インチキ商品にだまされないために


情報番組の「科学」
某情報番組の関係者から問い合わせを受けたことがあります。葦がなぜリードに適しているかという質問でした。そこで、葦には様々な欠点があること、葦でなくてもリードはつくれることなどを詳しくお伝えしました。そしたら何回かのやりとりの後、「結構です」みたいなことを言われ、それ以降、連絡はありませんでした。当時海外にいたので番組を直接見ることはできませんでしたが、人に聞いた話では、主に葦の水質浄化能が紹介され、どこかのリード研究家がちょろっと出演する形で放送されたそうです。

要するに番組制作者は「葦ってすごい!」という話にしたかったわけで、「葦でなくてもいいよ」なんてことを主張する奴が出てきたら困っちゃうわけです。あの人たちにとって大事なのは人目を引くトピックであり、信頼性や普遍性は問題ではないのです。

もちろん、番組に出演している科学者(○×大学の教授etc)のコメントが全部インチキだなんて言いません。その多くは真実だろうと思います。でも少なくとも「番組の流れに沿ってコメントしてくれる科学者が恣意的に選ばれている」ことは間違いありません。科学者の中には、自分の発言を歪曲され、憤慨している人もいます。
(以下、新聞記事からの引用)

「以前、『あるある』に出演し、苦い思いをした。」・・・唐木さん(東大名誉教授)
は、主観的判断が混じる実験に疑問を伝えたが、放送を見て無視されたことを知ったという。以来、メディアの健康情報に疑問を抱いている。

「人間!これでいいのだ(TBS)」に関して:研究メンバーの一人・・・は「科学者のモラルとしてお断りしたのに、実験の体をなしていないような番組と私たちの研究が結びつけられ、研究の社会的信頼が著しく損なわれた」などと話し、TBSに抗議するという。

これらは良心的な科学者が「被害者」となった例ですが、その一方で、この種の番組を売名に利用しようとするインチキ科学者も後を絶ちません。専門家が見れば明らかに誤り(または猿まね、焼き直し)だとわかる研究内容を平気で披露する「○×大学教授」がいるのも事実です。結局のところ、テレビやウェブサイトの内容を鵜呑みにするな、肩書き(教授、博士など)を盲信するな、ってことでしょうか。


氾濫するトンデモ商品
「リードに直流電圧をかけて組織が整列させ活性化することによりリードの鳴りを良くする」器具が5100円で売られているそうです。私なら、そんなものに5100円払うくらいなら普通のリードを3箱買います。少なくとも、葦に電圧をかけても組織が変化することはありません!

もちろん、その器具を使って「鳴りが良くなった」と感じる人がいても、その人をバカにするつもりはありません。それでその人が幸せになるなら、5100円も無駄ではないでしょう。

ただ、「組織を整列」とか「活性化」といったもっともらしい説明をつけることには欺瞞を感じます。楽器の世界は感性の世界ですから、どうしても感覚に頼らざるを得ませんが、だからといって、奏者の不安や焦りにつけ込むインチキ商品が出回って良いはずはありません。

リードに電気を流して繊維を整列させる「活性器」、楽器に吹き付けるだけで音がよくなる「音響水」・・・世の中にはトンデモ商品が溢れていますが、努力をせずに手っ取り早く良い音を出そうとする奏者がいる限り、そういう商品はなくならないのではないでしょうか。


ちなみに、本サイトは学術雑誌に掲載された情報に基づいていますので、「それなりに」信頼性は高いと思いますが、だからといって100%正しい保証はありませんし、もちろん、奏者の感覚を否定するものではありません。あくまで葦に関する基礎知識として読んで頂きたいと思います。


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