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2019年度 応用言語学特講Ⅰa |
11. Qualitative Discourse Analysis (質的談話分析)
・DA(談話分析)は話し言葉や書き言葉、コンピュータを利用して書かれるテキストを分析する、様々な方法の総称である。
そもそも、discourse : 意味を持つ言語運用
Discourse analysis : 人々がどのように意味の構築をし、意味解釈を行うのかという研究
→ discourse(s)が広く、意味の構築も含むようになる
[Gee
(2015)]
(little d
)discourse : 言語使用の実例
(big D
)Discourse : 言語使用のみならず、参加者のパフォーマンスや社会的アイデンティティに関わる行為やツール、思想など他の要素も含む。
例:学術的ディスコース
discourse
: 特定の方法で行われる言語使用
Discourse
: 引用のフォーマットの遵守、特定のジャーナルでの出版、知識や思想の露呈
・DAはテキストが何をしているか(what a text does)に注目
→社会行為(賛成、反論、権利の主張)
<L2ライティング研究において>
テキスト産出での実践(practices)、テキストそのものの分析
Table.11.1
Representative Studies Using Discourse Analysis
Citation |
Participants, context, and data |
Research questions / focus |
Comments |
Tan, Wigglessworth, & Storch (2010) |
・中国語のクラス ・6ペア ・7個のライティングタスク ①
Face
to face(FTF)録音 ②
computer
mediated (CMC)(コンピュータ仲介) ログ化 |
・モダリティ(法性)は、ライティングの合作中に行われる会話の性質に影響を与えるか |
・分析法:Storch(2012) dynamic interaction(動的交流)モデル ・それぞれの方法から得られた例を元にパターンを記述 |
Waring (2005) |
・アメリカ人チューターとインド人大学院生 ・録音テープ |
大学院生はどのように、なぜ、チューターのアドバイスに抵抗するのか |
Conversation
Analysis (CA)(会話分析)を使用し、助言に対抗したときの会話の連鎖組織と言語リソースを調査 |
de Guerrero & Villamil (2000) |
・二人の男性(英語中級レベルの学習者、L1はスペイン語) ・40の会話のペア ・ディスカッションの様子を録音(テキストの書き始め、修正時) |
テキストの修正時に、二人が行う会話の性質はどのようなものか |
・会話の断片の選択は精選された ・テキストは分析されず |
Young & Miller (2004) |
・ベトナム人の英語中級レベル学習者とインストラクター ・4週間に渡るライティングカンファレンス |
修学者はどのようにしてrevision
talkに参加することを学ぶか |
・口頭上の特徴とそれ以外(視線など)の特徴も説明 |
de Oliveira & Lan (2014) |
・4年間のプロジェクトの一部 ・英語学習者が大多数の授業(4年次生向け) ・韓国人のJi-Sooに密着 ・11日間の観察と三ヶ月以上分の授業の録音 |
①
教員はどのようにしてライティングの指導にgenre-based の教育法を組み込んでいるか ②
ライティングの手順の指示などのガイダンスの特徴は ③
このコースの履修を通して、Ji-Sooの能力(手続き的な説明(procedural account)の産出)はどうなったか |
・Systemic functional linguistics (SFL、*選択体系機能言語学)を使用 →生徒のテキスト内の言語的特徴を洗い出すため *言語体系だけでなく、社会的状況にも注目。言語は記号体系で自分の言語リソースから適切なものを選んで使用。 |
Bunch & Willet (2013) |
・社会の授業(学術言語の促進を目的としたプログラムの一環) ・40人分のエッセイのコーパス |
カリキュラムとインストラクションはどのようにして対話的な機会を生徒に提供してきたのか |
・meaning-meaning
resourcesのモデルを参考に分析をおこなった |
Ivanic & Camps (2001) |
・メキシコ人大学院生6名 ・ライティング課題と論述 ・3〜5回のインタビュー |
①
態(voice)はどのように表現されるか ②
L2ライティングの教育法は生徒の態に対する気づきを向上することができるか |
論文は分析の枠組みを詳細に解説 |
Hafner (2015) |
・理系のための英語の授業を受ける学生52名 ・ビデオを作らせ、グループインタビューに注目 |
①
リミックスされた根拠の実践はどのようなものか ②
学習者の態の表現をどのようにして促進と妥協のバランスをとったか |
・研究者はコースのコーディネーターでもあった ・ |
Ouellette (2008) |
・台湾出身の1年生 ・ジャーナルの課題 |
・他のソースから借用するときに、ライターはどんな談話を選択するか |
・元となるソースと生徒のテキストの言語的特徴を比較 |
Matsuda (2003) |
プロセス及びにポストプロセスライティング |
プロセスとポストプロセスライティングについて、キーとなるテキストがどのようにしてL2ライティング分野にあるモデルの理解に役立ってきたか |
・重要用語(process,
postprocess)の使用に焦点 ・freewritingやprescriptiveといった概念に関連 |
DA研究は質的にも量的にもなりうる。
Purpose for Using Qualitative Discourse Analysis
Analysis of Spoken Discourse
・collaborative
writing tasks (共同執筆)
Storch(2002)のdynamic interactionをもとに発達。Tan, Wigglessworth, & Storch (2010)の研究ではCMCとFTFの比較によりどの環境下において、対象者の共同作業を促進できるかを決定しようとした。
・社会学習理論に基づいた研究
de
Guerrero & Villamil (2000)など。
・どんな教育法が学習者のサポートに効果的か
de
Oliveira & Lan (2014)など。
Analysis of Written Discourse
初めの関心は “どのようにテキストは意味を創出するのか”
・正確性、複雑さ、流暢さ以外の要素にも目を向け、テキストの有効性に寄与する要素を見つけようとした
→de
Oliveira & Lan (2014)やBunch & Willet (2013)が研究例
L2ライティング研究においては
・態、スタンス、アイデンティティがライティングでどのように成立するか
→Ivanic & Camps (2001)、Hafner
(2015)
・L2ライターが著者アイデンティティ(authorial identity)の創出のために言語学的、文学的方法を獲得していく過程
→Ouellette
(2008)
剽窃の痕跡の分析
・新たなジャンル“metadisciplinary narrative”
→Matsuda
(2003)
特定の学問分野における思考の進歩を詳述
<ディスカッションポイント>
FTF(対面)とCMC(非対面、コンピュータのソフトウェアを用いての会話)では、どちらが、より対象者たちの共同作業(二人で話し合いながら一つの作文を完成させる)を促進できるだろうか。(また、それぞれのメリット、デメリットは?)