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Field, J. (2009). Listening in the classroom. Cambridge University Press.

2010/1/21a

Chapter 1
. Listening then and now listeningの昔と今

1.1 Early Days
1970年にCambridge First Certificate (FCE) examでlisteningの要素に焦点を当てる。書かれた文章を読み上げる形式。1984年まで続く。

■特徴
3つの段階
①pre-listening:教師の語彙提示 
②listening:Extensive / Intensive
③post-listening:理解問題の解答確認,言語分析,listen & Repeat

2つのレベルのlistening
①Extensive listening:内容に親しむとともに,含まれる情報についての全体像を理解。
 概要について質問(Who are the people? / What are they talking about?など)。
②Intensive listening:より焦点化した細部についての質問。

複数回の再生
intensive listeningにおいて繰り返し聞かせることで学習者はリズムやイントネーションのパターンを習慣化できると考えた。
これらの特徴は今日でも続いており,この3段階のフォーマットはlistening方法の説明の基礎となっている。

■extensive listeningに関する疑問点
・実際には2度聞くことはできす,視覚的情報(表情等)も音声では不明
・視覚情報を示した場合,extensive listeningの効用は疑問
・一方的な録音の聞き取りは一方向であり人工的。実際は話し手との意味交渉が可能

■疑問点に対する現状
extensive listening:概要理解概要理解の答えがlisteningに弱い生徒の次のlisteningに役立つため,ほとんどの教師が継続。

■複数聞くこと:現在は言語形式よりも,回を追うごとにより多くの情報を構築する‘Narrowing-in’の考え方。全体の文脈→事実についての詳細→言語分析 (Figure 1.1)
現在でも用いられる一方でその柔軟性の無さが批判される。

■複数回聞くことに対する疑問点
・語彙がわかればlistening問題が全てできるわけではない
・intensive listeningは問題を聞くまで明確な目的が分からない。
・listening練習よりも使われている言語に焦点を当てることに終始してしまう
・意味の分からないリピート(オウム返し)になる可能性あり

1.2 Current practice
現在の枠組み(Table 1.2)について,それぞれに分けて説明する。

1.2.1 Pre-listening
・語彙の事前教授
 語彙を全て教えることによる問題
  listening全体より時間がかかる,
  実際のlisteningでも未知語が存在
  語彙を教えることで言語に注意が向くため,意味に注意が向かない。
 →理解に重要な語のみを教える(4~5語程度)

・文脈把握
 録音音声による限界
 →実際の場面の文脈情報(話し手は誰か,どんな場所か等)を事前に与える。
 (FCEによる実際の例)
 これからあなたは,二人の女性メアリーとパットがアマチュアラジオオペレータ
 (ハム)になることへの興味について話をしている,ラジオ番組を聴きます。
 状況設定の3つの目的
 a. 録音の文脈を構築(状況,主題,ジャンル)
 b. 必要な語彙の紹介
 c. 名前によるラベル付け(固有名詞など)

・動機付け(p.19-20に実際の例あり)
 心構え(mental set)によって内容を予想し,listeningの質と深さを広げる。
 タイトルから予想した内容を確認するためのlisteningにする。競わせてもよい。
 予想によって文脈情報も補うことができる。
 流れによってはディスカッションに発展し,結論をlisteningによって確認。

1.2.2 During-listening
特にintensive listeningに関して再構成がなされている。
・質問の事前設定
 焦点を絞りlisteningをさせる。事前に質問を知らなければ記憶に頼るしかない。
 2度目の再生の前に質問をすることで,学習者は何のために聞いているのか分か
 るため,メモを取ることができる。

・解答の確認
 生徒に全体での答えを求めることは,聞き手から発言者への転換の難しさ,答え
 に対する不安などから困難。ペアでの事前の解答確認はこの解消に有効。
 
1.2.3 Post-listening
・機能的言語(p.21に実際のやり取りの例あり)
 文法強化のためのlistening使用でなく,インタラクションの典型例を提唱した
 マテリアルが多い。言語機能(拒否,謝罪,威嚇、申し出など)の例を提供。

・語彙の推測
 未知語の推測は実際の場面でもある。文脈から未知語の意味を推測すると仮定。
 未知語と思われる語のうち文脈から意味が明らかなものを取り出し焦点を当て,
 繰り返し聞かせることで推測させる。

・ポーズ再生
 学習者が個々の語の意味を理解しているかなどの確認に役立つとも考えられるが、
 言語とlisteningの間での目的の混乱,意味の分からないリピートになる可能性
 などから,現在のコミュニカティブアプローチの枠組みには不適。

・最終再生
 原稿を与えて聞かせることで,再符号化できなかった箇所の確認ができる。音声
 だけでなく残るものとして保存が可能にもなる。

更なる問題点
①会話調の理解問題において理解度を性格に確認することは困難
質問意図の誤解(readingの問題),解答時の言語知識の欠如(writingの問題)等
→質問ではなくタスクを設定する(例Blundell and Stokes, 1981)
 フォームへの記入等状況設定にあわせた実際の解答形式→読みの複雑さを回避
(旅行会社の例,Figure 1.2)

②真正性のある録音を使うこと(authenticityに関しては14章にて議論)
1)listeningは言語内容の詳細よりもスキルに優先度
2)教室でのlistening練習を実際の生活に結び付けたいという希望
3)動機を与えlisteningに焦点を当てることを意識

1.3 Conclusion
ここでは過去のlisteningにおける変化を振り返り,今日のリスニング教授のアプローチに成り立ちについて概観した。第二言語のlistening授業でのわれわれのアプローチは,学習者の必要性と関心にさらに焦点を当てるための急進的な再考になるであろう。

<コメント>
リスニングの指導は問題を解くだけなど単調になりがちです。今回のテキストを通じて教室での指導の在り方について再考する良い機会になると感じました。pre-, main, postの考え方はEllisなどのTBLTの枠組にも共通するものです。プロセスを通じたリスニング指導について考えていきたいです。


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2010/1/21b

Chapter 2


○リスニングプロセスの本質の研究から、我々はまだ最近の見識について説明できておらず、また最近のアプローチは我々の目的を十分果たしていない。リスニングスキルを向上させることの最も良い方法は学習者に録音された音声を一定時間提示し、理解確認の問題 (comprehension exercise) によって文章の理解を確認することであると考えられがちである。正しい答えであれば、教師は達成できたと次に進むし、間違った答えであれば、難しかった箇所の文章をもう一度聞かせる。提示は短いセクションの音声を流すことによって学習者に親しみやすくされ、理解確認の問題は一連の質問よりもタスクの形式をとるかもしれない。しかし、基本となっている仮説は理解を試すことがリスニングの授業を行うのに最も適した形式であるということであるが、あまり疑問視されていない。その概念が広く行き渡りすぎ、教師の指導書では、リスニングスキルに関わるすべての作業についてlistening comprehensionという用語を使用している。この章では、comprehension approachについて長所、短所を批評していく。

2.1 Weaknesses of the comprehension approach
2.1.1 Reading versus listening
○Chapter1で述べたように、L2リーディングで確立された教授法があった頃、リスニングの授業というのはかなり遅れていた。リスニングとリーディングのスキルの類似点から、教授法の応用について考えなくもない。今日では、リスニングもリーディングも正しい答えが達成証拠を与えると仮定し、理解を確認するのには同じような練習を採用する。しかし、リスニングというのは多くの点でリーディングと異なるスキルであり、この違いを認識しておく必要がある。読み手は書かれたスペリングを利用でき、何度も見返すことができるのに対し、聞き手は次々に流れていく発話、一過的な情報を聞く必要がある。リスニングの一過性は聞き手の不安の要因となる。さらに読み手は文章の単語と単語の間が分かるが、連続発音 (connected speech) では単語を分けるそのような間隔がないので、聞き手はどこで単語が始まってどこで終わるのかということを決めなければならない。リスニングはリーディングよりもかなり要求の高いスキルであるといえる。

○リスニングスキルとリーディングスキルは両方とも単語を句や文法構造に当てはめる能力が要求されるが、書くことと話すことが行われる状況を考えると、また明らかな違いが見られる。読み手は書き手が十分に時間をかけ、注意を払って文章を作成したものを処理する。聞き手は話し手が限られた時間の中で (the pressure of time) 産出されたものを処理する。よって読み手が書かれたものを認識する場合と聞き手が話し手の言葉を認識する場合ではかなり異なる。

○もう一つの問題は、理解を確認するための方法であり、リーディングでは適しているがリスニングでは適していないかもしれないといったことである。多肢選択問題であれば、書かれた選択肢は問題の焦点となっている音声を理解するより難しい。学習者が答えを間違えれば、問題文を読むリーディングの問題か音声を聞き取るリスニングの問題かによる。

