応用言語学特講T
人文学類3年 K.S.
Local Cultures in English: Intercultural Communication
in an International Educational Context
Abstract
・ この論文で扱うもの:「ポーランドとウクライナの間の教育プログラム」
? その成果
異文化間タスクにおけるウクライナとポーランドの文化に焦点をあてた1冊の本
? この論文の目的
その本の編集のプロセスを反映すること
・ 主な目的のひとつは、「英語を使用する習慣のあるコミュニティにおける一般知識の再構築をパートナーの根本的な価値の観点からすること」である。
・ プロジェクトパートナーとの間に誤解が生じることもある。
・ これらの誤解は、ウクライナとポーランドの間の異文化間の特徴や違い、類似点を扱った Geert Hofstede(1991) のモデルによって解釈される。
? プロジェクトの最大の利点
1.参加者の異文化意識の向上
2.お互いに各国の文化や根本的な価値を協議することができる
1.Introduction
? この論文の目的
Geert Hofstede(1991)の異文化的特徴のモデルの考え方を取り入れたポーランドとウクライナの教育プロジェクトにおける異文化コミュニケーションを紹介すること
・ 2つの大学課の2009年のスタッフは、そのプロジェクトに関する異文化タスクに関する英語の本を作成することに決めた。
・ この本によって、その読み手が自身の文化・他国の文化を知り、その結果として、異文化意識の向上や他国の文化に寛容になることが期待される。
2.Intercultural communication
● Edward Hall
彼の有名な本non-verbal communication:The Silent Language( Hall 1969 )において、各国の文化の基本的な違いを記述し、異文化コミュニケーション研究における基礎を作り上げた。
・
異文化コミュニケーションのスキルは、主に相手の文化固有の価値のSilent Languageの意識や知識に依存する。
? Silent Language・・・
沈黙の言語。口で話すことばだけでなく、その国・地域でのしてはならないこと、禁止事項も知らなければいけないとする、いわば音のない言語。
● Geert Hofstede(1991)のモデル
国々の文化の違いは深く浸透された価値に基づいている。そのような価値は、異なる文化の行動や態度のback ground によるもので、子どものときに発達し確立した考え・信念が基礎となっている。
EX)
・
Power distance も側面の1つである。
? Power distance →上下間の心理的距離(貧富の差、階級の差、権力の差)
・
ある国は社会的序列として権力を重視し、ある国は人々はみな平等だと考える。
・
他の側面としては個人主義VS 集産主義、不確かさの容認VS否認などがある。
・
個人主義の文化としては、個人はその人が所属する団体よりも重要。
・
low context VS high contextがあり、low context文化はメッセージを明示的に伝えるが、一方high context文化は暗示的に伝える。
3.Intercultural communication in a Polish-Ukrainian Educational
Project
・
そのプロジェクトではポーランドとウクライナの参加者が選ばれた。
・
本はポーランドとウクライナの異文化プロジェクトとして、両方の英語課の教員によって英語で書かれた。
・
各国の先入観や偏見を本に含まず、できるだけ客観的な事実を意図するべきである。
・
しかし、本のある部分では、各国の文化的先入観が見られる。
・
一方、ポーランドとウクライナの研究生が編集した理論的チャプターでは、異文化コミュニケーションの基礎や異文化交流の能力についてバランスよく議論されている。
・
また著者は、自分自身の文化への意識や知識に焦点を当て、異文化交流する能力を育てるための英語の役割について述べている。
● Aleksandrowicz-Pedich(2009)
異文化活動において不可欠の要素は、異文化間での会話である。異文化学習は、自身の文化の認識や理解を向上させる。
・
ウクライナの編者は、ウクライナの文学、ウクライナの習慣・伝統、ウクライナのジェンダー規則、などをトピックとした。
・
ポーランドの編者は、ポーランドの他国の宗教に対する信念や姿勢、ユダヤ人に対するポーランドの態度、ポーランドの礼儀正しさの基準、などをトピックとした。
〇 修正の必要性
・
生徒の何人かは、歴史に基づく文化的問題について理解していない。(宗教など)
・
生徒たちに偏見をなくして改訂するよう説得した。
・
Eメール交換でウクライナとポーランドの編集者間に誤解があった。
? その慣習的な特徴のひとつは、ポーランドがウクライナに比べ、直接的な言語を使う代わりに、間接的な曖昧な言語を使う点であった。
〇本の編集における問題点
1.著作権
・
EUであるポーランドで英語の本が出版されることは、ウクライナで同じ本が出版されるより、読み手が影響されやすく、ポーランドで出版された本はウクライナで出版されたものより有名になりやすい。
・
ポーランドで出版された本が国家間の著作権の法律に結び付く。
→ 著作物を利用する許可を得る必要があった。(主な課題)
2.考えの不一致
・
ポーランドの編集者は英語の学部学生よりも、幅広い読者層を考えていた。
・
一方、ウクライナの編集者は、ウクライナの学生を読み手として考えていた。
・
プロジェクトの終わりではこのような考えの違いを明らかにして、本から取り除いた。
? 他国に自分自身の文化を主張することによって、異文化意識を向上させる。
? 自身の文化に対して批判的な姿勢をとることは、文化の多様性と他国の文化への寛容さの意識を向上させる。
? 異文化のコミュニティを形成するためには、他国の文化の根本的な価値に気づく必要がある。
? 他国の文化をまねする必要はないが、他国の文化を認めなけばならない。
