応用言語学特講T                      R.O.

Videoconferencing as a Tool for Developing Speaking Skills

Barbara Loranc-Paszylk

 

Abstract

●本論文の目的は、刷新的な言語学習によってもたらされる可能性について調査することであり、英語において発話スキルを発達させるためのコミュニケーション手段としてテレビ会議に焦点を当てる。

●テレビ会議を用いることで、地理的な距離を超えて外国人教師から直接言語学習を行うことができる。

●ポーランドとスペインの大学の協同の結果から、テレビ会議のような技術を用いた言語学習が実際に生徒の言語能力を向上させているのかということを調査していく

 

1Introduction

●本論文では、テレビ会議を含む教育技術の計画について議論し、その計画の妥当性や第二言語として英語を学習している生徒の発話スキルの向上に寄与しているのかということに焦点を当てる。

 

 

2Communication and Interaction in Language Learning

●コミュニケーション能力という概念については長年議論されてきており、それは以下の4つに分けられるとされている。

文法的能力:発話を文字で理解したり表現したりするのに必要

社会言語的能力:異なる社会言語学的背景における、言語使用の適応性

方略的能力:話者のコミュニケーション能力のギャップを埋めるために用いられる言語的・非言語的なコミュニケーションの方略

談話的能力:首尾一貫性や結束性などを決定するルールに対する熟達度

 

●口頭でのやりとりは、第二言語習得の領域において非常に重要な要素であると考えられており、意味交渉などの状況を経験することが最も発話スキルを向上させるとされている。

●しかし、第二言語学習者同士でやりとりをするのと母語話者を相手としてやりとりをするのとでは大きく異なっており、ギャップが生じてしまう。

 

 

3Videoconferencing and the Development of Speaking Skills

’videoconferencing’とは、異なる2つの場所にいる参加者がインターネットを用いてリアルタイムで互いに見聞きしながらやりとりをするというシステムのことであり、技術の発達やコンピュータの価格低下に伴ってより普及が進んでいる。

●テレビ会議は、やりとりを手助けする非言語的なサインを受容し、また参加者がリアルタイムで自発的かつ即座にアウトプットを行うという点において、従来のCMCcomputer-mediated communication)とは異なっている。

Kim&Craig(2012)の研究によると、実際に顔を合わせて行う面談とテレビ会議での面談の間にはほとんど差がないとされている。Yanguas(2010)は、交渉の場においてビデオと伝統的な対面式のコミュニケーションの間にはほとんど差がないと主張している。

●本論文は、外国語として英語を学習しているポーランドとスペインの両母語話者における、テレビ会議の役割について論じることを目的としている。

 

 

4Description of the Research Project

●本研究では、外国語のスピーキングの指導のツールとしてテレビ会議をどのように使用することができるのかということについて調査する。ここで、言語使用の際の複雑性、流暢さ、正確さを測ることはできないため、調査の後に実施するアンケートに基づいて議論を行う。

 

 

4.1 The Context and Objectives of the Project

●本研究では、タスクに基づく指導という枠組みを用いる。

●生徒は外国人と英語で話す機会がほとんどないため、テレビ会議という新しい技術を用いることで生徒のコミュニケーション経験を拡大することができると考えられる。

 

Research Question

・テレビ会議はスピーキング能力の観点からどの程度話者の自信を向上させることに繋がっているのか。

・テレビ会議の経験は、参加者の意味交渉における互いの言語間のギャップへの気づきをどの程度高めるのか。

 

 

4.2 The Participants

19歳もしくは20歳の、Bielsko-Biala大学のポーランド人学生24人のグループが参加した。これらの学生の英語能力はB1からB2の間であるとされ、うち3人は英語で外国人と会話した経験がなく、うち7人は現実で基本的な情報のやりとりを行ったことがある程度だった。

●もう一方のグループは、スペインにあるLeon大学の文学士の学生9人で構成されており、プロフィールによるとその研究や年齢はほぼ同じであった。しかし、言語能力はB1からC1と、大きく異なっていた。この9人の学生の内1人はフランス出身のエラスムスの学生であり、8人はスペイン出身の学生であった。

 

 

4.3 The Procedure

●この計画は、以下の段階から構成されている。

1.求人広告の準備

ポーランドとスペインの両方の大学の学生をそれぞれ4人ないしは51組のグループに分け、それぞれのグループに求人広告をデザインさせる。5つの求人広告はEメールで他の場所(station)に送られる。

2.求人面接の準備

この段階では、書くタスクと口頭でのタスクの両方を、個人・グループの活動としてそれぞれ課す。

・ポーランドの学生は個人的な志願者として、スペインから送られた2つの求人に申し込む。Eメールを通じてのCVsと志願書の書き方・送り方についての説明と練習を行った後、分析を行うここで、ポッドキャストの聞き取りや英語で行われた面接の記録も行わせる。

・求人の作成者はスペインから送られてきた申込書を集め、どの学生を面接の参加者として選ぶかを判断する。

3.求人面接

●実験の参加者には少なくとも1つ以上の求人面接にテレビ会議を用いて参加してもらう。この面接は10から13分程度で実施し、候補者の評価を行って誰を採用したいかを選択させる。

