日射量予測と太陽光デリバティブのためのノンパラメトリック複合モデル

筑波大学 大学院ビジネス科学研究科
松本 拓史

日射量や太陽光発電出力の予測は,日々,翌日の電力取引を行う発電事業者にとっての重要な課題である.出力予測誤差が存在する場合,電力系統運用者による即時の供給補てんが必要となるなど,追加的な需給調整コストが発生する.このような背景から,予測誤差にはペナルティーが課されており,太陽光発電出力の予測誤差は発電事業者の損失に直結している.本報告では,こうした損失を効果的にヘッジするための天候デリバティブの設計を目的として,ノンパラメトリック回帰の手法を用いた複合的なモデルを提案する.

まず,一定の損失関数を定義した上で,日射量の予測誤差を原資産としたデリバティブのヘッジ効果を測定し,風力発電における既往のヘッジ手法が,周期性をもつ太陽光発電にも有効であることを実証する.また,気温の予測誤差の絶対値に基づくデリバティブを導入し,これを用いたクロスヘッジの手法を提案する.その際,日射量デリバティブと併用することでヘッジ効果が改善することに加え,気温デリバティブのみを用いた場合でも一定のヘッジ効果が得られることを示す.特に,デリバティブの最適契約量等を推定する際には,既往の単変量のスプライン関数を用いたモデルに加え,日内トレンドと季節性トレンド両方向の平滑化条件を同時に加味する2変量のテンソル積スプライン関数を用いたモデルを新たに提案し,その有効性を明らかにする.