筑波大学 人文社会科学研究科                                                現代語・現代文化専攻                                           平井 明代研究室



2018年度  異文化言語教育評価論


 

     Introduction

・タスク中心のリスニングレッスンは、一方向的タスクと相互的タスクの双方に焦点を当てながら、教員がコミュニケーション用のリスニングレッスンをプランニングする手助けとなる。

・このレッスンは目的、意味、そして結果が主要であるタスク中心学習の原理に基づいており、またその中にはメタ認知的指導が組み込まれている。

・タスク中心のレッスンの構造としては、補助的でリスニングカリキュラムと統合された言語技能プログラムのリスニングの一部分で形成されている。

 

Listening Comprehension Tasks

・タスクというのはある結果を達成するためにコミュニカティブな目的によって学習者が言語を使用する活動であるとされている。

・教員は学習者の理解を促したり、認知的あるいは情意的に従事させたり、または重要なスキル(figure9.1参照)を上達させる機会があるタスクをデザインする必要がある。

 

・スキルというのは多くの注意を払うことなく実行されるものであるが、ストラテジーは制御され、また努力が必要となる。

・言語学習者は取り組む課題の度合いやリスニングの目的によってスキルとストラテジーを使用することになるが、簡単に理解可能なものであればスキルで十分であり、困難が生じるならば、ストラテジーを採用することになる。

・聞き手というのはインプット内においてその意味を理解する際、聞く目的に応じて異なるストラテジーを使用している。

・また、相互的リスニングにおける聞き方というのは文脈に依存している点もある。

Table9.2ではリスニングテキストとそれぞれと結びつくコミュニケーションのタイプの例が表示されている。

 

・学習者はコミュニカティブでオーセンティックな活動を通して相互的なリスニングスキルを向上させていくことが予想される。

・このような学習プロセスを高めるために、メタ認知的指導が様々で異なるコミュニカティブな状況の特徴に関する知識を上達させるためのレッスンに組みこまれる。

・学習者がこのような特徴に慣れてきたら、適切なストラテジー(e.g. プランニング、モニタリング、自身のリスニングの評価)を使用することができる。

 

One-way Listening

Selecting Tasks

one-way listeningというのは話し手を必要とせず、また直接的、または間接的でオーセンティックなリスニングテキストといった違いがある。

・直接的:e.g. テレビ番組、映画、ラジオなど一般大衆に向けたもの

・間接的:学習者は会話や彼らが相互交流におけるその他のやり取りでのふと耳にする人(overhearers)”の役割をになっている。

・テキストのタイプにかかわらず、コミュニカティブな結果を達成するためのリスニングの後に、その間、またはすぐに学習者が行うことができるタスクが数多くある。

・ほとんどのone-way listening タスクは、一度ワークシートやチェックリストといったマテリアルを一度準備すると教員の介在をほとんど必要としない。

・学習者にとってタスクは扱いやすく、興味が持てるといった適切なリスニングテキストを選択することが重要である。

・テキストが簡単すぎてもよくないため、長期的にリスニングストラテジーのどう適用させるかがわかる程度の難易度の課題が好ましい。

・自然にかつ自動的なリスニングスキルの使用と何らかの労力を必要とする処理を結び付けることで、長期的に学習者の総合的リスニング能力の発展を手助けしてくれる。

・リスニングを行う際、学習者の返答の真正性に気を向けなければならず、学習者に真正性が不足していた際はなぜ必要なのかどうかをはっきりと述べることが重要である。

・そうすることで学習者が理解する方法として詳細に聴かせる訓練を施すことができる。

・リスニングを行った後は、それを通じて獲得した情報を使用する方法を反映しなければならず、一度その聞き取りの結果を産出すれば、教師は学習者に他の学習者と自分の聞き取りを比較させ、自己評価させることができる。

・こうすることで、学習者が理解したものを自己評価する重要な習慣を強化していくことになる。

 

Selecting Texts

One-way listening タスクというのはリスニング能力を発達させるようなタスクに大いに依存するため、テキスト選びは慎重に行わなければならない。

・一般的には、オーセンティックマテリアルの使用が良しとされており、リスニング用のものとしては、言語を教えるために調整されたテキストではなく、その場で産出された自然なスピーチの録音だとされている。

One-way listening 用のオーセンティックマテリアルとしては、ビデオやドラマ、CD-ROMといったものが挙げられる。

・オーセンティックマテリアルは学習者の背景知識や年齢に沿って関心を惹くような内容、または流行りの話題の情報を含んでいるという点において本質的におもしろいものである。

・このような点により学習者の動機づけにつながったり、実生活で使用されているインプットに触れることができる。

・しかし、ポーズやアクセント、音の欠落などといったより本物に近づきすぎるマテリアルだと学習者への負荷が大きくなってしまう。

・その負担を軽減するためにセミオーセンティックマテリアルというものが存在する。

・このマテリアルにより、実生活で直面するであろう理解するためのギャップを処理する方法を学ぶことができる。

・このテキスト内の話者の発音はクリアで、発話がよりよく構築されており、オーセンティックマテリアルよりも整地されているマテリアルである。

・これらはこれから述べる7つの質問に反映されている。

 

1.What is the original communicative purpose for the material?

