市場取引に基づく自律分散型マイクログリッド

東京大学大学院工学系研究科 原子力国際専攻
藤井 康正

分散電源を主力とする電力システムの実現策の一つは,地域ごとに物理的に小規模システムを構成し,中央制御施設からの指令で電力を地産地消するマイクログリッドである.その地理的制約を緩和したものが,仮想発電所 (VPPVirtual Power Plant) で,アグリゲータが広域に点在する分散電源などを情報通信技術で遠隔監視・集中制御する.これらとは異なる方策で,昨今注目を集めているのが,ブロックチェーンなどを活用した分散電源の発電出力のピアツーピア取引である.

本講演では,電力市場で紐づけされたピアツーピア電力取引に基づく,自律分散型マイクログリッドについて紹介し,従来の集中制御型のマイクログリッドなどとの差異について議論し,今後の電力システムの在り方について考察する.そして,この革新的な配電システムをマルチエージェントシステムとしてモデル化し,その数値シミュレーションを通して,期待されるメリットなどについて述べる.このような市場取引に基づくマイクログリッドの実現は容易ではなく,ハード的には電力のパケット化など低圧配電系の大幅な革新が前提となり,ソフト的にも人工知能などを用いた高速自動入札システムの開発が必要となると考えられる.