電力市場と需給調整制御を模擬する実験環境の構築

東京理科大学 工学部電気工学科
山口 順之

わが国の電力システム改革においては,需給調整市場システムの開発が開始されるなど,第3弾改正電気事業法の施行に向けて準備が正念場を迎えている.新たな市場整備の方向性として,「ベースロード電源市場」「間接送電権」「容量市場」「需給調整市場」の4市場について方向性が示されているが,再生可能エネルギーが導入されていく中,供給力や調整力をいかに確保するかが,電力自由化を実施した諸外国でも課題となってきており,今後,わが国でも検討を深めるべきと指摘されている.

電力システム改革により誕生する新しい電気事業制度においても,再生可能エネルギーの大量導入による低炭素化とエネルギーセキュリティの確保の公益的な課題の重要性が後退することはない.これらの公益的課題は,電力自由化の下での市場参加者の電力取引ニーズに応じることによる経済合理性を確保しつつ対応する必要がある.そのためには,新しい電事業制度においても,電力系統工学の視点から高信頼度の電力供給を維持できるかどうか,十分に検討されるべきである.

本研究では,卸電力取引において,先物市場とスポット市場(前日市場),時間前市場という市場が存在すると想定した時に,この電力取引が電力系統運用にどのような影響を及ぼすかについて,模擬発電装置と模擬負荷装置の実機を用いた実験を通じて検討するための基礎検討として,電子計算機上の電力取引シミュレーションと実機を用いた系統電力模擬実験をどのように連携させるかを提案するとともに,卸電力取引所を考慮した電源運転計画がどのように関係するかについて検討を行う.