トレーディング専門会社の誕生と日本の電力取引市場の展開
東北電力エナジートレーディング株式会社 代表取締役社長
土方 薫
日本の電力ビジネスにおける市場化の勢いが顕在化している。2005年から開始されたJEPX(日本卸電力取引所 組織設立は2003年11月)の取引量は、当初では1%にも満たない些細な市場規模であったものが、最近では全電力需要量の30%を超す日も珍しくなくなっている。
こうした市場の成功(take-off)の背景には、官製自由化と揶揄される部分もあるものの、電力業界の中で電力自由化に向けた、大きなパラダイムチェンジがあったからに他ならない。いかなる巨大な生産者や供給者であったとしても、30%を超えるシェアを占めるスポット市場の動向を無視することは到底できないことは、他の商品市場を見ても自明なことである。この流れが意味することは、旧一電と呼ばれる電力会社が、かつて総括原価と呼ばれる方式に則って、自らの理屈で価格を決定していた支配力を、失いつつあると言う事である。
こうした中で、昨年、電力・燃料のトレーディング専門会社を、東北電力が他に先駆けて設立した。その背景とは何か、何が東北電力を動かしたのか、まず、これらについて解説する。続いて、今後の電力市場の流れを俯瞰する。また加えて、今後予定されている電力先物市場の概要を説明し、最後に将来の取引市場の展望に触れることにする。
トレーディング専門会社の誕生と日本の電力取引市場の展開
1. トレーディング会社を設立に至った背景
2. 日本の電力先物市場の概要
3. 日本の電力取引市場の展望
|