研究会トップに戻る

7/9 7/30 8/20a, b c 9/3a, b 9/17a, b 10/29a, b 11/12a, b 11/26

Willis, D., & Willis, J. (2007). Doing task-based teaching. New York: Oxford University Press.

2009/07/09

Chapter 1 (pp. 1-19)


1.1 What do you think about task-based teaching?
○Task-based teaching (TBT)を支持する者は、効果的な言語教育として、学習者の実際の言語環境(discussion, problems, gamesなど)に従事させることと述べる。---これはつまりタスク(task)でなされる。タスクは言語使用が要求される。教師は教室や生徒に合ったアプローチを取り出す。

○この章で、TBTに関する内容について考える箇所がある。(8つから4つ抜粋)
 考えてみよう
  a. 正しい文法を知らなければ、タスクを行うことはできない
  b. 試験のために英語を勉強している学習者にはTBTは不適切である
  c. 英語力が完璧で正確でなければ、教師はTBTを行うことができない
  d. TBTは話し言葉と書き言葉の両方を使うために使われる

a. 生徒は過去時制を学習する前から、過去について英語で話したりすることがある('Yesterday I play tennis. など)。よって、生徒は限られた文法の中でも精一杯複雑な意味を持つ文章を作り出そうとする。TBTで大事なことは、生徒に誤りを恐れさせず、教室で言語を使う機会を十分に設け、学習者の自信を促進させることにある。

b. 本来、TBTは試験対策のために作られたものではない。文法が不正確であっても教室外、つまり現実社会で英語を使う学習者を目的として作られたものである。ただ、その試験が実際の学習者の言語能力を測るものであれば、TBTはそのための効果を高めるものとなる。

c. 学習者は常に正しい英語を使わなければならないと統制されると、自由に英語を使うことが困難になる。英語力に自信のない教師は時たまこのような統制をしうる。ただ、学習者にとっては英語を話している人というモデルが必要になるため、教師は誤りを犯しても教室で英語を自由に使っていくべきである。学習者は一度タスクに従事すれば、そのようなことは気にしなくなる。

d. TBTは話し言葉に焦点を置かれると考えがちである。しかし、リーディングやライティングを教えるためにも使うことができる。
1.2 Starting with form and starting with meaning: alternative approaches to teaching
○形式重視のアプローチ (form-based approach)
・学習者は言語を正確に産出しなければならないという信念に基づく--- focus on form
  focus on form (形式の焦点化) Long (1988) はfocus on forms
   いくつかの文法の特徴を取り上げ、目標形式 (target forms)として扱う
   授業の終わりまでには正確に産出することが求められることになる
  PPP (Presentation → Practice → Production) 提示→練習→産出
   形式に焦点を当てて、その意味を説明し、教師の統制の下でその形式を練習し、統   
   制を緩め、コミュニケーション活動の中で産出を行う

○意味重視のアプローチ (meaning-based approaches)
 ・学習者の文法が不正確であってもできるだけ多く使うことが効果的だと考える
  focus on meaning (意味の焦点化)
  教室の中で実際のコミュニケーションのための言語使用の機会を与える
  意味重視の活動の中で学習者は自然に言語に焦点化していく(学習者は教師が発する 
  言語形式を漠然と聞くだけでなくそれをどう学習者のアウトプットに組み込み、表現 
  することが適切かを考えている--- focus on language)

focus on language (言語への焦点化) Long はfocus on form
  意味中心の活動の中でどのように表現することが適切かを考えること
  教師は、インタラクション (interaction) に参加し、学習者の言語を言い換えたり、明
  確にしたりすることで促進者 (facilitator) として動く

 ・意味重視のアプローチでは通常意味と言語に焦点を当て、その後形式に焦点が当てら  
 れる

1.3 Language as meaning
○子供が言葉を使い始める時、文章を使用せず意思疎通を行うが、文脈でさまざまな解釈がされる。--- ' book table 'など=初級レベルの学習者も同様 意味の理解
        語彙の習得が初期のコミュニケーションでは欠かせない
        冠詞や時制などももちろん大事であるが、語順(節・句なども)は解釈
        に欠かせない⇔限られた文法でも話をすることは可能
○ただ、読み手や聞き手に分かりやすく解釈してもらうためには十分な文法使用は欠かせない。
○限られた文法でも意味を伝えることができるが、より有能な様式で意味を伝えようとなると、語彙や語順以上のもの、つまり物事をはっきり認識させる文法が必要になってくる。
○言語教育を始める方法として2つ挙げられる:意味からか、形式からか
 ・意味からの場合
  意味から学習していきながら、形式を見ていく
  できるだけコミュニケーションができるよう言語を使用させることを促進する
  与えられたトピックに関する語彙を導入することが不可欠
   (文法は第一の目的ではないだけで、軽視するわけではない)
  この方法では、コミュニケーションのための言語使用の能力が向上しているかどうか  
  で成功か不成功か判断される
 ・形式からの場合
  目標言語での形式を導入し、その形式と適切な意味を一致させる機会を与える
  容認可能な(acceptable)文章を導入することが第一の目的となる
  意味やコミュニケーションを無視するわけではない
   (いったん文法が教えられれば、意味のある状況でその文法を使う機会が与えられ
    る)
  この方法では、目標言語において形式的に正確な文章を産出する能力が向上している
  かどうかで成功か不成功か判断される

○このように、言語教育のほとんどのアプローチで、教師はfocus on formまたはfocus on meaningを使用することで授業を展開する。focus on meaningはスキルの授業(skills lessons) ともいわれ、TBTはこのskills lessonsと共通する部分がかなりある。

1.4 Meaning and tasks in the classroom
○教室で最も成功する活動のいくつかは自発的な意味の交換 (spontaneous exchange of meanings) を含む
 ・教師が個人的な話をし、授業を始めることで、すぐに学習者の興味を引きつけ、学習者は興味を持って聞き続け、理解に努める。教師は語彙リストを与えたり、介入したり、言い換えたりすることで助ける。
 ・ディスカッションでは、教師が意見を言うことで開始し、学習者は自分自身の意見で応答し、有益なディスカッションが続いていく。学習者はその中でさらされる新しい語彙や句を習得していき、文法的な問題も理解していく。

○ただ、自発性による活動は教師が期待しているように進行するとは限らない。よって自発性によって教える欠点を埋めるためにどうすべきか考えていく必要がある。----- 現在の社会の問題を取り上げる例
 ・成人のクラスでは新聞記事の内容を参照しながら、意見を交わすという自発的な活動を行うことができる。
 ・教師が準備しておいたようにディスカッションを進めていこうと考えれば、あらかじめいくつかの意見等を挙げておき、学習者にそれらに同意できるかどうか、その理由は何かを話し合わせることができる。
  ----- Drug abuse の例
   ディスカッションのための焦点を作ることが可能
   文章を読むとき、目的を持って読むことができる
   グループの中で、意見を正当化していくことができる
   教師は、' Ramon, how many people agreed that soft drugs should be legalized? '
   ' What about your group, Maria? Did you all agree or were there disagreements? ' 
   などのように質問することでディスカッションの内容を引き出していくことが可能

○ディスカッションを構造化することで、いくつかの語彙に触れる機会にもなるし、意見を表現しやすく、トピックに従事することができ、form-focused activities の材料にもなる。

○このように、意味のある活動への参加を促進するための形式化された活動を提供する時、task-based learning に従事することになるわけである。学習者の自発的な興味やインタラクションに託す代わりに、興味やインタラクションを促進する活動を設計する-----これがタスクという種類の活動となる

1.5 Characterizing tasks
○タスクにもさまざまな定義があり、さまざまな研究者や実行者からさまざまな定義付けがなされている。最も完璧な定義としてはSkehan (1998)の定義が挙げられる。
 ・意味が第一
 ・理解なしに言葉を繰り返したりすることをしない
 ・タスクの完成を優先させる
 ・タスクの評価は結果による
 *意味を含み、産出し、ただ繰り返さず、結果を達成することが重要で、結果の観点で活動の評価がなされ、教室のタスクはできるだけ現実社会と結びつける

○以下の内容にyesと答えられる数が多いほど、その活動はタスクに近い。
 ・興味を引きつけるものか
 ・意味に焦点が置かれているか
 ・結果はあるか、結果の観点でタスクの成功が判断されるか
 ・タスクを達成することが優先であるか、課題達成
 ・現実世界の活動と関連しているか

1.6 Why not start with grammar?
○多くの授業では1つまたは2つの形式を個々に扱うことで始まり、その後タスクのようなコミュニケーション活動に移る。

○初期の段階でformとmeaningを同時に考えるのは難しい⇒言うつもりの内容 (what we are going to say) とどのように言うか (how we are going to say)に同時に集中することが困難

○教室場面では学習者は言いたいこととその形式を同時に考えることができるだろうか。
 ・formに時間をかけてしまい実際のコミュニケーションに関われなくなるのであれば、ただ文章を作るだけの練習になる
 ・意味に従事し、特定のformを産出することを無視してしまうこともある。教師の意図に反しても意味に従事することもあるだろう。その場合は授業の目的は失敗になるが、意味に従事したタスク活動に転換していくべきである。

