筑波大学 人文社会科学研究科                                                現代語・現代文化専攻                                           平井 明代研究室



2019年度  応用言語学特講Ⅰa

◎担当箇所

10章最初 ~Approaches to Thematic Analysis まで

 

 

質的分析はパターンやのちに解釈の基礎となりうるテーマを明らかにするために、体系的なコード化を含んでいることが多い。主題分析は、その適用可能性や融通性から質的L2ライティングの研究の研究によく用いられる。

 

このチャプターでは、主題分析への最も一般的なアプローチの要点を述べ、それらがL2ライティングの研究にどのように使われてきたのかの見直しを行う。また、このデータ分析の形式の主要な問題についても扱う。このチャプターはコード化の過程と質的データ分析ソフトウェアを使ったこの実行の過程の強みと弱さについてのディスカッションも含んでいる。

 

 

Purposes for Using Thematic Analysis:主題分析を用いる目的

Thematic analysis(主題分析)

→テキストの内容に興味ある際、いつでも用いられる

) 実験の参加者がインタビューで何を言ったか、ジャーナルで何を書いたか⇔どのように言ったか、書いたか

主要な目的のひとつは、データの複合的な出所や参加者を越えて比較できるテーマを明らかにすることである。

 

 

 

Table 10.1

Thematic Analysisを用いた代表的な研究

Citation

Participants, context, and data

Research questions / focus

Comments

Cho (2010)

・アメリカに住んでいる韓国人(韓国の学校を卒業した4人に焦点を当てている)

 

・歴史的な記録に関連して、L1L2の読み書きについて韓国語でのインタビュー

1.韓国人の学者たちはどのように多言語使用のアイデンティティを克服しているのか?

 

2.何という大規模な要因が学術的な発達と結びついているのか?

 

3.韓国語と英語のアカデミックライティングの視点はどのように関連しているのか?

Thematic codesがデータの設定を越えて、共通のテーマの確認に用いられた

 

・コードの一覧は供給されていない

 

・大きな社会的コンテクストの中で物語を位置づけるために、

緊急のテーマが韓国の教育のシステムについての情報と三角測量される

 

Abasi (2012)

・アメリカの大学での短期集中アドバンスドレベルのペルシア語のプログラムのイランのメディア専攻の10人の学生

 

・生徒たちはふたつの論説を要約するように言われている(ひとつはイラン語の論文からのペルシア語、もうひとつはニューヨークタイムズから学者によって翻訳されたペルシア語)

 

・要約、タスクに関する質問に答える事後タスク、事後タスクのディスカッションのトランスクリプト、インストラクターと研究者の参考論文

 

1.ひとつはアメリカの文章の翻訳だと知らないで要約しようと試みるとき、どのようにL2ペルシア語の生徒たちは二つの「ペルシア語の」文章を理解するのか?

 

2.生徒たちはどのように文章を要約するのか、また、書かれている要約によって違いはあるのか?

・語頭のコード化はキーワードに基づいている

 

・テーマは他の研究者と照合確認されている

 

・コード化の手順は簡潔だが明確に記述されている

 

・複数の例がテーマを説明している

Matsuda & Tardy (2007)

・卒業生(文書の作者)と修辞法とコンポジションのふたりの教授(全員英語母語話者)

 

・目隠しの査読をまねた

 

・原稿、ふたつの論評、評者との事後タスクのインタビュー、結果についての評者との確認のインタビュー、作者とのインタビュー

 

1.読者は学術的な文章を読んでいる時に作者の声を組み立てていたか?

 

2.もしそうだとしたら、その声を組み立てている時の要因は何か?

・コード化はそれぞれの研究者によって分けて行われ、比較された(結果は評者によって確認された)

 

 

・コード化の手順の説明は少しで、カテゴリーやテーマについてのリストは与えられていない

 

Weigle & Nelson (2004)

ESLの卒業生とペアになり、10時間の授業のボランティアをした、L2ライティングの卒業コースにいる英語教授法の3人の志願者

 

・ライティングのコースからのオンラインディスカッション、6つの授業のセッションのビデオテープ、回想の刺激をするためのビデオを用いたチューターと生徒への回想インタビュー、チューターの最後の反映した論文

 

1.何の要因がtutortuteeの関係に影響を及ぼしているか?

