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2020年度 春学期 応用言語学特講1-a (1-c) |
K.K. 第1章:ガイダンス(1)これからの子どもたちに育みたい資質・能力 1.1学校で子どもたちは何を学習するのか 教育の方法に唯一の正解はない(著者による理由は以下の4点)。 @ 子どもが学ぶ内容によって、教え方がさまざまであるため。 (例)漢字の学習:形・読み方・筆順の練習、熟語や用例を調べる 環境問題の学習:資料集め、比較検討 A 子どもたちが一人一人さまざまであるため。 (例)得意なこと・苦手なことが異なる 塾で先取り学習をしている 特別な支援が必要な場合もある B 時代によって求められる力や学び方が変わるため。 (例)明治時代:工場で効率よく働くために必要な力が求められた 現代:スマートフォンやタブレットも学習の道具である C 教師自身が一人一人さまざまであるため。 (例)コミュニケーションの癖・考え方の癖・人生経験 教育に活かせる知見の蓄積 (例)ワーキングメモリ:人間が作業を行っている脳内の機能で、容量は7±2(ミラー,1972)であるといわれている。例えば子どもたちに20の知識を提示しても、子どもたちは提示されたもの全てを吸収することはできない。 このような知見はさまざまな分野で蓄積されており、これらを生かすことによって、子どもたちが適切に学べる「学習の法則」を見出すことができると考えられる。 1.2「学習」の定義を探る 教育目標の分類学(タキソノミー) B.Sブルームにより提唱された。 教育目標が、認知的領域・情意的領域・精神運動的領域の3つに分類されており、それぞれが頭・心・体に対応している。認知的領域は、図1-1のように階層的なモデルが示されている(石井,2003)。 メタ認知 認知の働きのうち、認知活動を俯瞰し、認知活動を修正・調整する働き(三宮,2008)。学習者として自立するために必要な力である。 情意的領域 関心をもつこと・価値観や態度など、心の状態や性質に関する目標。近年では、主体性・粘り強さなど「非認知能力」の育成が注目されている。非認知能力の発達が不十分な場合、学業や社会に出てからの成功に影響があるとされる(タフ,2017)。 精神運動領域 手や体の動かし方についての目標(自転車の運転・コンパス)など 多元的知能理論:H.ガードナーの提唱 脳には図に示すような領域があり、それぞれの領域が分担して機能しているという理論。 学習指導要領 日本の学校教育における基本となっている(小学校は2020年度より新学習指導要領へ移行、中学校・高等学校はそれぞれ1年後に移行)。中央教育審議会による答申に基づいて策定される。 学習指導要領では、学んだ結果、どのような人として成長できるのかを見据えた記述がなされている。 1.3これからの世界を生きるために 普通教育 義務教育段階にある小学校と中学校の役割で、すべての国民が共通して学ぶべき基礎的・一般的な事項を学ぶ。 専門教育 高校の役割で、普通教育の中でもやや発展的な部分と希望する進路に応じたものを学ぶ。 知識基盤社会 あらゆる職業で働き方が変わったり、職業そのものがなくなったり、新たな職業が生まれるなど、変化の激しい社会のこと。知識基盤社会の特徴は次の4点が挙げられる。 @ 知識には国境がなく、グローバル化がいっそう進む A 知識は日進月歩であり、競争と技術革新が絶え間なく生まれる B 知識の進展は旧来のパラダイムの転換を伴うことが多く、幅広い知識と柔軟な思考力に基づく判断がいっそう重要になる C 性別や年齢を問わず参画することが促進される 第4次産業革命 人工知能やIoTにより、飛躍的に生産性が高まり、個々人のニーズに応じたサービスを享受できるようになるといわれている。 ※第1次産業革命:18世紀末の工場の機械化 ※第2次産業革命:20世紀初頭の電力による大量生産 ※第3次産業革命:1970年代からのコンピュータを用いた自動化 21世紀型スキル 社会の大きな変化に対応するために、学校教育でみにつける力について見直す動きがある。 