○さらに、focus on formで始めると、習ったことをそのまま自発的な言語産出に組み込むことは難しい。‘What do you want?’ や ‘What does X mean?’などの形式を長期的・集中的に学習するわけだが、学習というのは学習者の意識的な制御に従属するものではないので失敗に終わる。

○言語は発達するのにかなりの時間がかかる。形式については、形式を始めに導入することがそのまま習得ということにつながるわけではなく、それがいったん強調されれば、将来的にその形式に気づき (notice)、発達を援助してくれることになる。また形式は意味に従属するものなので、タスク活動の前よりは後に導入すべきである。

<コメント>
 今回初めてSLAA研究会で文献発表を行った。さらに、タスクに関する文献について内容をまとめて発表するのは初めてでもあった。私の興味・研究範囲はリスニングでもあるが、タスクについても修士論文で関連づけられればいいかと思っている。
 今回の発表の中で、focus on form, focus on languageの違いを認識できたのではないか。(Long はfocus on forms, focus on formと区別していた。)意味のある環境の中で形式が教えられるのかそうでないのか、ここが大きな違いのポイントとなる。

ページトップに戻る

2009/07/30

Chapter 2 (pp. 19-33)


2.1 Task Sequence
●前チャプターのDrug abuseは、教師主導のイントロから始まり、グループ内での議論、クラスでの議論、リーディングなど、連続したタスクで構成されていた。このように、Task-based lesson(TBL)は一つのタスクではなく、一連のタスクで構成されている。

以下それを基にした解説
●教師主導のイントロダクション
□これも一連のタスクの中の一つであり、独立したものではない。
□後の関連項目の学習を促進させるプライミングであり、
 ・トピックに焦点を当てさせ、学習者の持つ知識を喚起させる。
 ・トピックに関する語を導入する。
の2つの役割がある。

●学習者に自分の意見の決定、議論の構成を行わせる。
□次のディスカッションへの準備
□この過程は意味の焦点化(Focus on meaning)を含み、自分の言いたいことをどう英語で表現するか考える。また、学習者は言語への焦点を当て始める。例えば‘Should be legalized’、‘Should be punished’などを自分の意見にどう生かせるかなど、インプットが多くなる。これはmining(直訳:採掘)として知られている。しかしこれは形式の焦点化とは次の2点大きく異なる。
  ・形式で使わなければいけないものはなく、学習者が役に立つと思ったものを使うことができる。
  ・議論に特定の形式を取り入れたかどうかで評価はされない。準備の段階では教師による形式の焦点化は含まれない。
●クラスでのディスカッション
□これも次のリーディングへの準備となる。
●リーディング
□Meaning-focused activity→学習者は自分の意見と著者の意見を比較するという目的を持ちながら読むため。

●重要なことは全ての段階に意味の焦点化が存在することである。
□コミュニケーションのための言語使用を増やし、繰り返すことで形式に焦点を当て際には既
に学習者は目標の語彙や文法を何度か見聞きしている状態になっている。


2.2 Planning a task sequence
 □トピックを決める
 □多くのタスクは現実に学習者が経験しそうなことを想定して作られている。
□過程を考える際は、まずターゲットタスクを考え、次にプライミングや準備を含むFacilitating tasksを考える。
 
2.3 Building in focus on form
 □形式の焦点化を一連のタスクの最後に行う事で3つの効果が得られる。
  ・特定の文法形式を用いたリスニングや、リーディング活動の後に、形式の焦点化を行うことで、学習者はそれまでやってきた言語使用を深く理解する。 
・次に使うであろう言語を強調し、それが出てきた際の学習者の理解を促進する。
・何を学んだかを自覚させることで学習意欲をあげる。



Aurelia Garciaの例

彼女のタスクの構成は11-12歳の小学生向けに作られており、時間割に関する、教師主導の話し合いから始まる。“How many subjects are there?”や“Which subjects are the most useful?”などといった問題提起を行う。その後学習者はグループワークで理想の時間割を作る。L1(Spanish)で活動してもよいが、時間割は英語で作る。その後再び教師主導の議論を行い学習者の考えを引き出す。教師主導の活動では、“twice a week”や“Four times a week”といった表現をカバーする。発表の際は英語であることを伝える。
英語学習でのL1の使用に関して、英語のクラスでL1を用いてはだめというのは打ち破るのが困難な障害の1つであるが、彼女のクラスではL1レベルの活動からスタートし、徐々にタスクの輪の中に取り込んでいくことで学習者は英語を使っていくようになる。また、彼女は自分のクラスの現状に合わせてタスクを行い、L1が必要な状況(問題が難しいなど)があればL1を使用し、学習の補助とする。

グループ内での議論に入る前に、
Subject Lessons per week Hours per week Comments


このような表を埋めさせる。実際は十分な行はある。はじめはL1での議論が多いが、発表の際には英語で行うことを伝え、そのための十分な時間を確保する。各グループの発表の際、教師はそのグループの時間割を作成した意図を質問する。その後、全体での議論を行う。

このタスクの特徴の一つは、他のタスク同様、反復練習が組み込まれている。例えば、理想の時間割を作る際に“We want”や“We’d like”を用いるなど。どの段階でも学習者は自分の意見を伝えるのに役立ちそうな表現を探し、取り入れているが、主に意味に焦点を当てた活動であり教師によるコントロールもないためこれは形式の焦点化ではない。

最後に形式の焦点を当てる。学習者は空欄のある文章を渡され、それを埋めて暗記する課題を出される。学習者は正確に暗記できたかどうかで評価されるが、タスクの最後に形式の焦点化を行うことで前述の3つの効果が得られる。


2.4 Second language acquisition research and TBT

 Lightbown and Spada (2006)は“Get it right from the beginning”と“Get it right in the end”を比較している。前者は、次に移行する前に特定のFormを習得しようという考えで、ほとんどの教材はこの考えを基に作成されている。しかし、実際は次に移行する前にマスターすることは難しい。ほとんどの指導プログラムはこの考えを基にしており、教師はそれぞれの内容を独立させて教えていく必要がある。一方後者は、学習者には言語に触れ、またその意義のある使用機会が必要という考えであり、主に意味に焦点を当てている。本研究では学習者はForm-focusかつコミュニカティブな状況から学ぶことが多いという結果がでており、課題として意味の焦点化と形式の焦点化の活動のバランスの研究をあげている。
 Corder (1973)では言語学習の“High surrender value”について述べている。学習者が言語への自信と流暢さを持っていなかったら、指導要領から得られるものは少ない。一方、失敗や不正確さがあってもそれを活かす自信があればHigh surrender valueを得ることができる。言語が不完全でもそれを最大限に使うことに価値がある。それにはクラスで間違いを恐れて発言しないような雰囲気にしないことや罰することはしないなど工夫が必要。

<コメント>
今回はTask sequenceに関連する内容だった。タスクの順番や内容、学習者に身につけさせたい力など、様々な要因が関わってくるため、いざ本文にあるようなタスクを作ろうとなると非常に難しい。しかし、その中で重要なポイントは、一連のタスクの終わり際に形式に焦点(Focus on form)を当てた活動を行い、タスクは基本的には意味の焦点化(Focus on meaning)を含むことが大事であるということだ。

ページトップに戻る

2009/08/20a

Chapter 3 (pp. 33-41)


3.1 イントロダクション:目的を持った読み
■私たちが文章を読む時には,興味のあるものや知りたいことのために読む。(例:新聞記事,雑誌の記事)→他者の意見を知りたい時や純粋な好奇心を持った時。リスニングも同様。(例:ニュース番組、ラジオ、テレビ,講義)
■教室内においては,目的を欠いたリーディングやリスニングになってしまう恐れがある。→タスクを課すことでそれらに文脈を与え,実際の目的や問題を与え、意味に焦点を与える。
■本章では書き言葉による文章を用い,それらを繰り返し使うことで学習者に親しませる方法を考える。個々のテクニックはすでにスキル練習としてお馴染みのものだが,その配列や配置が違いを生み出す。また、話し言葉の文章にもこの考えを適用してみる。

3.2 ディスカッションタスク(Discussion tasks)
■第1章(I.4)で紹介した「危険な薬物」についての意見調査タスクは、このタスク配列の一部である。意見調査タスクに基づいたディスカッションは,それぞれの生徒の参加を促し,興味を与え,読む理由を与える。例えば①個人の意見調査後に各グループに2つの意見を与え,それらに対する賛否を議論させる。②グループ間でその意見を比較する。同様のライティング活動に発展するかもしれない。
■このタスクは、議論の生じるトピックに関する文章に導くよい方法である。(タスクによってその導く方向が異なる。)

