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2019年度 異文化言語教育評価論 |
Chapter
11
Administrative
Procedures and Instructions
1.
Introduction
適切に評価を実施する上で、手順(procedures)と指示(instructions)は重要な役割を担っている。この章では、その役割について順を追って説明する。
① なぜ評価を実施する手順を明確にすることが大切なのか。
② 評価はどのような手順で実施すればよいのか。
③ 評価を実施するときにどのような指示を与えればよいのか。
2.
Why do
we need to specify administrative procedures?
生徒の言語能力が公平にかつ一貫して評価されているということを保証するために、評価を実施する手順を明確にする必要がある。
n 評価の公平性を保つ方法:
l 生徒にとって不適切だったり、生徒の不安を煽ったりするような内容は避ける
l 生徒によって有利・不利が生まれるようなタスクは使わない
l どの生徒に対しても、同じ手順で評価を実施するようにする
n 評価が一貫しない理由:
l その都度、異なる手順で評価が実施されている
l 生徒の質や数が違う集団に対して、異なる手順で評価が実施されている
low-stakes
assessments ⇒ 評価を実施する手順は比較的シンプル
high-stakes
assessments ⇒ 評価を実施する手順はより複雑になる
評価が生徒に与える影響の大小に関わらず、評価をどのように実施するかを予め明らかにしておくことが大切である。
3.
Administrative
procedures
評価は次のような手順で実施される。
A) test settingを準備する
B) test environmentを整える
C) 指示を理解させる
3.1.
Preparing the test
setting
各評価タスクの活動・手順・タスクの特徴によって、どのようにtest settingを準備するかが変わる。
具体的には、
l テストをするための時間・場所・設備を確保する
l テストを実施するのに必要な教材や道具を用意する
l テストを実施するのに必要な人材を確保する
評価が1回の授業時間内に、教室で、一度に実施できるのであれば、特に時間と場所を確保する必要はない。しかし、個別に、あるいはペアで評価を実施する場合、場所や設備を特別に準備する必要があるかもしれない。
Administering
a speaking assessment to pairs of students:
3.2.
Providing a supporting
testing environment
生徒が最大限の力を発揮できるようにするためには、生徒が勇気づけられるようなtest environmentを整えなければいけない。
①
生徒の気が散らないようにする。
l 外部の要因(例:学校内外でのイベントの騒音など)
l 内部の要因(例:話し声がする、紙の擦れる音がするなど)
⇒
生徒の注意を引くのは、評価を実施する上で必要な指示を与えるときのみにする。
②
生徒を勇気づけるような態度をとる。
評価を実施する上で重要なのは、
l 何をしなければいけないのかを生徒が理解していること
l 生徒が安心して評価を受けられること
⇒ いつもの授業と同じように生徒に寄り添うことで、生徒の不安を軽減することができる。
3.3.
Communicating the instructions
評価を実施するときに適切な指示を与えることで、生徒に何をしなければいけないのかを理解させ、生徒が最大限の力を発揮できるように促すことができる。
指示に含まれるべき内容:
l テストの結果がどのように利用されるのか
l どのような言語能力がテストされるのか
l テストがどのような手順で実施されるのか
l テストにどのようなタスクが含まれているのか
l 生徒の回答がどのように採点されるのか
3.4.
When do you give
instructions?
n low-stakes classroom assessmentの場合:
必要な内容を、テストの直前に口頭で示しても良い。
n middle- to high-stakes
assessmentの場合:
テストに向けて十分な準備ができるように、生徒には事前にテストの基本的な内容を伝えておく。このような事前の指示では、「テストの結果がどのように利用されるのか」「どのような言語能力がテストされるのか」を伝える。
テスト当日は、より詳細な指示を与えるようにする。具体的には、「テストがどのような手順で実施されるのか」「テストにどのようなタスクが含まれているのか」「生徒の回答がどのように採点されるのか」を説明する。
n multi-part testの場合:
テスト全体に関する指示と、各タスクについての指示を与える必要がある。
各セクションにおいても、その都度指示を与える必要がある。
3.5.
How do you make
instructions understandable?
指示はテストの一部ではなく、生徒が最大限の力を発揮できるようにするためのものである。なので、生徒が指示を理解できるようにすることが大切である。
① Language
指示は、生徒の母語あるいは目標言語で与えることができる。
l 生徒の母語が同じ場合:
⇒ 母語で指示を与えても良い。
指示を確実に理解してもらうことができる。
l 生徒の母語が異なる場合:
⇒ 目標言語で指示を与える必要がある。
指示を確実に理解できるレベルの言語を使うようにする。
② Form
(1)
指示が口頭で与えられるのか文書で与えられるのかも生徒の理解に影響する。
l タスクのインプットと同じ形式で指示を与えることで、理解を促進することができる。
リーディング・ライティング ⇒ 文書
リスニング・スピーキング ⇒ 口頭
l 両方で指示を与えることも可能だが、2つの指示を同時に与えることで気が散ってしまう生徒もいることに留意しなければいけない。
(2)
どのような評価が実施されるかを理解させるために、評価タスクを例示しても良い。特に、生徒が評価タスクに慣れていないときに効果的である。
(3)
評価のときに与える指示を、事前に生徒と確認しておくことも大切である。文書と口頭、両方での指示が良いのか、どちらかだけで良いのかを確認しておく。
3.6.
How extensive do
instructions need to be?
評価を実施するときの指示は、次の基準を満たしている必要がある。
A)
必要な情報をすべて含んでいる
B)
目的を効率的に実行することができる
C)
指示を与えるのに時間がかからない
n 効果的かつ効率的な指示は、
l シンプルで、生徒にとって理解がしやすい
l 短く、あまり時間がかからない
l 生徒が何をしなければいけないのかを理解するために必要な情報が記されている
n 指示にどれくらいの量の情報が必要かは、次の2つによって変わってくる。
l 生徒にとって評価タスクがどれくらい親しみのあるものなのか
l 評価タスクの種類と数
なので、授業タスクと似た評価タスクが1つや2つ入っているようなclassroom-based
assessmentの場合、指示は必要最低限の情報を含んでいれば良い。一方、high-stakes assessmentの場合、指示にはより広範囲で詳細な情報が含まれている必要があるだろう。
4.
Discussion
point
Setting and environment
can both be translated as “環境” in Japanese. However, in this
textbook, the author differentiates between the two and introduces new notions
that are important for administrative procedures: test setting and test
environment. What do you think is the difference between the two?