●最後に、ポーランドの学生に評価アンケートに記入してもらい、その反応を分析する。ここで使用するアンケートは、8つの4段階評価の選択式の質問と、2つの自由回答式の質問から構成されている。

 

 

5Result and Research Project

Table1

●分析の結果、テレビ会議の使用は英語能力の観点から参加者の自信の向上に寄与していることが分かった。

●スペインの学生とのやりとりにより、ポーランドの学生は互いの言語間のギャップに気づいた。

Table2

●参加者の意識としては、テレビ会議は言語獲得において非常に効果的であると感じていた。

Table3

●約83%の参加者が、テレビ会議の最も大きなメリットは英語話者や外国人と会話の練習ができる点であると回答した。

●実際に顔を合わせての面接は大きなストレスであり、面接の参加者のパフォーマンスを下げると回答する学生もいた。

 

RQ1

●テレビ会議のおかげで自身の英語能力を向上させることができたと回答する学生は多く、テレビ会議が学習者の自信の向上に寄与しているということが明らかになった。

●一方で、テレビ会議に対してストレスを感じ、パフォーマンスが低下してしまったと感じる学生がいたことにも目を向ける必要がある。

RQ2

RQ2に対しては多くの学生が肯定的な内容で回答しており、テレビ会議を通して互いの言語の間のギャップに気づくことができるとされた。

 

 

6Discussion

●本研究の結果から、テレビ会議は学習において非常に大きな効果を有していることが明らかとなった。

●求人面接の会話に焦点を当てた明確な指導はプレタスクの重要な要素であり、やりとりでの予測可能性は参加者の自信のレベルに影響を与えている。

●この計画の効果として、学習者が正しい言語の選択に関してより注意を払うことができるようになる。

●参加者がテレビ会議のために計画を準備している場合、やりとり全ては学習や機能に対するモチベーションを向上させる。

 

 

7Conclusions and Implications

Lee2007)によるテレビ会議計画の重要な要素となるタスクデザインについて考えてみると、L2学習者の会話能力の発達に焦点を当てたテレビ会議のためには、以下の事項が重要である。

・参加者のコミュニケーションに対する懸念や不安を解消するための方略を利用すること。

・テレビ会議の参加者に対して、明確な英会話のモデルを提供すること。

・テレビ会議のために背景知識を活性化させること。

 

●テレビ会議が言語教育において実施されるべきであるという主張は、非常に論理的なものであると考えられる。その理由としては、従来の教室英語でのやりとりよりも、テレビ会議を用いたやりとりのほうが「本物の」コミュニケーションに近いということが挙げられる。

 

 【ディスカッションポイント】

Videoconferencingを日本の教育現場でも導入するべきか。

<導入すべきである>

・テレビ会議によって一対一の会話が可能となるため。

・対面式の会話よりも、テレビ会議での会話のほうが生徒の緊張が緩和されるため。

・いつでも面談形式で会話をすることができるため。

 

Videoconferencingを導入する場合の障害としては、どのようなものが考えられるか。

・テレビ会議を用いたとしても言語間のギャップは介在してしまう。

・通信障害やタイムラグが発生してしまう可能性がある。

・どのタイミングで実施するかが難しい。(授業中は難しい)

1人の生徒に対して1人の話し相手が必要とあるため、話し相手の確保が困難である。

・時差があるため、海外の人と話すのは難しい。

・相手側にメリットがないのではないか。

 

 

【考察】

 本論文では、第二言語としての英語教育におけるVideoconferencing(テレビ会議)の有用性が検証された。実験の結果から、テレビ会議は生徒の英語使用に対するモチベーションを向上させ、また生徒の自信の向上にも寄与していることが明らかとなった。このようなメリットが多く存在している一方で、テレビ会議はその導入の際に多くの障害が伴うことが想定される。その障害については上記のディスカッションポイントのまとめにて挙げてあるが、ここではそれらの障害への対応策を検討していく。

 まず言語間のギャップが介在してしまうというものがあるが、これは実際に顔を合わせての会話でも同様であり、テレビ会議の導入の際に障害となるとは考えづらい。次に実施するタイミングが難しいという問題であるが、確かに授業中に実施するのは困難であると考えられる。その理由としては、1クラス約40人であると仮定し、その40人の生徒全員に対して1人ずつの話し相手(外国人)を一気に確保することが難しいというものがある。そこで、この問題の解消法としては、「3?4人の生徒でグループを作ってもらい、そのグループごとに外国語母語話者の会話相手をつける」、もしくは「授業を習熟度別にして1クラスを2つのグループに分け、そのグループを1まとまりとしてテレビ会議を実施する」というものなどが挙げられる。これにより、人員確保の問題と実施時間の問題をある程度解消することができると考えられる。最後に相手側にメリットがないのではないかという問題であるが、これは会話相手を英語母語話者とせず、生徒と同様に英語を第二言語として学習している海外の学生を会話相手とすることで、お互いにメリットが生まれる。

 テレビ会議は実際に生徒の英語能力を向上させ、同時に生徒の自信の向上にも繋がるため、上記のような方略を用いることで実際の学校現場においても積極的にテレビ会議を導入すべきであると考えられる。