2.1.2 More practice versus better listening
○リスニングのcomprehension approachは、学習者を一連の話し言葉にさらし、何度も聞かせることにある。これに関する問題は学習者の答えが正しかったかどうかフィードバックを与えられ、間違っていればもう一度聞いたりするわけだが、何回か聞かせたからといって同じような問題に対処できることは意味しない。学習者がmightadunをmight + have + doneということを理解しても、shouldadunまたはmightathoughtを聞きとることを援助するとは限らない。
○難易度も考慮すべきであり、あまり障壁が高いとそれだけなんとか対処しようとする聞き手もいれば、やめる聞き手もいる。

○リスニングが達成する目標としての理解の概念も誤解を生んでいる。理解はリスニングの最終的な成果であり、最小の努力で熟達した聞き手によって達成される。しかし、初学者の聞き手は最終的な目的よりも手段に焦点が置かれなければならない。実践的で段階的な指導が必要である。しかし、理解は聞き手がどう意味を構築するかに焦点が当てられてしまっており、音声や単語を認識する下位レベル (low-level)を軽視しがちである。

2.1.3 Answering question versus showing understanding
○理解確認の質問でも、正しく答えることができれば高いレベルのリスニング能力を示し、間違った答えであればそれだけ期待していたことと不十分であるということを示すと思われる。単に学習者が個々のポイントを認識できたとしても、そのポイントが話し手によって意図された全体的なメッセージにどう貢献するかを理解していることにはならない。熟達していない聞き手であれば、質問の言い回しに強く頼るテスト技能ストラテジー (testwise strategies) を用いることで正しい答えを導き出す。

○特に問題なのは、「正しい」「間違い」と必ず表すことにある。学習者は利用したが教師や教材作成者が意図しなかった情報により間違いと判断される。

○またおそらく批判を受けるのは問題に対する答えが十分な情報を与えていないことである。学習者の言語能力を表面上判断しているだけで、どうして正しく答えられたのか、学習者の弱点はどこだったのかなどは示さない。なぜ間違ったのかなど学習者のリスニング能力の向上を援助するような証拠は示さない。

2.1.4 Comprehension approach versus communicative language teaching
○Comprehension approachが教室に与える影響は不確実なものである。教師は、質問を投げかけ、生徒の反応を伺い、どの部分を再生するかを決める。このようにComprehension approachは教師先導の教授法と言える。それは教室でコミュニケーションを重視する教授法に合うものであるといえる。というのは、リスニングは採用されるプロセスと解釈することにおいて個人的な活動であり、我々が変えることができないものである。しかし、教えることよりもテストすることに重点を置き、それぞれの生徒に自身の答えを報告させることによってcomprehension approachは生徒を個人で取り組ませることができる。より試験に近い雰囲気に近づける。

2.1.5 Classroom versus outside world
○Comprehension approachの次の弱点として、教室で起こる活動の種類と学習者が現実世界で行うリスニングと一致していないことがある。一つの要因はComprehension approachの質問のフォーマットにある。あらかじめ与えられる質問 (pre-set questions) は話し手の言うことを聞く前に聞き手に情報を与えており、実際の世界でのやりとりとは異なる。それによって質問の内容を探すことが優先されて、情報の重要なポイントが分からない、話し手の話したことの全体的な流れがつかめないなどといったようなことがある。

○また、comprehension approachは聞き手と音声の関係に制限が置かれる。典型的に、聞き手は二人か三人かの会話を立ち聞きしている状態である。ただ実際の世界では聞き手が会話の中に直接参加し、即座に返答をしなければいけないような状況がたくさんある。相互作用リスニング (interactive listening)の練習はcomprehension approachではあまり重要視されていないのが現状である。さらには、その状況での対処の仕方となるストラテジーも発達していかない。

2.2 Benefits of the comprehension approach
○ただ、comprehension approachは聞き手にとって二つの利点がある。まず一つとして、comprehension approachは聞くという経験 (experience) と実際にある話し言葉にさらすこと (exposure) で成り立っているということである。経験についてはスピーキングと同様に、リスニングは使用すること、認識や理解の問題に対処すること、聞いたことに関して仮説を立てることなどを通して向上していく。さらすことに関しては自然なインプットにさらしてあげることが重要である。

○二つ目の利点としては、試験に合格することにある。国際的なリスニングのテストというのはcomprehension approachを採用しており、一定の基準を用いてリスニング力を図ることができ、信頼性 (reliability) も高い。

2.3 Goals of this book 省略

<コメント>
現在のリスニング教育について、趣深い点から指摘がなされていた。リスニング能力を測定するのには「理解したか」が重点に置かれており、それだけでは不十分であるという指摘、リーディング能力を測定するときと同じ方法をとっていることについての指摘、いずれにしてもリスニング教育について考えていくべき点が多いとされる。

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2010/2/4a

Chapter 3


イントロダクション
■comprehension approach(CA) の教室力学にもたらす影響→効果的な指導へ向けた提案
■CAの教師・学習者の双方への影響→L2 listeningを個人的な活動へ向けるための方策

3.1  個人とグループ
■聞き取ったメッセージは個々の聞き手のproduct→listeningは個人的活動
■L2においても同様。予測を立てる聞き手,それぞれの語に依存する聞き手など多様。
■readingと異なり各々に個別のテキストがない(一斉に聞くため)。
■伝統的な教育環境(集団的)との間に矛盾する要素が存在。
■教室環境でのlisteningにおける3つの特徴
(a)教師中心
教師がCD再生のタイミングや回数,質問事項などを制御している。
(b)一斉に聞かせることによる分離(isolating)
効果:各自の理解度は不明。正誤で判断するため、聞きとったことは問われない。内的な活動であり,きちんと聞いているかどうか分かりにくい。
(c)即時性(real time)
聞き手は話し手の話の量や速度の制御,聞き返し,説明依頼が不可。
 readingと異なり読み返し不可。各聞き手のレベルは異なるが,聞き返しの回数は調整不可。
 これらが学習者の不安要素→見直しが必要。interactionを増やし学習者主導にする必要性

3.2 教師の役割:非介入的アプローチ
■教師中心のlistening授業での実際のやり取りの例 Transcript 3.1(pp.39)

■特徴
 教師による言いかえや補足、答えの確認、提案などが多い。
 教師はgapを埋めようとするが,生徒の語彙不足なのか語の意味認識上の誤りなのかは不明。
 議題を制御しているのは教師。生徒の貢献は低い。
 CAは正解があることが前提→教師が答えを与え説明するのが原則。
 実際は聞き手の取り方によって2つの解釈が可能な場合もあることをBrown (1995)は指摘

■教師が考えていること
・一度にどのくらいの量を再生すべきか?(理解を促すために途中でとめるべきか否か)
・質問は全体にすべきか,指名すべきか?
・ある生徒が正解を答えたら全体が理解したとみなしてよいか?
・理解できない度合いはどのくらい深刻なのか?必要なのは説明か関連個所のREPLAYか?
・再度取り組むのは長さはどの程度か。理解の早い学習者は注意力を失うのではないか?

■生徒が考えていること
・理解度の低い聞き手はlisteningへの注意が低下し、答えの正否に関心。

■解決方法1:教師がlisteningを援助することを抑え,非介入の方針をとる。
 教師が説明・パラフレーズ・目標設定せず,生徒自身にlistening活動をさせる。

■実際のやり取りの例 Transcript 3.2 (pp.42-43)。
 生徒が主体的に単語、フレーズ、情報などを探し出す様子が分かる。教師の役割はあくまで
 facilitatorであり,生徒同士に情報を共有させて内容を構成させることで,問題解決学習の
 活動になる。

■生徒のレベルによって語が話題になる場合や,主題の解釈が話題になる場合などが考えられる。教師の知識に頼るのは最終手段。

3.3 聞き手の役割:インタラクティブアプローチ
■各スキルは孤立した活動:コミュニカティブな教室における扱い方
・writing→読み手を設定
 ・reading→silent processを外面化(ペアリーディング,Big book, jigsaw readingなど)
 ・listeningの取り組みをCAからインタラクティブアプローチへする。

■解決方法2:孤立的活動から共働(work together)への移行
聞き取った情報をペア,グループなどでdiscussionやcomparingし共有→再度聞いて確認

■利点:weak listenerの援助,グループ・ペア間での競争→学習者各々の参加を促す

■非介入主義による授業モデル Table 3.1 (pp. 45)
 教師の介入と再生の繰り返し回数は教室の必要性によって変化。
 L2におけるlistenerの反応は良好であった。

3.4 聞き手の自立(independence)
■解決方法3:学習者を自立させる
 Inputをコントロール可能にすることでそれぞれの聞き手の問題点がより明確になる。
→間違った箇所や分からなかった箇所に戻って確認することが可能に。

