木曜セミナー科学特別セミナー 日程表

 

2018年度

 

        126日(木)15:1516:30     総合研究棟A公開講義室 (110)

講演者:立花義裕(三重大学) 

タイトル:低温のオホーツク海上の「高気圧」は梅雨と偏西風を強化する

要旨:オホーツク海高気圧が「平成307月豪雨」の一翼を担ったことで、その成因や変動に市民の関心が集まった。オホーツク海は海氷に広く覆われる海域としては北半球最南端であり、夏の海面水温も、この緯度帯の大洋の中では一番の低温である。それに加えて千島列島近傍は、強い潮汐流による海水の鉛直混合の影響で、真夏でも海面水温は摂氏2度程度である。夏の海面水温が北極海並に低温であることの影響で、オホーツク海は霧などの低層雲を伴う非常に低温の下層大気が安定的に存在する。これが日本に流れる現象が冷夏や凶作をもたらし、ヤマセと呼ばれ、これら凶作が日本の歴史にも影響したとする説を唱える研究者もいる、日本にとってきわめて重要な高気圧にも関わらず、その実態は謎である。理由の一つは、日本船によるオホーツク海の観測が国際関係から不可能であるかである。本セミナーではロシア船によるラジオゾンデ観測によって明らかとなったオホーツク海高気圧と直下の海洋の関係に関する観測的知見を紹介する。また、オホーツク海の存在が偏西風と梅雨を強化していることを、大気大循環モデルによって示した知見も紹介する。

 

        118日(木)16:4517:30     総合研究棟A公開講義室 (110)

講演者:釜江陽一(持続環境学専攻)

タイトル:全球規模の気候変動と豪雨との関係

要旨:気候変動と豪雨に関する基礎的な内容について、詳しく勉強したことがない人にもわかりやすく解説する。平成30年西日本豪雨のように、日本は頻繁に豪雨災害に見舞われている。地球規模で進行する気候変動により、豪雨はこれからどのように変わっていくのだろうか?今回は、平成307月の豪雨をもたらした、「大気の川」と呼ばれる水蒸気の流入現象に注目し、世界各地で起きている豪雨災害との関係や、その将来予測について紹介する。

 

        1025日(木)15:1516:30   総合研究棟A公開講義室 (110)

講演者:原田真理子(地球環境科学専攻)

タイトル:古環境モデリングと生命科学実験から明らかにする地球環境と生命の進化

要旨:地球誕生以来、その環境は大きく変化してきた。環境の変化は生命圏の変化を促し、これがさらなる環境の変化を引き起こすことで、環境と生命は密接に関わり合って共進化してきたと考えられる。

今から約20億年前にあたる原生代初期は、地球環境と生命の両者に大きな変化が起こった代表的な時代である。この時代には、(1)気候変動(全球凍結)、(2)大気酸素濃度の上昇、そして(3)生物の跳躍的な進化がほぼ同時に起こったことがわかっている。しかし、この3つのイベントの間の因果関係は明らかでなかった。

本発表の前半では、全球凍結と大気酸素濃度の上昇との因果関係を、古環境モデルを用いて検証した研究成果を紹介する。数値計算の結果、全球凍結後に生じる急激な温暖化が酸素発生型光合成生物の大繁殖を引き起こすことが示唆された。発表の後半では、大気酸素濃度の上昇と生物進化との因果関係を理解するための第一歩として、発表者が現在取り組んでいる抗酸化酸素の祖先型復元実験を紹介するとともに、今後の研究計画についても触れる予定である。

 

        927日(木)9:0010:00(開始時間注意)         計算科学研究センター国際ワークショップ室

講演者:山上晃央 (計算科学研究センター)

タイトル:Medium-Range Forecast Skill of Extraordinary Arctic Cyclones in Summer(中期予報における異常な夏季北極低気圧の予測可能性;博士論文公開前発表)

 

        920日(木)16:0017:15(開始時間注意)        総合研究棟A公開講義室 (110)

講演者:三寺史夫 (北海道大学低温科学研究所)

タイトル:深海底の緩やかな地形が生み出す海洋表層ジェットと海面水温勾配の強化

要旨:北太平洋の亜熱帯循環と亜寒帯循環の境界では、黒潮水と親潮水が入り組みながら複雑な海洋前線構造が形成されている。そこには黒潮続流から派生した準定常的な表層ジェットが存在しており、高温高塩の海水を高緯度域へと運ぶ役割を担っている。この海流を、ここでは発見者にちなんで磯口ジェットと呼ぶ。黒潮起源の温かい磯口ジェットと親潮起源の冷たい水が接する亜寒帯フロントは、北太平洋における最も強いSSTフロントであり、その変動は北半球の気候変動に大きな影響を与えることがわかってきた。また、北太平洋スケールの熱・水・物質循環においても重要な役割を担う海流でもある。このように近年注目されている磯口ジェットであるが、その形成過程や変動機構は未解明であった。

本講演では磯口ジェットの形成過程について、傾圧ロスビー波の伝播の観点から考察する。そして、北太平洋の深海底5500m深における(今まで見過ごされていた)緩やかで背の低い地形が、表層の海流およびSSTフロントの形成に驚くほど影響を与えることを示す。

 

        920日(木)10:3012:00(開始時間注意)        計算科学研究センター会議室A

SpeakerIan Renfrew (University of East Anglia)

