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2019年度 応用言語学特講Ⅰa |
7. Target Text Analysis (ターゲットテキスト分析)
多くのL2ライティング研究は学習者の文章だけでなく、ターゲットテキストにも注目する
→ターゲットテキストは全てがネイティブスピーカーによって書かれているわけではない
研究はSwalesianアプローチを用いて行われる
→研究論文やビジネスレポートなどにおける談話の流れや付随言語の説明
目標はL2のライターとその指導者のために特定のジャンル内の特徴を洗い出すこと(読み書きを助ける)
<Purpose for Analyzing Target Texts(ターゲットテキスト分析の目的)>
ターゲットテキストの種類は多岐にわたる
→遺書なども分析対象に
→学習者にとってとても有用とは言い難い
[Yang
& Allison(2003)]
・教育学的な目的で調査
・Swalesian
move analysisを使用
4つのジャーナルから20の応用言語学の論文を選択
→results,
discussion, conclusion, implicationsのそれぞれのセクションを比較し関連を調査
→各セクションの区別がはっきりしない場合がある
ターゲットテキストの説明を行うタイプの研究には因果比較研究が用いられる場合も
ターゲットテキスト分析を行った研究例
Citation |
Texts |
Research questions |
Comments |
Yang & Allison (2003) |
・無作為に選出(20本) ・1996 ,
1997年に出版された4つの論文 ・ |
・応用言語学の論文内のresults,
discussion, conclusion, implicationの間にある関係性はどのようなものか |
・各論文の領域が違いすぎた ・セクションの区分ははっきりしていた ・coder間の信頼性が担保されていない ・カイ二乗検定を使用 |
Simpson Vlach & Ellis (2010) |
・Hyland(2004)のアーティクルコーパス(120万語) ・ミシガンコーパス(170万語) ・ブリティッシュナショナルコーパス(43.1万語) ・比較コーパス(writing
/ speech) |
・頻度だけでなくそれ以外の基準からアカデミックな公式表現のリストを作るのは可能か? |
・コーパスに関してはしっかりと説明 ・公式表現は確認されていた |
Bloch (2006) |
・Sienceの論文(60万語) ・教科書のセット |
・生徒がライティングで伝達動詞を使用しやすくするためにどのようにして教科書と一致する教育プログラムを組むことができるか? |
・コーパスの文章は授業の資料にするために選択 |
Samraj (2005) |
Animal Behaviour, Conservation Biology それぞれ12本の論文 |
・環境科学の2つの分野における要旨と研究論文の類似点と相違点は? |
・なぜこの2つの分野の論文を比べたのかという議論を含む |
Millar, Budgell, &Fuller (2013) |
・トップ5の医学ジャーナル(297本) |
1.
受動文の頻度はジャーナルで異なるのか?また、論文内のセクションでも異なるのか? 2.
受動態の頻度と一人称代名詞の頻度に関係性はあるか? 3.
受動態においてどの動詞が1番関連性があるか? |
・全ての動詞に注目 ・ |
Yin (2015) |
・ニュージーランドのラジオ放送(21,623 語) ・新聞(21,101語) |
1.
ニュースでのlinking adverbialsの形は?その頻度のパターンは?書き言葉と話し言葉に違いはあるか 2.
意味という観点からlinking adverbialsはどう分類されるか?その頻度のパターンは?書き言葉と話し言葉に違いはあるか 3.
Linking
adverbialsの位置は?その頻度のパターンは?書き言葉と話し言葉に違いはあるか 4.
|
・コーダー間信頼性についての報告がない |
Hu & Wang (2014) |
平行コーパス ・英語と中国語 ・医学と言語学 ・84の論文で構成 |
1.
引用の比重、著者のスタンス、テキストの統合、著者の統合に類似点と相違点はあるか 2.
中国語と英語の論文で引用の前述に類似点と相違点はあるか 3.
引用の前述部で領域、言語の共用はあるか |
・ランダムにサンプリングされた |
Gil Salom & Soler Monreal (2014) |
文学のレビュー(スペイン語と英語) |
スペイン人とイギリス人の論文構成や筆者の立場はどうなっている? |
・コーダー間信頼性はない |
Van Mulken & van der Meer (2005) |
・偽のEメールでカスタマーを集めた40のオランダとアメリカの会社 ・そのうちの24人の反応 |
アメリカとオランダの会社でカスタマーへの返信は違うのか? |
・数量が少ない |
Chen & Baker (2010) |
・The
Academic Written English Corpus(L1は中国語、英語のエッセイ) |
学生のライティングとL2学習者のものは単語連鎖の使用に違いがあるか?(学問論文の出版者に比べ) |
単語連鎖の識別について説明あり |
Gardner & Nesi (2012) |
・「熟達度を評価された大学生のライティング」のコーパス ・650万語のコーパス |
大学の課題で書かれたものはどのようにジャンル別に振り分けられるか? |
ジャンルの分類法は大学や学生へのインタビューや研究者の思考によってできあがった |
Types of Target Text Analysis
Types of
Analysis
Technique |
Sample focuses of studies |
Examples |
Move Analysis |
|
|
Analysis of moves and steps only |
言語横断的な研究論文の紹介 |
Loi (2010) |
Move analysis combined with lexical bundle
study |
論文内の単語連鎖と流れにある関係 |
Cortes (2013) |
Move analysis combined with a functional
analysis of language |
論文の結論で著者のスタンスはどのように表現されるか |
Loi, Lim, &
Wharton (2016) |
Move analysis combined with interviews |
テキストと知識の形成の仕方にある関係 |
Kuteeva &
McGrath (2013) |
Move analysis combined with ethnography |
テキスト構築のプロセス |
Flowerdew &
Wan (2010) |
Corpus analysis |
|
|
Word frequency analysis |
ある学問分野の中で用いられている言葉 |
Valipouri &
Nassaji (2013) |
Lexical bundle analysis |
異なる学問分野でみられる「句」の違い |
Ackermann &
Chen (2013) |
Analysis of co-occurring features in text
types |
異なるジャンルでどのような特徴が同時に見られるか |
Bilber &
Conrad (2009) |
Analysis of a specific feature |
引用の特異的構造 |
Kwan & Chan
(2014) Zhang (2015) |
Multimodal research |
メディアにおける言語横断的知識の実践 |
Barton & Lee
(2012) |
Automated quantitative analysis of features |
結束性と関係詞節化 |
Hall, McGarthy,
Lewis, Lee, & Mcnamara (2007) Hundt, Dennison,
& Schneider (2012) |
非常に多くの研究が①Swalesianアプローチ
→教師の教授法や生徒の学習法に役立つ分析になるため?
②コーパスによるアプローチ
→大量のデータを量的処理
③焦点を狭め、特定の特徴に注目する方法
<デスカッションポイント>
・専門用語以外で、学術論文の分野の違いによる特徴の違いはあるのか?(言語学と宇宙工学)
・ニュースで用いられる言葉と論文で用いられるような単語の違いは?L2学習者にとってはどちらが重要か?