3.4.1 Group listening
■グループ毎にCDやカセットプレイヤーを渡す。小~中規模(4,5グループ×4人程度)。

■録音を協力して聞き取る。(著者の経験上)生産的な活動になる

■手順
教師が一度全体の理解のために聞かせた後,質問やタスクを伝える
グループでの聞き取り(再生を担当する人、答えを記録する人などに分かれる)
 全体で答えを共有し確認

3.4.2 listeningの宿題
■自立した学習者を育てるため,宿題にて補完
・他者への依存なしにリスニングを遂行する能力を明らかにする
・タスク遂行を自己ペースで行うことができる
・再生を何度も出来,自分が難しさを感じるところに焦点を当てることが出来る

■以前よりもリスニング素材に触れる機会が増えた
・家庭における設備(プレイヤー,PC)が充実
・CD複製(技術面・著作権)の自由度
・インターネットなどからの音声,教師の自己録音の活用
・サウンドファイルをemailで送付,podcastを活用し授業時に質問を指示,など

■宿題の設定
・CDにして音声を渡し,長期にわたる課題
・MP3プレイヤーを活用したpodcast(週の初めにダウンロードし週末にフィードバック)
・実施可能な環境:小クラス,技術・金銭面が整っている場合のみ
・カセットなどのコピーだと数に限界がある→限られた数のメディアを生徒間で順番に使用

■宿題の準備段階
 ・概要理解のために聞かせる→タスクや質問の導入→宿題の実施→答えの修正と確認
(official answer以外の正答がある可能性)

■この宿題の利点
音声を文字化する能力を向上
音声からの意味理解の機会
耳を音、リズム、イントネーションパターンに慣らす

■さらに上のスキル
ESL:特定のlistening(テレビ番組,ラジオ,podcast等)に対するレポートの設定
EFL:同様のlistening源を探すか,独自に録音したものを使用した同様のタスク
(White (1998)にその他の事例あり)

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2010/2/4b

Chapter 3


3.4.3 Listening centers
○学校でListening centerを設けることも有益である。Labがコンピューターの施設によって援助され、設けられる。コンピューターの設備など費用がかかるといわれるが、実際机の上に十分な数のプレーヤーや、学習者のレベルにあった目標言語の音声があればよい。

○Listening center では、全体的なリスニング活動のためにどのような作業が必要かを明確にする必要がある。少なくとも、学習者にはListening centerの使用についてよく知ってもらうようにする必要がある。場所が限られていれば、ペアで使用するとか、Listening centerを使用することで行う宿題を与えるなどを設けたりすることもよい。

○さらには、Listening centerで利用可能な相談員を設けたり (= consultancy approach)、個々の学習者にリスニングプログラムについて配布する (= prescriptive approach) ことなどが進められる。

○聞き手は、Listening centerで効果的に時間を使用する方法について認識させ、リスニング練習は学習者が勉強している文章から最大の効果を引き出せるように設計するべきであろう。

3.4.4 Adapting materials for self-study
○個人個人の学習にあったリスニングの練習方法としては、学習者が聞く内容が要約されていてその文章中の語句を一部空欄にして埋めさせることや、マインドマップを作らせることなどがある。多肢選択問題といった正誤を判断する問題よりも産出的な活動となる。個人個人の学習では、何度も聞きなおすことができるし、学習者の注意を単語認識といった個人個人がリスニングにおいて抱えてる困難な個所に注意を向けさせることができ、学習者に効果的にリスニングをさせ、単に大意の理解にとどまらない活動ができる。

○Listening center sessionにおいてこういったことを達成する一つの方法として、Chapter1で挙げられた ‘narrowing in’を行うことがある。最初に音声の概要をつかませ、 ‘intensive’ information-gathering taskといった活動を行い、何回か音声を確認する機会を設け、新しく出てきた語彙の意味を予測させ、全体の音声情報から集めたものをそろえたり、スクリプトや答えを与えて確認させるといったことができる。学習者の熟達度などに合わせていくつか難易度の異なるタスクを作成することが望ましい。

3.4.5 ‘Extensive listening’
○学習者の自主性 (autonomy) をさらに助長させるための手段として、‘Extensive listening’
といったものがある。これはChapter1で出てきた extensive listening とは異なるものであることを認識しておく必要がある。これは学習者が楽しむために行い、TVやPod-cast、filmなど日常生活の中で与えられる材料によって行われる。主な目的は学習者に聞くことの下地を作ることにある。聞き取れない個所があったりしても学習者を過度に心配させない。また個人個人のリスニングのスタイルも大きくかかわる。全体的な聞き手 (‘Holistic listeners’) は全体の内容を理解することに努め、そうでない聞き手はボトムアップ処理で個々の単語を正確に聞き取ろうとして失敗し、結局スクリプトをみるといったようなこともありうる。個人個人の興味や背景知識にあった教材を選ぶことが良いとされる。最近では、DVD等も利用可能であるので、聞き手に物語 (plot) を単純に追わせることも可能であり、視覚的な援助も可能となる。

○第二言語のビデオ教材を見るとき、L1の字幕は内容の理解に効果的であろう。ただ、字幕を文字として読みながら聞くということになるので、学習者はどちらかに頼りがちになってしまうだろう。そうすると、字幕の方に目が向きがちになり、音声に焦点を当てなくなることがありうるだろう。L2の字幕で見せることも学習者に有益であろう。

○音声を聞かせながら本の文章を読ませることも一つの練習として挙げられるが、聞こえた音と、話し言葉を照らし合わせることに時間を置きすぎてしまい、リスニングの練習とは異なるものになる。

○一番良い方法としては、まず本やスクリプトなしに学習者に音声を聞かせ、その後、それを見ながら聞かせることである。もし最初のリスニングで重要なポイントを聞き逃しても、二度目でそれを聞きなおすことが可能であろう。

3.5 Conclusion
○リスニングは一般的に教室の中や個々の学習者に特有の方法で影響を与えるスキルである。教師は学習者を先導しながら、決して介入しないスタンスをとる必要がある。さらに、学習者がリスニングタスクに深く従事しているかを確かめ、インタラクティブな姿勢をとる必要があろう。教師はリスニングの本質上、スキルの練習が個々のものになるような方法を考え、学習者には難しいと感じる特定の箇所を何度も繰り返し聞くことを許容し、彼らのペースでリスニング活動を行うことを可能にするべきである。自主性を重んじた活動、リスニングの課題、extensive listeningを促進する教材が求められる。

<コメント>
いかに学習者に自主的にリスニング学習を行わせ、彼ら自身が自分に合ったリスニング練習を見つけていくことが大切かということを感じた。また、ビデオ教材を使用するとき、字幕のありなしによって学習者の情報処理にどう影響を与えるかといったことが趣深かった。

2010/2/18a

Chapter 4


イントロダクション
■教室でのリスニング活動が実際のリスニングと異なる点。

■CAにより応答が求められる反面,教師は従来の定型の答えのある問題になりがち。

■両者において様々なバリエーションがみられる。

4.1 Comprehension approach(CA)の制約
■CAの好むlisteningのテキスト条件
・ある程度の長さがあり情報が豊富なもの。サブセクションがあるとより好ましい。
 →実際の対面のリスニングは短く情報が少ない場合もある。
・話者が一人ないし二名(判別をしやすくするため)。
・話者の役割は参加者でなく意味理解が目的。
 →実際の場面:ラジオ番組,講義など。授業のリスニング活動よりも長い場合もある。
  聞き逃した内容を繰り返しや再構成の中から得る機会がある。

■CAリスニングのタスク
・文章から多様な情報を特定する→文章全体に高いレベルの注意を要する。
・聞くポイントはlistenerでなく教師や教材によって決められる。
・listenerはmacroでなくmicroな点に焦点を当てることを要求される
→macroに焦点を当てるauditory scanningの活動もあるが,質問が決まった形で出される。という点で実際のlistening状況とは異なる。

■教室外でのlistening
・よい聞き手:処理するインプットとタスクに最適なlisteningタイプを柔軟に選択。
 例)救急救命法の説明となじみのラジオ番組では聴き方が変わる。
・聞き手の目的とlisteningタイプとの関係:一つの発言が全体の意味を変えることもある。

4.2 CAの制約:聞き手の役割
■CAはlistenerの役割を制限(やりとりには非参加)
・interactiveな状況とは異なる
・非参加状況:比較的短い内容の理解であり,合図に合わせて応答を考える。
→時間的余裕があり理解した内容をモニタしたり話者の意図する意味を試すことが可能。

■L2での他者とのコミュニケーション:限られた時間で応答を生成する必要性。

■CAはauthenticではないという批判
・CAの利点:レベルの統制がとりやすい。
・authenticityにも教室環境であるという制約がある。
・実際の状況でのモノローグlisteningの必要性(特にEFL):説明,旅行情報,ラジオ等