・考えるべきテキストかどうかを決める最も手っ取り早い方法はそのオリジナルの目的を作ってしまうことである。

・これは、そのオリジナルの目的と教室でのリスニングの目的とを完全に一致させるということではない。

・テキストが何のためのものなのかを知ることで特定のグループに適する方法かどうかという考えを抱かせてくれる。

・リスニング教授用のマテリアルを応用したいのであれば、必要となるものとどの範囲までなされる必要があるのかといったことも注意する必要がある。

 

2.Who is the intended audience?

学習者のプロファイルとリスニングテキスト内での聴衆を一致させることは利便性がある。なぜなら、その内容や話し方というのは聞き手のある集団のほうが別の集団よりもより惹きつけられるかもしれないからである。

・テキスト用の意図された聞き手と言語学習者用の間でぴったりとよく合うものを見つけることで、学習者がリスニングタスクには関連があり、適切であることを確かめさせてくれるだろう。

・もう一つ考えるべき点が馴染みのない文化的要素の存在であり、世界中の人々の異なるグループ間において共通の意見がある一方で、ある国の10代のために産出されたものが別の文化を持つ10代の者たちにとって必要に受け入れがたいといったものである。

 

3.Who is speaking?

・話者の特徴はL2リスニング理解において大きな影響があり、これには発話率、アクセントそして発音も含まれている。

・遅すぎたりまたは速すぎる発話というのは教材として避けることがベストである。

・タスクにおいて学習者はふと耳にする人(overhearers)の役をする必要があるとき、相互交流での多くの話者は考慮されるべきである。

・数人の話者が入り混じっているオーディオというのは、特に複数の話者の声が類似していたり、早口で話しているときに学習者が次の変化についていけないといった問題を産み出してしまう。

 

4.What kind of visual support is available?

・視覚的な補助(visual support)があることで理解を高めてくれる文脈的手掛かりを与えることができ、学習者にlistening inputに注意を向けさせることができたり、次に何が消えるのかを予想させる手助けも行うことができる。

・しかし、すべての視覚的な補助が学習者に対して有効であるというわけではない。

・例えば、テレビでニュースを見る際はキャスターが読む原稿を聞きながら視聴することが一般的であるが、時に流れている映像がキャスター読まれる原稿と無関連のときがあり、その際は視覚情報が邪魔となってしまう。

 

5.Is the level of language appropriate?

・理想的には、選ぶテキストは学習者が全体的に最低限理解できるレベルであるべきで、その中にリスニングの成果を成し遂げるためにリスニングストラテジーを使わせるような課題も含まれるべきである。

・受け入れられやすい難しさというのはタスクに関係し、もし全体の理解のためにテキストすべてを聞かなければならないのなら、難しいテキストというのは学習者にとって管理されうる。

・簡単なテキストは難しいタスクを行う際に使用されるべきである。

・学習者の背景知識が乏しいものや馴染みのない語彙項目が多かったり、親しみのないアクセントがあるテキストは避けたほうが良い。

・言語的には難しくても馴染みのあるトピックであれば重要点の聞き取りや、全体的理解、予測などのよい訓練になる。

 

6.Is the length (duration) of the text appropriate and realistic for the learners?

・テキストの長さが適切かどうかを評価する一つの方法は、リスニングの目的と意図的にリスニングしたうえで得る結果を考えることである。

・例えば、情報の詳細の聞き取りであれば長いテキストは適さないが、要約が目的であれば、学習者は重要な点や全体理解のためのリスニングを行うだろう。

・学習者はリスニングを行う目的によって異なるストラテジーを使用する。

・授業の目的に応じて長いテキストは分割してもよいが、もしテキストを不必要に短くしてしまうと学習者は耳を慣らしにくくなってしまうおそれもある。

 

7.Is the text really meant for listening?

written textの多くはリーディング用であり、リスニング用ではない。

・扱うテキストにて内容が難しかったり語彙的に濃かったりすると黙読をしてしまいがちである。

・話言葉での節では、内容語(e.g. 名詞や形容詞)はより少なく、機能語(e.g. 前置詞, 助動詞, 冠詞)はより多い傾向にある。

・スピーチというのは異なって構成されており、spoken languageの文法はwritten languageの文法と異なっている(Carter & McCarthy, 1997)。

