筑波大学 人文社会科学研究科                                                現代語・現代文化専攻                                           平井 明代研究室                                          Hirai Laboratory, Graduate School of Humanities and Social Sciences, University of Tsukuba.

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2021年度 春学期 応用言語学特講1-a (1-c)
5.1 「学習環境」とは何か
●学習環境
学習環境とは、学習を成り立たせるためのさまざまなリソース全体を指す。「学習環境」としてとらえる「モノ」は、時代とともに変化していく可能性がある。
   
●現代で加えられる学習環境の例
パソコン・タブレット端末・インターネット等

5.2 学びの空間をデザインする
●アフォーダンス
環境や物が人を含む生物に対して何らかの意味をもたらすという、物と生物の関係性のこと。(例)ドアの取っ手:「丸い→回す」「平ら→押す」「溝→左右に引く」と対応する
●教室での学習におけるアフォーダンス
教師は、環境や物の特性を踏まえ、教育的意図をもって学習環境をデザインする。
例(1)小学校低学年では低めの机・椅子が使われる
例(2)理科室や家庭科室では、立って実験・観察や調理をするため高めの机が使われる
例(3)どのような学習を促したいかによって教室内の机・椅子の配置が変化する


●教室環境への配慮
あらゆる子どもにとって快適かつ学習に集中できる環境となるように、ユニバーサル・デザインの観点から学習環境をデザインする必要がある。
(例)黒板の周囲の掲示によって授業に集中しづらくなる

●実験学校(デューイ,1998)
校舎の形や教室の配置にも社会や学問とのつながりを重視するデューイの教育感が反映された理想の校舎。


5.3 チームで学びを支援する
●「ヒト」「モノ」「コト」
「ヒト」「モノ」「コト」の3つの視点から、リソースを検討することがある。教育においては、「コト」とは授業を中心とした教育活動であり、「モノ」とは教室環境や校舎などである。「ヒト」には子どもたちと教師はもちろん、事務職員・カウンセラーなどの専門性を持つ人、ボランティアなどの地域の人々などが含まれ、多くの人々に支えられている。
●「チームとしての学校」(中央教育審議会,2015)
多用な価値観や経験をもった大人と接したり、議論することで、より厚みのある経験を積むことができるとして提言されている。
(例)ティーム・ティーチング:複数の教師でチームを作って指導する
  ゲスト・ティーチャー:学校外の専門家が授業に関わる
●学校運営協議会
「社会に開かれた教育課程」の実現が2017年の学習指導要領で掲げられており、全国で導入が勧められているコミュニティ・スクールでは、地域住民・保護者と連携し、学校の運営に取り組んでいる。

●地域社会学校

5.4 学習環境を活用する授業づくり
●初めて歴史学習と出会う単元の最初の2時間の例
目標:歴史学習への興味・関心をもつ
子どもたち:歴史は難しい・昔のことには興味がない
→興味・関心を高めるための工夫が必要
(例)実際に地域の史跡を探検する・博物館を訪ねる
  大きな年表の掲示・歴史に関する本を集めたコーナーを設置する


5.5 第5章の章末問題


問1 小学校〜高校までの学習環境のうち、印象に残っているものを3つ、思い出してください。それらがどんな機能だったか、表5-2の言葉を使って説明してください。
@ 放課後の教室(高校):1人でいるときもあったが、複数人いるときは勉強を教え合ったりできる、公的+個人の空間。
A 大講義室(高校,イメージは大学の大講義室に近い):学年で集まって授業が行われたりした、公的+集団の空間。
B 小規模の畑(小学校):委員会で野菜を育てるという協働プロジェクトを行った。私的+集団の空間。


5.6 ディスカッション

「多様な価値観や経験をもった大人と接したり、議論したりすることで、より厚みのある経験を積むことができる」とし、(中略)子どもも大人も地域社会で暮らしています。学校は地域の中にあり、子どもたちの教育を受け持ってきました。(教科書p64)

・地域社会との関わりをもつような教育をこれまで受けてきたか。
・受けてきた場合、その教育でどんなことが学べたと感じているか。
・受けてきていない場合、地域社会と関わるような教育によってどのような効果が子どもたちに与えられるか。

具体例@:地域のお年寄りに昔のことを聞いてくる(小学校・中学校)
→学べたこと:机の上で勉強しているだけでは実感がわかないことも、例えば割引の計算を実際に店で経験すると身につきやすくなったり学習意欲が高まるのと同様に、歴史学習への身近さを感じられたり、意欲が高まった。

具体例A:姉妹校との交流で街を案内する
→学べたこと:案内するという明確な目標によって意欲が高い。外の人に見せるという目的から街を調べるというのは新たな魅力の発見につながり面白いと感じた。

具体例B:住んでいる市の歴史をまとめる授業
→学べたこと:市のどこにどんな設備があるか、民俗学的なことなどをまとめた。しかし、何を学べたかはよくわからない。

具体例C:地域での職業体験
→学べたこと:あまりよくわからない。

具体例D:名産品に関する調べ学習
→学べたこと:受身的な姿勢だったので、実感と共に名産品について知ることはできたが、深みのある経験ができたとはいえなかった。

まとめ
【地域社会と関わり合いながら学ぶ】
良い点:実際に体験したり、目的をもって活動を行うことは、生徒たちの学習意欲の増進につながる。
悪い点:明確な目標がない場合、何を学ぶのかがわからず、効果が見られない。また、自主的な姿勢を生徒に持たせられない限り、教室での指導とそこまで変わりがないように思われる。