミハダニもトマトの害虫であり、(主にヨーロッパで)野外や温室にて両種が一緒にいるところを観察されていることから、ミツユビナミハダニが侵入害虫として成功する際に乗り越えなければならないハードルの一つに、ナミハダニとの寄主植物をめぐる競争があると考えられています。そこで本研究では、ミツユビナミハダニとナミハダニの競争関係について、シェルター共有(ハダニ類の多くは、クモ類のように糸を吐くことができ、その糸を複雑または規則的に張ることにより外敵から身をまもるシェルターを作り利用しています)と植物の誘導防衛の視点から調べてみました。外敵から身を守ることができるため、同種間だけでなく異種間でもシェルターを共有することが、ナミハダニやカンザワハダニで報告されています。しかし、ナミハダニはミツユビナミハダニともシェルターを共有する一方で、ミツユビナミハダニは同種とナミハダニを区別し、ナミハダニとのシェルター共有は避けることがわかりました。また、ミツユビナミハダニの方がナミハダニと比べて集合性が高いこともわかりました。ナミハダニの多くの系統は、トマトを加害することにより植物体の防御反応を誘導し、植食性節足動物にとって不適な(質の低い)植物体にしてしまうけれど、ミツユビナミハダニは誘導された防御反応を制御し、好適な植物体を維持することができます。この識別能力や高い集合性は、ミツユビナミハダニが好適に保っている植物体をナミハダニに利用されずに仲間うち(同種)で共有するためのものであり、この協力関係でもってナミハダニとの競争に打ち勝っているのではないかと考えられました。

  31. 32. Sato Y, Rühr PT, Schmitz H, Egas M, Blanke A (2016) Age-dependent male mating tactics in a spider mite - A life-history perspective. Ecology and Evolution 6: 7367-7374.
    子孫を残すために雌をめぐって雄同士が戦う行動は、ライオンやサケ、クワガタなど、様々な動物でみられます。一方で、スニーキングやサテライトといった、ライバルを欺くことで戦わずに雌に近づき子孫を残す行動(代替戦術)も、しばしば観察されます。戦うのか、それとも代替戦術をとるのかは、遺伝的に決まっている場合も多々ありますが、一般的には状況や環境によって決まるケース(条件戦略)の方が多いと考えられています。特に、条件戦略の場合、体が小さいなど戦いに不利な形質や状況にあると代替戦術をとるといったように、戦いに負けるような弱い雄が少しでも子孫を残すために進化した行動(Best of a bad job、悪条件の中最善を尽くす行動)として捉えられることが多いです。しかし、ナミハダニでは、若い雄がスニーカー雄(代替戦術をとる雄)になる傾向があるのだけれど、これは若い雄が弱いからではなく、闘争のコストやリスクを軽減することにより将来の繁殖を促進し、生涯の繁殖成功度を高めているのではないかということが、本研究により示唆されました。  当センターに配属されて3年目となりますが、ここに来なければ出会うことのなかった異分野で異国の研究者たちとのコラボにより、実現した研究です。

  32. 31. Saito Y, Zhang Y-X, Mori K, Ito K, Sato Y, Chittenden AR, Lin J-Z, Chae Y, Sakagami T, Sahara K (2016) Variation in nesting behavior of eight species of spider mites, Stigmaeopsis having sociality. Naturwissenschaften 103: Article 87.
    ハダニ類は体長1mm未満の植食性の節足動物であり、その一部(ナミハダニなど)は農業害虫として知られているものの、中には集団で共同営巣し、集団で子育てするような社会性のハダニがいます。その社会性ハダニとして有名なのが、スゴモリハダニ属。しかし、本属に属するハダニは皆一様に共同営巣しているわけではなく、寄主植物を同じにするものであっても巣サイズに違いがみられます。本研究では、この巣サイズの違いは背中の毛の長さと関係していること(遺伝的基盤をもつこと)、巣の大きさが巣の存続期間に影響を与えること、それと関係して巣の拡大方法(増築or 新築)や糞場(共同トイレの場所)も変わってくることを示しました。これら変異は、対捕食者戦略の分化によって生まれたのではないかと考えています。ハダニ類は、ルーペや実体顕微鏡無しでは存在を認識するのが難しいほど小さい(ミクロな)存在ですが、共同トイレをもつなど社会の在り方は、我々とそんなに変わらないのかもしれません。これは、学生・院生時代の恩師であり、ハダニ類における社会生物学のパイオニアである齋藤先生が中心となって行った研究です。