■「立ち聞き」listeningであるという批判
・monologueよりもdialogueの方が対話のモデルになる
・実際の状況でも「立ち聞き」は存在
・談話への参加は50/50とは限らない(参加には偏りがある)
・「気づき」-「言語獲得」が起こりやすい→実際のlistening skillの発達に関連あり。

■いずれか一方ではなく,非参加型,双方向型の各listeningの特性を理解するべき。

4.3 listening eventと適切な反応
■多様なlistening event(Table 4.1を参照)があり処理水準が異なる

■指導者:教室外でのlistening eventの処理水準(例:scanning, form fillingなど) を把握する必要性。各eventとの最適の組み合わせを考える。(Table 4.2に具体例)
(空港での例):
①自分の行き先が告げられるまでアナウンスを低レベル処理でモニタ
②特定のフライトとゲート番号に注意の焦点をあてる
③残りの部分は不必要なので聞かない

4.4 listeningのタイプ
■多様なlisteningタイプがテキストなどに示されているが,明確な基準は無く実際のタスクと不一致の場合もある

■reading skillを当てはめ考えることがUrqhart and Weir's (1998)により提唱
 注意の度合い(迅速⇔注意深い),目的による要求度(local⇔global)など
 著者がlisteningに当てはめ分類した例(Table 4.3)

■実際は言語や聞き手のレベルによって変化

■注意度が低くlocalな情報は経験の浅い聞き手にも易しい。詳細な情報は多くの語が分かるようになって初めて理解可能になる。(microからmacroへの理解)

■文章にタスクとタイプが適切かどうかの判断は指導者の目的に委ねられる。

■実際にリスニングとタスク,タイプを合わせた具体的指導事例あり(P. 67)

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2010/2/18b

Chapter 4


4.5 Task difficulty
○タスクの難易度については、言語的項目に基づいて階級づけをしたり、タスクによる学習者の要求を階級づけすることができる。タスクにはどういった語彙や統語が使用されているのか、それが文章中にどう含まれているのかなどといったことを考慮する必要がある。また、リスニングは個人の活動であるので、彼らのリスニング経験も認識しておく必要がある。あるタスクを行うことを容易と感じている学習者もいれば、それを難しいと感じる学習者もいるからである。

4.6 Interactive listening
○相互作用リスニング (interactive listening) は聞き手が話し手の内容に応答することを求められるリスニングである。two-wayで行われるため、one-wayよりもかなりリスニングのプロセスは異なる。単にCDを聞くのではなく、より緊張した大変な作業となる。4つの特徴として、聞き手は限られた時間の中で返答する必要があること、聞き手は話し手との役割を考える必要があること、聞き手は話し手の言葉の形式に注意をよく向けること、聞き手は明確化要求をすることがありえることなどがある。こういったことを含むリスニングの練習を考える必要がある。
・Modelling
 対話文の音声は教師に実際の会話の流れを知るための有益なモデルを提供する。生徒に聞かせ、内容を理解させた後、会話の中の特徴に焦点を当てることができる。それは修正ストラテジー (repair strategy) やバックチャンネル (back-channelling) といったものに向けられる。
・Paused practice
 対話文を聞かせて全体の内容の理解をさせる代わりに、最初の話し手が毎回話した後に、音声を止めて、相手は何と返答するかを予測させることができる。そこでポーズを使用するなどして、話し手がどんなことをいっていたのかを考えさせ、自分ならどう返答するかを考えさせたりできる。ポーズは諸説あるものの、1秒半~2秒挿入することがよいとされている。限られた時間の中で、実際の世界で起こりうる場面を再現してみるということもできるし、熟達度の高い学習者であれば、自分が考えた返答と対話文の中で使用されていた返答を比較したり、正確さや適切さを確認することもできる。
・Quick-fired questions
この練習では、インタビュー形式の質問に限られた時間の中で聞き手が返答するものである。聞き手は即座に簡単で短い返答をしなければならない。これはListening centerで、自分の答えを録音し、確認して、訂正するといったことができる。
・Rehearsal
成功するL2学習者は会話やその返答の際、必要な表現を予期する。その過程はリハーサルと呼ばれ、会話や返答のパターンを予測し、実際の会話をスムーズに行う能力を向上させる。ペアで活動などをさせる際、与えられたトピックによって質問されそうな内容を予測し、答え方をあらかじめ考えさせることができる。
・Jigsaw listening
 これは、実際の会話で使われる言い回し (turns) を使用した練習である。対話文を何度か聞き、聞き手と話し手の適切な言い回しを選んでいく。
・Recording
録音をすることで、学習者の発話行為を確認し、理解が途切れたところ、不適切な返答だったところなどを確認することができ、短い会話のインタラクションについて指導する良い例を与えてくれる。
・Communicative tasks
コミュニケティブなタスクでは適切な産出ができたこと、目標を達成できたことが主眼に置かれる。スピーキングと同様に重要なリスニングの役割にはあまり重点が置かれないのが現状である。時々、リスニングの授業においてインフォメーションギャップタスクを行わせ、学習者がリスニングスキルをうまく使用できている程度、修正ストラテジーやバックチャンネルの使用、誤解を生み出している原因などをモニターさせるのが良い。

4.7 The ‘integrated skills’ option
○4技能というのは、個々に教えられるのではなく、関連づけて行われるべきである。これを統合的スキル (integrated skill) アプローチと呼ぶ。少なくとも、一つのトピックや同じような内容を共有する活動で、学習者に二つ以上のスキルを使わせる必要がある。それぞれのスキルは実際の生活で個々で使われるのではなく、相互に支え合っているものである。リスニングの場合は、話し手と同様に聞き手が行う会話で行われる。アカデミックな状況では、note-takingなどによって書いたり、読み上げられたものを追ったりすることなどが挙げられる。他のスキルを使用させることで、comprehension approachの欠点を補強することができる。短所としては、一つのスキルを一回の授業で15~20分程しか扱えないということがあり、深くは行えない可能性もある。

4.8 Summary
○リスニングの文章は実際学習者が出遭いそうな種類の物を選択すること、聞く量を増やすためにone-wayのリスニングも行い、two-wayのリスニングも行うこと

<コメント>
さまざまなリスニング指導例が挙げられているが、著者が一貫して主張しているのはtwo-way listeningの重要性である。それだけ実際の世界でのリスニングを意識してのことである。ただ、one-way listeningもインプットの量を確保するために大切であるとしている。

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2010/3/18a

Chapter 5


イントロダクション
■現代のL2 リスニングは拡張的
・目標言語の話し言葉へのExposureによりリスニングスキルが向上するとの考えから,難易度の高い文章を扱う能力により学習者の進歩を判断。

■拡張的なExposureがリスニングスキル向上に繋がるという誤解
・ESL環境:高レベルのexposure,周囲の話し言葉から意味を取り出そうという動機,対面により意味交渉や修復をすることで意味構築が可能。
・教室環境:問題を解くことで全員のリスニングスキルが向上するわけではない。インプットを理解できず諦める,文脈情報に頼るなど補償的ストラテジーをとることがある。

■practice makes perfectにも限界があることは自明。
・L2 Speechのexposureの繰り返し→語と語の音のつながりを理解し,音と語のつながりを自動化。Connected speechにおける様々な語形態や語彙チャンクの経験を拡げる。
・問題点→聞いたことの処理能力に自信が無ければ達成されない。

■リスニングは車の運転やテニスの技術に例えられる
基本技術獲得のための初期トレーニングや実演を踏まえて,はじめて拡張的な練習により自動化される。さもなければ悪い技術が化石化。

■more=betterに代え,良きL2 listenerへの技術やストラテジーを確立する必要性。

■リスニング練習の機会を与え続けることよりも,学習者を聞き手として発展させるためにComprehension Approach(CA) の目標を見直すことを提案する。

5.1 Process 対 Product
■専門家によるCAの効果に関する批判(Brown, 1986; Sheerin, 1987)
 ・CAテストは何も教えていない

■リスニング・リーディングは内在化されたスキル:成功したかどうかの直接観察が不可であり,非直接的方法による。そのため,テストの正当性には制限(T/Fや他紙選択法はリーディングスキルを含むなど)はあるが,理解度を測るにはテストせざるを得ない。

■CAの問題点:回答した数人の生徒と他の生徒が同じ理解をしたかは不明。また、正答を導き出した方法や,その理解の過程を知る術も無い。文中の語をすべて理解したのか,情報に基づく(または基づかない)推測をしたのか。文脈情報への依存がどのくらいかなど。間違いの理由が分からないと,次回に学習者を支援する改善策が無い。