TitleFoehn winds: causes, characteristics and impacts

AbstractThe foehn effect is well known as the warming, drying, and cloud clearance experienced on the lee side of mountain ranges during flow over conditions. Foehn flows were first described more than a century ago when two mechanisms for this warming effect were postulated.  In this talk I will present the direct quantitative contribution of these and other foehn warming mechanisms. Our results suggest a new paradigm is required after it is demonstrated that a third mechanism, mechanical mixing of the foehn flow by turbulence, is significant. In fact, depending on the flow dynamics, any of the three warming mechanisms can dominate. A novel Lagrangian heat budget model, back trajectories, high-resolution numerical model output, and aircraft observations are all employed. The study focuses on a unique natural laboratory namely, the Antarctic Peninsula and Larsen C Ice Shelf. In this area foehn flows are prone to jets, which are relatively cool and moist, and wakes, which are relatively warm and dry, i.e. they have an enhanced foehn effect. These foehn jets are a type of gap wind, so funnelled through gaps (or inlets) in the mountain range. Foehn events can be divided into two types, depending on the non-dimensional mountain height. During a non-linear foehn flow, mountain wave breaking and strong down-slope acceleration leads to strong leeside warming, but a hydraulic jump prevents it being widespread. In contrast during a linear foehn event, there is no hydraulic jump and the foehn warming is widespread. Recent research by colleagues into wintertime foehn events and on the surface energy budget of foehn events will also be discussed.

 

        712日(木)14:4516:00(開始時間注意)        総合研究棟A公開講義室 (110)

講演者:今田由紀子(気象研究所) 

タイトル:イベント・アトリビューション研究のこれまでの歩みと今後

要旨:数十年に一度発生するような異常気象に対して地球温暖化がどの程度影響を与えているのかを知りたいという社会からの要望に応えることは、気候変動の専門家として重要な役割である。このような期待に応えるために考案された、気候モデルのラージアンサンブル実験を用いて温暖化の寄与を確率的に推定する新しい試みをイベント・アトリビューション(EA)と呼ぶ。

ここ数年間、我々は試行錯誤しながらEA研究に取り組んできたが、ターゲットとなる事象が気温現象(猛暑など)なのか降水現象(豪雨など)なのか、注目する時間スケールや空間スケール、発生頻度を対象とするか強度を対象とするか、熱的変化と循環場の変化のどちらに注目するか、など、アプローチの仕方によって温暖化の寄与の見え方が全く異なってくることに頭を悩ませてきた。ここでは、私が取り組んできた研究の一部を実例として挙げながら、EA研究におけるこれらの課題について議論する。

 

        614日(木)15:1516:30     総合研究棟A公開講義室 (110)

講演者:石崎紀子(計算科学研究センター) 

タイトル:地域気候変動解析を可能にするダウンスケーリング

要旨:温暖化に対する人々の関心は高まっており、気候変動に適応するための対策は自治体レベルで行われるようになってきた。計算科学の発展により、全球モデルの空間解像度はますます高度化しているが、それでもなお、全球モデルとニーズとの間には空間解像度の隔たりがある。このギャップを埋める手法がダウンスケーリングである。ダウンスケーリングを用いた地域気候解析には、親モデルである全球モデルの不確実性、領域モデルの不確実性、自然変動の不確実性など様々な不確実性要因が絡んでくるが、不確実性があるということは信頼できないということではない。今回のセミナーでは、これまでに従事してきたプロジェクトの中で進めてきた、力学的・統計的ダウンスケーリングのそれぞれのメリットを生かした日本域の地域気候変動解析や、不確実性の扱いに関する研究について紹介する。

 

        67日(木)16:4518:00      総合研究棟A公開講義室 (110)

講演者:Vitanova Lidia Lazarova(地球環境科学専攻) 

タイトル:Numerical Study of Urban Heat Islands in Sofia and Sendai with Present, Past, and Potential Natural Vegetation Land Use(現在、過去、および潜在自然植生土地利用を用いた仙台とソフィアのヒートアイランドの数値モデル研究)(博士論文公開前発表)

 

        510日(木)15:1516:30     総合研究棟A公開講義室 (110)

講演者:近藤圭一(気象研究所) 

タイトル:「京」コンピュータを用いた大規模数値予報とデータ同化

要旨:近年の計算科学・計算機科学の進展により、天気予報の分野でもこれまで不可能であったことが可能となりつつある。その中核の一つに位置づけられているデータ同化は、数値モデルと実世界の観測を融合させ相乗効果を生み出す。本講演では、これまで「京」コンピュータを使って実施してきたアンサンブルデータ同化による数値実験や、集中豪雨研究への取り組み等を紹介する。

 

        419日(木)15:1516:30     総合研究棟A公開講義室 (110)

講演者:松枝未遠(計算科学研究センター) 

タイトル:冬季東アジア域における大気循環場とその予測可能性

要旨:再帰性・持続性のある大気循環場 (例えば、天候レジーム)により、その周辺地域に熱波・寒波・長雨・干魃といった異常気象がもたらされることがある。本発表では、ERA-Interimにより特定された冬季東アジア域の5つの卓越循環場の特徴(循環場サーキット、MJOENSOとの関係)に触れたのち、その予測可能性について中期アンサンブル予報データにより調査した結果を紹介する。

# 本発表は、Matsueda and Kyouda (2016) がもとになっています。

 

        412日(木)15:1516:30     総合研究棟A公開講義室 (110)

大気科学分野全体ガイダンス(内部向け;非公開)

 

 

2017年度の日程表