Spoken languageの特徴というのは、節の埋め込みが使われる代わりに同格の”and”を使用して項目同士を頻繁に連結させる。

・スピーチの処理や産出のための認知的容量が限られているためにこのような特徴を有しているが、spoken inputを処理する一方でこの特徴は学習者の手助けともなっている。

  ・黙読されるライティングテキストというのは音読や録音されるべきではないため、リスニングの練習には向かない。

    ・通常の、listening inputというのは一瞬かつ繰り返し産出されるものではない。

  ・もし、ライティングテキストを使用するのであればリスニング用に調整するか、リス

ニングを促進するような特徴を有するものを選ぶ必要がある。

 

Interactive Listening Tasks

Interactive Listeningでは対面で交流し、聞き手と話し手の役割が良く代わる。

Interactive Listening Tasksでは相互交流、あるいは取引といった幅広い目的を伴ったtalkを含んでいる(Brown & Yule, 1983)。

・相互交流の目的というのは参加者間の関係を構築したり維持したりすることで一回一回のターンは短い。

・取引の場合、情報交換がメインのため話し手は良く話す。

・双方の特徴を含むタイプの状況が同じインタラクションの中でも生じるが、いかなる状況でも学習者は話者と聞き手を交代する。

figure9.4ではペアや小規模のグループが必要なタスクの一覧である。

 

 

これらのタスクはスピーキングクラスで使用されるインフォメーション(オピニオン)ギャップアクティビティに基づいている。

・スピーキングはこのようなタスクにおいてリスニングと統合されているが、よく見落とされる点はリスニングに強調が置かれているということである。

・このようなアクティビティは双方のスキルの練習のために使用される。

・聞き手の行動と反応のタイプが強調される。

・理解と相互交流を高める構造的ストラテジーの重要性がわかる方法でタスクがいかになされるかに対して考慮されなければならない。

・こういった規則により学習者が相互交流したり、重要な受容スキルの使用の練習に必要なものを作り出してくれる。

Interactive listening tasksというのは人々がコミュニケーションしている文脈の状況を反映してくれ、そこには明確な目的があり、そして学習者の目標は必要な情報共有を成功させることである。

Interactive listening tasksではリスニングとスピーキングを統合させる一つの方法で実践される。

・典型的なタスクにはインフォメーションギャップを含むものが多い。

・目的のあるリスニングの重要な点というのは協力を通じて穴を埋めようという関心や動機づけにつながるような情報や意見のギャップであることだ。

・リスニングがスピーキングにかぶさってしまう(overshadowされてしまう)という状況を避けるためにリスニングスキルとこういったタスクに必要なストラテジーだと強調したり、また流ちょうに話すことと同様によく聴くことは大切であると前もって教えることが重要である。

 

Discussion Questions and Tasks

 

2. Select an interactive listening task and identify the type of reception strategies (see Chapter2, Table2.2) that learners might need to help them participate effectively in the interaction. Prepare a list of useful expressions (in order of formality) that you can teach learners before they begin the listening task.

Interactive listening taskfigure9.4参照

 

Aグループ

選択したタスクはsimulationで、このタスクはrole playdiscussionを合わせたような特徴を有するため、Table2.2における1,2,5Strategyが必要であると考えられる。理由としては、理由としてはsimulationタスクというのはある役を演じるうえである問題に対して議論をし、解決策を練るといったタスクである。特に司会役が重要で議論全体の理解が必要なうえに問題解決につながるような質問を投げかけていく必要もある。以上のことからsimulationタスクにおいては1,2,5のストラテジーが必要である。

 

Bグループ

選択したタスクはrole play タスクで必要となるストラテジーは2と3である。このタスクでは扱うトピックによって難易度を調整することができるため、熟達度の低い学生と高い学生にそれぞれ適切な難易度のタスクを提供することが可能となる。また、タスク活動中に相手の発言が理解できなかった場合や確認を行う際などに質問を行うといったことが想定されるためである。よってrole playタスクに必要なストラテジーは2と3である。

 

Cグループ

選択したタスクはdiscussionタスクで必要なストラテジーは1,2,3,4,5が該当する。理由としてはこのタスクで重要となるものは特に司会者でディスカッションを交わす上で要所要所の理解が必要であり、次にどのような意見が出るか、あるいはどのような質問がかわされるかなどといったことを考慮に入れながらタスクを行う必要がある。さらに他の学生も全体的理解のためにはどのような質問や意見が必要なのかを考える必要がある。そのため、discussionタスクでは1,2,3,4,5のストラテジーが必要となる。