![]() |
2019年度 応用言語学特講Ⅰa |
【Coding and Presenting the DATA】
・これらの研究は必然的にデータも多くなり、それを要約するのも非常に難しい。
・もし研究者が、参加者の考えを完璧に再現したいなら、データをトランスクライブし、分類し、コード化する必要がある。
・Lumley(2002)の研究では、個々の事例をたくさん挙げることを目標としているのではなく、どのような振る舞いが観察できるのかなどを目標としている。
・得られたデータを分類したあとは、それをコード化し、データを増やすことが多い。
コード化の基準はRQによってかわってくる。
・データ収集とトランスクリプションには時間を要するため、研究もサイズは小さくなってしまう。結果的には研究の妥当性も低めてしまう。
〚How to conduct a study using retrospective
and introspective methods〛
【Deciding on the appropriate technique】
Stimulated recall , think alouds , written
reflectionのどれを使うかは、その研究のRQやタスクやデータの集め方によって決まってくる。
Think alouds … 参加者がL1とL2のどちらの言語を脳内で使用しているかに興味がある場合に適している
Stimulated recall …
メタ認知的なデータを集めたい場合に適している。タスクが終わった直後にデータを集めることが望ましいため、タスクは集団ではなく個々で行うべき。
Written reflection …
特にwritten think aloudsは勧めない。というのもライティングはスピーキングよりも時間がかかるうえに骨もおれる。結果的に妥当性を低めてしまう。
【Procedures】
Think alouds
・研究者がその場にいなかったら、どのように参加者はふるまうのか。いなかったら、参加
者は話さないのではないか。
・一般的には、研究者が「Please keep talking.」などと言って発話を促すが、他にも方法はある。
発話を続けさせたいときに、文の最後に黒い点を打つ。
ビデオを停止させることで参加者に意思を伝えたり、参加者側も何を考えているのか伝えたいときにビデオを一時停止できる。
・研究の目的をどの程度、参加者に伝えるかという問題
Ex)研究者が「この研究はエッセイを書く前に、どのようにプランをたてるかに興味を置いている」と伝える→参加者は普段よりも綿密にプランをたてるようになってしまう。
・1個1個の発言に理由を加える必要はない、単に脳内で思い浮かんだことを発話すればよい
・短い文章でタスクの練習をする
・このタスクは録音され、後にディスカッションをする。これは、タスクの中で難しかった点などを振り返るため。
・集中力を保つために、読んだり書いたりしている時は黙っていてもよい
Stimulated recall
・練習などは必要ない。
・Recallのタイミングが非常に重要になってくる
・タスクとの時間が空くほど、妥当性は低くなってします。
・研究者が参加者の母国語を話せる、つまり参加者が母国語で発話できるとすると、よい結果が得られるのでは?
→プロセスを正確に表現でき、情報量も増え、結果的には量と質のどちらも向上する。
・その一方で問題点も考えられる。
→英語上級者で、考える時も英語を使っていたりすると、書くのは第二言語なのに、発話は第一言語となりこれは逆にやりにくくなってしまう
・考えを発話するのに適しているのはどっちの言語かというのははっきりしていない
・L1、L2、あるいはその組み合わせを使うかは参加者に任せるというのがも最もよい方法
【Analyzing and reporting the data】
・データをどれ程の量、あるいはどれ程のレベルで表記するのかというのは重要かつ難しい問題
→それは、どちらがいいということはなく、研究の目的や方法によって適する形で合わせていくことが重要
【Box8.1 Focal study】
《Background》
先行研究の多くは、ライティングのプロセスの中でどのようにL1を使用しているのか、またその使用はどのようなものなのか について着目してきた。一方で、L1の使用とその書かれた文章の質については触れられているものは少なかった。
《Research questions》
①L2のライティングにおいて認識的活動を行う際に、L1を使用するのかどうか
②L2のライティングにおいて、L1の使用の幅は個々人でどれ程異なるのか
③L2のライティングにおいてL1を使用することは、そのテキストの質と関係があるのか
④純粋な筆記能力とL2の熟達度は影響を及ぼすのか
《Design》
・20人のオランダ人の英語学習者に8つのエッセイを書かせた。そのうちの4つが英語で一方の4つはオランダ語で書かせた。
・英語のエッセイはL2の熟達度の測定、オランダ語のエッセイは純粋な筆記能力の測定のためにそれぞれのエッセイに点数をつけた。
・最後に語彙テストを行い、L2の熟達度を測定した。
《Results》
・L1の使われ方は人によって様々であった。ただ、self-instructionとmetacommentsなどの特定の場面において使われる傾向は高かった。
・meta-commentsに使われる時は、L1の使用とテキストの質は負の相関関係があった。
・純粋な筆記能力は、L2の熟達度とは反対に、テキストの質やL1の使用に影響を与えた。
【Discussion of focal study: van weijen,van den bergh,rijlaarsdam,and
sanders】
・先行研究では、L1を使用する際の脳内をきちんと再現できてなく、どのようにテキストの質に影響を与えているかも明らかにされてなかった。また、サンプル数も少なく、書かせるエッセイも1つのものが多く、トピックやタスクによってL1の使用が変化してくる可能性も否定できない。
・この研究は単にライティングプロセスを表記するだけでなく、L1の使用との関係を研究した。ライティングのプロセスは個人や社会的な要因によっても左右される。そのため、研究者のゴールはライティングのプロセスを明確にすることだが、非常にそれは複雑である。
・20人のオランダ人を通して4つのデータが得られた:
①英語のエッセイのスコア
②オランダ語のエッセイのスコア
③think
alouds protocol
④純粋な英語の熟達度
・参加者は30分の時間が与えられ、必要に応じて時間が追加される
・エッセイは細部と全体でそれぞれ別の2人の評価者によってスコアがつけられた。
・参加者に「L1でthink aloudするようには伝えてない。」というのも、この研究では自然発生的に出てくる言語の使用をみたいからである。
・オランダ語(母語)でライティングを行っている際は、think
aloudする必要はないということは伝えた。
・最後の語彙テストは7分間で実施された。たしかに、語彙だけではその人の熟達度を正確に表すことはできないが、著者は語彙が最もその人の熟達度を反映するものだとしている。
・研究の目標は、L1の使用の質的かつ量的部分を明らかにすることである。今まで述べてきたことは全てが質的部分に該当する。したがって、量的部分についてもデータが必要。ここではL1の使用回数についてもデータをとった。
・全ての参加者が1回のライティングの中で1回はL1を使用した。
・L1の使用と純粋な筆記能力は負の相関関係があった。
L1の使用とL2の熟達度は逆に負の相関はみられなかった。
これは、筆記能力が低いと認知プロセスに負荷がかかりL1に頼らざるを得なくなる。
・この研究は、デザインや報告が精密であった点から良い研究であったといえる。
・今後の課題としては、think aloudがL1とL2の使用頻度にどう影響を与えていたかが不明確であった点である。つまり、think aloudさせたためにL1の使用頻度が上がった可能性もあるということである。
Discussion point
・皆さんはライティングをする際、どのようなプランをたてて書きますか?
例えば、大学試験でよくありそうな120words程度で賛成か反対か意見を述べよ のような問題だとしたら、、、。
Ex)根拠ごとに何文字使うか先に決める、日本語で構成を作るor英語で構成を作る、など。