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2017年度 異文化言語教育評価論 |
第3章 先行研究の探し方
浦野他. (2016). 『はじめての英語教育研究 ? 押さえておきたいコツとポイント』
(pp.34?60). 東京, 日本: 研究社.
1 何のために先行研究を読むのか
■研究を始めるにあたり、興味のあるテーマに関する先行研究を探し、その文献を集めて読むことになる。
■先行研究とは:これから研究しようとしているテーマについて、すでに発表されている研究
■先行研究の文献を読む主な3つの目的
(1) 背景知識や理論的視点について学ぶ
(2) これまで何が明らかにされているのかを知る
(3) 自分の研究の位置づけを明確にする
1.1. 背景知識や理論的視点について学ぶ
(1) 研究テーマの全体像をつかむ
■その分野にどのようなテーマがあるか知るために、入門書や概論書で全体像をつかんでから専門書や論文を読むのがよい。
(2) 専門用語やキーワードを知る
■例:学習者の文法的誤りを知りたい場合のキーワード:修正フィードバック、リキャスト、焦点化したフィードバックなど。
■その分野の理論や仮説を知る
・理論とは、ある現象が生じる理由を説明するもの
・仮説とは、理論やモデルに基づいて導き出された、観察・調査・実験によって具体的に検証できる考えや説
1.2 これまで何が明らかにされているのかを知る
(1) 研究したい分野の現状を把握する
(2) 研究したい分野の研究方法を知る
■先行研究をお手本に、方法や分析、解釈の仕方を具体的に学ぶ。
1.3. 自分の研究の位置づけを明確にする
(1) 何がまだわかっていないかを知る。
■これまでの研究内容や方法で不十分な点がないかを探る。
(2) 研究のオリジナリティを明確にする。
■研究のオリジナリティ:これまでの先行研究を踏まえながら、自分の研究がその領域に何らかの形で貢献すること
2どのように先行研究の文献を探せばよいのか
2.1. 文献検索における予備知識を身につける
(1) 文献検索から入手までのステップを知る
@文献に必要な予備知識を入手
A文献を検索
B文献を入手
(2)文献のタイプを知る ※p39 表3.3 文献のタイプ 参照
■図書
1名ないし複数名の著者が1つのテーマについて書いた、本の形になったもの。その分野の専門家が執筆していることが多い。
■学術誌
複数の投稿論文からなる、定期的に発行される冊子。その分野での最新の情報を収録し、図書よりも早く最新情報が掲載される。海外学術誌と国内学術誌に分けられる。
■論文
学術誌に掲載されている1つひとつの学術的成果のことで、観察・調査・実験などの研究を通して得られた情報や、ある分野におけるこれまでの研究動向や論点がまとめられたもの。
■その他の情報源
大学が発行する紀要の論文、専門雑誌などの記事。
2.2. どのように文献を検索するか知る
(1) 文献収集の方法を知る
@図書を探す場合
・CiNi Books (国立情報学研究所):論文、図書、雑誌などの学術情報を検索できるデータベース。
・OPAC(図書館蔵書検索システム):図書館に所蔵されている図書を検索できるデータベース。
・Google Books:Googleが提供する書籍検索サービス。英語で書かれた書籍を中心に検索できる。
・インターネット書店
A学術誌や論文を探す場合
・Google Scholar:英語で書かれた海外の論文検索に役立つ。
・CiNii Articles(国立情報学研究所):国内学術誌や大学の紀要、雑誌なごに掲載された論文を検索できる。
・ERIC(Education Resources Information Center):アメリカの教育庁が提供する、教育学に関連する研究論文のデータベース。
Bその他(海外学術誌のホームページ)
(2)キーワードを手がかりに文献を探す
@入門書で適切なキーワードを探す
■興味のある分野の用語辞典や入門書を読み、頻繁に使われているキーワードを見つける。
■学術的な研究におけるキーワードは日常的に使われる語とは異なる。(例:×「文法チェック」
〇「誤り訂正」「修正フィードバック」)
A文献検索を行う過程で、さらなる関連キーワードを見つける。
(3)芋づる式で文献を探す
■「芋づる式」で文献を探す:ある文献の引用・参考文献リストから別の文献を探し出すこと
(4) 文献を探すその他の方法
@大学の教員や先輩に相談する
Aレビュー論文を探して読む
B日本の英語教育学会の学術誌から論文を探す
2.3. どのように文献を入手するか知る
(1) インターネットから論文をダウンロードする
(2) 図書館で図書や学術誌を探す
(3) 図書館で文献複写および貸借依頼をする
3 どう先行研究の文献を読み研究課題につなげるのか
3.1. 先行研究の文献を読む際のポイントを知る
■論文を読む際のポイント
@研究テーマについて、主な研究目的や研究課題、仮説が何であるかを把握
A研究の背景について把握
Bどのような研究方法が使われたかを見る
Cどのようなデータ分析の手法が使われているかを見る
D主な研究結果やその結果から示唆されるものをおさえる
3.2. 先行研究の文献を整理する
(1) 書誌情報を記録する
■文献を引用したり、参考したりする場合、書誌情報を記録することが重要。書誌情報とは図書の場合、「著者名」「本のタイトル」「発行元」「発行年」を指す。
(2) 要約を残す
3.3. 先行研究の文献整理から自分の研究課題につなげる
(1) 研究対象の構成要素を明確に捉える
(2) 文献を整理した表を作成する
(3) 先行研究のレビューを自分の研究課題に関連づける
3.4. 先行研究をもとにして研究を進めるパターン
■10のパターン
(1)追試的確認(2)文化的検証(3)時代差の検証(4)異領域への拡張(5)条件の拡張(6)適用年齢の拡張(7)実証的な統合(8)技術的な改良(9)理論の実証(10)質的成果の加除
※p.57 表3.10 先行研究をもとにして研究を進めるパターン 参照