3.3 予想タスク(Prediction tasks)
Stage I 予想のための準備
■このタスクは特に物語文に向いている。それは,ヘッドラインやタイトルを見ると内容を想像したり,疑問を持ったりするからである。予言タスクの設定により,学習者にその文脈を与え,リーディング処理を補助する。教師はリーディング準備段階として繰り返しこのタスクを含めるが,これを明確化することはリーディングそのものと同じくらい重要なものである。
■予想タスク配列の例を提示する。(別紙WS)実際のリーディング過程においても「何がどのように起こり得る」のか推測することから始まる。
1)生徒は何が起きたのかをペアになって考える。(パラシュートを付けていた,ロープで降りた等)
2)クラス全体で,それぞれの考えを共有する。(生徒の説明は言語資源が豊富であり,コミュニケーションに役立つ。教師が援助することで生き生きとした楽しい活動となる。この時点でどれが正しい答えなのかは伏せておく。)

Stage II 予想タスク
この種のタスクには,実際にあるような,様々な思いを巡らせるディスカッションを含んでいる。(例のように)本文からいくつかの語を取り出してもよいし,最初の2文ないしテキストの冒頭と結末の文だけを取り出して示してもよい。気をつけるべき点を次に示しておく。
・ タスクが実行可能なものであること。十分なヒントを与えるとともに,問題に対して許容できる答えを考え出す機会を与えること。
・ 次に続く授業を調整するための準備をすること。ヒントを与えすぎると挑戦する余地がなくなる(足りないときは次回調整)。初めて行うテキストの場合は,与えすぎぐらいのほうが良い(生徒のフラストレーションがたまるため,タスクを実行できなくなる)。
・ 生徒に与えるヒント(Clue)に変化をもたせる(前に示したような例や、与える語の数など)。

■生徒に課すことに変化をもたる。(例)疑問に思ったことについて5つ質問を作る。タスクの要求を変えることでヒントを変える。例えばStage Iのタスクにおけるフレーズを減らし,質問する余地を作るなど。
■この段階でもっとも大切なことは,意味に焦点を当てた言語使用を含めることである。学習者は全ての言語材料を組み合わせて物語にしたり質問を作ったりする。教師はタスクを与えることで準備と教授の機会を作り出す。生徒は後に文章中で見るフレーズに触れ,教師はフレーズを通じて,トピックの紹介と文章中の語彙的な困難さへ向けた準備をさせる。後から文中でそれらの語を見る時には,すでに生徒の注意が向いているのである。

Stage3 報告の準備
■この段階では,自分たちの決めた物語について代表1名がクラス全体に発表するための準備をするように,生徒に指示する。生徒はここまで起こったことを振り返り,完成版の物語を作るために考えを出し合う。全体に発表するため,生徒はFluency とAccuracyに関心を持つ。この段階では教師は生徒の要求に応じて援助すべきである。

Stage4 報告
他のグループの内容と比較するため,2~3グループの代表がクラス全体に自分たちの物語を発表する。このレポートそのものは、実際の世界での言語活動(この場合はstorytelling)になるため、Chapter2.2にあったような目標タスク(target task)になる。またここでは,生徒が意味だけでなく言語に焦点を当てるといった機能を持つ。

Stage5 リーディング
■この段階で生徒は物語を読む。これまでのタスクにより,生徒は物語を読み自分たちの推測が正確であったかを見つけることに,好奇心を持っている。その結果(推測の確認ないし好奇心を満たすこと)に焦点を当てている。これにより意味中心に読むことになるため、読むことが一つのタスクの中のタスクになる。
■リーディングそのものは大切なものだが、比較的短時間しかかからないであろう。読みの練習と目標言語に触れる機会を与えることに加え,ここでの読みは,これまでの言語活動の根本的な理由を与える。ここでは読んだ後にその反応を求めるかもしれない。推測は全て正しかったか?一部だけだったか?また、語彙や文法が分かるように、意味を更に明らかにするために,後からタスクを再度繰り返すかもしれない。

Stage6 形式に焦点を当てる(Focus on Form)
■タスク配列の最後に来るのがFocus on formである。この文章は場所に関する表現を多数含んでいる。(例:in New York, off the empire building, to the top floorなど)
■学習者に、場所に関する表現を本文から探し,下線を引かせてみるのもよい。ここでの’took the lift to’は大切な表現である。’took the/a …to…’は公共交通機関に使えるものだが,普通は短い旅にのみ使うものであるということを指摘できる。学習者に次のフレーズに合う言葉をいくつ考えられるか問いにすることも出来る。
I took the …from…to…
■この文章での最も興味深い文法的特徴は,再帰表現である。再帰が再帰強調や特定のために使われている例として,’Jim Burney himself’ という箇所がある。再帰代名詞が直接目的語として使われた3つの例として,① ‘to kill himself’,② ’threw himself off’,③ ’found himself on a narrow edge’ がある。③は最もよく見られる使い方である。非直接目的語として用いられている例としては ’I poured myself a stiff drink’ がある。生徒に本文から-selfのつく語を調べさせ,再帰についての文法書の問題などを紹介しても良い。既習の再帰に関する文章を見ることに繋がるかもしれない。

Stage 7 評価
■それぞれの段階での生徒の反応を観察する。予言タスクはどのくらいの時間がかかったのか、本当のディスカッションを行っていたのか,母語の使用が多すぎなかったか,storytellingはうまくいったか,またそれ以外の項目についても,その答えを見つける。これらの情報はこのタスクを再度行う価値があるかを決める助けになるであろうし,またそうであるならば他の教室においても更なる応用が可能になる。
■生徒に感想を書かせることも良い。予言タスクは難しかったか、援助の量は適切であったか,この話は好きだったか,読む前にもっと語彙に関する援助が必要だったか,言語材料は有益であったか,などのうちいくつかの質問を生徒に問いかけ,グループディスカッションと評価の援助としても良い。これらの評価とディスカッションは少なくとも以下のような3つの機能を持つ。
①この話し合いには意味に焦点を当てた言語使用を含むため,学習者にとって有益である。
②タスクの将来的な使用のための調整に役立つ。
③学習者をディスカッションに含めそれらに注意することで,彼らの意欲を高揚させる。

<コメント>
今回の担当箇所では,リーディングを中心としたTask basedの考え方に基づき段階を追って一つの展開例になっていました。日本の高等学校においてはリーディングを中心とした教材が多いと思いますが,今回のような展開例であれば応用が十分可能な形であると感じました。
日ごろ学校での授業実践において困難さを感じるのは,教科書などの教材をもとに1つずつ自らタスクを考えていかなければならない点です。大学院に派遣してもらっている間に時間を有効活用し,タスクを使った教材を作成していくと共に,同様のアイデアを持った先生方(学生のみなさん)と教材や情報の共有をしていけると良いのではないかと思います

ページトップに戻る

2009/08/20b

Chapter 3 (pp. 41-53)


3.4 Jigsaw task sequences
○Jigsaw taskでは、互いに違う情報をそれぞれのグループに与え、その情報をまとめていくためにそれぞれ受け取った情報を出し合うことが求められる。このタスクによって、コミュニケーションのための目的を学習者に提供することができる。(cf. information gap)

○このようなタスクを行う具体的な例
Stage 1 Pretask ----- 情報や文章を切り分け、それぞれのグループに異なったものを提供する。それぞれ文章の中の違うパラグラフを提供し、それぞれが内容について議論をした後、全体の文章を与えることもできる。また、くちゃくちゃにした紙(crumpled paper)をボールの中に入れ、ボールから見える情報だけでそれぞれのグループがやりとりをし、少しずつ全体の文章を構築していくこと、さらに同じ文章を読ませ、異なった箇所をメモさせ、情報をやりとりすることなども可能である。
Stage 2 Putting the story together ----- この段階で、それぞれのグループが内容発表の準備を行うことになる。それぞれのグループの中から一人、代表者(ambassador)を決定し、他のグループへ情報を伝えに行く役割をする。この例では、代表者は自身のグループの文章を10語までメモして行くことができるとしている。
Stage 3 Preparation ----- 一方のグループは他方のグループと、他方のグループは一方のグループとそれぞれ代表が情報を交わし、全体の文章へとまとめていく。

3.5 Student as question master
○教師やテキストの練習問題が生徒に質問を投げかけるのが通常行われていることであるが、今回の手法では、生徒自身に質問を準備させる。前もって文章を渡し、生徒はそれぞれ予習し、質問を考える。授業で質問を持ち寄り、それぞれのグループで質問をまとめる。それぞれのグループは他のグループから来る質問を予想しながら文章理解に努める。質問に答えるときは、文章を参照しないで行う。

○なるだけ情報豊かな文章を用い、文章の予習をさせ、一つのグループをあらかじめquestion masterとして決めておき、他のグループ全員に答えさせることもできる。個々に答えさせ、できる人だけにまかせない。最後には形式に焦点を置き、いくつかの形式を導入することができる。(結婚を例に挙げれば、結婚する前、交際から結婚まで、結婚後の表現形式について考えることができる⇒時制)

3.6 General knowledge tasks
○教師は、ディスカッションを促進する方法として、生徒を現実社会の知識に従事させることが必要である。一つの方法は、短いクイズ(short quiz)で始め、答えについて話し合う。また、あるトピック(本文では鯨の例で説明されている)に関して知っていることを書き出させて内容を話し合う。どちらもそれに関する文章を読ませる前に、ディスカッションの時間を多く設けることになる。