■CA:タスクのproductに焦点があり,processに関する見識が無い。聞き手は単に話者のメッセージを受けるだけではなく、意味を再構成する。多肢選択問題においては曖昧性がのために他の答えが生じる可能性もあり,単にリスニングの問題ではない場合もある。解決方法としては,選択した答えの理由を学習者に問うことができる。(Why?など)
・正答の場合:答えをどのように導き出したかや、学習スタイルを知ることができる。成功者と失敗者の比較など。
・誤答の場合:学習者の問題点(箇所)を特定できる。生徒の「間違い」から新たな発見(他の正答の可能性)をすることもある。

■診断的に長いリスニングを行い,問題点を特定した後あと補習的に小規模で練習を行う。

■学習者の誤りの行動パターンを教師が認識し,よりよい行動パターンにできるような練習を与えることができるような立場へ移行すべき。

5.2 リスニング授業のフォーマット
■診断的側面の導入は、非介入的アプローチに合致する。生徒に録音の理解により多くの責任を負わせ,答えを自ら調べる負荷をかけることで,リスニング理解のギャップを修復しようとするもの。

■標準的なリスニング授業:pre-, main, postの3段階に分けられる(e.g. Underwood, 1989)が,preに重きを置きすぎる。教師が生徒のリスニングに向けて適切に準備したがる
例)必要以上に新出語彙を説明;背景知識の間違った適用;トピックについての拡張的ディスカッション(リスニングの内容を見越したもの);過分な状況設定など。

■その結果リスニングに割く時間が少なくなる。複数回のreplayや学習者の反応を調査。
→教師は介入的スタンス(学習者の繰り返しの聞き取りではなく、正答を求める)。post-は急ぎ足で、新出語の焦点化や答え合わせに目的。この方法だとテキストの吟味が不可。

■本章での考え方では,post-listeningにおいて治療的活動に重きを置いている(比較のグラフ:Figure 5.1; Figure5,2)。教師が次回のレッスンに問題点を改善するマテリアルを作る場合,post-listeningの時間は短くて済み,マテリアルを準備する時間をとることができる。その方策として,フィールドノート(学習者の問題個所を記録),ヴィデオ録画(どこでその問題点が起きたか、影響された生徒は?など),listenerの日記(学習者が自己診断する)、verbalレポート(文章が読めなかった時の気持ちを書きとめておく)など。

■事前に情報を与えすぎるとリスニング経験をゆがめる可能性。聞き返しの回数を増やす方がよい。

5.3 解読と意味構築
■聞き手の取る2つのリスニング行動(L1, L2)
・耳に届いた音を聞き手の語彙の中の語句に翻訳し抽象的な意味になる。(decoding:解読)
・それまでの文脈が無い,文字通りの語句だけでは意味をなさない。外的情報や背景知識を使い,聞いたことに重要性や関係性を吟味する。(意味の構築)

■これらにおける異なった困難点
・解読における困難点:学習者の文法や語彙知識のギャップ、またはリスニングスキルの弱さ(continuous speechになると分からないなど)による
・意味構築における困難点:文からの情報をどのように扱うか。L2リスニングでは再符号化に付加的な注意がむけられるため,L1では可能である意味構築に至らないことがある。L2の語句に注意が向き,語句同士の関係に依存するため,他の処理を失敗。

■学習者のリスニングの問題点を治療する際には,解読と意味構築を分けて考えるのは理にかなっている。
 解読の場合の例)-edに気付くのが困難な場合→練習問題で修復が容易。
 意味構築の場合の例)個別の発言や文脈によるもの。

<コメント>
実際の授業における指導においては,時間配分を考えるあまりproduct重視になりがちである。高等学校の場合はリスニングのみに重きを置いた授業は無いが,processを重視した指導を部分的に取り入れることで,生徒のリスニング力を高められるのではないかと思う。
私は4月から学校での勤務に戻るため,今回でSLAAでの発表は終わりになります。いろいろ実践に役立つ発表をさせていただいたので,学校に戻ったら学んだことをたくさん実践して,皆さんにフィードバックしたいと考えています。大変ありがとうございました。

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2010/3/18b

Chapter 5
(pp. 86-95)

5.4 A diagnostic approach to decoding
■Comprehension approachにより、内容を聞き取り確認し、聞き取れなかった箇所を聞き直したりするわけだが、これには欠点がある。その欠点というのは、聞き取れなかった箇所を聞き直して理解できても、また同じような項目に出遭った時聞き取れるとは限らないということである。教師はどんなところで理解につまづくか、よくありそうなつまづきを書き留めておくと良い。生徒がつまづいたところは音なのか節なのか単語なのか文法なのかイントネーションの特徴に関連するのか種類分けしてもよい。

■生徒がある一つの単語を聞き取れなければ、教師はその単語を新しく導入するだろう。しかし、単語が聞き取れない問題は少なくとも6つの可能性がある。それは、
 ・学習者がその単語を知らない。
 ・学習者はその単語を視覚的に知っているが、聴覚的には馴染みがない。
 ・学習者は音韻的に同じ単語とその単語を混同した。
 ・学習者はその単語を聴覚的に知っているが、連続発音 (connected speech) では認識できない。
 ・学習者は聴覚的にその単語を知っているが、どの意味か分からなかった。
 ・学習者はその単語を聴覚的に認識したが、意味を間違えた。
ということがある。

■同じ状況が文法に関しても当てはまる。例えば、学習者が ‘I’ve lived in Italy for ten years’ という文を聞き、「まだイタリアに住んでいる」ということを理解できなかった。これは現在完了の継続用法を理解していないことになるので、文法規則を教えてあげる必要がある。

■学習者がつまづいている箇所があれば、授業の5~10分を使って、ディクテーションなどにより、そのつまづいている項目を含む文を聞かせて書き取らせる練習を行うこともでき、そういった学習者がつまづいている項目にさらしてあげることで、補足的な練習として効果を果たすだろう。

5.5 A diagnostic approach to meaning building
■意味の構築 (meaning building) に関わる問題は、解読 (decoding) と違ってはっきりとは分からない。特有の単語や派生、文法的特徴と関連しないので、練習のためのモデルを作ることは難しい。大意の理解の代わりに、学習者が
 ・これまで聞いたものを統合し、次に聞こえてくるものを予期する。
 ・コンテクストを作るために背景知識を使う。
 ・状況を認識するために話し手の最初の文章を使う。
 ・特定の代名詞を聞き取らせ、それと関係するものを言う。
 ・曖昧な文章などを言い換える。
 ・要点、話し手の態度、役割などを認識する
ようなタスクを行う必要がある。

■例としては、書かれた文章を与え、それを言い換えた文章を聞かせ、意味が同じかどうかを判断させるなどの練習が挙げられる (Table 5.2を参照)。

5.6 Individualizing a diagnostic approach
■上記のような診断的アプローチは、個々の聞き手によって抱える問題が異なるので、大きな課題となる。これを解決するためには、宿題やlistening centerなどを利用させ補足的な教材を与えることである。聞き手にそれぞれリスニングにおける長所、短所、困難、だとする項目に関して内省させるようなreflective phaseが必要であろう。困難な箇所に注意を高めることができるし、それ以降の練習にも有益であるし、学習者にとってリスニングを管理可能なものとすることができるだろう。Table 5.3に示されるようなpost listening feedback sheetなども有効である。

5.7 Conclusion
■Comprehension approachは、さまざまなL2言語を聞かせられるところに利点があることはChapter2でも言われた。しかし、productに焦点が置かれ、リスニングの過程に焦点が向かないことなどがComprehension approachの短所であった。よってComprehension approachは目的のための手段とみなし、単に答えを確認する代わりに、なぜ答えがあっていたのか間違っていたのかを正確に示し、言語教室や実際の世界でうまく聞き取れるよう、学習者の注意を向けてあげなければならない。
<コメント>
 英語の授業において、リスニングをさせる際、学習者がどういったところにつまづいたのかその原因を確認し、振り返ることが重要だということは明らかだった。個々の学習者に合った聴解も教師は考えていく必要がある。

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2010/4/15a

Chapter 6
(pp. 93-106)

2010/4/15b

Chapter 6
(pp. 103-109)

6.3 Evidence supporting a componential approach
■sub-skill approachには利点があることは明らかであるけれども、実際個々のsub-skillを細かに練習することが実際の世界や長い文章を聞いたりする時に学習者に活かされるものなのかといった疑問が残る。リスニングにおいて学習者が進歩していることを見るのは短期間では難しく、もし練習の効果を見たいのであれば、練習の前のリスニングテストが練習後のリスニングテストと同じ難易度の文章やタスクであることはどのように確認するのか、どのように学習者が教室外でさらされている第二言語をモニターするのかということが問題となってくる。

