倉橋節也先生にインタビュー 研究テーマやビジネス情報研究の魅力について <教員紹介(倉橋)> | |
<では始めに、先生はどんな研究をされてるんですか?> 社会シミュレーションとデータマイニングを主にやっています。データマイニングは進化的な計算手法を使っていて、社会シミュレーションはマルチエージェントを使ってコンピュータの中に社会を作ってます。 <シミュレーションゲームみたいなものですか?> シミュレーションゲームじゃないですけどね(笑) きちんと研究としてやっていて、どちらかというとコンピュータを道具として使って、社会のことを調べるというのをやっています。 最近はまってるのは、歴史のシミュレーションをやっていて、中国五千年の歴史をコンピュータの中になんとか実現できないかと。 <歴史を実現するっていうのは、具体的にはどうなるんですか?> まあそんなこと言ったって五千年の歴史はできないので、家系図を。 <家系図でシミュレーションをするんですか?> 日本の家系図っていい加減なものもあるんですけど、中国は家系図を書くのが代々やらないといけない大事な仕事として残っているんですよね。 それをコンピュータの中に実現して、表面上は結果しか見えないけど裏ではどうなっているのかを、エージェントを使ってシミュレーションするんです。何が分かるかというと、その調べた家系は科挙の合格者が多い家系で、どうやって合格者を出しているかを調べています。 <研究の内容によっては、コンピュータのことだけじゃなく、それに組み合わせるもののことも勉強しないといけないですよね、例えば今のだと中国の家系について、とか。> そう。 コンピュータで何を解くのか。コンピュータそのものが目的だっていう研究ももちろん大事でですけど、コンピュータを使って何かをするときは、もっと広くいろんな分野のことを知ってないといけない。それを解くのに、その分野の従来の方法で解くのではなくて、コンピュータを使って、例えば統計とか人工知能とかの、すごくおもしろい方法を使ってみるんです。それで、今まで誰も発見できなかったような、同じデータを見ているんだけど誰も分からなかったことを見つけ出すことができたらおもしろいな、と思っています。 <先生のところにいる学生さんはどんな研究をしてるんですか?> どうしたら各国が温暖化ガス削減枠組みに参加したくなるかっていうのを研究している学生さんや、新卒者の就職市場の研究、株式市場や電力取引市場の構造を探る研究、Web情報を使った推薦や、面白いのは談合の研究をしている学生さんもいます。 <その温暖化ガス削減の研究は結論というか、解決策みたいなものが出てるんですか?> 出るんですよ、ちゃんと。 それを実験できるのがおもしろい。 普通は実験できなくて、こうやったらいいんじゃないか、というのはあるけど、コンピュータの中で人工社会を作ってあげれば実験ができるでしょ。 ここのルールをちょっと変えてみたらどうなるだろう、って言うのを発見することができるんです。 <コンピュータ、便利なんですね。学生さんに指導するときに気をつけていることはありますか?> 学生さん自身が世の中をよく知ってるので、彼らが持ってる問題意識っていうのを大事にしなきゃいけないと思っています。 「そんなことより、こっちでしょ」じゃなくて、「これが問題で、これを解決したいんです」っていうのをきちんと聞いてあげる。 世の中の問題に関して言えば、学生さんの方が先生ですよ、だってプロだもん。 <他の先生も仰っていましたが、ここの学生さんは問題意識をちゃんと持ってる方が来るんですね。> そうですよね、そういう人が来ています。 勉強したいだけではなくて、問題を持っていて、それを論理的に説明できる人、そういうのが大事です。 <先生はここの修了生でもあるんですよね。学生時代はどんな感じでしたか?> 違う分野の人もいるから、自分が当たり前にやっていたことを他の人はすごく感心してくれたり、お互いに良いところを学びながらやってたかな。 一度この世界を知ると、どんどん深みにはまるんですよね(笑) <入学してから卒業までの間で学生さんが変わったと思うことはありますか?> 一つは客観的にしゃべれるようになることかな。 もっとデータに基づいて話しなさいとか、先行研究を基にして調べるということを徹底してやりますからね。 もう一つは、キャパシティが広がる。 もちろん専門的にも深く知るようになるんだけど、その周辺の知識も付くので、より広く知るようにもなります。 <専門的に深く知るのって、ただ深くなるだけかと思ってました。> たくさん勉強しないといけないというのが分かってきて、手当たり次第に読むようになるから。 修了するころには話をしててもいろんな話題が出て、人間として魅力的になるんじゃないかな。 話題が豊富になりますよ。 <ではビジネス情報研究の魅力はなんでしょうか?> 道具を作るのと、道具を使うのが両方できるってところかな。 例えれば、鍛冶屋として包丁を作って、料理人としてその包丁を使うような。 どっちかでもいいけど、両方できれば嬉しいでしょ。 ここには道具の作り方を教えてくれる先生もいるし、道具の使い方を教えてくれる先生もいるし、僕みたいにどっちもやってみたいって人もいるから、面白いですよ。 <最後に、ビジネス情報研究を目指す学生さんに一言。> ここの大学院は経営学だけではありません、特にビジネス情報研究は。 <名前はそれっぽいですし、他の大学だと経営学そのものをやってるところが多いですよね。> もちろんここで最先端の経営学を学ぶことができます。それに加えて、エンジニアと呼ばれる人がきちんとそれを極めることもできるし、自分たちが極めてきた技術をそのまま使って、ビジネスの問題を解くことができるようにもなります。 高度な技術者が経営のことが分かるようになって将来経営ができる、文系の人が技術のことも分かるようになってそれを使って意思決定できるようになる、というのを目指してほしいですね。 |