筑波大学 人文社会科学研究科                                                現代語・現代文化専攻                                           平井 明代研究室



2017年度  異文化言語教育評価論

4章 研究課題とデータ

浦野他. (2016). 『はじめての英語教育研究 ? 押さえておきたいコツとポイント』 (pp. 61?88). 東京, 日本: 研究社.

 どのように研究課題を設定するのか

    研究課題の種類(pp.62-64)

      探索型検証型2種類

研究課題の類型

スタート

ゴール

探索型

現象の観察・記述

現象理解・仮説生成

検証型

仮説の設定

データ分析による仮説検証

 

    研究課題選択の判断基準(pp.64)

      関連する分野の先行研究がどの程度蓄積されているか否か

十分されている場合    :検証型(明確な仮説や予測を立てることができる)

あまりされていない場合:探索型(当該分野での位置づけを明確にする意識が必要)

 

    研究課題の目的と成果を一致させる(pp.65)

      研究目的が仮説検証なのか、現象理解・仮説生成なのかを常に意識し、成果を一致させる

 

    研究課題のレベル(pp.66-67)

研究課題のレベル

研究課題の形式

研究課題の種類

レベル1:「何」を問う課題

〇〇とは何か?

探索型

レベル2:関連性を問う課題

ABには関係があるか?

探索型・検証型

レベル3:因果関係を問う課題

Aを行うとBが生じるか?

検証型

    研究課題の精緻化(pp.68-70)

      良い研究課題には、PECO(PICO)4つが含まれている

(1)   研究対象者(参加者)(participant   → 研究結果の適用範囲

(2)   要因・介入(exposure/intervention) → 研究分野内での位置付け

(3)   比較対象(comparison             → 目的に応じた効果の有無の判断

(4)   成果・結果(outcome              → 何におけるどのような効果か

 

 データ収集法にはどのようなものがあるのか?

    研究デザインとデータの収集方法(pp.71-74)

デザイン

特徴

適した研究課題レベル

留意点

事例研究

特定の事例や対象者に焦点

「何」を問う課題

一般化を目的としない

調査研究

ありのままのデータを収集

関連性を問う課題

横断的・縦断的に

一般化可能性・実現可能性

実験研究

介入を行ってデータを収集

因果関係を問う課題

交絡要因の統制

 

 どのようなデータのタイプがあるのか

    データの種類(pp.75-76)

      質的データ:観察記録やインタビューの文字起こしなど、数値化を伴わない(言語)データ

→ 得られたデータの内容面に焦点をあてることに適している

      量的データ:調査対象を数値によって表したデータ

→ 得られたデータの全体の傾向を把握することに適している

 

 

 

 

    データ収集の種類(pp.76-84)

(1) 観察による収集

行動の特徴や法則性について知る

(2) 聞き取りによる収集

事実情報、感情、価値観、動機などについて知る

(3) テストによる収集

特定の能力・知識・スキルの習熟度などについて知る

 

(1) 観察によるデータ収集

 

特徴

留意点

音声・動画記録

授業や活動の記録

記録機器の扱いや影響

書き起こしのための時間確保

フィールド・ノーツ

出来事・体験の言語化

観察時の立ち位置

書き方・書く時期の工夫

 

(2) 聞き取りによるデータ収集

 

特徴

種類

留意点

質問紙

一定の形式で

研究参加者に聞く

評定型

自由記述型

質問項目や

形式の整備

インタビュー

口頭で直接聞く

構造化インタビュー

非構造化インタビュー

半構造化インタビュー

豊かな情報を

引き出す工夫

 

(3) テストによるデータ収集

      留意点

 測定したい能力の構成概念を明確化し、課題や評価方法が適切かどうかを検討する

 内容・所要時間等に関して、十分か否か、予備(事前)テストを極力行い、確認する

 

 

 

4 データの分析・解釈にはどのような方法があるのか

    質的アプローチ(pp.84-85)

      与えられたデータについて、数値を伴わずに分析する方法

      対象は、特定の学習者や現象 = 合目的的抽出purposive sampling

      研究者の主観的な(独自の)視点に基づくデータの収集・分析・解釈を積極的に活用

    量的アプローチ(pp.85-87)

      数量化されたデータを分析する方法

      記述統計により手元のデータを要約し、推測統計により母集団への一般化を図る

      無作為抽出によるサンプリング

 

    両アプローチを組み合わせて設定された研究課題に答える混合研究法(mixed methods)もある

片方だけではたどり着けない発見を示すことができるかもしれない