細胞機能が切り拓く未来の可能性
細胞機能開発工学研究室  田中秀夫 教授 青柳秀紀 助教授
 細胞機能開発工学の目指すもの
 細胞機能開発工学では細胞1つ1つの持つ機能に注目して研究を行っています。微生物や植物の細胞の機能を理解し、最大限活用する事で、人間の生活に役に立つ有用物質(医薬品や食品など)の生産や、環境浄化、環境の評価を適切に行うことができます。

 

 細胞の力を利用する -その限界と可能性 -
 パスツールやコッホなどの約100年前の科学者により自然界から微生物を取り出し、育てる技術が開発されました。それ以来、人類は様々な微生物を使って、多くの医薬品や食品を生産、利用してきました。しかし、21世紀を迎えた現在、この技術に限界が見え始めています。最近の研究では、人類が利用している微生物は地球上に存在する微生物の1%程度であり、残りの99%は利用されていないことが分かってきました。私たちはこの問題を解決できる新たな微生物(細胞)の利用法の開発を目指しています。


研究紹介ページ 高純度パン酵母細胞壁成分(β1,6/1,3Dグルカン)の試薬品化と大量生産システムの構築 (PDF: 264KB)、 ILC版はこちら (PDF: 500KB)

 

 複数の細胞を゛組み合わせる゛という考え方
 自然界では、複数の(微)生物がお互いに助け合い、役割分担をしながら生活しています。こ れを“共生”と言いますが、この共生関係を築いている生物の間には、人間の会話と同じよう な、ある種の会話(ケミカル・コミュニケーション)が存在することが分かっています。この生物間の会話をよく聞いて、これを真似することができれば、新しい人工の共生関係を創ることができるのではないかと考え研究をしています。この人工の共生関係を創ることで、1つの細胞では作ることのできない新しい有用物質の生産や、分解されにくい毒物の無毒化などが可能になり、地球環境の保全に大きく貢献できると考えています。
TOPIC
 
 シロアリは腸の中に多くの微生物を共生させることで、木を食べることができます。 シロアリが食べる餌を工夫することで、腸の中の微生物を変化させ、木が食べられないシロアリを作ることに私たちは成功しました。


研究紹介ページ 「クロレラと微生物との共生関係の解析」
「シロアリと腸内微生物叢との関係」

 

 古くから利用されてきた植物の有用物質
 古代より植物が生産する莫大な種類の有用物質が、医薬品、色素、食品として利用されてきました。植物の細胞の機能を色々な方法で高度に発揮させることで、有用物質を高速度で生産させる研究をしています。
TOPIC
 
 細胞壁を取り除いた“裸の細胞(プロトプラスト)”に、今まで自分が着たことがない、新しい種類の“人工の細胞壁”を装着してやること(細胞壁の着せ替え)で、色々な有用物質を高速度で生産することに私たちは成功しています。


研究紹介ページ 「植物・微生物プロトプラストを用いた有用物質生産」 (PDF: 814KB)
「ミシマサイコ培養根と機能性物質を組み合わせたサイコサポニンの効率的生産」 (PDF: 138KB)

 

 たった1つの細胞に驚かされることがある
 細胞の機能には知られていない部分が多く、私たちは細胞が持っている機能のほんの一部を利用しているに過ぎません。そのため、細胞の機能に残された可能性は計り知れない程大きいものです。この未知の機能を解明、利用していく細胞機能開発工学は、21世紀においてますます重要になってくると考えています。

 

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