  33. 30. Piyasaengthong N, Sato Y, Kinoshita N, Kainoh Y (2016) Oviposition preference for leaf age in the smaller tea tortrix Adoxophyes honmai (Lepidoptera: Tortricidae) as related to performance of neonates. Applied Entomolozy and Zoology 51: 363-371.
    昆虫でも子育て行動は見られるが、多くの種は子育てをせず、卵を産みっぱなしである。しかし、どこに産卵するかにより、母親は自分の子孫の生存確率を高めることができる。特にチョウ類では、幼虫(芋虫)ステージは分散が非常に限られるので、産卵場所は幼虫の生き残りにとても重要だと思われる。本研究では、お茶の害虫であるチャノコカクモンハマキを対象に、母親が好んで産卵した場所では、好まなかった場所よりも、生存や発育といった幼虫のパフォーマンスは高いのかどうかを調べた。その結果、チャノコカクモンハマキの雌成虫は、古い葉と若い葉をにおいでかぎ分け、古い葉に好んで産卵する一方で、幼虫のパフォーマンスは若い葉を食した時の方が高く、また実際に、幼虫は若い葉を好むことがわかった。では、古い葉に産み付けられた卵から孵化した幼虫は古い葉にあまんじているのかというと、たくましくも短時間のうちにお茶の木をよじ登って(古い葉はたいてい低いところにある)、若い葉に自ら移動することがわかった。しかし、なぜ母親は、初めから幼虫のパフォーマンスの高い若い葉に卵を産み付けないのだろうか?謎を解くためには更なる研究が必要である。こちらも、今年の3月に筑波大学(生命環境科学研究科)にて博士号を取得したタイからの留学生が中心となって行った研究です。今後の活躍が期待されます。

  34. 29. Piyasaengthong N, Kinoshita N, Sato Y, Kainoh Y (2016) Sex-specific elicitor from Adoxophyes honmai (Lepidoptera:Tortricidae) induces tea leaf to arrest the egg-larval parasitoid Ascogaster reticulata (Hymenoptera: Braconidae). Applied Entomolozy and Zoology 51: 353-362.
    植食者に食べられたり卵を産み付けられた植物は、一方的に加害されるわけではない。ダメージに反応して、植食者に害となる毒物質を生産したり、その植食者を食べてくれる、または寄生してくれるような天敵を誘引するような物質を生産して、自分を守ろうとする。チャノコカクモンハマキはお茶の害虫であるが、本種がお茶の葉に卵を産み付けるとお茶は反応して何らかの物質を生産し、それをコンタクトケミカルにその天敵である寄生蜂、ハマキコウラコマユバチが害虫の卵の場所を探りあてることが知られている。本研究では、まずはその現象を確かめた上で、チャノコカクモンハマキの既交尾雌の卵巣や受精嚢といった繁殖器官をすりつぶしたものをお茶の葉に塗り付けても同様の現象がおこることを明らかにした。また、そのタイミングや必要濃度といった詳細を調べるとともに、そのエリシターを特定するために、未交尾雌の繁殖器官や雄の腹部をすりつぶしたものとの反応の違いを調べた。その結果、雄の腹部をすりつぶしたものでは誘導されなかったが、未交尾雌の繁殖器官をすりつぶしたものでも多少は誘導されたため、エリシターは性特異的であると判断された。今年の3月に筑波大学(生命環境科学研究科)にて博士号を取得したタイからの留学生が中心となって行った研究です。

  35. 28. Sato Y, Staudacher H, Sabelis MW (2016) Why do males choose heterospecific females in the red spider mite? Experimental and Applied Acarology 68: 21-31.
    同種と結婚しないと子供はできないのに、動物の世界では同種よりも異種と好んで結婚しようとする行動が時々見られる。この不適応な行動はなぜ進化しうるのだろうか?ということを、トマトの農業害虫であるミツユビナミハダニを対象に調べてみました。本種は世界各地で侵入害虫として問題になっており、侵入地では個体群の遺伝的多様性は乏しいと期待されます。そのため、雌をめぐる雄間闘争は激しく、異種雌へのアプローチはコストやリスクが高いものの、近親交配を避けるために、雄は外観やにおいの異なる(けど自分に比較的似ている)近縁種の雌にそそられるのではないか?と仮説をたて、検証しました。その結果、本仮説は採択されませんでしたが、異種への好みの強さは、個体群や系統間で異なるということを明らかにしました。