 

2.それらの要因はどのようにチュートリアルのセッションの成功とtutortuteeの関係に影響を及ぼしているか?

 

3.どのようにチュートリアルのコンテクストはチューターの役割に影響を与えているか?

 

・データはgrounded theoryを用いてAtlas.tiソフトウェアでコード化されている

 

・それぞれの参加者へのカテゴリーはマトリックスに基づいて要約され、のちに物語に変えられている

 

Kuteeva (2013)

・スウェーデンの4つの最も代表的な英語の学術研究の訓練からの32名の参加者

 

・オンラインのジャンル分析のタスク、参加者からの個人の主張

 

1.どんな種類のバリエーションが生徒たちの「examine-and-report-hack」のジャンル分析のタスクの多方面の人文学的アプローチの方法においてたどられているか?

・コースはジャンルに基づいた教育法に用いられ、学者によって教えられている

 

・分析過程の詳細な記述が与えられている

 

・論文は主なテーマのリストの一覧を含み、数えきれない例は豊富な記述を供給している

 

・コード化は他の研究者と共に確認されている

 

Liao & Chen (2009)

・台湾でライティングを教えるために使われている6つの教科書(3つは英語で3つは中国語)

 

1.英語と中国語の理屈っぽいライティングの目的は何か?

 

2.作者はどのように正しく彼らの立ち位置について表現するか?

 

3.エッセイ全体をまとめるのにどのストラテジーが用いられているのか?

 

4.序論と結論の記述に用いられているストラテジーはなにか?

 

5.著者の主張を支えるストラテジーはなにか?

 

6.論理的な推論に提案されるテクニックはなにか?

 

7.論理的な推論から離れた提案される修辞法のストラテジーはなにか?

 

8.オーディエンスと反対意見の対処することの役割はなにか?

 

9.中国語と英語の理屈っぽいライティングの修辞的な類似点と相違点はなにか?修辞的な要素の類似点と相違点を説明することのできる要因はなにか?

 

・分析はリサーチクエスチョンに関連したキーワードに基づいている

 

・テーマは教科書と言語を越えて比較されている

 

・コード化の過程に関しての記述はわずかである

 

 

Negretti (2012)

・アメリカの地域短期大学の3クラスの17名の生徒(「学術的著者の初心者」にみな分類されている)

 

・それそれの学生への20の論文のエントリー

1.学術的著作物の初心者がタスクを認識する性質はなにか?また、どのようにしてその認識は時間とともに向上していくのか?

 

2.学術的著作物の初心者のストラテジーのメタ認識の意識の性質はなにか?また、どのようにしてその意識は時間とともに向上していくのか?

 

3.どのようにして学術的著作物の初心者は自身の書いたものをチェックし、自制し、評価するためにメタ認識の意識を用いるのか?

 

・分析はconstructivist grounded theoryに基づいている

 

・分析の手順の詳細な記述と頻度と例を含んだコード化の完全な一覧がある

 

 

James (2010)

・アメリカの大学のL1と専攻がバラバラなEGAPのライティングのコースの初年度の2セメスター目の11人の学生

 

1-2セメスターを終えた参加者の2-4のテキストに基づいた

音声記録のインタビュー

 

・インストラクターは背景についてのインタビューを行ったが、このデータは分析されていない

 

1.学習はEAPライティングの指導から他の学術的コースに移ったか?

 

2.そうであるなら、どの移動で、どこへ移ったのか?

 

・分析はリサーチクエスチョンから得たスタートリストに基づき以前の文献と関連のある推論的なコード化を用いた

 

・コード化の過程に関する詳細なディスカッションがある

 

Harwood & Petric (2012)

・イギリスのビジネスプログラムの2人の学生と2人の教員

 

・それぞれの参加者の2つのディスコースに基づいたインタビュー

 

1.生徒はどのように引き合いに出された振る舞いによってパフォーマンスを行ったのか?

 

2.生徒は彼らの作品を読む教員にどのような印象を与えようと試みたのか?

