筑波大学 人文社会科学研究科                                                現代語・現代文化専攻                                           平井 明代研究室



2019年度  応用言語学特講Ⅰa

Busse(2013) 

2つの大学のドイツ語を学習している学生が対象 
・動機付け(94)、半構造的面接(12)についてのアンケート 

・アンケートの量的分析 

・インタビューの質的分析 

初年次の学生の動機づけの内容は何か。また、彼らは学習環境の文脈上の特徴にどう関連するか 

特定の教育上の文脈における初年次の学生の反応の理解力は、動機づけの思考プロセスにどう影響するのか 

(結果) 

・詳細な情報はサンプリングとデータ収集/分析の手順について与えられた 

・質的サンプルは量的な結果に基づいて選ばれた 

・結果は質的データに焦点を当て、関連性のあるアンケート結果を利用した 

 

Ferris(2014) 

・カリフォルニアの8つの大学におけるライティング指導者 

26のウェブ上の調査インタビューを23人の調査回答者に課し、講師のコメント付きのサンプル学生テキストをインタビュー参加者から得た 

・学生のサンプルテキストにおける調査とその反応に関する量的研究 

・インタビューの質的分析 

書面および口頭でのフィードバックの提供、および大学の執筆インストラクターによるピア・レスポンスの促進を含め、どのような対応をするのか。そして彼らは第二言語専門家によるベストプラクティスの推奨事項とどのように比較するのか。 

大学のライティング指導者は回答に対してどう自身の哲学を説明し、その考え方をどうやってまたどこで獲得するのか 

彼らの観察された書面による意見と一致している彼らの習慣と哲学についての大学のライティング講師の主張はあるのか 

(結果) 

・インタビューデータは要約されたが暗号化されなかった 

・フィードバック実践の参加者のアカウントによる三角測量に使用された学生テキストの分析がなされた 

・データはそれぞれのインタビュー参加者のケーススタディ物語に組み合わされた 

・質的分析からの発見は調査サンプルに利用されなかった 

 

 

 

 

Plakans & Gebril(2012) 

・中東の大学のアラビア語が母語のEFL学習者が対象 

145人の生徒が読み書きタスクとアンケートに回答 

TA(=think aloud/思考発話法)とインタビューデータの質的分析 

・質的分析からのパターンに基づいたアンケートの量的分析 

L2の書き手は統合されたタスクにおけるテキストをどう理解するか 

書き手は統合された読み書きタスクの構成過程におけるテキストをどう利用するのか 

書き手の成績は統合されたタスクにおいて理解と資源利用に関連があるのか 

(結果) 

・量的分析からの区分が報告され、調査項目に一致した 

・量的/質的分析は結果の審議において統合された 

・量的サンプルは利便性のサンプルであったため、より大きなサンプルの象徴とはなりえない 

 

Hu & Lei(2012) 

・中国の2つの大学と4つの学科に在籍する270名の学部生が対象 

・資源の利用能力に関するアンケートを実施コピーまたは言い換えられたテキストを参加者が評価するという内容 

・アンケートの質的分析 

中国の学生は英語テキスト内においてどうやって明白な剽窃やわずかな剽窃を見抜くのか 

もし剽窃だと彼らが気付いたとすれば、間テクスト的な実行の2つの型に対してどんな立場をとるのか 

 規律や性別、学習機関、実用主義の知識や情報を活用する能力は明白な、あるいは微妙な実用主義を理解することと関連性があるのか

(結果)

・量的分析の詳細な議論;量的分析の説明はあったが、結果の範疇は記されなかった

・量的/質的分析の結果は別々に報告され、統合された

 

Kang(2009)

EFL中級レベルの韓国人大学生42人と英語を母語とするアメリカ人大学生28人が対象

・すべての参加者に英語の物語随筆、韓国人には韓国語の物語随筆を与えた

・指示形の使用頻度の分析

・非必須NPNounPhrase)の談話機能の分析

①英語と韓国語の拡張された書面による談話での参照選択に言語間の相違があるか

②どのような意味で、英語の韓国語学習者の参照管理およびアナフォニック戦略は、NESのものと似ているか、または異なっているか?