■上記のようなことは軽視されてきたけれども、最近ではsub-skillの訓練の効果が注目されている。Systemのようなジャーナルでは50ほど、このような問題に取り組んだ研究があり、sub-skillの訓練は全体的なリスニング能力に効果があるものとしている。sub-skillの訓練の効果への検証を行う際、教師を訓練することに関心が寄せられている。Dawn Day (2006)の研究において、生徒に授業に関するフィードバックを与えたり、listening diariesを書かせたりしている中で、sub-skillの訓練がどのような利点をもたらしているのかを生徒に報告させ、正の効果があるということを証明している。
H: I do feel more confident to listen to the radio and watch TV.  自信を感じる
K: At first, I had to concentrate a lot, but now it’s very easy to listen to English natives. 聞きやすくなった

■こういった報告の中にはdecodingに関わるものが多く、それだけsub-skillの訓練がdecodingに関わるものだといえる。Field (1998) に関するさらなる提案として、つまづくとされる英語の話し言葉のインプットの特定の特徴を対象にし、短い文章を使ってディクテーション練習をさせることがある。

■Down Dayの訓練は小規模であったため、一般化することは難しいが彼女の生徒たちの士気や彼らのリスニング能力評価にかなりの効果を与え、意識を上げ、L2リスニングがどういったものなのか、つまづく箇所はどこにあってどう対処するのかということを理解するのにリスニング後話し合うのは効果的だと考えられる。

6.4 Some reservations about ‘sub-skills’
■細やかなsub-skillの訓練はリスニングに正の貢献をするようだが、いくつか考慮しなければならない問題がある。まず、①この方法でスキルを発達させるべきなのか、さらには、②sub-skillと呼ばれるものの多岐に渡る本質に注意を向けること、そして③それに沿って言語のスキルを区分けする妥当性を疑問視する。

6.4.1 Teaching listening or teaching language?
■最初①に関わる問題は、Charles AldersonのL2リーディングにおける1984年の記事のタイトルにまとめられる。それは、‘Reading in a foreign language: a Reading Problem or a Language Problem?’である。Aldersonがあげた疑問は、リーディングのように言語スキルも練習させることは言語教師の責任であるかどうかということである。L1のリーディングスキルのさまざまな要素がL2のリーディングスキルに転移し、L1リーディングスキルの転移を妨げるものはL2での語彙力や文法力の不足である。単語の閾値レベル (Threshold Level)というのは多く議論が交わされており、その閾値を超えると文章を読む上で十分な割合理解されるので、L1のリーディング能力が転移可能となる。

■リスニングに置き換えて考えれば、単にsub-skill approachが一番のものではない。何人かの研究者 (e.g. Kelly, 1991) は、閾値の理論に沿って、oral vocabularyを組み立てさせることがよいリスニングを行うより良い方法であると提案する。しかし、我々はL2リスニングの理解においてつまづくのは、知らない単語があるからではなく知っているけど認識できない単語というのが関連するということである。

■単語の標準的なcitation formsで学習者にoral vocabularyを組み立てさせることが明らかに重要であるが、これは連続発音で発話されたときにうまく聞き取れることを保証するものではない。単語が結合したら、標準的な単語の形式から外れてしまう。この点では、学習者に実際の音声に触れさせる以外の方法はなく、特にそれがmicro-listening taskで特徴づけられてた種類の短い文であれば有益である。

■また、単語力や文法力を考えなければ、母語話者の聞き手とL2の聞き手が同じリスニングをしていると考えるのは不適切である。よく知らない条件で、L1でリスニングを行っているようにL2でも行うことはうまくいかないのは当然である。L2リスニングの問題は、単に単語力が限られているからではなく、簡単には分からない情報や信用しがたい情報などを扱わなければならない状況にあることにある。よってただ単に単語力を向上させるのではなく、目標言語に関連して使用するリスニング処理の能率や正確さを向上させることである。

6.4.2 The fuzzy term ‘sub-skill’
■最も深刻な問題はsub-skillという用語のあいまいさである。それはMunby (1978) の考えに基づく。Mundyは4技能のsub-skillを包括的にまとめた。それに影響され、リーディングの教材では、リーディングに関連するプロセスの観点で多様なものからなるものを目標にすることにした。典型的にリーディングのsub-skillにはskimming, word recognition, using linkers, inferring vocabulary from the contextなどを含む。有能な読み手になるのであれば、すそれらすべては練習する必要がある。それらを寄せ集めてしまっては、異なった方法でリーディングスキルにそれらが貢献するという事実があいまいになってしまう。

■リスニングについて考えれば、decodingに関する知識と字面の内容理解を豊かにするための現実世界の知識 (meaning-building) を認識する必要がある。

■我々は、sub-skillの概念をその状況が要求するリスニングの種類に関連づける必要がある。より注意深いリスニング、アカデミックなリスニングなどではそれぞれ要求するリスニングプロセスが異なる。接続詞を認識するといったようなこともインフォーマルな会話であれば使用されないことがあるので、sub-skillと一般化するのは間違いであると考えられる。

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2010/7/15

Chapter 9 (pp. 152-162)

9.3.4. Reduction
単語自体も短縮化される。一つ以上の音素は省略され、音節は短縮・弱化する。重要でない単語や、頻出単語が簡略化されたチャンクとして話者に記憶される場合、短縮形となる。

Importance within an intonation group
 自然な発話において、単語は結合し、イントネーショングループを形成する。イントネーショングループは単語に圧力をかけるので、音節が多い場合は話者が圧力をかける速度が速くなり、重要度の低い単語は短縮・調整される。その結果、異なる状況に合うように単語は異なる形を持つ。
 “単語は自然な発話において多様な形をとるため、学習者は単語認識が困難となる。(”actually”の例p.153 Table 9.6参照)
 多音節語は文脈内で、平均2~3通りの短縮された発音があると推測される。
 教育的示唆としては、イントネーショングループ内で起こる短縮形を認識させるために、録音された自然な発話を下位区分することが最良の方法。(p.154, Figure 9-2参照)
 2~3分の録音で、2~4の短縮された単語の集まりが確認される。気づきを高めるために、以下の方法がある。
a. 長い録音全てを再生し、コンテクストを 構築。
b. イントネーショングループを再生し、学習者に単語を書き出させる。正解・不正解は言及しない。
c. グループ内の短縮された単語を再生し、学習者に単語を書き出させる。必要に応じて繰り返し再生。
状況に応じて単語が変化することに学習者が慣れると、逆にc, b, aの順で再生してもよい。

Formulaic chunks (定式のチャンク)
 多くの単語グループは言語のチャンクとして記憶される。チャンクはin front ofのような語彙フレーズやI don’t knowのような頻繁に再出するフレーズなどがある。頻出語句を毎回組み立てる必要がなくなるため、話者が発話を早く構成するために重要な役割をする。
 聞き手の記憶機構にもこのチャンクがあると話者は予測するため、チャンクの構成への注意は低い。省略、同化、またはその両方で単語は短縮される。(例do you know what I mean? narpMEAN)
 統語論的関係の例: toグループ(want to) , haveグループ(must have)
 イントネーショングループ内では、重要でない語が認識しづらいことがよくあるため、学習者は一語一語処理するのではなく、頻出するチャンクに注意して聞いたほうがよい。学習の初期段階から日常会話でのチャンクの役割に注意を向けるべき。
チャンク認識の練習として、Table 9.8参照。

9.4 Speaker variation(話し手による変化)
 発話のインプットは話者によって異なる。
 話し手による変化の要因
・アクセント:L2の状況では焦点を当てがち。アクセントはあるかないかだけでなく、出身地の詳細、人生経験、L2の場合母語などからも影響する、より複雑なもの。
・生理学的特徴:口の形、声帯の長さの違いなどによるもの。
・話し方の違い:速さ・音量・ポーズ(構文ごとのポーズや頻繁なポーズ)
 第一言語においては、初めて聞く声に瞬時に適応(normalize)し、話についていくことができる。そしてその話者の標準的話しの速さ、声の大きさ、ピッチの基準を確立し、その基準を元に話者の気持ちの変化を認識することができる。
 言語学習の専門家は、学習者が直面する難題として個人の特徴に注意を向けていない。
 L2での会話はL1よりも標準化しにくく、耳慣れない音声、リズム、イントネーションに慣れるにはより注意が必要で、時間も要する。
 教育的示唆
・ 各音声にそれぞれ基準を設立しなければならないため、録音に音声の種類が多いほど、リスニングタスクはより難しくなる。
・ 学習者は話者の声に慣れるための十分な時間が与えられるべき。(質問の内容を最初の10-15秒の音声に焦点をあてない、最低2度再生するなどの方法)
・ 標準化に焦点を当て、学習者が話者の声に慣れる練習をする。(Table 9.9参照)
・ 耳慣れている教師の音声を活用する。初期のリスニング練習として、聞きなれた教師の声で単純な文章を音読することで、リスニングの自信をつけさせることができる。
・ どの熟達度の学習者にも様々な音声に触れさせるべき、というテストや教材作成者の間での最近の流行に対する懸念。学習の初期段階では、様々な音声を聞くということは十分な難題で、アクセントまで変える必要はない。
・ 標準化を考慮した、段階的リスニング活動
1. 教師の声を強調し、録音音声は時折補助として用いる
2. 同じ国の男女の音声。最初は、年配話者(遅く話す)から早い話者へ
3. 1-2つの他の種類の音声を導入
4. 母語話者での様々なアクセントに広げる
5. 非母語話者の音声を提示。共通語として言語を話す人の間で多くのコミュニケーションがなされることを認識する。