○True or False question (T/F)などの質問などが、よりディスカッションを生み出す。生徒は他の生徒と答えを比べ、自身の答えを読み上げ、自身の知識に基づいてどれくらい正しい答えを出したか答えさせることができる。多肢選択問題(multiple-choice question)もディスカッションを促進するのに有益である。

3.7 Corrupted text
○Corrupted textは何らかの形で文章が変化され、修復する必要がある文章のことである。例えば、文章中のいくつかの要素が省略され、学習者はその空所を埋めていくことを求められる。また、文章や段落の順番も変化させられてる場合もある。

○Factual gap filling ----- これは、文章中の事実に基づく内容を削除し、文章の空所を埋めることが求められる問題解決型活動(problem-solving activities)となる。これは特に数的な情報(numerical information)を多く含む文章で行われる。

○Linguistic gap filling ----- 文章には話しの中心、議論、説明を補足する情報がよく含まれている。教師はその情報を削除し、生徒に復元させる活動が展開できる。このタスクでは学習者を意味に焦点化させ、グループでのディスカッションも生み出すことができる。しかし、Factual gap fillingのような予測的なタスクよりは言語形式に焦点が当てられている。

○Re-ordering ----- このタスクでは文章を構成する文や段落が並び替えられ、学習者はそれを戻すことを求められる。話しの内容を導入し、混在した文章(第1段落)を与え、順番に並べ替えさせる。それぞれが並べた文章を読み上げさせ、食い違いがあれば、そこに焦点を当て、最も良いものを決める。さらに、次の段落の文章に含まれるいくつかの単語や句などを提示し、その段落の内容を予測させる。そして、最後の内容を作成させ、文章の適した終わり方(終末)を考えさせることなどもできる。

<コメント>
今回発表した箇所は具体的な教授例が多く見られ、研究会でもより深いディスカッションになった。どれも興味深い教授例ばかりであるが、すべてうまくいくとは限らないということが研究会での議論の的となったのではないか。question masterを例に挙げれば、生徒は簡単な上辺の質問しか作ってこない可能性もあるといった。この章で読んだ教授例をどう応用するかを考えていくことが重要だと思った。

ページトップに戻る

2009/08/20c

Chapter 3 (pp. 53-61)


3.8.1 Corrupted text(3.7)活動例:Gap-filling

これはテキストが終了した直後または少し間をあけて行うのがよい。少し間をあける場合は、生徒に関連したテキストを読んでくるように指示することが必要。
例えば、テキストから10文を選び、黒板に書く。その後生徒にテキストを裏返させ、黒板の10文を読む。空いている部分は教師が「ピー」などと言って間に何か入ることを伝える。生徒はそこに入る文や単語を書く。パートナーと答えを確認後、元のテキストを確認して読む。
 

3.8.2 Quizzes
 様々なクイズを用いて学習者の記憶を確認する。テキストを基にしてクイズを作成し、それを学習者に受けさせる。または学習者同士で作成しあい、それを用いてもよい。

3.8.3 Group dictation
 例としてDavis and Rinvolucri (1988)があり、Running dictationと呼ばれている。
①大きく見やすい、かつ十分な余白がある紙にテキストを打ち込み、それを5~6枚用意する。それを教室の壁にできるだけ分散させて貼る。または
②クラスをグループに分ける。グループに白紙を渡す。
③グループのメンバーは1人ずつ順番に貼ってあるテキストをできる限り覚え、グループに戻ってからその文を言う。ほかのメンバーはそれを聞き取り、渡された紙に書く。それを繰り返す。
④すべての書き取りが終了したグループから教師のもとへ持っていき答え合わせを行う。教師は各グループ毎にかかった時間を計っておく。答え合わせの際、間違い一つにつき+30秒加算されていく。

VariationⅠ
 2つのパラグラフ程度の長さのものがよい。エンパイアステートビルの記事くらいであれば問題ない。
VariationⅡ
 ②で白紙を渡す代わりにテキストが虫食い状態のものを渡す。簡単になりすぎないように多めに空欄を作る。こうすることで全部のテキストを読む前に、学習者の記憶を頼りに空欄を埋めることができる。

3.8.4 Communal memory 
Dictogloss…ディクトグロス、学習者が文を聞き取りながら内容をメモし、その後ペアやグループなどでもとの文を再現する指導法

まず個別に、テキストに関して覚えている限りのことを書かせる。その際ノートやテキストは見てはならない。その後、ペアを作らせ、情報を共有する。次に4人組、次にクラス全体で活動する。活動後、学習者の答えとテキストの内容の差(Gap)を明らかにしてそれを基にして質問をする。最後に教師がテキストを読み、学習者は自分の書いたものと照らし合わせる。

こういった再構築の活動を通じて、学習者のグループ活動の中での話題は、事実や出てくる単語に関するものから語彙と文法のパターンへと変化していき、お互い助け合っていた。

3.8.5 Summaries
 学習者はペアワークでテキストを読み返し、中から10単語を選び、それらと記憶を頼りに要約を作る。(本文には44語で構成された文章が例として載っている。)選ぶ語数の制限を設けることで学習者は文法や語彙を上手く活用しようとする。

3.8.6 Personalizing tasks
 テキスト中の語彙や文法事項は、タスクと学習者の生活を関連させることで再利用できる(エンパイアステートビルの話の後、高さが苦手な話や高層ビルでのエピソードを披露など)。これらは一連のタスクが終了した後や宿題として出すのが良い。

3.9 Spoken text
3.9.1 The nature of spoken text
 話し言葉…社会的な目的のために使用。友人や家族とのコミュニケーションなど。
 書き言葉…情報の伝達。
また、話し言葉には普通2~3人もしくはそれ以上の参加者がいる。一方書き言葉は、一対一である。
しかし、ネットでのチャットや大学の講義など、書き言葉でも話し言葉を書くものや、コミュニケーションなしの話し言葉などがあるので、教材を選ぶ際は気をつけなければならない。

3.9.2 Source of spoken text
 教科書付属のCDやラジオなど様々

3.10 Review
 学習者にテキストを用いて学習する理由を与えることが大事。
 Task-basedの骨組みをつくることは3つの利点がある。
・導入の段階で学習者にテキスト内で出てくる単語に触れさせることができる。
・学習者がテキストの内容と現実世界を照らし合わせるようになる。
・学習意欲が上がる。

 このチャプターでのキーワードはPredictionである。学習者のレベルに合った予測をさせることが必要であり、ヒントは多すぎず少なすぎず。
学習者に、テキストの意味に焦点を当てさせるための問題点の一つは、学習者はテキスト中の語法を気に掛けないことである。学習者はキーワードには注意を払うが、統語に関する事やフレーズには注意を払わない。タスクのサイクルの中で、最終的には学習者はテキスト内で登場する単語やフレーズにできる限り触れている状態でなければならないことを念頭におく。一度意味に焦点を当てたアプローチができれば、学習者はその言語の文法事項や語彙のリコールがしやすくなる。

<コメント>
 具体的な活動例が多く、かつ連続性のあるものが多く、非常に参考になる。今回の私の担当は、一度終了したテキストの再利用であった。これをもTask sequenceの一環として取り入れることで、楽しくより良い定着が図れると思う。

ページトップに戻る

2009/09/07

Chapter 4 (pp. 63-72)


ページトップに戻る

2009/09/07

Chapter 4 (pp. 72-84)


4.4 Tasks involving ordering and sorting
○順番づけ(ordering)や種類分け(sorting)は、listingよりも、思考や認知的努力を要する。いくつかは、純粋に事実に基づく基準や、日にちや値段などによって順番づけがなされたり、個人の選択や好みに基づいて意思決定(decision-making)をする。

4.4.1 Sequencing
○これは、物語を完成させるために、ごちゃまぜになった絵(jumbled pictures)を並べ替えたり、起こった出来事を並べ替えたりする、実際の順序付けである。短いビデオクリップを音声なしで見せて、そのあと学習者は思い出しながら並び変えたりすることも可能である。
ここの生徒は異なった箇所を覚えているだろうということから、互いに話し合い・比較も可能である。

4.4.2 Rank ordering
○等級づけ(rank ordering)は生徒に学校で好きな教科を1番から並べ替えさせたり、ペットの猫を問題の度合いを並べ替えさせることができる。仕事をトピックにすれば、仕事の満足度や労働条件などを基準にしたランク付けを含めることができる。家族についての例を挙げれば、両親から受けたことなどについてインタビューを受けた4人の人の話を聞き、どの両親が優しいか厳しいかを決定し、ペアで話し合い、理由を話し合う。そして、最後にいくつかの形式を取り上げることで形式への焦点化を図る。

○個々で始めることによって個人でタスクに従事し、考えをまとめどう表現するかを考えることができ、メンタル的な要求(mental demands)を軽減し、タスク自体の負担を減らす。

4.4.3 Classifying
○学習者は分類(classifying)や項目を分配するためにカテゴリー分けを行う。’Junk we carry round with us’のタスクの例ではカバンの中から出すものを分類する。形(shape)、香り(perfume)、お金が必要なもの(objects to do with money)といったような種類について考えられる。

