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2017年度 異文化言語教育評価論 |
第1章 研究とは何か?
浦野他. (2016). 『はじめての英語教育研究 ? 押さえておきたいコツとポイント』
(pp. 1?13). 東京, 日本: 研究社.
※発表者が特に重要と感じた部分をボールド体にしました。 (多すぎた気がします……)
1 研究とは何か?
■本書の目的:研究 (research) の進め方について、一番大切で基本的なところを理解してもらう。
■研究とは、以下の3つの要素から成り立つ。1つでも欠けていれば、研究とは呼べない。
(1) 研究課題 (research questions: RQs)
(2) データ (data)
(3) データの分析・解釈 (analysis and interpretation)
以上の3つの要素は、それぞれ約束事
(研究の方法論) があり、みんながその方法論に則って研究を行うことが大切
2 なぜ研究するのか?
2.1 研究を行う理由を考える
■職業別の「研究を行う理由」
@大学の教員:業務の一環として(昇格審査の際に研究業績が評価される)
A大学(院)生:学位の取得要件を満たすため、将来の(研究)職への就職のため
B英語教師:知的好奇心を満たすため (大学教員、院生にも当てはまる)、授業改善、実践上の問題の解決のため
例:「1組と2組で同じ活動をしているのに、1組の定期試験の成績が2組より芳しくないのはなぜ?調べよう!」
2.1.1 実践としての研究と学術的な研究
■「実践としての研究」 (practitioner research): 個人の関心から出発し、個人に還元される研究 (Bの例)
・研究者:実践者と同一人物
・目的:教師が自分の生徒たちについて理解を深めたり、実践上の問題を解決したりすること
■「学術的な研究」 ([scientific/academic] research): 個人じゃなく、分野全体の向上・発展に寄与する研究
・目的:より多くの教室でも適用できるような知見を生み出し、英語教育(研究)全体をよりよくすること
2.1.2 実践としての研究と学術的な研究の共通点、相違点
■共通点
・研究課題を絞り込んで設定する必要がある。
・データの質が重要 (質は、研究課題と照らし合わせてできる限り正確に記述すると高くなる)
■相違点
・データの分析・解釈:実践→研究者のクラスの学習者理解
⇔ 学術→世の中の学習者に当てはまる傾向の一般化
※本書では、学術的な研究の方法論に重きを置いて解説する。
実践としての研究については吉田他 (2009) を参考に。
2.2 学術的な研究を分野全体の発展・向上に役立てる
■研究とは、小さな探求の積み重ねであり、その貢献が集約されることで分野の全体像が明らかになっていく。
■学術的な研究を分野全体の発展・向上に役立てるためには、自分の研究とこれまでの研究とのつながりを示すべし。
→自分の研究が英語教育研究の中の「何丁目何番地」に焦点を当てているのかを報告することで認知してもらえる。
2.3 自分の研究と他の研究とのつながりを示す
■研究を行う際の手順
@大まかな研究テーマを決める。
Aテーマに関するこれまでの研究 (=先行研究; previous studies) を徹底的に検索する (=分野の地図作り)。
B研究テーマがより焦点化され、具体的かつ調査可能な研究課題となる。
■自分の研究を他の研究と関係づけながら定義することが、その研究の位置づけを理解する手掛かりになる。
■英語教育(研究)で一般的に使われている言葉で説明することで、その分野の多くの人に理解しやすくなる。
→英語教育の実践と理論 (theory) を質的に向上させるためには、的確な言葉で実践と理論を語ることが必要
3 どのような種類の研究があるのか
3.1 研究の大まかな分類 (表1.1参照, p. 008)
■研究の種類
・文献研究:既存の資料や出来事の記録、当該テーマの先行研究を収集・整理し、そこからどのようなことが結論づけられるかを検討したり、今後の課題を検討したりする研究(例:歴史研究、教材開発研究)
・実証研究:先行研究で明らかになっていない課題について、研究者自らが新たにデータを収集したり、既存のデータを利用したりすることによって理論の生成・検証へと向かう研究。質的研究と量的研究に分けられる。
3.2 実証研究の種類
(1) 探索型の研究
■先行研究の情報だけでは明確な方向性が予測できず、手さぐりでデータの収集と分析・解釈をする研究
・目的:観察や聞き取りなどで、細部に至るまでできるだけ詳しく丁寧にデータを収集し、何らかの方向性を見出す。
(2) 検証型の研究
■大まかな研究テーマを決める→先行研究の収集と分析を行う→洗練された調査可能な研究課題を設定する研究
・目的:「〜という理論に基づくと…と予想される」という仮説 (hypothesis) を立て、それが正しいかを検証する。
4 どのようなプロセスで研究を行えばよいのか (表1.2参照, p. 012)
(1) 研究テーマを決める:自分の興味・関心のある分野で実現可能かつ価値のある研究テーマを絞り込む。
(2) 先行研究を探る:先行研究をもとに現状を把握し、先行研究と整合性のある研究課題を探る。
(3) 研究課題を絞る:研究目的を明確にし、研究課題を決定し、その解決のために適切なデータのタイプを選ぶ。
(4) データを収集する:データの特徴を理解し、どのようなデータを収集して観察・調査・実験を行うかデザインする。
(5) データを分析する:質的・量的アプローチを用いて、観察・調査・実験で収集したデータを適切な方法で分析する。
(6) 成果を発表する:研究成果を適切かつ分かりやすくまとめ、研究の価値を示す。