不透明性の時代 〜 わからなさとの共生 〜

東京大学 工学系研究科 システム創成学専攻
大澤 幸生

太古の人里では30メートル先の人の姿くらいは見えていたのに対し,現在の地球では壁向こうの3メートル先や足元の地下街にいる人も見えない.これらの見えない人や物の挙動は,大小玉石さまざまなデータとなって現代社会を覆い,人にとって「わかる」世界は地球の裏側まで及んでいる.しかし,そのデータを利用するために必要となった新しい「知能もどき」であるAI-の複雑さは,この歴史の途上に現れた望遠鏡などの観測ツールになかった道具の難解さという新たな不透明性を生み出すようになった.データに覆われてゆく地球で,人はどのように手掛かりを得ながら生きてゆくだろうか.ここでは,「データジャケット」と「メタセンシング」という二つのコンセプトをからこの問題を考えたい.