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2018年度 異文化言語教育評価論 |
Introduction
n 理解を促すためには,音の流れから意味を持つかたまり (meaningful unit) へ分解・分析する必要がある。単語の境界線を決めることが困難であるため,L2学習者には超えるのが難しい壁である。
n しかしながら,音の知覚 (perception) と文節 (segmentation) スキルの発達は,L2リスニングにとって不可欠な要素であることが言われている。なぜならば,先行知識だけではテキストに含まれている未知語を十分に埋め合わせることができないからである (Tsui and Fullilove, 1998)。
Word Segmentation: Research Findings
Decording Challenges
n Gross (2009a) は,ディコーディングにおける問題を3種類に分類し (intrusion, pricessing, text problems),それぞれについて説明している。
n まず初めに,L2学習者は母語からの侵入 (intrusion) という問題を経験する。調査によると,L2学習者は母語の音を分割する方法でL2の音を分割する傾向があると言われている。
n 次に,L2学習者は単語の境界線を速く見つけることができないという点で,処理的な問題 (processing problem) を持っていると言える。
n 最後に,L2学習者は単語を認知するために必要な語彙知識が不十分であるという点で,テキストに関する問題 (text problem)を持っている。
Cues for Word Segmentation
Semantic / Lexical Cues
n Sanders, Neville, and Woldorff (2002) は,発話を文節する際における意味的情報,統語的情報,韻律的情報それぞれが担う役割について調査を行った。
《特徴的な点》
n 日本語話者とスペイン語話者の両者において,統語的情報を含んだ文と韻律的情報を含んだ文の間にパフォーマンスに関する有意な差はなかったこと。
Ø これらの話者は,このタスクにおいて統語的情報を使用しなかったということが示唆された。
Ø 知覚や文節において,意味的情報が最も重要な要素であることがわかった (当然ではあるが)。
Prosodic Cues
n Cutler (2001) の研究では,L2学習者が英語を聞いているとき,彼らは韻律に関するストラテジー (metrical segmentation strategy) を使用していることが示唆された。
n 韻律に関するストラテジー (metrical segmentation strategy) とは,強調された音節が新しい単語であることの合図であるということ。
Ø 意味的なヒントがない場合,話し言葉における韻律に関する特徴 (e.g., ストレス,トーン) が単語の境界線を決定するにあたって重要であることが言われている。
Allophonic Cues
n ある1つの音素は,単語内の場所によって異なった音で産出されることがある。
例)音素「t」
aspirated: keeps talking
unaspirated : keep stalking
n Ito and Strange (2009) の研究では,日本人英語学習者は単語の分節が目的の際,異音というヒントを利用することに難しさを感じていることが示された。しかしながら,知覚する能力と帯気音や声門閉鎖音 (“ice cream” from “I scream” in English)を使用する能力は英語を話す環境にいる期間の長さで向上すると示唆されている。
Ø このような韻律に関する特徴は,指導によって柔軟に変化することが示唆されている (Cutler, 2001)
Phonotactic Cues
n それぞれの言語には,独自の音素配列が存在している。
例) 英語
rt → 音節の最後 (e.g., shirt)
cr → 音節の最初 (e.g., crust)
n L2学習者がこの情報をどれだけ使いこなせるのかに関する研究には,Weber and Cutler (2006) がある。彼らの研究では,英語とドイツ語の間で単語の境界線が似ている単語を使用し,実験を行った。
n 結果として,単語の境界線が英語の条件であるときのみ,両者のスコアは良かった。一方で,単語の境界線がドイツ語の条件であるときは,目標語は英語であるにもかかわらず,ドイツ人のみスコアが良かった。
Ø L2学習者は,L2リスニングに対してもL1における分節ストラテジーを使用することができる。ただし,目標言語に関する経験がどれくらい必要なのかは不明。
Factors in Word recognition
