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10.Likert-Type Scale Construction
Aek
Phakiti
A. U.
Background
■SLAや言語評価研究者は、第二言語学習者及びテスト受験者の心理的特徴
(知覚(e.g., 信念,態度,自己評価), 認知 (e.g., 学習ストラテジー), 影響(e.g., 動機付け, 不安))の理解を長年の関心事としてきた。
⇒Likert-Type Scale Questionnaireを使うことで、調査することができる。
■Likert-Type
Scaleとは?
・態度を測定するための尺度を発展させて、1932年にアメリカの心理学者であるRensis Likertが名付けた。
・個人差について、5件法(“never(0)”, “rarely(1)”, “sometimes(2)”, “usually(3)”, “always(4)”)の順序尺度で回答させる。
■Likert-Type
Scaleの項目は、“刺激”であり、これらの刺激に対する反応を表すために使われている。
Likert-Type
Scaleでは、closed-response
measurement technique(参加者が、異なる項目に対して関心のある同じ問題)を考慮している。
■間隔尺度であるテストのスコアと比較すると、順序尺度の数は他人の受験者のスコアと比較してどのくらい低い/高いかを正確に示していない。
Key
Issue
■このセクションでは、L2学習の理論と評価研究・測定の関係と、Likert-Type Scaleのカギとなるステップを示す。
Theory,
Model, Construct, Hypothesis and Measurement
■理論(theory)とは、それが発生する理由を説明しようとする現象についての一連の陳述のことを指す。“良い理論”とするために、カギとなる構成概念を明確に定義づけし、説明し、例示するべきである。
■モデル(model)は、理論の中に含まれるカギとなるプロセスを説明するために発達した。
■構成概念(construct)とは、理論に関連した抽象的な側面である。
■仮説(hypothesis)とは、構成概念と、それらと同様にして観察された項目や行動の関係を予測することである。
■測定(measurement)は、L2学習やL2の使用において理論によって働きかけられている。構成概念に関する知識を得るために、1つの構成要素を測るために複数の項目を設定するとよい。
Stages
in Likert-Type Scale Construction
① Purpose and Research Question
■研究の目的とRQに応じて、使用する研究機器を決定する。
例:動機付け⇒アンケート,L2知識⇒言語テスト,言語誘発タスク
② Target Constructs
■構成概念は、明確に定義され、運用される必要がある。
■目標とされる構成概念は、対象の理論、アプローチ、またはモデルを通じて定義および説明できる。
■先述したように、理論的な構成概念はLikert-Type Scale Questionnaireを使用して調査できる。
③ Review of Existing Questionnaire
■既存の理論や研究の先行研究から、研究者は既存のLikert-Type Scale Questionnaireを使って研究できることを発見する可能性がある。
■新しく質問紙を作成すると、時間やコストがかかりすぎてしまうため、多くの研究者が活用し有効な証拠が得られている質問紙を活用するとよい。
④ Taxonomy and Specification
■Likert-Type
Scale Questionnaireの分類法と仕様は、研究を成功させるために不可欠である。
■研究者が質問項目を開発している間だけでなく、研究者がRQに答えるためにデータを分析するときにも、研究者をガイドするのに役立つ。
⑤ Item Writing
■項目の執筆は、先行研究のレビュー中や既存または同様のアンケートのレビュー中に非公式に行われる場合がある。
■④の後に、フィードバックのために行われるときもある。
⑥ Pilot and Validations
■すべての項目の検討がいったん終わると、研究者はアンケートの質や内容の正確性を確認する必要がある。
■専門家からのフィードバックが返されると、またアンケート項目を再考する。
⑦ Data Collection
■データ収集の前には、倫理承認を行い、データを統計分析にかける準備をする。
⑧ Reliability and Validity Analysis
■信頼性は、質問紙を埋めることで参加者の一貫性や正確性を説明していた一方で、妥当性は、質問紙の項目を適切に推論/解釈することで説明してきた。
