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2018年度 異文化言語教育評価論 |
1. Summary
本講義で扱われた教科書である”Teaching and Learning Second Language Listening ”で
は、第二言語習得におけるリスニングに関する知見や概念、検証から教育的示唆やその指導の評価方法など多角的な観点から記述されている。Ch1, 2では、リスニングには複雑な認知処理が関わっており、聞き手は聞こえたテキストと長期記憶内の知識 、例えば先行知識をリンクさせながら,意味を構築していること、理解の三段階においてトップダウン処理とボトムアップ処理が重要な役割を果たしていること、one-way listeningと interactive listeningの違いについて述べられている。
Ch3では、聴解というのは、積極的なプロセスであり、彼らの言語知識とトピックに関する知識に基づいて、聞き手は聞いたことを分析及び解釈、また意味構築により示された処理の構成要素の統合、理論的な作業モデルに利用による、低熟練度の協力者の聴取行動へのフォーカスなどが記載されている。Ch4では、L2 listening comprehensionには,個人と環境の要因が重要な役割を果たしているとされ、それらに含まれる様々な要因が,学習者の認知過程とlistening outcomeの質に影響するであろう認知的過程は,L2の語彙やL1のリスニング能力がlistening outcomeに影響していることが述べられている。Ch5では、メタ認知の枠組みには、教授可能なものとそうでないものがあり、Metacognitive Approachによって、より効果的なリスニングが可能になり、学習動機や自信を高めることができる。また、メタ認知プロセス自体は個人単位であるが、協働的に行うべきで、他者との共有を通じて知識や学習方略を分析し、評価することができるとされている。Ch6では、教員自身がリスニングの基礎である認知プロセスを理解し、リスニングの複雑性に注意を向かせ、適切なリスニングを練習する機会を与えることがsuccessful listenerを育てる上で重要であることが書かれている。Ch7では、他言語のリスニング学習のプロセスについてのよりよいメタ認知を発達させる
ためのいくつかの活動が導入され、特にthe integrated experiential listening tasks と guided
reflection
activitiesは様々な場面で使用されており、メタ認知アプローチはこれらの活動と
learner-centered
activitiessを統合していることが記載されている。Ch8では、ボトムアップにフォー
カスした活動を行う際は,意味に全くフォーカスされない活動になってしまう点を教師は頭の中に
入れておかなければならず、学習者のリスニング理解とリスニング能力の向上のためには,リスニン
グ活動を計画し,モニターし,そしてそれを評価することを学習者ができるようにする活動を,意味
ベースの文脈で行う必要があることが述べられている。Ch9では、タスクに関する章で、タスクを使
用することで、リスニング教授を促進し、学習者による内容理解度を高めるだけでなく、リスニングプ
ロセスの認識の手助けともなり、それにより学習者の動機づけや熟達度の向上につながることが示
唆されている。Ch10では、言語学習に有益であるが、上手く利用されていない多聴を行うためのプ
ロジェクトが四つ紹介されており、プロジェクトではリスニングがフォーカスされているが、その中に
あるタスクにて学習者は様々な言語知識を身につけることができ、多聴を通じて発達した技能や思
考プロセスは、効率的なリスニングにすると記述されている。Ch11では、教員によるmeta-technical
の指導により、学習者は最大限のマルチメディアによるリスニング学習を行うことができ、こういった
科学技術は学習者の実生活に則ったリスニング指導の可能性を拡張するものであることが書かれ
ている。Ch12では、主に評価について特に形成的評価と総括的評価の二点が取り上げられてい
る。特に形成的評価には成長を測るだけなく、熟達した聞き手になるために必要不可欠なメタ認知
の知識を高める効果も期待することができ、日頃から行いつつ、要所で総括的評価を織り交ぜて
行うのが最も良いとされる。どちらの評価にせよ、測定ツールの質は妥当性、信頼性、真正性、波
及効果、実用性の観点から評価される必要があり、リスニングのプロセスとプロダクト両方に重きを
