筑波大学 人文社会科学研究科                                                現代語・現代文化専攻                                           平井 明代研究室



2019年度  異文化言語教育評価論

Chapter 4

Consequences: Why Do We Need to Assess Our Students?

 

1.        Introduction

評価を開発する際には、その評価を用いることでどのようにintended consequences(有益な結果)をもたらしたいのかを考える必要がある。この章では、assessment use argumentAUA)のClaim 1について、つまりテストの開発者・使用者としてどのような効果を与えたいのかについて、順を追って説明する。

I.         Claim 1を主張するにあたり、評価の開発についてどのようなことを検討するべきなのか。

II.      どのような手順を踏んで、Claim 1を主張するべきなのか。

III.   Claim 1を支えるために、どのようなbacking(裏付け)が必要なのか。

 

2.        Assessment development questions for Claim 1

Claim 1を主張するにあたり、以下の3つを明らかにすべきである。

A.       どのようなintended 結果をもたらしたいのか。

B.        その結果は誰に効果を与えるのか。

C.        その結果がどの程度有益であるのか。

 

2.1.       Intended 結果

n  intended 結果とは、テストの開発者・使用者がステークホルダーに与えたい効果のことである。評価の計画・開発・使用を行い、Claim 1を主張するには、このintended 結果を特定する必要がある。

n  また、

       評価を基に下した決定がどのような効果を与えるのか

       評価を用いることがどのような効果を与えるのか

という2つの効果についても検討し、これらが有益なのか、有害なのかを判断しなければいけない。

 

2.1.1.       結果 of decisions that are made

評価を基に下した決定は、様々なステークホルダーに対して、様々な効果を与える。

 

2.1.2.       Consequence of using an assessment: Washback or impact on instruction and learning

washback(波及効果)とは、「何を」「どのように」評価するかが、指導・学習に与える効果・インパクトのことである。

n  positive washback(プラスの波及効果)

評価を用いることで、教師や生徒が各々のbeliefと一致するような指導・学習を行った時に起こる(beliefとは、「指導・学習とはこうあるべきだ」「生徒に(は)何を学習させる(する)べきだ」という考え方)。

n  negative washback(マイナスの波及効果)

一致しない場合に起こる。

 

high-stakes assessmentの場合:

その特徴により様々な制約が課せられ、結果的に成績偏重の指導・学習になってしまうことがある。そのようなhigh-stakes assessmentは、マイナスの波及効果を起こす。

 

classroom-based assessmentの場合:

生徒の学習方法に波及効果を起こす可能性がある。

開発・使用する評価がプラスの波及効果を起こすようにするために、

       評価の内容が、授業の内容を十分に網羅しているかどうか

       使用する評価タスクが、教室内で使用する指導タスクと対応しているかどうか

に注意すべきである。

 

2.2.       Who will be affected by the 結果?

intended stakeholder(意図したステークホルダー)とは、テストの開発者・使用者が評価を用いることで効果を与えたいと考える人・プログラム・機関のことである。評価は様々なステークホルダーに効果を与える可能性があるため、Claim 1を主張するには、intended stakeholderを特定する必要がある。

 

2.3.       Quality of the intended 結果

beneficence(善行)とは、評価を用いることがステークホルダーにとってどれほど有益なのかを示す程度である。評価を計画・開発・使用する前に、どのような有益な結果がもたらされるのかを検討する必要がある。

 

2.4.       Summary: Intended 結果 and stakeholders in classroom-based assessments

classroom-based assessmentを用いることで、3つのintended consequencesをもたらすことができる。

      指導・学習を改善する(させる)。

      生徒が次のレベルの指導を受ける準備ができているかを確認する。

      生徒が今のレベルの指導を受けるのに十分な能力を有しているかを確認する。

 

Intended consequences

Affected stakeholder

生徒の言語能力を向上させ、言語学習方法を改善させる。

l   生徒

l   教師

l   親/保護者

教師の指導を改善する。

l   生徒

l   教師

生徒が次のレベルの指導を受ける準備ができているかを確認する。

l   生徒

l   今指導している教師

l   次に指導するであろう教師

生徒が今のレベルの指導を受けるのに十分な能力を有しているかを確認する。

l   生徒

l   教師

l   学校

l   大学

l   生徒の就職先

 

3.        Stating Claim 1

n  Claim 1には、以下の要素が含まれていなければならない。

A)       評価を簡潔かつ記述的に分類している

B)       intended consequencesを書き出している

C)      評価を用いることで有益な結果をもたらしたいステークホルダーを書き出している

n  また、Claim 1で主張すべきことは、「開発した評価を用いることで、有益な結果がステークホルダーにもたらされること」だと一般化することができる。

 

4.        Providing backing for Claim 1

AUAの主張を支えるには、backingが必要である。intended consequencesを支えるためのbackingは、評価が用いられてからしか得ることができない。

 

指導・学習を改善する(させる)ための波及効果やformative decisionsにおけるbackingの例:

l   教師がどのように指導を変えたのかの記録

l   教室指導に関する同僚からの意見

l   生徒からのフィードバック

l   教師や生徒に関する意見とそれぞれへのインタビュー

 

summative decisionsにおけるbackingの例:

l   進級した生徒がどうしているかを指導している教師に確認する。

l   進級しなかった生徒がどうしているかを指導している教師に確認する。

 

5.        Discussion point

In Chapter 4, it is mentioned that high-stakes assessments have various constraints which lead to the occurrence of negative washback. Do you still agree to the use of high-stakes statement? If not, how should it be improve? Give examples and explain why.