Land ia hemi barava impotant samtin blong oloketa

ソロモン諸島の伝統的土地制度


ソロモン諸島国の総陸地面積は28,373km2である。そのうちの約90%の土地は慣習地(customary land)であり、 残りのほとんどは譲渡地(alienated land)である。

慣習地はもちろんのこと、譲渡地についても、憲法上、土地の 所有権者はソロモン諸島国民に限定されるが、例外的に、ソロモン諸島国議会の承認を得れば、他国籍の個人や法 人でも所有できる。ただしその場合でも、『土地および土地権に関する法律』 (Land and Titles Act1978) の規定 により、その所有期間は75年間に限定される。


譲渡地は、19世紀末以降、ソロモン諸島社会がキリスト 教会や植民地政府と接触する過程で生みだされた。

ヨーロ ッパ人は、ソロモン諸島民による土地の伝統的利用法や土地所有制度を無視し、居住や耕作に使われていない土地を 「遊休地」と判断して地元民に断りなく接収したり、タバ コ1箱と島1つなどの不平等な交換によって慣習地を取得 した。

1913年までに総陸地面積の約4.5%がヨーロッパ人 の手に渡っていたが、ヨーロッパ人とソロモン諸島民間の いくつかの抗争をへて、1914年には、植民地政府が法的 (King's Regulation No.3, 1914)に新たな土地の接収を規 制した。 このように、植民地政府や入植者によって収奪された土地を譲渡地という。ヨーロッパ人は、それらの土地を主にココヤシ農園の開発のために使用した。

現在、譲渡地の大部分は、ソロモン諸島の独立とともに公 有地になっている。それらは、首都ホニアラや各州々都として、あるいはココヤシ農園やアブラヤシ農園(企業が政 府から賃借して使用)として、使われている。
熱帯林



ソロモン諸島国領土の大部分を占める慣習地は、ピジンイングリッシュで「クラン」(klan)と呼ばれる親族集団 (あるいは例外的に個人)が伝統的に使用してきた土地である。その領域は、川や谷、山頂などに囲まれた範囲であるが、境界がはっきりと確定されているわけではない。

ある土地領域の「所有権」を示す最も有力な証拠は、キ リスト教化する以前に使われていた聖域(祖霊や精霊を祀る)である。親族集団の各成員は、共通の祖先と土地を通 じて相互の関係を認識する。土地を仲立ちにしたそのような親族集団を、とくに私は「土地所有集団」と呼んでいる。

土地所有集団の土地に対する権利は、単に慣習地そのものに対するだけでなく、土地に生えている樹木やそこに生息 する生物、領域内の河川を利用する権利を含む。ただし、現行のソロモン諸島国法では、金やニッケルなどの地下埋蔵資源は政府のものであり、慣習地を所有する集団には属さない。


ある土地所有集団の土地権は、数世代あるいは十数世代前の祖先が、いかなる土地所有集団も権利を主張していない土地をきりひらき、生業活動に利 用することによって確定したと考えられている。

1度ある集団が使用した土 地の権利は、その土地が休耕期間中であっても、最初にきりひらいた集団に 帰属し続ける。基本的に同様の制度は、ソロモン諸島の全域でみられる。土地権の移譲は、ソロモン諸島が植民地化される以前の伝統的社会においては、集団間抗争や大規模な饗宴を主催することによってごく希におこなわれていたが、あくまでも例外的な出来事であった。

現在、ソロモン諸島の人びとは、慣習地に対する伝統的土地権について、1次的権利(primary right) と2次的権利(secondary right) という2種類の用語で説明する。しかし、ソロモン人の中には、それらに加えて3次的権利(tertiary right) というカテゴリーを想定して説明する人もいる。私は、これまでのソロモン諸島における調査経験から、土地権という用語に3つのカテゴリーを想定して考えた方がより実態に即していると考えている。

1次的権利は土地権を次世代に相続させる権利である。2次的権利は、生業活動をおこなったり、住居を建てて居住するための権利である。これらの権利は系譜に基づいて生得的に取得される。島によって、1次的権利と2次的権利を父親の集団から相続するところ(男系成員が1次的権利を継承する)と、母親の集団から受け継ぐところに分かれる。 1次的権利を男系成員が相続する集団では、女性成員が2次的権利者となる。3次的権利は、饗宴などの必要な手続きをとることによって取得される土地権である。この権利は、日常的な生業活動をおこなうためのものであり、それ以外の使用に関しては、その土地の1次的権利や2次的権利をもつ人びとの承認を必要とする。1次的権利者と2次的権利 者は同じ土地所有集団の成員であるが、3次的権利者は別の土地所有集団に属する。
焼畑













収穫


たとえば、1次的権利を男系成員が相続するA集団出身の男性が、同様のB集団出身の女性と結婚し、B集団の村に居住したとする。この場合、B集団出身の妻はB集団が所有する土地領域に対する2次的権利をもっているので、生業 活動に困ることはない。しかし、彼らの子どもの世代に至ると、子どもたちは皆、父親の土地所有集団(A集団)に属するので、母親のもつB集団の土地権は継承されない。つまり、子どもたちがB集団の村に居住し続けるかぎり、原則 的に彼らは日常生活域内に土地権をもたないことになってしまう。そこで彼らはB集団に対して必要な饗宴をおこない、3次的権利を取得する。父親がこの方法によって3次的権利を取得した場合、子がその権利を1次的権利と混同することが少なくない。このようなケースは、土地所有集団間の土地境界の認識の違いからくる紛争と並んで、土地紛争のひ とつの典型である。

土地紛争は、たいてい、問題となる慣習地を利用して何らかの現金収入を得ようと模索するときに表面化する。つまり、常にそれは開発をともなって生ずる現象なのである。原則的に、1次的権利者や2次的権利者は、土地の生産物(動植物 含む)を売却して利益を上げる権利をもつが、3次的権利者にはそれがない。3次的権利者がそれをおこなう場合、1次 的権利者や2次的権利者の了解が必要であり、通常、利益の一部を彼らに分配しなければならない。土地境界問題にしろ、土地権の種類の混同問題にしろ、土地紛争は1次的権利をめぐって争われる。

慣習地の大部分は土地境界や所有権者(集団)名が明確になっている わけではない。そこに開発をめぐる利害対立が介在し、1次的権利に絡む争いが生じる。ソロモン諸島の開発は、土地(と くに慣習地)をめぐる紛争と常に密接な関係にある。