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2019年度 応用言語学特講Ⅰa |
Causal-Comparative(因果比較)とCorrelational(相関)について】
・これら2つの研究はどちらも、いくつかのVariables(変数)を大量に測定する
・明確な原因と結果(因果)を示せるものではない
・因果比較については、言語や性別などのnominalと呼ばれる違いを研究する
・相関については、筆記熟達度や筆記不安などのordinalやcontinuousと呼ばれる違いを扱う。
研究者 |
内容,参加者,題材 |
RQ |
批評 |
Cheng(2002) |
・台湾の165名の大学生 ・4つの不安に関するアンケート |
・第一言語の筆記と第二言語の筆記不安の関係 ・第二言語の筆記不安と性別とクラスレベルでの不安の関係 |
・因果比較と相関のどちらにも当てはまる ・アンケートは妥当性が示されている |
Doolan&MiUer (2012) |
・イギリスの大学の発展的な筆記クラスの67名 |
・1.5リンガルと呼ばれる人は母国語話者よりも筆記においてミスを起こすのか ・そのミスに何か特徴はあるのか ・動詞にミスは量的にはどれほどの差があるのか |
・ノンパラメトリックテストを使った(母数によらない) |
Friginal,Lj,&Weigle (2014) |
・イギリスの大学で、スコアの高い24名の母国語話者と51名の第二言語話者 |
・第一言語話者と第二言語話者のエッセイはどのように違うのか |
・Biber tagger(コーパスみたいなもの?)を使った ・集団分析を行った |
Yang&Plakans (2012) |
・イギリスの161名のESL学習者 |
・ディクテーションにおける、ストラテジーの使用と結果の関係 |
・要因分析を行った ・アンケートは妥当性が示されている |
Kim(2012) |
・オーストラリアの大学に通う韓国語学習者 |
・同じライティングタスクを行ったときに、第一言語話者と第二言語話者でどのような違いがみられるか |
・サンプルが小さい ・生徒は2種類のエッセイを書いた。 |
Lu(2011) |
・中国の大学の英語学習者のエッセイ |
・どの手法が言語の熟達度に影響を与えるのか |
・複雑さを自動分析した。 |
Bulte&Housen (2014) |
・45名のESL学習者 ・30分間で書いたエッセイ |
・どの手法が最も変化をもたらすか ・どの手法が全体的な質に大きく関わるのか ・ |
・コーパス分析を行った。 |
Yu(2010) |
・様々な背景を持つ25名の生徒 |
・第二言語話者の、発話の多様性と筆記会話の関係 |
・語彙的な多様性と発話筆記のアウトプットの簡単な相関を調べた。 ・VOCDが使われた |
Kokhan(2012) |
・250名のイギリスの大学のESL学習者 ・大学のプレイスメントテストとTOEFL-ibt |
・2つのテストに要した時間 |
・TOEFLと大学のプレイスメントテストを受けている人には相関分析を行った |
【因果比較の研究】
性別・第一言語・学習場所・学校の地域などの既に決まっている違いを研究する
Cheng(2002)…第二言語の筆記不安について性別による違いをみている。アンケートの結果によると、女性の方が筆記不安は高く、言語不安は学習に悪影響をもたらす。そして、学習の遅れは再び不安をまねく。
Dooran&Miller(2012)…長い期間英語圏に住んでいてきちんとした発話能力を持つ第一言語話者のミスと、1.5リンガルのミスの違い。1.5リンガルは多くのミスを起こし、それはほとんど同じようなものだった。原因は不明。
Friginal,Li,
and Weigle(2014)…6つのグループにわけ分析を行った。例えば、文章が、物語とは真逆で情報量が多いもの。他にはそれよりも文章が長かったり、語彙も様々なものなど。
Friginal et
al(2014)…ネイティブとそうでない人のエッセイに関して、スコアが一緒だとしても違う特徴を持っていることが分かった。
【相関の研究】
なにか2つ以上の変数の関係を探るものである。例えば、ストラテジーの使用あるいはモチベーションと、筆記熟達度の研究など。
Cheng(2002)…この研究は相関的な側面も同時に持っている。この研究では、第二言語の筆記不安、第二言語でのクラスでの不安、第一言語の発話不安、第一言語の筆記不安などについて調べた。その結果、言語の違い(第一言語の発話と第二言語の発話、第一言語の筆記と第二言語の筆記)よりも言語の手法?(第二言語の発話と筆記、第一言語の発話と筆記)の方が相関は強い。ライティングと他のスキル(リーディングやライティング)などの相関はこの研究では調べられていない。
Yu(2010)…この研究では発話と筆記の語彙的な多様性について調べた。発話と筆記の語彙の多様性は高い相関関係があるが、全く一緒ではない。発話の語彙的多様性とスコアの相関は、筆記の語彙的多様性とスコアの相関よりも少しだけ高かった。
相関の研究は言語のテスト評価の分野でよく見られる。というのも、テスト評価を扱っている研究者は多くのデータに触れることができ、より洗練された統計分析ができる。
Yang and
Plakans(2012)…リーディングとリスニングに関して、ストラテジーの使用とその結果についてアンケートをもとに調査をした。
【ディスカッションポイント】
・筆記時よりも発話時の語彙の多様性の方が、実際のスコアと相関が高い(発話時の語彙が多様であれば、スコアも高い可能性が高い)のはなぜか。
・1.5リンガルはみな同じような筆記のミスをすると言うが、それはなぜか。また、どのようなミスが多発すると考えられるか。