竹のしなやかさ
竹利用の重要性
竹の構造
竹の強さは、維管束を取り巻く強靱な繊維(維管束鞘)に由来します。維管束鞘は竹の外側により多く配置され、たわみに対する力を効果的に分担しています。この維管束鞘は、ヤング率E(堅さ)や強度が大きいことから、樹脂強化用繊維など、様々な用途への応用が期待されています。
竹は本当にしなやかか?
竹はよく「しなやかな材料」と言われます。一般にしなやかさとは、大きく曲げても折れない「靱性」と、力を除くと元に戻る「弾性」、という2つの性質に基づいています。大きく変形できても、元の形に戻らないなら「軟らかいけど弾性的じゃない」ので、しなやかではありません(ゲル、粘土など)。形は戻るけど、大きく変形できないなら、「弾性的だけど硬い」ので、やっぱりしなやかではありません(金属、ガラスなど)。
竹の曲げ靭性
下の図は、竹の棒(B0-I)を曲げたときの力(M)と曲がり具合(I/r)の関係です。竹は木材(Spruce、Beech)に比べて確かに折れにくい(曲げ靭性が高い)ことがわかります。
この優れた曲げ靭性は、竹の外皮が力を請け負うと同時に、内側の部分が「繊維方向に大きく圧縮変形する」ことによります。
繊維方向の圧縮変形についてもう少し詳しく説明します。木材を縦に圧縮すると、下のように、目に見える形で細胞が折れてしまいます(座屈、と言います)。
縦に9%圧縮した後のブナの縦断面
一方、竹の場合は、泡状の柔細胞が徐々につぶれることにより、かなり大きな歪を与えても、大規模に折れ曲がることなく、スムーズに圧縮されます(下図)。
左が圧縮前、右が9%圧縮した後
したがって、竹の優れた曲げ靱性は、不均一な繊維の配置(下図a)と、繊維-泡複合構造(下図b)に由来すると言えます。
ちなみに、竹の組織構造を真似れば、木材を使って「しなやかな」材料を作れます。
圧縮木材を用いた高弾性・高靭性複合梁
竹は弾性的?
さて、一定の歪を与えたあと、どのくらい歪が残るかを調べたところ、竹と木の間に大きな違いは認められませんでした。つまり、竹は確かに曲がりやすいけれども、力を除いたときに元に戻るか(弾性的か)どうかという意味では、木材と大して変わらない、と言えるでしょう。
残留した歪(縦軸)と与えた歪(横軸)の関係
参考
E.Obataya et al.: Bending characteristics of bamboo (Phyllostachys pubescens)
with respect to its fiber–foam composite structure. Wood Sci.Technol.
41(5), 385–400 (2007).
2) A.Hirano et al.: Potential of moderately
compressed wood as an elastic component of wooden composites. Eur. J.
Wood and Wood Prod. 74, 685–691 (2016).