Kubo & Ohmura, The Bryologist, 2025

Googleストリートビューで
地衣類の成長速度
推定する

過去のGSV画像と現地計測を組み合わせた新手法。 従来は数年かかっていた成長速度の推定を、 手持ちのExcelシートだけで効率的に算出できます。

なぜGoogleストリートビューが使えるのか

地衣類は菌類と藻類からなる共生体で、 樹木や岩の表面にゆっくりと広がります。 大気汚染や気候変化に敏感に反応するため、 世界中で環境指標生物として活用されています。

しかし成長速度の研究には長年の観察が必要であり、 データが揃っている種は限られていました。

従来の課題

成長速度の計測には数年〜十数年にわたるフィールド観察が必要。多大な時間・労力・コストがかかり、データ蓄積が進みにくい状況でした。

この手法のアプローチ

Googleストリートビューの過去画像は、現地を訪れずに「過去の地衣類サイズ」を取得できるタイムマシンとして機能します。

推定の原理

v = (現在のサイズ − 過去のサイズ) ÷ 経過年数

※ 画像のぼやけ・撮影角度・レンズ歪みによる誤差を考慮した補正込みで算出されます。
詳細な数式は Kubo & Ohmura (2025) をご参照ください。

精度のカギは「基準長」です。地衣類コロニーに近い、 時間経過で変化しにくい対象(樹木の節間、岩の構造など)との距離を 基準として比較することで、スケール変換の誤差を最小化します。

rm — 実測基準長
現地で計測した基準長。地衣類コロニーにできるだけ近い対象を選ぶこと。
mm
vi — 地衣体の縦幅(実測)
横幅は幹の肥大で変化するため、縦方向の長さを使用する。
mm
rs,i — 画像内の基準長
GSV画像上で測定した基準長。rmとの比率でスケールを算出。
pixel(比率のみ重要)
ws,i ± ew,i — 画像内コロニー幅
ぼやけを含む外側と除いた内側の両方を入力し、誤差幅を推定。
pixel

6ステップで成長速度を算出

STEP 01

Excelシートをダウンロード

日本語版または英語版を入手。緑色のセルのみ入力します。

Excelシートの入力セル
STEP 02

現地で測定

実測基準長 (rm) と地衣体の縦方向の実測値 (vi) を記録。

現地測定 rm と vi
STEP 03

GSV画像を収集

過去の複数時点の画像を取得。地衣体がぼやけすぎている画像は除外。

GSVの過去画像収集
STEP 04

画像から数値を入力

各画像の年・月、画像内の基準長 (rs,i)、コロニー幅 (ws,i ± ew,i) を入力。

rs,i と ws,i の測定
STEP 05

成長速度が自動算出

水色セルに半径あたりの成長速度 (mm/年) と誤差が表示されます。
例: 3.55 ± 0.21 mm/年

成長速度の自動算出結果
STEP 06

グラフを確認

別シートに時系列グラフが自動生成されます。

自動生成グラフ

測定誤差を最小にするために

📍

基準長はコロニーの近くを選ぶ

地衣類コロニーと基準長の対象がカメラからの距離・角度で大きく異なると誤差が増大します。できるだけ近い位置の対象を基準にしてください。

🎯

画像の中心付近で測定する

GSV画像は画面の端ほど歪みが大きくなります。コロニーと基準長がともに中心付近に映っている画像を優先してください。

🌿

基準長は安定した構造を選ぶ

樹木の節間(2年目以降は伸びない)、枝の分かれ目、岩の構造、コンクリートブロックなど、時間経過で変化しにくい対象が最適です。

📐

縦方向の長さを使う

横幅は幹の肥大成長によって変化しやすいため、地衣体コロニーは縦方向のサイズを使用してください。

🔍

現地調査→GSV確認の順が効率的

GSVで対象を探してから現地に行くより、現地で見つけた地衣類を後からGSVで確認する方が成功率が高いです。

⚠️

適用しにくいケース

基質が剥落している場合は連続データとして使えません。また立体的に成長するハナゴケ属・カラタチゴケ属などは適用が困難です。葉状・固着地衣類に最適です。

Excelシートを入手する

入力セルに数値を入れるだけで成長速度と誤差を自動算出。
グラフも自動生成されます。

引用(本手法を研究で使用する場合)
Kubo, K. and Ohmura, Y. 2025. Estimation of lichen growth rates using archived Google Street View images. The Bryologist, 128(3): 514–521.
https://doi.org/10.1639/0007-2745-128.3.514
お問い合わせ:大村嘉人 ohmura-y[at]kahaku.go.jp