筑波大学 人文社会科学研究科                                                現代語・現代文化専攻                                           平井 明代研究室



 

4. Language Proficiency Frameworks and Scales

A. U.

Proficiencyとは、language outcomeを測定したり、生徒の進捗を追跡したり、第2言語/外国語のカリキュラム・指導・評価について議論するすべての人に対して普遍的な言語(common language)を与えたりするための複雑で役立つ構成要素である。

■この章では、以下のことに焦点を当てる。

Proficiencyについて、歴史的な観点から定義づけをする。

the Interagency Language Roundtable (ILR) , the ACTFL Proficiency Guideline(ACTFL), the Common European Framework of Reference(CEFR)の年代的な発達を介して過去60年間における熟達度の順列を明らかにする。

③上記に挙げた枠組みや尺度が異なるニーズ,文脈,聴衆を対象にしていることを明らかにする。

④ローカル/グローバルな観点とSLA研究/言語学習の観点から、language testing situationをもたらす価値について明らかにする。

⑤どのようにして枠組みや尺度が指導・学習へ波及するのかについて提案する。

 

Key Concepts

Language Proficiency:パフォーマンスの観察を通して説明される言語能力の測定。言語使用の文脈が組み込まれており、意思決定目的で使用されることが多い。

Proficiency Scales:習得のランクまたは順序の仮想スキームに従って垂直に配置された、言語能力の1次元の段階的な一連の言語能力記述子のこと。

Proficiency framework:言語能力、文脈、および機能の多次元範囲が水平に配置され、各水平要素に対応する垂直的な能力の尺度のこと。その一部は重複している可能性がある。

Language standards:カリキュラム、シラバス、タスク、テキスト評価、およびその他の教育資源を仮定した言語開発を明確にし、導く習熟達度の尺度および枠組みに合わせること。

Proficiency tests:特定の実世界での使用に関連する言語能力の測定は、多くの場合、標準設定手順(standard-setting procedures)を通じて熟達度の尺度と枠組みに経験的に調整される。

 

Key Issues

Defining Language Proficiency

■言語熟達度のモデルを定義づけすることは、言語熟達度を評価することにおいて必要不可欠な部分である。言語に応用する際に、熟達度は現実生活において個人がどの程度言語を使用することができるかを明らかにしている。

Bachman1990, p.16)は、Proficiency(熟達度)を”knowledge, competence, or ability in the use of language”と定義づけしている。

■“knowledge”と“competence”の区別は、学習者が言語を知っていること・理解していることと、どの程度学習者の能力をパフォーマンスすることができることとを対比するために使用されている。

■初期の頃の“Proficiency”の定義は、熟達度の社会言語/文化的示唆が考慮されていなかった一方で、Bachmanの功績は、言語熟達度の核として社会言語/発話内/語用論の能力の認識があった点である。

■熟達度の枠組みやモデルは、関連したスキルやタスク関連的な観点が定義づけされたり、視覚的な尺度がレベルや程度を説明している2次元的なモデルを包含している。

 ⇒どのようにして言語熟達度が発達していくのかという階層モデルが増加した。

 

Three Influential Proficiency Frameworks and Scales

HP:  https://www.govtilr.org/Skills/ILRscale2.htm

■教室使用や国際テストに対して世界中で使用されている多くの熟達度の枠組みや尺度があるが、世界中で複言語の言語熟達度を説明するために長年使われているのが、以下の3つである。

ILR scale

1950年代後半に初めて作られ、US service officerが現場に派遣される前にスピーキング, リスニング, リーディング能力を測定するための評価方法として、US Foreign Service Institute (FSI)によって開発された。(現在は、Writingも測定可能)

ILR scalesは、0~5までの6レベルが存在し、5以外の各レベルに+評価も加えられ、全11レベルで構成されている。5が最高レベルで、ネイティブと同等に使用することができることが示される。

