楽器に使われる希少材
データを無断で引用しないでください。
楽器に使われる希少材
現在、象牙の取引は厳しく規制されていますが、アフリカゾウの密猟は続いています。需要があるからです。象牙製品を買う人はおそらく「自分が印鑑を1本買ったくらいで大した影響はない」と思っているでしょう。でも、1万人がそう思ったらどうなるでしょうか?
絶滅危惧種は楽器にも使われています。「楽器は芸術の道具だから」などという理由で乱獲や乱伐が許されるはずはありません。これからは、楽器メーカーも、楽器奏者も、真剣に考えるべき問題だと思います。
ここでは、CITES(いわゆるワシントン条約、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の規制対象となっている絶滅危惧種のうち、楽 器に使われている数種を紹介します。なお、比重、ELは木目方向のヤング率(堅さ)、1/Qは振動吸収能に関係する内部摩擦です。
ペルナンブコ(Paubrasilia echinata)
商用名はブラジルウッド、弦楽器の弓用材です。密度は代替材に比べて内部摩擦(振動の減衰に関係する量)が著しく低いこと、それが特有の成分に由来することがわかっています。詳しくは松永先生(森林総研)のサイトをご覧ください。
比重: 0.8~1.0
EL: 10~30 GPa
1/Q: 0.003~0.008
出典: 木材学会誌, 40(9),
905-910 (1994)
グラナディラ(Dalbergia
melanoxylon)
言わずと知れた木管楽器管体用材です。ワックス状の心材成分を多量に含んでおり、それが優れた耐水性や寸法安定性に関係していると思われますが、詳細は不
明です。木目方向の力学特性は月並みですが、せん断強度は木材の中でもトップレベルです。これは、木繊維が交錯していることによると思われます。吸水によ
る膨潤率はカエデと同程度です。
比重: 1.3
EL: 16(乾)~12(湿)GPa
1/Q: 0.007(乾)~0.021(湿)
せん断弾性率GLT: 2.7(乾)~1.6(湿)GPa
せん断強度:
21(乾)~15(湿)MPa
全膨潤率: 7.4%(T方向)、2.6%(R方向)
出典:
IUFRO Conference Division 5, Forest Products, pp.240-241 (2012)
ブラジリアンローズウッドもしくは紫檀(Dalbergia
nigra)
木管楽器の管体、打楽器の音板、二胡の胴などに幅広く使われています。
比重: 0.7~1.0
EL: 7~20 GPa
1/Q: 0.004~0.008
出典:
J. Acoust. Soc. Am. 131(1), 807-818 (2012)
ニシキヘビ(の皮)
二胡の響板に使われます。物性に関する報告はほとんどありません。