○それぞれの学習者は分類の仕方が異なってくる。豊かなディスカッションを刺激するさまざまな応答を生み出し、学習者の創造性(inventive)を引き出す。

4.4.4 Games based on classified sets
○ ‘Odd word out’などが代表的なゲームである。リストを見て、共通している所、異なっている所を探す。
 例)(p.77) a apples, bananas, biscuits, oranges
b fish, chips (=French fries), hamburgers, cheese
c car, taxi, bus, bicycle
----- いったん学習者は方法を学んだら、同じように宿題として3つか4つの組み合わせを考えてくる。例えば、a)はすべて甘いが、ビスケットは果物ではない。b)は料理(savoury)だが、魚は健康的で、脂肪分(fat content)が少ない。c) すべて交通手段だが、自転車は誰にも親しみやすく、経済的である。他にも分類方法はあり、b)はチーズ以外すべて料理が行われる。こういった違いが教室で実際の言語使用を生み出す。

4.5 Visual support: charts, tables, mind-maps, etc.
○枠組み(framework)のなかで情報を見ることは学習者がより構造化された状況(a more structured way)で情報を処理し、組織化することを助ける。これはタスクに対する認知的要求を減らし、学習者に安心させてタスクに取り組ませることができる。

4.5.1 Charts and tables
○ ‘Earthquake safety’のタスクであれば、自然災害(‘floods’, ‘wildfirem’ , ‘Richter scale’, ‘Shelter’など)のための語彙をブレインストーミングした後、小グループで地震のための準備や安全について話し合い、p.79にあるような表に記入していく。そしてそれぞれのグループが地震に関する異なったパンフレットを読み、関係のある情報をさらに書き込んでいく。他のグループとその表を比較し、考えを追加していく。このようなことをリスニングタスクでも行うことをできるということが考えられる。

4.5.2 Mind maps
○Mind mapは、表と同様にいくつかの利点があるが、それらはよりopenで、柔軟で、容易に追加できる。表のように、それらは予備ディスカッションでボードに書くことで始まり、学習者によって組み立てられ、記入される。学習者にmind mapの仕方を教えることはそれ自体、教師先導のよいタスクとなる。

4.5.3 Time lines and storylines
○時間の記録(time lines)やストーリー展開(story lines)を作成する過程は他の人に分かるように含むこと、それをどう描写し、言語化するかを決めることを含む。それぞれのグループは、ストーリー展開を産出し、表示する。さらに、他のグループに口頭で発表する。

○David Coulsonの例では、写真・絵を使ってストーリー展開を作ることが示されている。文章を復元させる代わりに絵を描かせることをさせるディストグロス(dictogloss)の例である。教師の物語を聞き、最初はペアで作業し、教師の物語をもう一度聞き、さらに情報を追加する。それによって学習者にカギとなる用語を聞きとらせ、彼らが描写する主な出来事の概要を理解しようとする。

○ディクトグロスの活動は学習者が意味を表現するために学習者の注意を言語形式に密接に焦点化し、写真・絵を用いたディクトグロス活動は理解するための物語を聞くことを促進し、理解できなかったものは心配する必要はないとされている。

4.6 Integrating reading and writing
○タスクはよいインタラクションを含み、口頭スキルを向上させるためにあるとよく言われる。ただ、ライティングでブレインストーミング、考えをライティングを通して示すということも求められる。学習者が手書きで書き、配布したり、ボードに貼るなどして他の人に読ませ、互いにe-mailを通して書かせたりすることができる。文章でタスクが始まることはないにしても、トピックにおいてwritten or spoken textが一連のタスクを通した展開の導入された部分になる。パンフレットの例であれば、パンフレットを読み、表に書いた情報と比較できる。

4.7 Review
○この章では、トピックの選択の過程を調査し、タスクの2種類の方法と10のサブカテゴリーを概観した。さらに、言語の複雑さのようなタスクのさまざまな側面や、可能な言語使用の観点からタスクの評価、視覚的、表象的な援助を与えるさまざまな教授スキルを見てきた。

4.8 Follow-up activities
○汚染や自然災害のような一般的なトピックは内容を狭め、より明確にすることができる。汚染のトピックであれば、汚染に関する特有の形式に焦点化し、地元の地域の汚染の1つか2つに狭めることができる。地元の人々の汚染の異なった種類の影響を調査するタスクや、汚染問題に関する長期的な解決策を提案するタスクなどを設計することができることなどがある。P.65の例を挙げれば、どれかトピックを選び、listingやsortingのタスクが可能であり。考えを集めるために視覚的な枠組み(visual framework)を用い、ライティング活動に発展させ、仲間と意見を交流する。

<コメント>
 授業で実際使えそうな活動例がたくさん続いている。ただ、学習者の熟達度や、リーディングスキルとライティングスキルの統合の困難さが考えられることが研究会での議論となった。前章でも述べたように、そのまま授業に持ち込むのではなく、学習者の熟達度やニーズに合わせてどう変化させていくかが重要となるだろう。

ページトップに戻る

2009/09/17

Chapter 5 (pp. 85-99)


ページトップに戻る

2009/09/17

Chapter 5 (pp. 100-111)


PDF参照

ページトップに戻る

2009/10/26a

Chapter 6 (pp. 113-124)


Chapter 6 (pp. 113-124)
6.1 Some basic principles
○第1章で述べたように、タスクは言語学習の中心にあるべきだということを議論した。言語に焦点を当てた活動は意味の焦点と切り離すべきではない。特定の形式を教える前にタスクを行うことが大切であり、そうすることでより広い言語使用をし、以前に学習した言語項目を活用する。

○task cycleの異なる段階では学習者にとって言語に焦点を当てる(focus on language)ための異なる機会がある。言語の焦点化では学習者は意味の理解のために止まって考えるとき、自然に起こる。どのような言葉を使うことが適切かを探し、分からない単語を辞書で調べる。また文法的に正しいかなどを調べるために立ち止まったりする。task cycleは第一に意味と関係があるが、教師がタスクの順序を準備する時に言語に焦点かを当てる。その際、語彙、句などに特に焦点が当てられる。

○タスクの最後には形式に焦点を当てる(focus on form)。形式の焦点化は教師が勉強に対する特定の形式を個別に取り上げ、コミュニケーション活動の外でそれらを使用し始めるときに起こる。

6.2 A sample task: 'How strict were you parents?'
○第4章では、成人の学習者がどれほど両親が厳しかったかを話し合い、誰の両親が一番厳しかったかを決定するTim Marchandのタスクを見た。Timは通常典型的なpriming stageでタスクを開始し、トピックを導入し、彼自身のいくつかのコメントをし、学習者からのコメントを引き出す。つまり、まずは語彙を導入し、リスニングを通して、トピックが導入され、両親に関する質問へと移る。また、Timの友達に彼らの両親について話をさせ、録音し、聞かせることもできる。

6.3 Priming
○priming段階の目的はトピックを学習者に準備し、語彙の使用を可能にする。語彙ではタスクで使用する必要のある語彙を導入する。教師はトピックに関連する語彙や句をブレインストーム(brainstorm)を導入を補強し、ボードに中心となる項目をいくつか書き出す。この段階では、形式の正確さに関しては、強調しない。

○授業の終わりに次の授業のタスクを導入し、宿題を与えることも可能である。生徒は宿題で両親のことについて考え、有益な言語の使用が可能となる。

○どのようにprimingを組み立てるかについて教師の決定が関わる2つの要因がある。一つはタスクやそれに関わる言語を処理することの複雑さである。次に学習者の能力に関することである。熟達度の低い学習者はより質問から書かれたインプットや宿題による準備の機会を必要とするだろう。

6.4 Language focus
○言語への焦点かは意味のある活動の文脈で、言語について考えることを含む。学習者は単に教師が特定の形式を取り挙げるのではなく、必要性が増してくるにつれて言語について考える。教師の導入の間、学習者は有益な言語使用に努める。その後活動が続くのであれば、言語的な問題を明らかにするためにグループディスカッションなどによって考え合う機会を作ることができ、教師は意味重視のタスクの準備として言語について深く考える機会を与えることができる。

○言語に焦点を当てたさらなる理解として、D. Willis and J. Willis (1987) and J. Willis (1996)によって作られた枠組みが中心的なものである。この枠組みはtask cycleでtask→planning→reportと言われる。まず、子供のしつけや両親の厳しさなどのディスカッションでタスクを開始することでcycleが始まり、その後、ディスカッションで話し合ったことを発表するために準備を行う。ここでは公で発表しないといけないということからより言語に焦点化がなされる。

○こういった活動はライティングによって補足することができる。その時、学習者はディスカッションを要約するためにメモをとらせることができる。グループとしてのレポートを書き、どの両親が一番厳しいかを記述させることもできる。発表でのスピーキング活動はreal-timeの活動であるが、ライティングをすることで準備する時間を与えることができる。よってライティングの活動を通すことでより形式に焦点を向ける可能性を増やす。

○言語の焦点化の必要なレベルやそれが与えられる時間は要因の多さにもよる。低いレベルのクラスほどより必要なレベルが高くなるだろう。また、教師が新しい言語項目についての負担が特に重いと感じる場合もより高くなるだろう。