■仮に研究者が既存の質問紙を活用したり、本実験前にパイロット実験をしたりすれば、信頼性・妥当性の担保された調査が期待される。
⑨
Data Analysis
■RQに応えるためにはどのような分析手法を用いる必要があるのか検討する。
■一番大切なのは、検出された関係の強さに関連する効果量に焦点を当てることである。
Recommendations
for Practice
■ここでは、研究においてリッカート尺度を用いる際の限界点について説明していく。
Example
of Likert-Type Scale Anchors
■項目執筆の段階で項目に使われるanchor(賛成/反対,頻度, 正確性,
重要性, パーセント)やリッカート尺度の範囲(4件法, 6件法など)を考慮する必要がある。
■質問に対しての答えを知らない場合であっても、リッカート尺度であれば答えてくれる傾向にあることを知っておく必要がある。そのため、“知らない”や“全く当てはまらない”といったオプションを含むとよい。
■リッカート尺度において、中間点は参加者の反応の基礎に基づいた見解や推論に影響を与える役割を担っている。
■anchorの順番や数値評価については、参加者の反応によって異なるかもしれない。妥当性を高めるために、順序の自然さにも考慮するとよい。
Characteristics
of Good Likert-Type Scales Items
ü 完全で、誤りのない文である必要がある。指示と項目が文法的に正しく、スペルミスや不適切な句読点が含まれないようにする。
ü 単純で、短い文構造にする。長く、複雑な文は、理解しにくいからである。
ü できるだけ平凡な言葉を使用する。スラングなどは避ける。
ü 非脅威的、非攻撃的な言葉を使用する。
ü 主に肯定的な言葉の項目を使用し、否定的な項目はあまり使わないようにする。
ü 二重否定語の使用は避ける(例:”Pair-work activity” is not unhelpful.)
ü 2連の項目(or, but, becauseなど)は避ける。
ü 研究者が期待するような尺度を参加者が選ぶ可能性のあるような誘導項目は避ける。
Reliability
Revisited
■上記でも述べたように、信頼性と妥当性は重要である。信頼性を確立するために、記述統計を取っておくとよい。
■Cronbach’s alphaは、Likert-Type Scale Questionnaireにおいて信頼性を測定するのに最も一般的な測定方法である。0.70以上で信頼性が高いと判断することができる。内的な一貫性を測定するのに使用される。同一の構成概念内に複数の項目があると、結果はより高い信頼性を得ることができる。
■信頼性を高めるために、因子分析を行うことも手法としてあげられる。
■近年L2研究では、CTT(古典的テスト理論)の代替え手法としてIRT(項目反応理論)が採用され、受験者の能力値と項目毎の難易度などの尺度の関係を確率変数のような数学モデルで表現することで、CTTでは困難であった、異なる集団や異なる問題での結果を比較可能な形に分析することができるようになった。
Caveats
of a Likert-Type Scales and Remediation
■どんな質問紙であっても、完璧で誤りのないものはない。
①信頼性の高い質問紙であっても、関連のある理論について研究者が明確にしていなければ意義のあるものであるとは言えない。
②ほかの研究手法(インタビュー、思考発話プロトコル)のように、アンケートの反応において、参加者の感覚や素直さに頼ることしかできない。
③文章理解能力がLikert-Type
Scaleのデータに影響することに気づいていることが重要である。
④研究者は、参加者に回答を求めたものに対する回答のみを取得する。
Concluding
Remarks
■信頼性や有効性のない、疑似科学にならないように、以下のことに気を付けるとよい。
ü 項目の執筆の前に、計画を立てる。RQや、RQに対してLikert-Type
Scaleが最適な研究手法なのか検討する。
ü 調査したい理論的な構成概念・側面を知る。この知識は、項目をどのように設計し作っていくかに影響を与える。
ü 分類タイプが1つ以上ある場合には、参加者がアンケートに答える前までに明確にする必要がある。
ü 可能であれば、参加者が最も堪能だと考えられる言語で回答できるように翻訳しておく。
ü 質問紙を専門家に見てもらう。(レイアウト、フォント、項目、言語使用の正確性)
ü 項目は、意義のある順番で表示するようにする。RQの順序通りになるとよい。
ü 使用する前には、パイロット実験を行う。文の長さや言い回しの適切さなどを検討する。
ü 完璧な質問紙などないが、研究結果を得るだけではなく、参加者に新たな問題を起こさせないように注意をする必要がある。