置きながら評価が慎重に行われれば、学習は促進されるだろうといった内容となっている。
2. Comment
リスニングにおける言語学習を行っていくうえで特に教師が実際の教育現場で実践していくべきという観点から特に重要だと感じたCh9とCh11について述べていきたい。まずCh9では、タスクに関して取り扱われている。タスクを行う目的としては、生徒の理解や動機づけなどの促進が挙げられるが、特に動機づけの促進が可能である点が重要だと会考える。動機づけを促進する要因としては、そのタスクで使用するテキストやマテリアルがいかにオーセンティックなものであるか、また内容がいかに学習者の興味・関心に働きかけるかという点が挙げられる。特にオーセンティックマテリアルは、例えば、ビデオやドラマ、CD-ROMなどが挙げられ、学習者の背景知識や年齢に従って関心を惹くような内容、及び流行りの話題の情報を含蓄していることで、学習者の動機づけに促進すると考えられる。しかし、オーセンティック過ぎるマテリアルは、例えば発音・アクセントが不慣れなものや音の欠落など学習者に対し大きな負担となる要素を多く含むのものは理解を妨げるとことになるだろう。そこで、この負担の軽減で採用されるものがセミオーセンティックマテリアルと呼ばれるものが存在する。これは学習者に合わせてオーセンティックマテリアルを調整したもので、より理解を促進させることができるように工夫された教材である。例えば、書き言葉で書かれているテキストをリスニングとして使用する場合は聞き分けがしやすくなるようにスクリプトを改変したり、画像や絵といった視覚情報を提示することなどが挙げられる。このように、学習者の熟達度に合った適切なマテリアルを用意することで、多少熟達度が低い学習者であっても内容理解の促進を図ることができるのではないかと考える。さらに、タスクではより実践に近い環境で学習を行わせることができる。なぜなら、学習者はタスク内で設定された目的を遂行するために言語を駆使することになり、言語を学ぶことが目的ではないからである。こうすることで、言語を使用しながら学習することができ、実際のコミュニケーションでも使用する適切なストラテジーの使い方も身につけることができると考えられる。また、学習者のリスニングタスクへの理解度を高めるために準備段階としてPre-listening Activitiesが行われる。これは、人間の理解というのは先行知識やスキーマに基づいているため、pre-listening activitiesによって学習者内にある既存知識を呼び起こし、リスニングタスク内における新たな知識獲得の援助を行うことができるためである。加えて、リスニングタスクの後にpost-listening activitiesも行われる。これは、学習者の目標語の習得の促進だけでなく、理解度の確認などを目的とするためである。以上のことから、教師が現場のリスニング指導でタスクを行う際は、学習者の理解を保証するためにタスクで扱うテキストの内容が興味・関心を惹きつけるようなもので、かつタスクの前後で効果を最大限に発揮するような工夫を凝らすことが重要であろう。タスクを通じていかに学習者に楽しく感じさせられるかで、その後の自立学習への意欲につながるかもしれない。
次にCh11では、マルチメディアをいかにリスニング教育へ寄与するかに関して述べられている。近年は科学技術の発達により、リスニング指導の際に視覚的な情報提示を行うことでよりオーセンティックな教室英語の指導を行うことが可能になった。よりオーセンティックな指導が可能になることにより、学習者の興味・関心を惹きつけることができ、また学習内容の理解度を向上させることも可能になると考えられる。視覚情報と聴覚情報を同時に提示することによる効果は、二重符号化理論でも説明されており、この理論によると長期記憶は言語的な情報処理を担う言語システムとイメージの生成などを行う非言語的システムから構成されているとされており、これら二つのシステムが相互作用の関係にあることから、記憶に残りやすいゆえに効果的なのだと考えられる。さらに本章内で特に重要だと感じた点は、映像に字幕やキャプションをつけることでリスニング理解の促進につながることが示唆されている点である。研究結果からL2でのキャプション・字幕を映像とともに提示することにより新出語に関する語彙テストや読解理解テストの結果が有意に効果的であったとされている。このことから現場での指導において字幕・キャプションと共に視聴覚教材を提示することで学習者に対し、効果的な指導を行うことができると思われる。しかし、実験対象の学習者が日本人学習者対象ではないため、この研究結果がそのまま日本人学習者に当てはまるというわけではないことは肝に銘じておかなければならないだろう。そのため、実際に教育現場で応用しようとするのであれば学習者の適性に合った教材を採択し、さらに前述したタスクを実施する際と同様にpre-listening activities、およびpost-listening