9.5 Conclusion
 本章では、聞き手がさらされている、多様な性質のインプットに対する説明をした。
・ 与えられた音素を特定化する合図の欠如
・ 同じ語でも文脈によって異なって発音される
・ 同系統のL2においてさえも、異なる音声を標準化することの必要性
 L2の聞き手からの立場で論じたもので、L2の話し手として学習者が同じ特性を習得しなければいけないというわけではない。
 結論
1. 連続発話(connected speech)の実例を解読する際の、細かく焦点を当てた段階での練習の必要性。それによって、解釈の速度と正確さは増し、聞き手に自信をつけ、単に長文を聞くのみよりも系統だった効果を与える。
2. 連続発話の解読は学習者側に集中的な個人作業を要求するかもしれない。学習プロセスは困難な箇所を克服できるよう、問題となる文章を再生する必要があるため、学習者側が困難な箇所を選ぶほうがよいかもしれない。

<コメント>
単語やフレーズが文章中で短縮化されることについて。また、話者による話し方の違いについて扱った。特に、異なる話者の音声に対する、学習者の対処を助ける方法として、細かく教育的示唆が示されていた。発表後の話し合いの結果、accentに対する和訳に関して、本章で用いられているaccentは「なまり」という和訳が適していて、「アクセント」はstress、「ピッチ」は「音の高さ、低さ」である、という意見があがった。

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2010/7/22

Chapter 10
(163-167)

 母語話者・熟達者のリスニングプロセスを目標として、熟達度の低い聞き手のリスニングプロセスと比較することで、系統だった練習を提供することができる。
 9章のような集中的なsmall-scale exercisesではなく、学習者のリスニング行動(listening behavior)を形成するための練習問題となる。
 熟達度の高い聞き手と低い聞き手の最も大きな違いは、熟達度の高い聞き手は高い自動性(automaticity)で解読(decoding)ができることにある。
 L1リスニングでは結びつき(matching)に注意を向けないため、より広範囲の意味に注意を向けることができる。よって、解読練習の目標は自動的に結び付ける能力をつけることとなる。

結びつき(matching) : 音声と、units(音素、言葉、文法形式)に関する聞き手の知識を結びつけること

10.1 Finding matches for inconsistent input

10.1.1 Listening as a tentative process
 リスニングはL1、L2に限らずおおよそのもの(approximate)である。inputは多様なため、聞き手は仮説をたて、必要に応じて変化させていく。
 相互的解釈(interactive account):聞いたことを理解するために様々な情報・証拠(evidence)を統合することによって、結びつきの過程は構築される。
 心理学者によると、証拠を統合すること(weighing of evidence)は活性化(activation)とよばれ、ある解釈に十分な証拠が揃うと、結びついた(match)とみなされる。(ex. [maitrein])

活性化(activation):聞いたことに対しある語を最適なものとして頭の中で目立たせる過程。

 L2の聞き手が困難に感じる点(p.165 13行目~)
① L2の音声組織(sound system)は制限があるため、仮の音声記憶を保持するのに困難を感じる。
② 解読に注意を要するためmatchingの再考が制限される。
③ 語彙の少なさと、L2を基にした音素特徴(phoneme values)を適合できるかどうかの不確さにより、証拠統合は複雑化される。

10.1.2. The question of how we store language
 学習者がある音素や語の純粋型(pure version)を頭に保持しているという見解もあるが、最近の見方によると、学習者は様々な音や言葉の記録を保持していて、新しいものを記憶と結びつける。
(ex. actuallyに関して母語話者は最低7形式保持し、異なる声、なまりの記録もある)

標本的考え(exemplar view):単語の沢山の音声例を頭に記憶し、単語の様々な異形を認識できるようにする、という考え。
 標本的考え(exemplar view)に基づくと、教師は、抽象的な形で生徒にL2の音体系を内在化させることに時間を費やすのではなく、同じ語を多様なコンテクスト、音声で提示することが必要となる。
 長文聴解は特定の語の痕跡(trace)と種類を認識するのに役立つが、より焦点をあてた練習で補足すべき。学習初期段階では同じ単語グループに関して、異なる状況、異なる話者による多様なスピードで例示すべき。

<コメント>
 リスニングはインプットに対する理解が変化していくものだ、という点は納得がいくものだった。L2の聞き手にとって、語彙の少なさ・音素モデルを適合する際の不確かさがリスニングを困難に感じる点で、この点をどう解消するかが、リスニング力向上につながると感じた。

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2010/8/26

Chapter 10
(pp. 172-184)

10.3 Processing syllables
 音節は音素よりも一貫性があるため、L1の聞き手は音素よりも、音節レベルの情報に基づいて聞き取りを行うことが多い。単語の多くは単一音節(monosyllable, single stressed syllable)であり、単一音節語は、語の機能(内容語・機能語)や語の切れ目を示す合図(cue)となる。
 言葉のリズムは、強勢(stress-timed)または音節(syllable-timed)によって決まる、という考えもある。しかし実際は、以下の要素によってリズムは決まる傾向がある。
・音節の構成(音節内の子音の数)
・schwaのような弱音節の頻度
・弱・強音節の長さの割合

10.3.1. Syllable structure
First language processing
 音節の構成は言語によって様々だが、CVとCVCが最も一般的な音節形式である。特に英語は音節型の数が多く、複雑である。Ex)CCCVCCCC(strengths)
 母語話者は結合した子音(consonant clusters)に慣れているため、発音するのに問題はないが、L2話者は半母音の転移(epenthesis)をする場合がある。(Ex.sport) 転移の問題は発話だけではなく、聞き取りでも生じる。
Second language practice
 学習の初期段階では様々な音節型に慣れさせ、音節を認識させたり、結合子音の書き取り練習などをさせるとよい。(Table 10.4参照)

10.3.2 Syllable stress (p.174)
First language processing
 強勢音節は聞き手にアクセスコード(access code)を与え、語彙の中から該当する単語を探すための手段となる。Ex)phoTOGraphy 強勢音節は無強勢音節よりも大きくはっきり発音されるため、L1の聞き手は強勢音節の音声情報に頼って聞き取りを行う。
 弱音節は、多くが一音節からなるthe, it, forなどの機能語であるため、弱音節を認識することで、decodingの初期段階から内容語と機能語を区別する事ができる。内容語は様々な意味を伴うが、機能語は約100-150語という少ない頻出語から成る。

Second language practice
 教師は学習者が強・弱音節の区別をできているか確認するための活動をする必要がある。最初に、強勢音節に注意を向けさせ、次に単語を認識させる活動ができる。(Table10.5参照)
 強勢音節と、弱音節を別々に書き取らせることによって、学習者は弱音節語の多くが、語彙的意味よりも文法的役割をしていることを確認することができる。

10.4 Processing words (p.177)
 L2の聞き手が聴解力がないのは、語彙不足のため、と判断されがちだが、次のような要因もある。学習者は音素を正しく聞き取ったか自信がなく、単語の音声知識も不確かであり、語彙も少ない。そのため、聞き取った語が未知語か既知語であるかも定かではない。
 母語話者にとっても単語レベルで聞き取るには複雑な過程である。まず、連続発話の中で各単語の始まりと終わりを認識し(10.4.1)、音声知識から適した単語を探し(10.4.2.)、未知語にも対応しなければならない(10.4.3.)。

