人工市場による電力先物取引の効果分析
筑波大学 ビジネスサイエンス系
倉橋 節也
日本における電力小売の全面自由化が開始され,新電力への契約先スイッチングが約795 万件,従来の大手電力内での契約スイッチングが約489万件となり,合計で20.5%となり,kWhベースでも10%を持続的に超えるようになった.これらの電力は,電力卸売市場や市場外の相対取引などによって,発電事業者・電力小売事業者による売買が行われている.電力取引が市場で売買されることにより,市場原理によって価格の透明性が促進され,より安い電力供給が可能となることが期待されるが,一方で安定した価格での電力供給を行うためには,長期に渡る売買契約が必要になる.このような中,経済産業省は電力先物市場協議会を設置し協議を重ねてきていたが,制度設計が難航し,現在のところ上場の正式な計画は示されていない.そこで,本研究では,日本卸電力取引所で取引が行われている現物市場(スポット市場,時間前市場)に対して,今後導入される電力先物市場がどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的に,両者をモデル化した人工電力市場を構築し,経済的で安定した電力取引を行うための市場設計を目指す.
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