柔らかく強靭な木質材料


木材は意外と堅い
木材は、軽い割に堅くて強いため、住宅や家具などに幅広く使われています。ただ、木材を、プラスチックや金属のように大きく変形させることはできません(ポキッと折れます)。もし、木材を使って、ゴムのように弾力があり、大きく変形させても壊れない材料を作ることができれば、柔らかい木製家具や、衝撃に強い住宅材料など、木材の新たな用途を拓くことができます。


木材を圧縮すると?
木材を木目と直角方向に圧縮したものが「圧縮木材(または圧密木材)」です。スギのような軽くて軟らかい木材も、圧縮すれば硬くて強い材料になります。

圧縮木材に関するこれまでの研究の多くは、軽くて軟らかい木材を、重くて硬い材料に変換しようとするものでした。一方、木材を「適度に」圧縮すると、細胞壁が折りたたまれてバネのようになります。このバネの性質を使うと、下図のように、大きく曲げても折れない、しなやかな梁を作ることができます。この梁は、単に軟らかいだけでなく、通常の木材(木目方向)と同等かそれ以上の粘り強さを示します。

現在、拓殖大学工学部の阿部・白石研究室と共同で、この新しい弾性材料を用いた「人に優しい家具」の開発に取り組んでいます。

 

圧縮木材を用いた弾性的な座面


圧縮木材の高ダンピング特性
最近の研究により、圧縮木材で作った梁は、軟らかいだけでなく、振動吸収能が高いことがわかってきました。木造住宅における制振部材として利用できるのではないかと期待されています。


柔らかく傷が残りにくい木材
適度に圧縮された木材は、衝撃に対して大きく変形しますが、変形が弾性的に回復するため、傷が残りにくいことがわかっています。衝突時の衝撃が小さく、傷の残りにくい床材や家具材としての応用が期待されています。

砲丸を落下させたときにできた傷


湿度感応型アクチュエータ
圧縮木材の寸法安定性が低い(湿度変化で大きく膨らんだり縮んだりする)ことを逆手に取った面白い使い方の一つです。このアクチュエータは、たとえば、湿度に応じて自動的に開閉する無電力の換気フラップなどに使えます。


参考
A.Hirano et al.: Potential of moderately compressed wood as an elastic component of wooden composites. Eur. J. Wood and Wood Prod. 74, 685–691 (2016)

E.Obataya and S.Chen: Significant and reversible dimensional changes in hydrothermally compressed cedar wood and its potential as humidity-sensitive actuator. Eur. J. Wood Prod. 77, 1021–1028 (2019)


トップページに戻る

奏者向け情報

アルバム

お問合せ