 

the ACTFL Proficiency Guideline

(HP: https://www.actfl.org/resources/actfl-proficiency-guidelines-2012 )

the ACTFL Proficiency Guidelineは、学術的な側面を持ち、ILRよりも熟達度の低い学習者のニーズに応えるために発展していった。ILRを基にして、下位レベルの区分を充実させた。

 

CEFR

■ヨーロッパでは、欧州協議会によって1970年代に始められた大規模な言語熟達度を示す枠組みが作られた。

CEFRは、40以上の既存の尺度を基に作られており、6つのレベルに分けられている。

 

 

Comparing ILR, ACTFL, CEFR

ACTFLCEFRに変換可能だが、その逆は不可。

ILRACTFLに変換可能だが、CEFRへの変換は公式として存在しない。

CEFRでは、テストごと(TOEFL, 英検)に熟達度を測定可能。

 

Implications for Second Language Acquisition and Language Testing

■熟達度尺度や枠組みは、熟達度発達のモデルに関するコミュニケーションを円滑にするための共通参照点やメタ言語を提供する。

■カリキュラムと目標を起点とした評価のサイクルを考慮すると、指導と学習を継続し、総括的評価をし、カリキュラムと目標に立ち戻るというすべての過程において、これらの尺度が役立つ。

<カリキュラムと目標がCEFRから派生している例>

 マテリアルと活動は目標を反映させ、目標に対する過程には熟達度の枠組みが適用される。そして、継続的な形成的評価とフィードバックが目標達成のために行われる。

assessmentevaluationに焦点を当てると、ACTFLのような熟達度尺度は、指導効果や学習結果を評価する異なるアプローチを比較するのに役立つ。

internal assessmentexternal evaluationとを関連させて、熟達度の枠組みと尺度はinternal assessmentの結果とexternal evaluation toolを比較するための共通参照点として存在している。

 

Normative Effects

■熟達度の尺度が他の言語/文脈/目的に適用させるためのdescriptive schemeを提供しようとしている一方で、標準(基準)目的で使用されている。(ヨーロッパでは、大学入学基準としてCEFR B2レベルが要求される、など)

■この効果は、熟達度尺度が、限られた数のレベルで非常に複雑な構成を表す言語熟達度の比較的単純で線形のモデルを提供するという事実によって部分的に引き起こされる可能性がある。“given standards”としてこれらのレベルを使用することは、与えられた文脈に対してニーズ分析を行うよりもresourceに関連していると言える。

 

Standard Setting Implications

■熟達度の枠組みや尺度はローカル/国際的なテストに対して共通参照点として存在している。

 ①テスト項目、タスク、パフォーマンス、評価基準、ルーブリック、結果が熟達度尺度のカテゴリーやレベルに対して説明(reference)を通して特定化したり説明したりする。

 ②テストスコアがstandard setting methodを介して、確立された熟達度尺度に合わせる。

■与えられた熟達度レベルの解釈に関する懸念点

 ①(受けたテスト内容という)特定の文脈に対してしか適用することができない。

 ②一定の熟達度レベルに到達させることへの理解の違いがある。

 ③異なるstandard setting methodが異なる結果を生じさせてしまうという現実がある。

 

Recommendations for Practice

■熟達度尺度や視覚的なレベル表示は、どのようにして学習者が発達・進捗し、より複雑で求められる状況でコミュニケーションをするか示唆するのに役立つ。

Proficiency assessmentSLA研究間の関係は、長年にわたり認識されている。Assessment dataを分析するだけではなく、熟達度尺度や異なる設定の様々な熟達度の参加者を考慮したassessment toolsを活用した研究を行うことが大切。

■最近では、熟達度レベルとSLAの関係に関する調査が勢いづいている。

■他にも、テスティングとSLA研究の両方の角度から、言語行為(language behavior)やそれらの行為が伴うタスクとの関係を調査するものもある。しかし、タスクの妥当性についてはさらなる調査が必要。

■現在では、CEFRACTFL尺度が若年学習者のSLAの結果や発達を説明するために適用されている。