activitiesといった活動で学習者が理解しやすく、記憶の保持につながりやすくするような工夫を施すことが重要であると考える。
Effects of subtitles, complexity, and
language proficiency on learning from online education videos
Abstract
開放的オンライン教育は、だんだんと人気になってきている。Massive Open
Online Courses(MOOCs)ビデオは、教授法として最も使用されている。動画による学習に恩恵があるのか有害なのかに関する根拠が衝突しあっている。本章では、第二言語による字幕の効果というのは動画の視覚的テキスト情報の複雑性と同様に熟達度に依存しているのではないかという仮説が立てられた。実験研究においてこの三方向の交流が検証された。字幕の効果はどの交流でも主効果は見られていないが、熟達度と複雑性にはかなりの影響(substantial impact)があることがわかった。
Pre-study
これまでの先行研究において字幕による学習効果というのは、有益であるという意見がある一方で有害であるとする意見も存在する。有益であるとする研究では、Perez, Noortgate, & Desmet (2013)やBaltova,
(1999), Chung, (1999)などが挙げられる。彼らの研究によると字幕を提示して言語学習用のビデオを使用することで学習者のパフォーマンスの向上につながったということが報告されている。しかし、こういった研究は言語学習にのみフォーカスされているものばかりで、内容学習にフォーカスした研究は少ない。内容学習に焦点を置いた研究(Markham et al., 2001; Hayati & Mohmedi, 2011)においても字幕は内容学習に有益な効果をもたらすという研究結果が得られている。しかし、実際の教育現場にて応用可能であるといえるほど十分には研究が進んでいないのが現状である。一方で、字幕による効果が有害であるとする研究はKalyuga et al,. (1999)やMayer, Heiser, &
Lonn(2001)などが存在する。彼らの研究によると字幕なしでのビデオ学習のほうが字幕ありのものよりもよりよい学習効果が得られたとする結果が得られ、また記憶の保持においても字幕つきだと保持する記憶量を下げてしまうということが示唆されている。以上のことからこれまでの字幕に関する先行研究は、各研究間で意見が食い違っている。さらに、学習への字幕効果は有益でも有害でもないとする研究(e.g., Moreno & Mayer, 2002a)すら存在することが分かっている。本研究では、これらの矛盾する根拠の統合を可能とするために字幕と言語熟達度、そしてビデオ内の視覚的テキスト情報の複雑性(visual-textual information complexity : VTIC)の水準間の相互交流について熟慮していく。また、本研究で扱われるVTICには、視覚的テキスト情報の量、視覚的テキスト情報の表示比率、手掛かりへの注意、そして物理的距離の4要因が存在する。加えて、本研究は以下の三仮説の検証を目的とする。
(1)
テストパフォーマンスにおける英語の熟達度と字幕、VTUCには三方向の相互作用が存在すること。
(2)
字幕を使用した際に、VTICの低いビデオを低熟達度学習者に用いると高い言語パフォーマンスを得ること。
(3)
字幕を使用した際に、VTICの高いビデオを低熟達度学習者に用いると高い言語パフォーマンスを失ってしまうこと。
Working Memory Limitations
人間の認知的構造の特有の特徴というのは、すべての情報が単一の方法で処理されるというわけではないということである。作動記憶とは、聴覚情報と視覚情報でそれぞれ別々のチャンネルで処理されると特徴づけられており、また情報の要領には限りがあり、情報が消える前のほんの数瞬間で情報チャンクしか保持することができない(Baddeley, 2003)。また、学習タスクの間、作動記憶は新情報の処理の障害として作用する。
Textual Versus Nontextual Visual
Information