n 単語認知 (word segmentation) は,単語分節と単語の活性化 (word activation) という2つのプロセスが関わっているとされている (Rost, 2005)。
n 最も適した単語を見つける際のスピードと正確さに影響を与える要因として,Cross (2009b) は,5つの要因を特定した。
①
発言の文脈や言語的な文脈
②
density
(number of potential competing words)
③
目標言語内における頻出度
④
聞き手による単語の活性化経験
⑤
類語に関するネットワーク活性化の拡散
n 発言の文脈や言語的な文脈は,聞き手にとって最も重要なヒントであろう。分節に関する多くの問題は,発話における文脈によって解決されることができる。
n 密度 (density) も,単語の最初の音は,単語の候補を多く活性化させるという点で重要な要因である。
n また,目標言語内でより多く出現する単語はより速くそして正確に認知される。
n 最後に,トピックに関する単語のネットワークを活性化することは正しい単語を活性化させることをより容易にする。
Word Segmentation: Synthesis
①
L2学習者は,L1の分節ストラテジーに打ち勝つことができるということ。
②
単語の活性化におけるスピードと正確性は文脈の要因によって影響を受けること。
Spoken Language: Planned Versus Unplanned
Speech
n あるテキストが「聞きやすい (listenable)」かどうかというのは,発話が計画されたものか,それともされてないものかによって大きく変わる。
n Text 1とText 2に関して,言語的特徴と情報の提示について見てみよう (pp. 151)。
n 計画されていない発話には,不完全文やためらい,様々な長さを持つポーズ,フィラーなど様々な特徴が入っている。
Ø しかし全体としては、このような特徴は計画されていない発話をより理解しやすいものにしている。なぜならば,冗長性やフィラー,ポーズ,言い直しは聞き手にメッセージを処理する時間を与えているからである。
n 一方,計画された発話は,まるで書き言葉の特徴を反映しているかのようなものになっている。このような文は完全文で示され,内容語や情報をより少ない単語に要約することに焦点が置かれている。
Develop Perception and Word Segmentation
n
では,学習者が侵入や処理,テキストに関する問題に打ち勝つために,それと同時に様々な単語分節や単語認知に含まれているヒントを解読するために、教師はどのようなことができるのだろうか。
n
このセクションでは,教師が学習者にリスニングを教える際に考慮することができる幅広いアプローチについて議論していく。
Text Selection
n
知覚や単語分節スキルの発達を促す活動を計画する際,まず初めに行うことはテキスト選択である。上記にもあるように,ポーズや言い直し,フィラーのような特徴は聞き手に発話を処理する時間を与える。
n
ゆえに,初学者にはダイアローグや会話,議論などのようなテキストが良いかもしれない。これらは情報の密度が低かったり,自然なものである方が好ましい。
Reducing Speech Rate
n
スピードが速いほどリスニング理解度は低下し,遅いほどリスニング理解度は上昇すると考えられている (Blau, 1990; Rader, 1991)が,Zhao (1997) の研究ではそのような研究とは少し違い結果が出た。
n
彼の研究において,学習者はテキストのスピードを自由に変えられる機器を使用し,学習者は好きな速度を選ぶことができた。
n
結果,学習者がテキストのスピードと反復を設定できるようにした時に,理解タスクの得点がより良かったことを示している。
Ø
L2リスニングというのは,速い・遅いに関する知覚に独特な個人差があるとしている。また,速度の遅いテキストを使用すると,自然なスピードで聞こうとする意識を低くしてしまうのではないかと危惧している。
n Jensen and Vinther (2003) は,発話のスピードを遅くしたものと反復の影響を調査するために,pre and post testを設定し,リスニング得点を測定した。実験群は,F-S-S,F-S-F,F-F-Fの3群設定された。
n 結果として,速く聴かせた群は,他の実験群よりも理解タスクとディコーディングストラテジーの習得において良い成績を残した。しかし,統計的に有意な差はなかったことから,スピードを遅くする要因と反復要因を分けて実験を行った。
n その結果,同じスピード (遅いスピード?) でテキストを3回提示した時,その結果は有意に変わらなかった。このことから,反復が決定的な要因であることが示された。
Ø 結局,教師は必要に応じてリスニングスピードを変えれば良い?ということ。
Repetition
n テキストを何度も繰り返して聞くことは,リスニング理解における壁を乗り越える方法であることが先行研究から示唆されている (e.g., Chang & Read, 2006)。