6.5 Focus on form
6.5.1 Indentifying items for a focus on form
○どの形式に焦点を当てるかという選択はタスクの本質やそれに関わる文章にかなり依存する。教師はそういった項目を認識し、文脈から引き出す。Timの例では、allowed me to, didn't make meなどの表現を提示し、生徒は、親が厳しいことを表現するときに使う単語、やさしいと思われるときに使う単語を識別した。また、単語を与えることで開始し、youという単語を含むフレーズ('did they allow you to' ; 'did you always have to' ; 'did they let you'など)を見つけさせ、その後meという単語を含むフレーズ('never made me do any household chores'; 'she let me stay out late'; 'she would sit me down'など)を見つけさせ、教師は 'have', 'let', 'allow', 'make', ' force'などを含む動詞句に焦点を当てることができる。

<コメント>
 第一章から言われていることが、ここまでも繰り返され、重要なポイントをつかめることができている。今回の例を通し、リスニング、スピーキング、リーディング、ライティングの4技能の統語が図れるような活動が期待できる。

ページトップに戻る

2009/10/26b

Chapter 6 (pp. 123-135)

ページトップに戻る

2009/11/12a

Chapter 7 (pp. 135-142)


7.1 Classroom language and the outside world
■談話領域にはそれぞれ特有の談話構造がある。Sinclair and Coulthard (1975)による談話分析によれば,教室場面の談話は教師中心になる傾向あり。
例)教師:What’s the past tense of ‘bring’? (問いかけ:教師)
生徒:’brought’. (回答:生徒)
教師:’brought’. Good. (回答内容に対する評価:教師)

■教師中心の談話における問題点
①生徒が言語を使用する機会が少ない ②限定的な回答に制限されている。 ③長く話す機会・談話をコントロールする機会が無い

■教師によって取られてきた様々な埋め合わせ策
ロールプレイ,ダイアログ作成など
本書でのタスク→学習者自信の本物の拡張的な談話を生み出す機会を与えるもの
例)麻薬中毒の結末に関する議論,幼少期の逸話と両親の寛容性についての情報交換など
バランスの取れたtask basedプログラムは,談話の型の適切な範囲の経験を学習者に保証

■task based classroomの利点
①教室での制限から逃れることが出来る ②拡張された様々な談話領域に参加出来る ③非形式的な自発的なインタラクションの機会を与える ④読む目的を与える(信念や予測を確認)
⑤拡張されたモノローグに従事する必要性を要する(主張を詳述する・物語を精緻化するなど)
⑥タスクを行うことで,教室外での自発的な言語使用上の多くのことをしている自分に気づく
例)同意・不同意,割り込み,繰り返しや明示の要求,主題の変更,重み付け,メッセージの重要部分の強調,意味の推測,推論など

■実際の世界との比較
教室領域(実際の世界に比べれば限定的)⇔実際の世界:社会的な関係や仕事の役割などは無限(英語による特別な客へのもてなし,友人の3歳の子供に話しかける,ホテルやレストランでサービススタッフ(または客)としての従事)

■授業において全ての場面を作り出すのは困難だが,学習者をこれら様々な場面へ対応できるようするための責任がある。本章ではその方策と,その失敗例に対する対策について述べる。

7.2 Real world tasks
■教室でのタスクはreal worldを反映
①意味レベル:real worldにおいて有効な学習者の生み出す意味
②談話レベル:学習者が談話行動を実際の世界のものだと分かる
(前述の同意・不同意,割り込みなど)
③行動レベル:教室外での言語使用を直接反映しているコミュニケーション活動に従事する
 (物語を話すこと,議論への参加,手順の説明など)

■本セクションでは,これらの3レベルにおいてreal worldに関係するタスクを見ていく

7.2.1 特定の目的のための英語English for Specific Purposes
■EAP (English for Academic Purposes)やEOP(English for Occupational Purposes)などの教育環境→real worldでの言語使用方法を反映させることが可能(仕事や学習に関連したディスカッションやリーディングなど)

■Jigsaw task:学習者は目標達成(ディスカッション)のため文を読み必要な部分だけをメモした→人工的な環境の中で真の学習過程を反映

■Prediction task:Academicな目的のリーディングにおいて大きな位置を占める
例)科学研究記事:Introductionを読む→必要情報かどうかの見極め(専門への関連の有無)
①3人グループで研究記事のサマリーを読む
②その論文から重要な質問事項を3つ探す
③それらの答えについて考える
④グループディスカッション
専門領域における話し手、聞き手,質問者としての役割,意見の明確化,意見への挑戦,
異なった視点の確立,次の段階への準備
⑤教師主導による全体での議論
⑥残った疑問点に答える目的での読み
利点①実際の言語使用 ②即時の問題―解決 ③real world状況の言語使用を反映(情報交換)

■社会的側面での言語使用が意味と同等に重要になる場合
旅行業界での仕事の場面:ホテルや代理店での客の取り扱い方は正確な情報伝達と同様に重要
→時刻表や価格表などを使った店員と客とのやり取りのロールプレイ
例)①各グループが自らの役割について書かれた指示を読み,役作りをする。
②各グループから1人ずつ出て,ロールプレイを行う
このタスクの利点:実生活を反映している点。
このタスクの弊害:不必要な負荷をかけてしまう点。問題解決だけでなく社会的役割を考えな
ければならない。
解決策:問題解決の要素からロールプレイの要素を分離する
 例)①グループA:グループBに尋ねる情報をいくつか整理して与える
グループB:状況設定をし,顧客からの質問と答えを想像する
②AとBでロールプレイを行う
③実際の旅行業者と客のやり取りを聞き,いくつかの観点で観察(その様子,謝罪表現,
お勧めの提示方法など)
人工的な状況でのロールプレイは義務的。どのような状況設定でも困難な点は残る→問題解決に焦点を絞りロールプレイを切り離すことで困難さを分離
繰り返すことで実施がより容易に→コントロールされた準備なしにロールプレイが実施可能に

7.2.2 Everyday English
■日常の言語使用→storytellingを含むものが多い(逸話、新聞や読み物からの二次的な物語)
 学習者自身の経験や予測行動に基づいている可能性

■L1でのstoryやopinionの説明
何度も同じ話をする→同じパターンの繰り返し(住んでいる場所の説明,渋滞の愚痴,お店の間の価格比較,映画や本の内容の説明など)
L2においても要約して説明するroutineは重要(real worldでの言語使用に繋がる)
同様の場面のリスニングタスク
 例)’the main thing is …’, ‘this means that…’,’yeah, but…’など,繰り返される表現の談話上の機能確認,母語との比較などの実施

■ディスカッションに関する振り返りタスク(L1で同様の議論をしたことがあったか,など)

7.2.3 電子コミュニケーション:writingとreading
■電子メール,チャット(Native speakerやNon-nativeとの英語でのやり取り)
Non-nativeによるInternet使用の高まり→Googleによる翻訳などの言語ツールの出現

■電子メールについて
電子メールの利点:その速さ,ファイルや写真の添付,保存、取出しが容易
 電子メールそのものを学習対象に出来る例
・snail mailと電子メールとの違いについて(文章を読んでどちらの手紙の文なのか推測)
 ・電子メールにおけるL1での表現との比較
 ・複数の電子メールのやり取りから一部を取り出し,どこに入るのかを考える
・電子メールのコミュニケーション形態に慣れることが目的
  (展開が速く,省略があり,非形式的)

■インターネットについて
ディスカッションの議題について準備するのに有用
 例)ロンドンで最も高いホテルは?そのコストは?シンガポールから香港へのフライトはどのくらいかかるか?など→宿題としてインターネットで調べ授業に持ち寄る
 教科書の埋め合わせに使える
自宅でのインターネット環境には個人差有
→図書館、学校などで使える環境を設定する,紙媒体での別課題設定等の配慮

7.3 Artificial Task
■Real worldに直接的は繋がらないタスクでも,意味と談話レベルでreal worldと関連
「トレイの上の配置タスク」(P.28 Objects on a trayを参照)
意味レベル:このタスクは非現実的だが,real worldでは他者との関係を表すときに有用。
例)「ナイフとフォークの隣の引き出しにあるよ」など
談話行動レベル:情報の観察と意味の確認はreal worldで起きていることと同じ
  例)指示や説明を与えたり受けたりする場合
「Twenty Questions」(より複雑な談話スキルの練習)
 必要な情報を得るための複数の質問―real worldにおいても必要
例)どんな商品やサービスが受けられるか/提供できるか

ページトップに戻る

2009/11/12b

Chapter 7 (pp. 142-152)

7.4 Spontaneous spoken discourse
○言語教室と実際の現実社会とを結びつけるならば、言語教室の外で役に立つような言語材料を集めることが不可欠である。ただ、自発的に話されたインタラクティブな発話を言語教室に持ち込むのは難しい。こういった発話は共有された環境、共有された目的、共有された知識を持って会話が行われているため、省略 (omission) や短縮 (abbreviation) といったことにつながっている。外で聞いているものにとって、自発的に話された会話の内容に追いつくのは難しいことは驚くまでもない。よって、言語教材として使用される対話はスクリプト化され、より明示的になり、実際に話された発話の特徴を組み込めない部分もある。