(結果)

・量的質的分析の詳細な議論を交わした

・韓国語および英語のエッセイにおける名詞句の談話機能を説明するために広範な例が与えられている

 

定性的データを含める→学生の経験が習熟度や作文のうまさがどう変化するのかを検討可能に。

Kobayashi&Rinnet(2013)

同様の研究。2年半に渡り日英中三ヶ国の学生の文章形成について調査。

Lee&Coniam(2013)

香港の中等学校でEFLライティングクラスの学習評価の研究。2つの教室で観察し、教師にインタビューするという定性的分析。筆記及び全体的な筆記能力は、定性的定量的両方のアプローチで認められた。

William(2004)

ライティングセンターの相互作用の質的分析に注目。プロセスと結果の直接的な関連性は分かりづらいが、起こりがちな相互作用のパターンを文書化した。

(その他の例)

Busse(2013)

学年始めと終わりに動機付けアンケートを行い、そこから出されたデータを複数のインタビューと組み合わせたドイツ語学習者に関する研究

 

L2ライティングの研究

→定量的方法の強み(大きなサンプル、参加者間の比較可能性、優位な相関関係確立など)を定性的方法の強み(詳細な調査、個人差など)と組み合わせる必要がある

Ferris(2014)

129名の英作文指導者をオンライン調査し、ESLとそれ以外の学習者の指導経験とフィードバックについて研究

Plakens & Gebril(2012)

思考音声プロトコルの定性分析を実践。初めは9名という少ない人数から取材を行い、アンケートの結果と突き合わせた。

 

Barkaoui(2010)

統計的分析。言語の正確さなどの文章作成の面が評価にどう影響を与えるのかを定性的分析によって求めた

Hu & Lei(2012)

中国の学部生の盗作に対する認識、態度を調査するのに数種類の方法を実践。参加者は2つのエッセイを評価。内1つは元のテキストの逐語的複製、もう片方はテキストの言いかえであった。「盗用されている」と学生が認識するのを確認するために、参加者の書面によるコメントが使われた。評点の比較定量分析(二元配置分散分析)を使用

 

Issues Involved in Mixed Methods Research=混合法研究に関わる問題】

[Theoretical Issues=理論的問題]

・定量的・定性的アプローチが実際にふさわしいのか。

Greene(2008)

「人間の行動で何が重要か」について、対立する・競合するという仮説は同時に成り立たない。

Guba(2000)

定量的手法と定性的手法を手法のレベルで組み合わせるのは可能

→方法論やパラダイムレベルでは不可能               cf. Bergman(2008)

Greene(2007)

会話を通して洞察をする弁証法的立場を提案

→パラダイムの多様性と有用性を両方認めている

多くのMMR研究者に支持されてきた可能性は、MMRを新しい代替パラダイムとして表現すること→方法論的に多様性があり、有用な知見を生み出すことが多い

ex. Morgan(2007), Tashakkori & Teddlie(2010)

 

Kang(2009)

韓国のEFL学習者の参照フォームの使用の定量的研究に定性的分析を加えることで自身の主張を正当化した。

 

Methodological Issues=方法論的課題】

[Integration=統合]

統合=MMRの定義概念。方法論が意図した目的にかなうものであれば要件になる。

実際、この概念はMMR法のテキストが統合の問題に取り組むのに非常に重要

 

 

 

MMR研究で意味のある統合を形成するのは困難

→それでも、定量的手法と定性的手法を組み合わせることで1つか2つ程度の統合を達成している  ex. Lee & Coniam(2013)

・サンプリングレベルの統合

→定性的サンプルがより大きな定量的サンプルから引き出されるのを利用した研究も時々あった   ex. Busse(2013), Lee&Coniam(2013)

・データ収集・分析レベルの統合はあまり一般的ではない

→同じ問題を調査する定性的研究による部分的な達成の結果

ex. Kang(2009), Caracelli&Greene(1993)

 

[Sampling]

・サンプリング

→定量的定性的手法からのデータ統合や比較を目的とするMMR研究における課題

Sasaki(2007), Williams(2004)→定量的及び定性的段階の参加者は同一

 

Onwuegbuzie & Collins(2007)

パラレルサンプリング(2つの比較可能なグループから抽出されるサンプル)、ねすてっどサンプリング、マルチレベルサンプリング(2つのサンプルが異なるレベルから取り出されるサンプル)といった、MMRサンプリングの型について記述。

※ネステッドサンプリング cf. Busse(2013), Ferris(2014), Lee & Coniam(2013),

Plakans & Gebril (2012)など

 

[Practical Issues=現実的な問題]

 

Creswell & Plano Clark(2011)

研究者は定量的及び定性的データの収集や分析の両方の技術に精通している必要がある。

→しかしながらMMR研究に携わるL2執筆者がそのスキルを持ち合わせているとは限らない。

◎本章で検討して研究の多くがMMR研究に精通していない。

 

Lazaraton(1995)

TESOLが提供する定性的研究および応用言語学プログラムの訓練の欠如についての懸念を表明

→この状況は次第に改善されているが、質の高いMMR 研究を生み出すにはこの分野でより進歩する必要がある

[ディスカッションポイント]

MMR研究で定性的・定量的手法が同時に成り立たない理由は。