 

・分析はMilesHuberman(1994)に基づいている

 

・論文はSingle Codeに焦点を当てている

 

・データはそれぞれ研究者で分けてコード化されていて、違いはディスカッションを通して解決されている

 

・すべてのコード化の計画は供給されているが、コード化がどのように発達するかについてはまだ議論されている

 

Hasrati & Street (2009)

・イギリスの異なる大学の13人のイタリア人の博士課程の学生と6人の彼らの指導教官

 

30名の学生からのPhDトピックの起源に関するEmailの返答(ペルシア語での13人の学生と英語での指導教官のやや構造化されたインタビュー)

 

1PhDに参加している学生はどのようにコースを始めたのか?

 

2.どのようにPhDのトピックは取り決められたのか?

 

3.指導教官と他の学生のPhDの仕事での役割はなにか?

 

・分析はconstructivist grounded theoryを用いている

 

・最後のリサーチクエスチョンはデータの収集と分析から出てきた

 

 

 

 

 

Cho(2010)の主題分析

・アメリカで働く4人の韓国人の学者

・参加者の韓国語と英語のどちらともの学術的リテラシーの経験に特徴づけられる共通の特徴を扱っていない

→韓国語と英語のバイリンガル学者が直面する障害

 

Abasi(2012)

・文化間の修辞法の差異における生徒たちの意識を明らかにする

・アドバンスドレベルのペルシア人の外国語の授業の学生に、ふたつの論説を要約しコメントしてもらった

ひとつはイランの新聞→ペルシア語、もうひとつはニューヨークタイムズ→ペルシア語に彼が翻訳したもの

・彼の生徒の書いたコメントによる事後タスクと課題に対しての授業のディスカッションに関するトランスクリプトの主題分析は10人の参加者を越えた矛盾しないテーマを明らかにした

・テキスト編成における異文化間の違いの顕著な点とみなされる彼の主張のサポートが供給された

 

一方で、主題分析によって促進されるデータ間の比較は類似点と同様に重要な差異も引き起こすであろう

 

Matsuda and Tardy(2007)

2人の教授に卒業生が書いた原稿を目隠しで査読してもらう

・それぞれの評者はレビューと事後タスクのインタビューを音声に関連した共通のテーマのためにコード化した

・「特徴的な組み合わせから得られる読者の印象」と定義づけられる

・研究者は評者が著者(性格は知られていない)と非常に似通ったイメージを構築することを発見した

⇔それぞれの評者は彼らの印象の影響としての文章の特徴の違いを指摘した

 

Weigle and Nelson(2004)

・彼らの回想データの主題分析は、個人授業のセッションをどのように広げたかといういくつかの共通の要因を解明し、また、彼らが学習した3つの二者関係を越えて起こる要因の特徴的な方法も明らかにした

 

Kuteeva(2013)

・研究の記事の分析で生徒たちが最も焦点を当てる特徴を明らかにするためにジャンル分析の課題を生徒に課して、コード化を行った

・彼女は生徒がそれぞれどのように分析にアプローチしているかという点についての顕著で個人的な違いを見つけた

・それはタスクに対して用いる訓練のレベルに由来するとした

 

Liao and Chen(2009)

・台湾の高校で使われている中国語と英語の教科書の比較を行った

・どのように教科書はargumentative writingの目的を記述しているのか、また、どのように生徒がライティングを体系づけ、主張を支持するように教えられているのかということに関して類似点と相違点を見つけながら比較した

 

長期的なデータを考慮した時、主題分析はどのようにパターンが時間をかけて変わっていくのかを記録することを可能にする。

 

Negretti(2012)

・セメスター間に生徒たちが産出した参考文献の主題分析を通してメタ認知の認識とライティングのストラテジーの発達を調査した

・メタ認知の認識は最も発達するという側面を明らかにした

 

James(2010)

EAPのライティングのコースの11人の生徒へのインタビューと1-2セメスターに渡る論文の例の分析を行った

 

最後に、主題分析は時に更なる調査に値する変則や予測していないテーマを扱っていないことがある。

 

Harwood and Patric(2012)

・イギリスのビジネスプログラムを受講している留学生

 

Hasrati and Street(2009)

・イギリスの大学のイラン人卒業生がどのように論文のトピックを選択するのかを研究

・イニシャルコーディングによる発見に基づいて、どのように研究は訓練することができるのかという例を発見した

 

 

【ディスカッションポイント】

今までに実験を行う際に主題分析の手法を取り入れたことはあるか?

また、ある場合は、その長所と短所は何であったか?