  36. <2015>
  37. 27. Sato Y, Breeuwer JAJ, Egas M, Sabelis MW (2015) Incomplete premating and postmating reproductive barriers between two parapatric populations of a social spider mite. Experimental and Applied Acarology 65: 277-291.
    分布が重なっている近縁種間では、交尾行動の違いや同種に対する好みといった、交尾前生殖隔離の発達がしばしば見られます。それは、物理的なバリアが無く接触が多い状況下では、交尾前の生殖隔離が効率的に雑種形成やそれに伴うコストを軽減するためだと考えられています。ススキスゴモリハダニは、ススキに寄生し集団で共同営巣する社会性のハダニです。オスは殺し合いをし、ハーレムをつくるのですが、このオス同士の攻撃性の強さには地理的変異があり、攻撃性の強い型と弱い型に分けることができます。これら2型は、標高の高い寒冷なところに攻撃性の弱い型が、低い温暖なところに攻撃性の強い型が分布するといった側所的分布関係にあり、中間的な標高では同じススキ野原に2型とも分布しています。そこで本研究では、このような分布関係にありながらも、どのようなメカニズムの下、これら2型が維持されているのかを知るために、2型間の生殖隔離を交尾前生殖隔離を中心に調査しました。

  38. <2014>
  39. 26. Sato Y, Alba JM, Sabelis MW (2014) Testing for reproductive interference in the population dynamics of two congeneric species of herbivorous mites. Heredity 113: 495-502.
    いくつかの動物種では、異種との繁殖行為が容易に起こり、時には、同種個体よりも異種個体を好む行動が観察されています。多くの場合、異種雄からのアプローチにより、雌は正常な繁殖活動ができないといったコストを被るため(繁殖干渉)、この異種間の繁殖行為は、種間の空間的・時間的分布関係に影響をあたえうることが、多くの理論的・実証的研究により提唱・支持されています。しかし多くの実証的研究では、繁殖行動と個体群動態の関係からのみ繁殖干渉の重要性を説いており、他の要因が排除されていません。特に、植食性の節足動物においては、直接的な相互作用だけでなく、植物を介して影響を与え合っていることが近年の研究により明らかになっています。そこで本研究では、トマトの害虫であるハダニ2種を対象に、植物防御機構が一部欠如したトマト変異体を用いて植物を介した間接的相互作用をコントロールすることにより、また、ハダニでは最初の交尾で得られた精子が優先的に使われるといった特徴をいかして繁殖干渉の強度を変えることにより、2種間の競争関係に与える繁殖干渉の影響を抽出して評価しました。本研究で用いたミツユビナミハダニとナミハダニのの写真が、掲載雑誌Heredity Vol.113の12月号(No.6)の表紙に本研究の写真が選ばれました。

  40. 25. Sato Y, Sabelis MW, Egas M (2014) Alternative male mating behaviour in the two-spotted spider mite: dependence on age and density. Animal Behaviour 92: 125-131.

  41. 24. Lesna I, da Silva FR, Sato Y, Sabelis MW, Lommen STE (2014) Neoseiulus paspalivorus, a predator from coconut, as a candidate for controlling dry bulb mites infesting stored tulip bulbs. Experimental and Applied Acarology 63: 189-204.

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  43. 23. Sato Y, Sabelis MW, Egas M, Faraji F (2013) Alternative phenotypes of male mating behaviour in the two-spotted spider mite. Experimental and Applied Acarology 61: 31-41.

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  55. 14. Sato Y, Miyai S, Haraguchi D, Ohno S, Kohama T, Kawamura K, Yamagishi M (2010) Population dynamics of the West Indian sweetpotato weevil Euscepes postfasciatus (Fairmaire): a simulation analysis. Journal of Applied Entomology 134: 303-312.

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  59. 12. 大野豪・佐々木智基・佐藤幸恵・浦崎貴美子・原口大・小濱継雄 (2008) イモゾウムシ卵のエタノールまたはホルマリンへの浸漬および2種消毒液の組み合わせ処理による人工飼料のバクテリア汚染抑制. 昆蟲(ニューシリーズ)11: 169-178.

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