クロレラと微生物との共生関係の解析

 本研究では、自然界に存在する微生物共生系のモデルとして、クロレラと微生物との共生関係に注目し、その解析と応用を目指している。

 Chlorella sorokiniana IAM C-212株はIAM(東京大学分子細胞生物学研究所)より分譲された時点で雑菌に汚染されていた。IAMに照会したところ、この菌株は純粋化するのが難しく、雑菌が混入した状態で継代されてきたことが明らかになった。本研究では、この汚染現象を微生物の共生系と捉えることができないか、という仮説を立てて検討を行った。

 解析した結果、本系は、クロレラ、3種類の細菌および1種類のカビで構成されていることが分かった。さら に、本系を構成する個々の細菌、カビおよびクロレラを純粋化し、個別に培養し、同定を行った。純粋化したそれぞれの株を組み合わせて相互間で行われているケミカルコミュニケーションを解析した結果、クロレラが生産するEOC(菌体外排出有機物質)を汚染4菌株はいずれも利用しており、一方1種類のバクテリアおよび1種類のカビは、クロレラに増殖促進因子を供給していることから、クロレラと汚染微生物間に共生系(2種の片利共生系と2種の相利共生系)が成立していることが明らかとなっ た。

 次に、それらの共生系が長期間安定し保持されている理由について検討した結果、クロレラと1種類のバクテリアおよび1種類のカビはそれぞれレクチン様物質を通して、また、クロレラと他の2種類のバクテリアはそれぞれゲル状粘着物質を通して、フィジカルコミュニケーションを行っており、前者では直接接着型共生系が、後者では間接接着型共生系が成立していることが明らかとなった。

 以上の結果より、クロレラと4種類の汚染菌との間には、ケミカルコミュニケーションとフィジカルコミュニ ケーションが同時に行われており、非常に安定で保存性の高い共生系が成立していることが明らかとなった。

 現在、本系のケミカルコミュニケーションとフィジカルコミュニケーションのメカニズムを基に、新規な人工の微生物共生系の構築と、人工の微生物共生系による新規な有用物質生産システムおよび環境浄化システムの開発を試みている。

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