○こういった自発的に話された言語材料を教室に持ち込む一つの方法は、学習者と同じタスクを行った言語経験者の発話を録音して使用することである。例としては、二人のネイティブスピーカーがある場所の写真を見て、それぞれの写真はどの国で撮られたものなのかを推測している会話を聞く。その際、生徒はすでに同じ写真を見てタスクに取り組んだ上で聞く。

○教材を導入したら、その発話の中の重要な言語的特徴を強調して教えることができる。互いが同意したときに使う表現、接続詞 (conjunction)、つなぎ言葉 (filler) などが挙げられる。生徒は批判的に発話を聞き、あいまいな表現などに対しても注意を向けさせることができる。重要なことは、生徒に自発的に話された発話に十分さらすことである。

7.5 The social dimension
○言語はさまざまな社会状況で使われ、我々が使う言語は社会的コンテクストなどの関係によって形作られる。ただ、教室ではそうとは言えず、生徒はフォーマルやインフォーマルといった区別をするのも難しい。こういった表現を授業で取り扱う際、教師は言語使用のsocial dimensionに気づかせる必要がある。それをタスクで行うことができるのである。

○それは、例えば、いったん目標言語が使用可能になれば、その相互交流でのsocial dimension(謝罪などの表現)に注目させることが可能である。英語は表現の長い方が一般的に礼儀正しい表現であるといったことも導入できる( ‘Please ...’→ ‘Could you ... please ...’→‘Would you mind ... –ing ... please”)。

7.6 Teacher roles
○タスクに基づいた活動では、教師は従来のように言語的知識やインプットを与えるのはもちろんだが、実際の言語使用を促進し、教室と現実世界の明確なつながりも示してあげる必要がある。教師は知識を提供する者というよりむしろ、会話の管理をする者 (the manager of discourse)である。

○例えば、教師先導の授業から個人個人が問題を解くといった活動に移動させていくといったことも可能である。その後、その解いた問題に関してのディスカッションなどを行わせることができる。さらに、意見を書かせたり、クラスで考えを共有する機会を設ける。また、教師はグループの構成を変えて、同じタスクを繰り返させることもできる。トピックについて話し合い、グループを変更し、新しいメンバーでディスカッションを継続させることができる。

○動機付けに関することでも、教師はできる限り生徒を励ますことをする必要があり、生徒を元気づけるようなフィードバックを与えるべきである。グループでの活動を報告しているときに教師は生徒が使ったいくつかの有益なフレーズなどをピックアップし、誉めてあげたりするべきである。

○また教師は、意味について生徒を手助けすべきである。生徒が行ったことを繰り返したり、言い換えたりして強調する。このときは、生徒の誤りを直接訂正すべきではないが、言語項目を教える段階に至り、生徒たちがどう表現することが適切かを懸命に考えている時、質問をすることなどによって手助けするための準備をするべきである。そして、タスクの順序の最後であるfocus on formに持って行くことになる。

<コメント>
 focus on form, focus on formsの違いについて今一度確認しておく必要があると感じた。focus on formはmeaning-focusedがベースになっていること、focus on formsは文脈と切り離して焦点化することを留意しておきたい。また、いつもがいつもタスクをEFLの環境で行うことが難しいということが話題になった。日本でも根付きにくく、授業内容やタスクなどによってどうteaching planを組み立てるか考えるべきところであろう。

ページトップに戻る

2009/11/26

Chapter 8 (pp. 153-175)


8.1. Introduction
・本章では、タスクのデザインを見直し改良する際の7つの要素を紹介し、より具体的な計画を立てることを狙いとする。
・“Work and career moves”というトピックを用いた2種類のタスクを比較し、改良のプロセスを見ていく。

・この活動が上手くいかない理由:
① 学習者の中には自営やフリーランスとして働いた経験がない者もいるかもしれないため、意見が出ない。
② “opinion”ではなく“advantage and disadvantage”とした方が取り組みやすい。
③ 自営とフリーランスに関する知識を与えるpre-taskを行った方がよい。
④ “or”を用いてるので指示が曖昧になってしまう。

Version2(V2):Natural English Intermediateより
・これは“For and against”という三段階に分かれているリスニングタスクに含まれている。
・V2で、タスク6は4,5と二つのpre-taskがある。4,5両者は具体的な状況に触れている。加えて写真もヒントになる。また、テープ使用による更なる情報があるため、それらの仕事の経験がなくても自分をその状況に当てはめて考えることができる(Personalized)。
・音声によって言語に触れる機会も増え、また、相互作用をも促進する。

しかし、より具体的に対象を絞り、適切なものに調整は可能であるので、以下で7つの要因を見ていく。
・タスクの製作過程でこれらの要因を適合させ、学習内容を効果的なものにしていく。
・究極の目標は、学習者を魅了し、できる限りの有意義な言語使用の促進ができるタスクの作成。
8.2. Outcome and interim goals: the need for precision
 ・V1 → フリーランスまたは自営業についての意見を言うだけで、結果が曖昧、相互作用が少ない。
 ・V2 → 自分をその状況において考える。曖昧さが少ない。しかし、学習者間の意欲の問題や、パートナーが理解したことを聞く以外に、学習者がリスニングの理解度を確認する方法がない。
 このような状況になったら…中間目標を立てるとよい。
  例)ステップ4にて…Catherine状況での2つの利点、2つの不利点を考えさせる。
ステップ5にて…Catherineが触れた3つの利点、3つの不利点について聞きとらせる。2回目はスクリプトを見ながら、最後に自分の聞きとったこととパートナーの書いたものと同じか比較する。他にはヒントとなる重要語を教える、机間指導など。
ステップ6にて…正確な指示を与える。一般的な意見と、自分の進路を含めた個人的な意見の区別。タスクが何を求めているのかを示すことが必要。
・タスクで何をさせたいのか、このタスクを行う理由をはっきり示すことでより効果的な結果を生む。
・正確な指示、中間目標、タスクの達成のための明確なポイントは学習者の意欲を向上させる。

8.3. Starting points for tasks: input and timing at priming stage
・‘Career moves’taskでは1)キャサリンの写真(visual presentation)と学習者の経験(learner experience)、2)Recorded text、の順で始まる。
・第3章の‘Hello, I’ve jumped~’タスクでは高層ビルの絵の提示と教師主導のブレインストーミング(teacher-led class brainstorm)からスタート。次の段階では新聞記事の見出しを提示し、学習者が自分自身で考える機会を与えた。
・Volcanoesという単語を与えれば、学習者はインターネットで情報収集を行うであろう(web research)。また、CatsやStrict parentsといった身近なトピックは教師の経験談(teacher’s story)で導入が行われ、学習者の経験(learners’ own experience)をもとにした議論へ繋げることができる。
・Primingの段階でのインプット…ウェブサイトや、参考文献の資料等、クラス外で読むことができるものや、教師の導入、CDなどを聞く、ビデオを見るなど様々な形がある。
・Primingのタイミング…タスクごとに存在するが、Primingは通常は前の授業中にあり、学習者は課外で準備を行うことができる。

8.4. Pre-task preparation and planning
・近年の多くの研究によって、タスク前に学習者に時間を与え、何を言うか考えさせることの有益性が示されている(文が長くなる、複雑になる、など)。
・準備のタイプ(free / guided planning)…前者は、学習者中心であり、与えられた時間内にノートを書く、単語を調べるなど自由に活動することができる。学習者の動意欲が高ければ効果的である。
後者は、教師主導で有用な情報を与えていく。学習意欲の低い生徒に対して有効であり、そのような生徒の後押しの手段となる。
・学習者が何を言うか書かせる場合、その書く過程から様々な効果(正しい語や、文法チェック、コロケーションのチェックなど)を得ることができる。また、十分に準備させることで、恥ずかしがる生徒にも多く話させることが可能であったという報告もある。しかし、リスクもあり、written Englishを話すこと、文法の意味等をわかって話すのではなく、暗記や記憶からなんとなく使用してしまう。それを防ぐために、書く際の字数制限を行う。

8.5. Control of ‘agenda’ and task structure
・Agenda(指針)…学習者が倣う文章構成、単語の制限、その他のサポートは具体的かなど。
・初級者や意欲の低い学習者には有効だが、一方、複雑なタスクや高いレベルの学習者もの場合は、それぞれの方針があるので、それらを考慮する必要がある。
・フォーマット…図や表などの具体的なフォーマットを与えることで、書くことに専念させ、授業へ集中させることができる。(例:p162の表)
・各種制限…タスクを行う際に時間制限を設けることで学習者の意欲・成果を向上させる。また、~ができたら手を挙げさせるといった活動(○○をよいと思った3つの理由、これらの5つの違いを見つけて書きなさいなど)も、具体的に成果がわかるのでよい。要約やレポートの作成での語数制限は学習者に、言いたいことを語数の中でしっかり言うことができるような適切な表現を考えさせることができる。
・Mid-task interventions…Skehan(1998)により提案された。あえてタスクの途中で新たな情報を加えることで難易度を上げる。例)「突然の来客に、あなたは何を作ってもてなすか」というタスクの途中に、「客はベジタリアンです」と加える。
・参考書の使用の程度…スピーキングタスクで、辞書やノートの使用を禁止(現実では使用なしで会話するため)。リーディングでは、調べるのは5個までなどと制限することで、学習者はより深く読み込もうとする。
・学習者自身の指針…教師と生徒で、タスクにどのように取り組むか話し合うことで、学習者の中に取り組む際の方策や手順を確立させることができる。