10.4.1. Lexical segmentation
First language processing
 前章で話し言葉は多様性があることを述べたが、連続発話では単語間に一定の間がないことも話し言葉を複雑にする要因である。話者は各単語の後でポーズをとらないため、各単語がどこで終わり次の単語になるかは、聞き手が認識しなければならない。この作業は語彙的分節(lexical segmentation)と呼ばれ、音の集合を単語に適合(match)させ、適合できたら単語の終わりが分かり次の音の集合に進む、という過程だがそれほど容易ではない。
 聞き手が文脈や文法知識を用いて語彙分節を行う事は、時間・知識を要するため、より自動的な機械的作業が必要とされる。L1の聞き手が用いる単語の切れ目を見つける方法については様々な理論があるが、英語については聞き手が音韻論の知識を用いる韻律分節法(metrical segmentation strategy)が最も納得がいく。この方法では、強勢音節は語頭に来る可能性が高いことを仮定しているが、そう仮定した場合90.2%の確率で聞き取りができることが分かった。他の方法としては、頻出する接頭辞と接尾辞の音節を見つけることも有効である。
Second language practice
 強勢音節の前に単語の切れ目をつけるという分節活動をすることは有効であることは立証されている。分節活動は初級の聞き手が連続発話を理解するのにも役だつ。強勢による語彙分節の活動についてはTable 10.6参照。
 単語が規則的な強勢を伴う言語に関しては、単語の始まりと終わりが確実であるが、単語間の切れ目の合図については教師が明示すべきである。単語が規則的な強勢を伴わない言語に関しては、語彙分節方法は必ずしも適応できるものではないと教師は認識すべきである。分節による切れ目は仮のものであって、最初の仮説を調整することも重要である。
 二つ目の分節活動として、接頭辞・接尾辞の弱音節を単語の切れ目の合図とするものがある。さらに、L2の聞き手が未知語と遭遇した場合、接尾辞の知識によってその未知語の品詞を認識することができる。活動例はTable10.7参照

10.4.2 Active and automatic processes (p.181)
First language processing
 聞き取りの過程は、音声・音節などの言語信号、語彙、文脈など様々な情報から成る。適語を探す際もその情報を利用できるが、広い語彙知識と話し言葉に耳慣れた長年の経験から適語を探す際、最も重要となるのは以下である。
・頻度(Frequency):各単語は、耳にする頻度の情報とともに語彙知識に内在化される。頻度の高い単語は単語理解の際に特に重点をおかれる。
・最新の活性化(Current activation):最近聞いた語は再び聞く可能性がある語として活性化される。
・派生の活性化(Spreading activation):単語を聞いた際にその単語に関連する他の単語も活性化される。
       例)Doctorを聞いた際、patient, hospitalも聞く可能性がある語として、表面化する。

Second language practice
 L2の聞き手にとって、上記の三つの情報は限られたものとなる。頻出単語は、ある程度言語を聞かなければ、形成されない。最新の情報も、単語を正確に認識できなければ、再び聞く可能性のある単語を確認することはできない。
 理解を最も制限する要因として、L2の聞き手の語彙はL1の聞き手よりも少ないことが挙げられる。語彙の少なさから、L1の聞き手が用いる派生の活性化をL2の聞き手は用いる事ができない。教師が出来ることとしては、語の概念的つながりを強調しながら単語を紹介したり、聞く前にどのような単語が出るか推測させ聞き取り後に確認する活動などがある。その他の活動例はTable10.8参照。

10.4.3 A note on meaning
 本章は聞き手が適語を見つける過程に焦点をあて、単語の意味については言及しなかった。語彙アクセス(lexical access)という過程において、聞き手は適語を見つけるとすぐにその語の記憶を探すが、文脈を考慮せずには正確な意味は確かめる事が出来ない。単語の意味の詳細は12章で述べる。

10.5 Conclusion
 本章では二つの重要な点について述べた。第一に、音節レベルの情報は重要である事。対象とする言語を強勢語か、音節語かに分けようとするよりも、音節の形態や音節の強弱、長さに学習者の耳を慣らす方が、効率的である。第二に、語彙的分節もdecodingを困難とする主な要因であり、学習者が分節の作業を練習する事も重要である。
 概して、聞き手へのインプットは多様に展開していくものなので、decodingは仮の適合であり修正可能であることを述べた。聞くことは仮の作業であっても、さまざまな情報から成る。インプットは、音素・音節・単語の3つのレベルからのみでなく、語彙知識、文脈からも解釈される。その過程はAppendix1(p.336)に記されている。
次章ではdecodingをより大きい単位である、統語論的形式とイントネーショングループからdecodingを考察する。

<コメント>
 強・弱音節の区別をさせる、単語の切れ目を認識させる、語の概念的つながりを強調し、語彙を増やす、など、具体的な練習法が多く述べられていた。このような練習法は実際に生徒を指導する際に教師にとって役立つものとなる、と思った。

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2010/9/30

Chapter 11
(pp. 185-191)

本章では、decodeされた語を聞き手はどのように文法形式と結びつけるか、またイントネーションから得られる情報について考察していく。統語論(syntax)とイントネーションは密接な関わりがあり、この二つはdecodingだけでなく意味の構築にも貢献する。
ex) we’re leaving  文法・文脈・イントネーションの観点から理解する

11.1 Syntax and decoding
11.1.1. Recognizing syntactic units
First language processing
 一連の単語に適語を見つけると、聞き手は単語群を結び付けている文法構造を見つける。この操作はparsing(分析)と呼ばれる。文法構造を認識し、構造の終わりを認識すると、単語群を抽象的な概念に変える。この段階からは、話者が用いた正確な語は思い出せないかもしれないが、話者が意図した情報は報告できる。
 句・文などの統語的単位の終わりを認識するために、L1の聞き手は文法と頻出統語形式の知識を用いる。(ex.ある動詞は目的語が必要)
 cue(合図)も文法と同じぐらい重要で、話者が次に話すことを考えるためポーズする際cueが起こる。発話は句・節単位で計画されるため、連続発話での短いポーズは新しい文法構造の始まりを表す。一方、I meanなどの意味のないフィラー(filler)は考える時間を得るために使われる。ポーズやフィラーは聞き手にとっては、内容を素早く復習する時間として役立つ。
 ためらいのポーズ(hesitation pauses)は、前述の計画の為のポーズとは異なるもので、話者が内容を忘れたり、話す内容を変えたときに起こる。発生場所は一定せず、不完全なイントネーション形式の間で起こり、erm やerなどのフィラーになる場合もある。
 統語的境界線を見つける際も、イントネーションは役立つ。イントネーショングループは、話者の声の抑揚によってまとまるが、句・節・文章などの文法単位と一致し、聞き手にグループ内の語が統語的に関連があることを示す。
 イントネーショングループの最後はピッチが下がる、などとイントネーショングループは明確に区分されることもある。しかし、このようなcueがない場合、グループの最後の辺りにある強勢音節によってグループを確認することができる。

Second language practice
学習者が統語形式を見つける練習が役立つ。ポーズは統語形式の始まりと終わりを確認する助けになるが、イントネーショングループはその長さと抑揚が個人で異なるため、イントネーションは説明するには困難になる。

11.1.2 Online parsing
First language processing
 話者が話していることを理解するために、聞き手は文の最後まで待たないが、decodeは文が発話されてから最低4分の1秒後の遅れがある、と言われる。発話される際、聞き手は文法形式が展開している間に形式を見つけなければならない。文章の形式の予測はできるが修正が必要で文章が終わるまで最終版を決定することができない。ex) the hardened criminal  was arrested
 オンラインの形での分析をする際、得意な聞き手は選択肢を狭めるために以下のようなインプットのcueを利用する。
・ 予測(Probability):L1の聞き手は、長年の経験から、ある単語を聞くと一緒に使われる単語、次にどの単語が来るかに敏感である。聞き取りの間、次に来る語と、発話の全体的構造が示していることについての仮説を立てることができる。
・ チャンク:事前に集合したチャンクとして記憶されている、語の集団も助けとなる。コロケーション、do youなどの短い疑問文の最初の部分やI don’t mindなどの完全な統語構造があり、このような場合は単一の単位で認識されているため、各要素に分類する必要はない。
・ 動詞:使用された動詞によって文構造は決定される場合が多い。ex)put+置くもの+置く場所

Second language practice
 上記の3つのcueに共通していることは、文法知識などだけでは不十分で処理するための熟練の技が必要だ、ということである。統語的cueを認識することに焦点をあてた活動例はTable 11.2参照。
 オンラインの分析をする際、L2の聞き手は母語のcueを利用することが多い。言語は以下の4つの特徴について重要度が異なると言われている。
・ 語順(SVO, SOV, VSO)
・ 語尾変化
・ 有生(animacy;主語が生命があるか、人間か)
・ 世界観
聞き手は、自身のL1にとって重要なcueを、L2を聞く際にも処理の手がかりにする可能性がある。L2の分析で最も影響のある基準について認識することも役立ち、その活動例はTable 1.3参照。

<コメント>
 11.1.1. Recognizing Syntactic units-First language processingの箇所で、「イントネーショングループがピッチなどで明確に示されていない際、最後の辺りにある強勢音節によってグループを確認できる」ということに関して、疑問に思ったが、”Get out! Now!”などの例の意見がでて、納得がいくものとなった。

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