視覚情報と聴覚情報というのは、別々のチャンネルで処理されるが、この第一段階の処理後においてはいかなる言語が視覚的または口頭で表示されようと同一の作動記憶内、つまりは音韻ループにて処理される(Badlley, 2003)。逆に非テキスト視覚情報というのはある異なる構成要素、視空間スケッチパッドにて処理される。
Presentation Rate of Visual-Textual
Information
作動記憶は処理と保持に限りがあるゆえに、同時に多くの概念を導入すると生徒に負荷をかけ過ぎる危険性がある。同じ全体の情報量を操作する一方で、これは情報を何度も広げることによって抑制できる。例えば、視覚情報が示される前に、口頭や書き言葉のテキスト説明が表示されるとき、字幕の有害効果は消えるといったものである(Moreno & Mayer, 2002b)。
Split-Attention Effects
字幕というのはビデオ内においておそらく重要であろう部分への注意に向ける認知資源を減らしてしまい、学習の妨げとなってしまうことがある。このような字幕は、いくつかの眼球運動に関する研究にて注意配分効果を引き起こしうるとされている。
Attention Cuing
ビデオ内での内容理解に重要な手掛かりへ注意を向けるような工夫は学習に良いとされている。そのような手掛かりへの注意というのは学習者に対し、ビデオ内のどこに目を向ければよいかを手助けすることになるため(Boucheix & Lowe, 2010; Ozcelik, Arslan-Ari, & Cagiltay, 2010)、おそらく字幕の有害な効果を低減させるだろう。
Physical Distances
VTIC最後の要因はビデオ内で関連する情報の物理的構造に関連する。特にラベルのようなヘッダーとその指示物との物理的距離である。ヘッダーと指示物との重要な物理的距離というのは学習に有害であり、距離が長くなればなるほど情報の処理と保持により多くの認知資源を必要とし(Mayer, 2008)、また注意配分効果を誘引する可能性もある。
The Possible Role of Language Proficiency
学習者の熟達度の違いによって母語での字幕とL2での字幕のとちらが有益となるかが変わってくる。そのため、本研究では被験者を熟達度ごとにグループ分けをCEFRに準拠した形で分けられている。
Method
Videos
約7分ビデオを4個用意し、それぞれ高い/低いVTICと字幕あり/なしの組み合わせで合計16個のビデオが作成された。ビデオがCourseraのプラットフォームからのMOOCsのものが使用された。ナレーションはすべて同一人物に読まれた。字幕は画面の下部分に表示された。
English Proficiency Test
熟達度分けテストにはTrack Testが用いられ、CEFRの枠組みに準拠してレベルごとにグループが分けられた。
Procedure
被験者はそれぞれのビデオにつき4種類あるうちの一つを合計4個のビデオを一回ずつ視聴した。また、その四つのビデオの組み合わせはList1からList4にまで分けられ、被験者はカウンターバランスを考慮し、ランダムに配分された。実験前にはビデオに関する先行知識を調査する質問がなされ、5点中3点以上の被験者のデータは排除された。VTICの高低を測るために各ビデオの視聴ごとに心的努力の程度に関する質問がリッカート尺度でなされた。ビデオに関する質問は多肢選択式で行われた。すべてのビデオで以上の流れが終わったとにプレイスメントテストが行われた。最後に質の保証のためにビデオ視聴の間に技術的な問題の有無に関する質問を行ったところ、報告はされなかった。
Participant
被験者は18歳以上の英語の非母語話者で合計125名であった。
Analysis
本研究では集められたデータの分析にはベイズ分析のANOVAが用いられた。
Results
Within-subject difference between
conditions(Table4)
それぞれ異なる条件下で被験者らは四つのビデオを視聴した。Table4ではテストスコアと心的努力(mental effort)における被験者内の違いを示している。結果から複雑性が同等で字幕の有無の違いが最も小さかった。字幕ありで複雑性の水準が異なるとその違いはより大きくなったことから複雑性には主効果が見られた。また、字幕がなかった場合もこの違いはより大きくなった。このことから複雑性と字幕間には相関関係にあることを示しているのかもしれない。
Bayes Factors of all models relative to the