n また,学習者はテキストを何回も聞く中で,様々なストラテジーを使用することができるため,リスニング理解を促進することができる。
Post-listening Activities to Develop
Perception Skills
n 知覚や単語分節スキルは,日頃の授業 (metacognitive approach) において,発達させることができるものである。そして,学習者は英語の音における様々な現象 (同化,削除,省略etc.)について意識することができるようになる。
n 図8.3は,英語の音韻についてメタ認知的な意識を活性化させるための授業プランである。
Cloze Exercise
活動内容
聞き手は,スクリプトを聞いてプリントの空欄に適切な単語を書き入れる。
目的
通常のディスコースにおける単語の順番の知識を問うこと。
長所
読むことを通して,一般的な言語熟達度を評価することができること。
短所
意味や発話の文脈を理解していなくても,正解することができること。
Dictation
活動内容
聞こえたテキストを書く。
目的
話し言葉における様々な特徴に注意を向けさせること。
長所
聞こえてきた音を全て聞く必要があるため,リスニングのボトムアップスキルの発達に良い。
短所
知覚や単語分節スキルの発達に一定の効果があるとされているが,確固たる証拠はない。
Reading While Listening
活動内容
聴きながら読む。
目的
知覚や単語分節スキルの発達?。
長所
音とかたちをつなげることができること。
短所
読むことを通して意味を構築するため,現実世界におけるリスニングスキルを発達させることは難しいこと。
Dictogloss
活動内容
①
短いテキストを3回聞く。その際,メモを取ってはダメ。
②
キーワードノートを作成する。
③
2回目のリスニングの間にノートの上にアイデアを広げる。
④
少人数のグループでテキストの再構築をする。
⑤
原本と比較する。
目的
再構築したテキストと原本のテキストにある違いを認識すること,理解をする際に起きたエラーについて洞察を得ること。
長所
目的のことと一緒。
短所
なし。
“I Minus 1 ”Listening (活動例というよりもテキストの難易度調整に関わる)
活動内容
学習者にとって少し簡単なテキストを使用してリスニング活動を行うこと。
目的
処理の負荷を下げること。
長所
様々な活動に取り入れることができること。
短所
なし。
Development of Perception and Segmentation
Skills: Synthesis
n これまで見てきた活動は指導やL2リスニングの治療にとって重要なことであるが,気をつけるべきポイントは行う活動の順番である。
n スクリプトを使用する際は,リスニング活動の一番最後の行うことが望ましい。このような活動を行なっていくことで,認知的処理への深い理解を学習者に促すことができる。
Summary
n ボトムアップに焦点を当てた活動を行う際は,意味に焦点が全く置かれない活動になってしまうことを教師は頭の中に入れておく必要があるということ。
n 学習者のリスニング理解とリスニング能力の向上のためには,リスニング活動を計画し,モニターし,そしてそれを評価することを学習者ができるようにする活動を,意味ベースの文脈で行う必要がある
Discussion Question and Tasks
4. Compare the dictogloss with the close
exercise. List some advantages and disadvantages of each technique. Would you
use these techniques for developing bottom-up listening? Explain.
|
Dictogloss |
Cloze exercise |
advantages |
to enhance
the skill of note-taking to think
what the speakers are talking about not only segmentation
but also meaning building |
easy to do to take one
minutes similar to
most of the tests in high-stake tests |
disadvantages |
to take a
lot of time. to need the
time to be familiar with it. how to
evaluate some
difficulties to do |
not
necessary to focus on the meaning not similar
to real-life listening |