生涯学習 大人になり、社会に出てからも新たな知識や技能を身につけ、絶えず自らを成長させていく必要がある。学校教育の役割は、学ぶ楽しさを味わい、成長する実感を得て、生涯、生き生きと学び続ける人を送り続けること。 1.4家を建てるように インストラクショナルデザイン(授業設計) 人間が何かを学習する過程を助けるために教師ができることを体系化した理論。 学習指導案の作成 授業設計の土台となる。授業における学習内容のひとまとまりを単元と呼び、単元をどう選択・配列し、流れを組み立て、教材や環境の準備を行うことが土台となる。 授業中の指導 ICT機材や教材、付箋紙、ホワイトボードなどの道具を用いて子どもたちの学びを充実させていく必要がある。 章末問題 問1 (a) 50年前と現在では求められている力が異なっているため、学力について単純な比較を行うことはできない。そのため、「学力は低下している」は誤りであり、その時代に応じた学力が育まれていると捉えるべきである。 (b) 認知能力のうち、メタ認知と呼ばれるものは、自分が何をどのように学んでいるのかを自覚したり、学び方を修正することができるため、学習者として自立するために必要な力である。そのため、「認知能力を育成する意味はない」は間違いである。また、非認知能力が将来の格差を決めると断言しているが、学業や社会に出てからの成功に影響があるとされているのみで、格差を決めるとまで記述するのは不適当である。 (c) 学校教育では基礎的・一般的事項について学ぶことができるが、生涯学習が推奨されているように、生きていくために必要な知識が全て身につけられるわけではない。むしろ、生涯を通じて学習することが必要である。 (d) 生徒一人一人が異なるため、一人ひとりにとっての最適な授業というものは異なるが、何を学習するかなど根本的な授業計画を立てることは必要不可欠である。 問2 @ 共通点 ・3つの柱と21世紀型能力のどちらもが基礎力(知識の習得)、思考力・実践力の3つに区分されていること。 ・ICTリテラシーがどちらも盛り込まれていること A 異なる点 ・21世紀型能力では他者とのコミュニケーションについては触れられているものの、異文化交流についてはあまり触れられていない ・3つの柱はあたかも独立しているかのように書かれているが、21世紀型能力は各能力が相互に影響していることが示されている。 ディスカッション ICTリテラシーなどが今からの時代必要になることは想像に難くないが、これらを教育に取り入れていく際に以下のような問題点が生じるように思う。 @ ICTリテラシーを教育できる人材が十分ではない A 授業計画に十分な授業時間数で入れるとすれば、他の科目を削減する必要がある 特にAについては、実用的か否かが重要視される世論において、芸術や古典など直接的に生活に“役立たない”と思われるような科目が削られる可能性がある。人間性の豊かさを増すという観点においてこれらの科目に触れることも重要だと思うが、ICT教育などに重点を置く場合、どのような扱いにするのだろうか。 ディスカッショントピック:ICT教育を十分に行うための、教育者の育成・他科目との時間数の兼ね合いについてどのように対策していくことが望ましいか ディスカッションのまとめ ICTリテラシーの教育は次の3つに分類できる。 @ 情報リテラシー教育 A 情報検索教育 B プログラミング教育 このうち、プログラミング教育は、知識の積み重ねが必要であることやプログラミングを全員に教える必要があるかどうかという観点から、小学校から高校で1つの科目にする必要性はないのではないかと考えられる。小学校から高校で扱う場合は、選択科目として取り入れてはどうかという意見もあった。 また、情報リテラシー教育・情報検索教育についても、これらを1つの科目として設定する必要性はなく、むしろ、社会科か理科、総合科目などで調べ教育を取り入れるなど、タカ目と情報リテラシー・情報検索教育を融合すると良いのではないかということが考えられた。 |