4.Polish-Ukrainian Misunderstandings in the Light of Hofstede’s Model
・
ポーランドとウクライナの間のコミュニケーションの誤解をGeert Hofstede(1991)の考え方から見ていこう。
・
異なる国や文化の代表となる誤解は、個人の特徴や解釈の違い、各国の文化の特徴の違いによって生じる。
具体例)
・
Power distanceはポーランドよりウクライナのほうが高い。
・
同時に、ウクライナはポーランドより集産主義である。
→ ウクライナの教師は協力的タスクに快く応じ、援助をするが、一方ポーランドの教師はそうしないことからも説明ができる。
・
ウクライナ人は不確かさを避ける傾向にあり、ポーランド人は不確かさを容認しがちである。
→ ウクライナの著者は、よく知られたタスクを行い、ポーランドの著者は革新的なまだはっきりしない研究プロジェクトを開始した。
・
明示性はlow context
cultureの特徴であるが、ウクライナもポーランドもhigh context cultureである。high context cultureでは、contextが豊かで自明であるため、明示的である必要がない。
・
ひとつの国で自明的なことでも、他のある国では当惑してしまう。
? 異文化コミュニケーションでは、この違いが混乱や誤解を招いてしまう。
・
Hofstede (1991)の文化的側面モデルによると、アメリカとカナダの文化は個人の責任、競争、個人の重要性が強調される。一方、より集産主義的なポーランドとウクライナの文化は、集団の重要性、協同、グループサポートに価値を置く。
〇 本の編集における異文化間でのすれ違い
ウクライナは不確かさを避け、はっきりと記載するのに対し、ポーランドは不確かで不十分なタスクを行った。ウクライナは準備不足と強調したが、ポーランドにとってはそこまで大切なことではなかったのである。
5.Conclusion
・
このプロジェクトの目的:実践的なコミュニティにおける一般知識の再構築
・
ウクライナとポーランドのコミュニティは、共通語として英語を使用し、お互いの努力によってプロジェクトにおいて共通の成果を得ることができた。
? 実践的なコミュニティを作り上げるために、異文化プロジェクトの参加者は、自身と相手の国の文化の根本にある価値に気付くべきである。
・
誤解も生じたが、誤解の背景となる理由に気が付くことができた。
・
ついに、我々は共同の本を編集することができた。
・
協力することによって、異文化コミュニケーションや自身と相手の国の文化を意識することをより現実化できた。
? プロジェクトの最大のメリット
1.自身の文化や相手の国の根本にある価値をお互いに話し合うプロセスの中で、英語話者の実践的なコミュニティを作ることを試みることができた。
2.自身の文化と相手の国の文化に触れて、相手の文化に慣れたり、比較したりするようになる。
・
我々は、この本の読み手が自分自身の文化だけでなく、自身についても洞察できるようになることを願っている。
〇それぞれの国の文化の違いを乗り越えて、異文化コミュニケーションを進めるためには、どのような意識を持つことが重要だろうか。
〇解釈
この論文では、ポーランドとウクライナ間の教育プログラムが取り上げられた。私がこ
の論文を読んで感じたことは何度も同じようなことが繰り返し述べられている、というこ
とである。この論文が総じて言いたいことをまとめてみようと思う。
*まとめ*
・誤解は、各国の文化の特徴や違いによって生じる。
・その違いは、各国の異なる文化や行動のback
groundによるもので深く浸透している。
・自分自身の文化、相手の文化をお互いによく知ることが大切である。
・よく知った上で、自身と相手の国の文化の根本にある価値を見出すべきである。
・そうすることで、異文化意識が向上し、他国の文化に寛容になる。
このように、異文化交流において重要なことはあるサイクルのようになっている。この
サイクルを繰り返し、何度も誤解を解くことで、お互いの文化を理解し、尊重し合うこと
ができるようになるだろう。
異文化交流において、相手の文化を知るだけでは不十分である。相手の文化を知るため
には、「自分の文化を知っている」ことが大切である。自分の文化を知っているからこ
そ、相手の文化との違いを理解し、相手の文化を尊重することができるようになるのであ
る。Aleksandrowicz-Pedich(2009)は、「異文化学習は、自分自身の文化の認識や理解を向
上させる」と考える。つまり、「自分の文化を知っている」ことから始まる異文化交流を
通して、相手の文化も知ることで、さらに自分の国の文化についての認識や理解が進むの
である。
ウクライナとポーランドは隣接するとても近い国である。それなのに関わらず、文化の
違いから誤解が生じてしまうのである。もっと遠く離れた国であれば、さらに誤解が生ま
れてしまうに違いない。ある国で日常的に行われていることが、ある国では絶対にやって
はいけないことであることもある。そのような国と交流することは、確かに困難であり、
相手の国に対して「信じられない」と思うこともかもしれないが、それは相手の国も同じ
ことで、やはり「相手の文化の根本にある価値に気付き、相手の国の文化をよく知ろう」
という気持ちがあれば、相手の国の文化の理解と認識が可能であると考えられる。
この論文を通して、異文化交流において重要なことが示された。最後にディスカ
ッションポイントについて考え、まとめていこう。
〇それぞれの国の文化の違いを乗り越えて、異文化コミュニケーションを進めるためには、どのような意識を持つことが重要だろうか。
・「自分の文化が当たり前である」「自分の文化が正しい」といった考えをなくす。
→「このような文化もあるんだ」という意識が持てるようになる。
・国によっての文化の違いを否定するのではなく、受容するという意識を持つ。
・相手の文化に実際に触れてみる。
→日常生活を通して、相手の文化や考えが形成された背景を知ることで、異文化交流が
容易になる。
このように、自分の文化を知った上で「相手の国の文化も知り、尊重しよう」という意
識があれば、異文化交流はお互いにとって良い成果をもたらすだろう。