コメント(守屋):タスク改善のポイントは多く、それらに照らし合わせることでより良いものへ作り上げることができる。中でも、タスクで何をやらせたいか、なぜその順番なのか、到達を意識した作りだと思う。

8.6 インタラクションのパターンと参加者の役割
■‘Career Moves’(pp.155)のタスクでの学習者
1)個人での作業:家で働くことの利点・不利な点(賛成・反対)を2つずつ挙げる
2)Catherineの例をリスニング→聞き取った内容と自分の挙げた意見と比較(ペアで)
理由:事前に考える機会→聞き取る内容に関することを得る→ペアで話す内容に関連

■ペア活動とグループ活動の比較
人数が多い場合の利点
①情報共有によりリスニングの理解度が上がる ②様々な意見に触れることで語彙・言語経験を豊かにする ③(話す機会が減るが,)turn-taking,割り込みなどの練習になる ④意見の不一致が談話を豊かにする ⑤教師が監視するグループ数の減少
人数が少ない場合の利点
①話す機会が増える ②積極的に参加しない,他者へ依存する生徒の減少

■参加者の役割
役割分担は平等な参加を促す。教師が割り振っても良いが参加者に自主的に決めさせるとグループ内のインタラクションを促進。役割の例として次のようなものがある。
①writer/ secretary(記録者)②reporter/ spokesperson(発表係)③language consultant(辞書係)④leader/ chairperson(全員が発言するよう配慮)⑤observer(発言の回数・量などの記録)

■インタラクションの流れ:単方向・双方向とturnの長さ
考えの報告:単方向でありturnは長い。考えを説明するにつれて双方向になる。
考えの比較・統合:双方向でturnは短い。

■学習者の得る言語使用の量と多様性
1人が発言の機会を占めてしまう場合→次回はsecretaryの役に回すなどにより発言量や多様性を保つことが可能に

8.7 言語産出におけるpressure:正確さに向けた’pushing’ output
■TBTに対する批判
FluencyのためAccuracyを犠牲にしている。正確な言語産出に対する学習者のpressureだけでは不十分。

■私的な言語使用と特別な場面での言語使用の違い
L1での言語形態はinformalなもの(Ch.7)からformalなものまで多様。
Formalな場面(結婚式でのスピーチ,資金会社との話など)では適切な言語使用(流暢かつ詳細)が必要。
Private use: spontaneousであり,間違いは許容され,不明確であっても理解は容易。
Prestige use: preparedであり文法的や語彙的な正確さが必要。→学習者を正確で計画的なな言語使用へ’push’する。

■自信の無い生徒(間違いを恐れ大きな声を出さないなど)
→修正するよりも,pressureを下げ自発的な発言を援助することが必要。この例のタスクのようにペア、小グループなどが適している。

■自信のある生徒(流暢だが間違いが多いなど)
→化石化の恐れ,難しい表現の回避などがある
間違いの修正をし,フォームのレパートリーを増やし複雑な表現に挑戦する方向へpush
(Skehan, 1998)

■Pressureを増やしaccuracyを意識させる方法
・タスク後クラス全体でのフォーマルなプレゼンテーション
・公に書いたものや記録を展示(詳しくはポストタスク活動を参照)
・タスクを録音し,全体で聞いてみる

■学習者のやり取りの録音
流暢な学習者によるやりとりの録音を書き起こし,その中の知らない表現,良いフレーズ,間違いなどを書く(宿題)→同じタスクをもう一度やってみる

■学習者の書き起こしと言い換え
①自分のタスクのやりとりを録音②その中の1分間を書き起こして修正・改善③同じ箇所を再度録音→accuracyに焦点が当たり,次回の改善へ繋がる

■修正(Negative)フィードバック
教師によるFB:Priming stage,発表前のplanning段階,録音前などにaccuracyを’push’するのに有効(これらは学習者が修正や改変が欲しいとき)。学習者の共同学習によるwritingの相互修正も有効(学習動機を高める)。

■Positiveフィードバック
長期的に見ると新語、パターン、複雑な節への経験を助長するため効果的。
例)生徒のタスク実行時にメモをし,有効だと思う表現や類似表現ををあとから紹介

■フィードバックの留意点
自信のある学習者には修正(Negative)フィードバックは有効だが,修正しすぎない
良い表現や語をほめる事はタスクへの取り組みを促進しrisk takingさせる
Accuracyだけでなくcomplexityに向けても’push’する

8.8 ポストタスク活動
8.8.1 文章の再利用のためのフォローアップタスク
記憶による要約,異なった角度からのrewritingやretelling文章の再構成,生徒によるクイズやパズル作成などがある。
目的:学習者に目標の言語を繰り返し触れさせること。毎回異なった言語処理により言語の特徴に気づき,その後のライティングやスピーキングでの使用を促す可能性がある。

8.8.2 レポート段階
■’Career moves’での例
①ペアで自分の考えを発表(private:自信のない学習者向き)
②各ペアが他のペアと相互発表→(dis)advantageを比較して2つに絞る
③planning stage:グループ単位でspokesmanの発表を援助
④spokesmanが結果を全体に報告(public: accuracyを意識)
報告のためのplanning stageは統語の正確さ,語彙の自然さを改善(Johnson, 2005)
自信の無い生徒が大きな集団での発表が出来るようにする方法:グループでの発表,準備段階での協力など

■より正式な言語使用へのpressure
目上の人,見知らぬ人(外部からのaudience等)に対するレポートを設定する。
レポートの前(または後)にライティングになる可能性もある→リーディング活動へ

■その他
生徒の報告は大雑把になりがち→planningの段階で詳しく書くよう要求(教師の役割)
レポートの後に形式に焦点を当てることは有効(意味から形式へ)
レポートが適さない場合:タスクをいくつか繰り返し行った後にレポートをする→言語に関する振り返りをする時間が出来る
タスクがうまく行かなかった場合:教師主導のまとめをして、他のものへ移行する

8.8.3 タスクの繰り返し
■同じタスクを異なったパートナーと繰り返し実施→豊かな語彙,正確さ,文法的複雑さ,speech rateの向上に繋がるという多くの事例(Bygate, 2001など)がある。また,繰り返しにより多様な言語に触れることが出来,risk-takingを促す。

■タスクの間に分析的な授業を行うことも良い。定期試験として繰り返すことで復習を促すこともできる。

■会話やstorytellingタスクの時間を回毎に短くしていくことで,challengingで面白いものになる

8.8.4 ポストタスクの言語作業
■language focus:表現したい意味の文脈における言語使用に焦点(プリタスク計画の段階,またはタスクとレポート段階の間)→学習者主体

■form focus:特定の形式に焦点→教師主体
事前に計画されたものでありシラバスの一部。知っていることを組織化し,言語やパターンの明示的知識を広げる

■学習者の言語使用に対する即興的な言語へ焦点を当てる方法
①教師による例の収集:生徒による有効な表現,コロケーション,繰り返された間違いに対する代替案など。
②タスク録音の分析:自分の録音の書き起こし(transcription)課題やモデルとの比較
→談話の構成方法の違いなど,より広い言語の特徴に気づかせることが出来る。実際に言ったことでなく書きたい文(より正しい形式への気づき)が生じることもある。

8.8.5 評価と振り返り
■生徒に出来るだけ詳しく無記名で書いてもらう 例)授業で楽しかったことを2つと好きではなかった点、または改善方法を一つ書いてください。

■インフォーマルな形や生徒への個別の聞き取りを実施するのも良い。

■生徒からのフィードバックが授業改善に大いに役立った例もある。これは生徒、教師双方に大きな利益をもたらす。

8.9 レビュー
本章ではタスクデザインの7つの要素(parameters)において選択,調整,埋め合わせ可能な変数について考えた。これらはタスク編成上有効なものである。

8.10 更なる探索:自分の教え方を調査
これら7つの要素は,授業改善に向けたアクションリサーチの指標としても有効である。変数を変えて同様のタスクを試行しその記録を比較・分析することで,新しいことを学ぶことができる。

<コメント>
 Further Readingに挙げられているWriting from Within. (Kelly & Gargagliano, 2004)を以前授業のテキストとして使用しました。トピックからタスクを編成し,明確なform focusが設定されています。このようなライティングの検定教科書が欲しいと感じています。サンプルがありますのでご覧いただき,ぜひご意見をお聞かせ下さい。

ページトップに戻る

ページトップに戻る

ご意見やコメントがあればこちらまでお寄せください。