筑波大学 人文社会科学研究科                                                現代語・現代文化専攻                                           平井 明代研究室



2019年度  応用言語学特講Ⅰa

小見出し

1.Doing Thematic Analysis

1.1Generating and Refining Codes

1.2Recording and Reflecting

1.3Moving From Coding to Theory

1.4Using Software

1.5Discussion of a Focal Study (Cheng, 2011)

 

 

1.Doing Thematic Analysis

データ収集中にデータ分析をするメリット

・コーディングのタスクを長期間にわたって分散させることにより、大量のデータを分析する負担を軽減させられる。

・予備調査結果としてその後のデータ収集の方向性をかためることができる。

 主題分析:データの照会を通じてより深い理解と洞察につながる質問をすることが求められている。

 

 

1.1Generating and Refining Codes

主題分析の基本的なバージョン

King and Horrocks(2010)およびL. Richards (2009)

 ①データセットに含まれる内容を理解するために記述的なコーディングを行う

 ②①で記述されたコードをカテゴライズし、質問を通して解釈的または分析的なコーディングを行う。

 例)Abashi(2012)の研究で使われた質問

   「なぜ面白いのか」

   「なぜそれに興味があるのか」

   この質問で得られた学生のコメントより、ペルシャ語の原文と

英語の原文の間に異文化の違いの認識が見られることがわかった

 

コーディングの仕組み

 -作成しているカテゴリー(のコード)

 -コードの継続的な見直し、反映、評価および改良

 

K. Richards (2003)の提唱したコーディングの基準

・カテゴリが経験的に関連しているか(データに適合する)

・実用的に有用か(明確に定義されている)

・分析的に有用か(他の研究者がデータを理解)しやすい

 

L. Richards (2009)の提唱したコーディングの基準:”constantly tidy up”

カテゴリーを見直した際、どれも重複していないか(そうでなければ有用ではない)を確認する。

例)Abashi(前述)のカテゴライズ

  「テキスト構成」+「テキスト構成の文化的説明」

  =「文化的によく知られたマクロ構造」

 

特徴

・このコーディングは単一だけではなく複数のコードを同じデータに割り当てることができる場合もある。

・カテゴリーは研究の目的や研究者の視点によって異なる。

 

 

1.2Recording and Reflecting

研究の形跡を残しておくことは新たな発見をしたり研究の材料や証拠にもなったりする。

・ログ:コーディングカテゴリーが作成または変更された理由、およびデータと分析中に行われた決定の影響についての考察。(L. Richards, 2009)

・研究メモ:研究の中で得られたアイディアや考え、計画を記録する日記(K. Richards, 2003)

 

 

1.3Moving From Coding to Theory

コーディングから理論化する上での必要な事項

①クエリを実行し、コード、カテゴリーおよびデータソース間の関係を識別する。

 ※クエリ:ソフトウェアを利用して非常に単純化されたタスク

②行列やネットワークなどの視覚的表示(チャートや表、フローチャートなど)を作成する。

 例)Weigle and Nelson(2004)

   分析したコーディングを元にカテゴリーのリストを作成し、チューターを書いたあと、行列を使用して各カテゴリーを要約した。

③自分の分析に懐疑的なアプローチを採用する。

・自分の分析や発見に意図的に疑問を投げかける。(L. Richards, 2009)

・「研究者の概念上のレンズに対する社会歴史的および文化的影響」に注意する。(Pavlenko, 2007

 

 

1.4Using Software

CAQDAS(Computer-Assisted Qualitative Data Analysis Software)

・質的データ分析用ソフトウェア。大量の定性データの管理、統合、検索など分析の機械的側面を単純化できる。

L2筆記研究において時折使用されてきた。(Weigle & Nelson, 2004)

 

CAQDASの問題点

・データへの近さ(Gilbert, 2002; Seror, 2005)

・コーディングトラップ(L. Richards, 2009)

 コーディングに熱中したり全てをコーディングしようとしたりすると、全体像を見失い重要なレベルの解釈と分析に進めないという問題。

 例)コーディングトラップ回避のための提案(L. Richards, 2009)

  (a)「なぜそれが面白いのか?」と絶えず質問し、答えられない場合はコーディングしない。

  (b)コードとカテゴリーを定期的に見直し、確実に修正する。

  (c)「カテゴリーから抜け出す」生成されたカテゴリーをその意味について熟考する。

 

 

1.5Discussion of a Focal Study (Cheng, 2011)

目的

L2テキストを書いた学生がテキストと文脈の関係を理解する方法を調べ、ジャンルの研究において認識されるギャップを埋める。

・ジャンル分析(GA)を通して「学習者(学生)側に立ったジャンル別指導」を調査する。

調査対象

36人の学生と8つのGAタスクのうち、4人の学生を選出

4人の学生は全て男性で、異なるL1および学問分野から選ばれた。

 

調査方法

①オープンコーディング

・学生がジャンル分析の課題で重要であると判断したキーワードやフレーズに注目し、パターンを探す。

・データセット全体にわたって、あるフレーズがジャンル固有の意味を持つものとしていくつかの通常の機能をマークするなどの初期コードを作成する。

 

②アキシャルコーディング

・詳細は説明されていないが、普通の意味を持つものとしてマークしたコードと、専門家によく知られているテキストの特徴を強調するコードを比較する。

 

まとめ

学生の文脈理解は文章の解釈に影響を与え、文章解釈は文脈の理解に影響を与えた。

 

 

Discussion Point

データ分析をするタイミングは研究にどのように影響するか。