null model(Table5)
複雑性、字幕そして言語の熟達度のすべての要因の組み合わせたモデルのベイズ要因がBayesian
repeated measures ANOVAで検証された。その結果、複雑性と言語熟達度の組み合わせのモデルが最も多くのエビデンスがあった。このことから、複雑性と言語熟達度には主効果が見られ、字幕には主効果が見られないことがわかった。さらに重要なことは字幕+複雑性+言語の熟達度のモデルよりも複雑性+言語の熟達度のモデルのほうがより多くのエビデンスが見られ、加えていずれのモデルにも字幕を含まないものの方がエビデンスが多く見られた。
Posterior probability density plots for the
effects on test score(1-10)(Figure1)
Figure1では三つの主効果の事後確率の密度の可視化が示されている。字幕の効果は0周辺に集中している。一方で複雑性の効果は‐0.62あたりにあり非常に強く、言語熟達度の効果は0.55周辺にありポジティブな影響があることが示されている。
Parameter estimations of intercept and
factor effects (Table6)
Table6では、主効果とすべての相互作用のパラメーターの見積もりが示されている。複雑性のみが異なる二つの同一のビデオの違いは0.62だった。標準偏差によって複雑性を分割するとコーエンのdの効果量は0.31という結果になった。言語熟達度の傾きは0.55であったが、字幕の効果は0.04でコーエンのdの効果量は0.02であった。
Posterior probability density plots for the
effects on mental effort ratings(1-10)(Figure2)
Figure2では、心的努力の三つの主効果の事後確率の密度の可視化が示されている。字幕と言語熟達度の効果は双方ともに0付近に集中していた。字幕での効果は0.015(95%信頼区間は-0.16~0.19)であり、言語熟達度の効果では0.017(95%信頼区間は-0.10~0.14)であった。三つの効果のうち、複雑性のみ0近辺に集中しておらず、0.24(95%信頼区間は0.06~0.41)であった。コーエンの効果量サイズに変換すると字幕の効果は0.008、言語熟達度は0.010、 複雑性は0.120で相互作用の効果はすべて0.02以下であった。
Summary and Consequence for practice
本研究の実験結果から、ビデオの視覚的テキスト情報と生徒の言語能力の双方が強力なコンテントビデオによる学習の予測変数であることが示唆された。このことから、教育ビデオによる学習には、言語熟達度とビデオの複雑性が大いに影響を及ぼすということが分かった。また、英語の字幕は、生徒のビデオ学習能力を増加も低下もさせなかった。しかし、だからといって利用されるべきではないというわけではなく、聴覚の不自由な学生には非常に重要なものとなる。
考察
本研究は、字幕とビデオの複雑性、そして言語熟達度の関係性について検証されたものである。従来、字幕をつけながら洋画や海外ドラマを視聴することが英語学習の一つの定説となっているが、実際に効果があるのかどうかということはあまり知られていないのが現状だと思われる。本研究からわかったことは、字幕をつけることによる学習効果はあまり見られず、その他の要因であるビデオの内容の複雑性や学習者の言語熟達度において主効果が見られた。このことから、現場で視聴覚教材を用いる際は字幕をメインで使用するというよりもその教材が対象の学習者の熟達度の適する複雑性なものなのかどうかを吟味する必要があることが言えると考える。確かに字幕にばかり目がいってしまうと動画の内容が頭に入ってこなかったり、字幕の部分を何度も巻き戻しで見直したりといったことを行ってしまうことは少なからず経験をしたことある学習者もいるのではないだろうか。ことさら、動画を使用した内容学習であれば、字幕が内容理解の妨害になっている可能性も否めないだろう。しかし、本研究では母語による字幕の影響までは検証しきれていない。母語による字幕ではあれば、自動的に処理されやすいため内容理解の促進につながる可能性があるかもしれない。今後は、母語による字幕の影響、ないしは日本人学習者対象の母語とL2の字幕が学習に及ぼす影響をより詳細に研究がなされていくべきであろう。そうすることで将来、現場の教員は生徒に合わせた適切な教材選びを行う指標といったものを参照できるようになるかもしれないだろう。