【概要】

 本論では、EFL教育を専門に扱っているMA学生でもある英語上級者における外国語不安を調査する。過去に行われた不安と実力レベル間の相関関係に関する研究結果は一致していない。したがって、本研究では、英語の上級知識を持つ学生がスピーキングへの不安で苦しむこととスピーキング能力の自己評価が相関するものかどうかについて分析することを目的としている。結果として、参加者は外国語を話す際にストレスや不安を感じることが調査で明らかになった。また、話している間、ストレスに対する多数の身体反応に苦しんだり感情的な問題を経験すること、さらに、彼らの表現力豊かな反応はゆがめられることが観察された。

 

はじめに

 ・これまで、外国語不安については広く論じられたが、外国語を話す際の不安についての研究は不足している。

・スピーキング不安は言語能力の低い学生の間で強く存在するとわかっている(山城&McLaughlin2001;近藤&Yang2003)

・どのような英語上級者(問題なく容易に話すことのできる)においてもスピーキング不安が観察することができるかどうかは疑問である。

 

不安とは

Horwitz(1986p.125)が説明するように、不安とは主観的な緊張感、不安、神経過敏と自律神経系の興奮と関連した心配である。

・言語不安の3つの構成要素がコミュニケーション不安、社会的な否定的評価、テスト不安だと特定された(Horwitz.1986)

・その他に、他人の前で話している間、不快でストレスを感じている。

・認識される不安は否定的なもの肯定的なものとの2種類に識別することができる(Alpert and Haber 1960)。 前者は否定的な方向で学習と教育に影響を及ぼし、後者は学生により多くを学んで、授業または試験に備える動機を与える。

・外国語不安は、音(発音に関する問題)のイントネーションを歪めたり、語句を忘れたり(Haskin et al. 2003)、そして、頭痛、指先の冷えや震え、発汗、貧乏ゆすり(von Worde 2003)、心拍数の増加、汗、口の渇き、そして、筋肉制約(Onwuegbuziel et al.2000; Andrade and Williams 2009)も引き起こすことがわかっている。

・学生がより熟達すれば言語不安が減少すると仮定することは合理的なようであるが、不安と言語実力間の相関関係の研究は一貫した結果をもたらさなかった。

・外国語不安は、1983-1986年の期間にHorwitz et al.(1986)によって開発されたForeign Language Class Anxiety Scale(FLCAS)で測ることができる。

 

外国語不安と言語能力

・話すことは、外国のおよび第二言語教育で最も不安を感じやすい要素であると考えられている(e.g. Cheng et al. 1999; Kitano 2001)。

・北野(2001)の研究は、話す不安がテスト不安と相関することを示した。否定的評価への恐れが強い学生は、口頭での会話の間、より心配していた。

・スピーキング不安の文脈での問題は、Gregersen(2003)によっても分析され、発展途上の外国語学習での自己評価と自己有効性の重要性を指した。

・強調すべきは、スピーキング不安が高くなることが、学生を外国語クラスの間に回避戦略(Gregersen2003)を使用させるということだ。

・不安で苦しんでいる学生がしうる行動として、授業をサボったり、話すように指示される屈辱または当惑を避ける努力をする、一番後ろの列にいるようにする等が挙げられた(Horwitzetal.1986,p.130

・コミュニケーション不安は、人種間でも差があることがわかり、中国、韓国、日本の学生は、他の人種集団より高い不安のレベルを示した。

 

研究

 英語上級者が経験する外国語不安の問題には議論の余地がある。本研究の狙いは、英語上級者である成人のポーランドの学習者におけるスピーキング不安のレベルを調査すること。

 

4.1 RQ

1. 英語についての上級の知識をもつ学生は、英語を話すことについて一般的にどう思うのか? 彼らは自身のスピーキング技術をどう評価するのか?

2. 授業に特有の要素は、どのようにスピーキング不安に関与するのか?

3. どのような要素がスピーキング不安に関与するのか?

4. 学生は、ストレスに対し、身体・感情・表現や言葉において反応をするのか?

 

4.2 対象者

・外国語教室の内外でスピーキング不安があった経験について、EFL教育を専門に扱っていたMA学生54人の卒業生にアンケート調査を行った。

・年齢は23から49歳まで(平均27)

4人の男性と50人の女性の参加者。

・研究は冬の学期末試験の後の3月に実行され、すべての参加者は読んで、聞いて、書く英語のテストに60%を上回って結果で合格していた。

 

4.3 研究手法

・研究参加者は全体で15の質問から成るアンケートに答えるよう依頼された。

7つのアイテム(Q4Q 5―10)はリカート尺度の形式(「私はネイティブ・スピーカーと話して、神経質にならない」等)に従った。

8つの質問(Ql-3Q11-14)は、クローズエンド形式であった。

・質問(Q2Q3)2つは、数スケールにわけられた(例えば「英語を話している間、不安になります」;4―高い不安レベル、3―やや高い不安レベル、2―低い不安レベル、1 ?不安でない)

・リカート尺度問題は、FLCASを変更して作られた。

 

5. 研究結果

5.1 大学生のスピーキングスキルの自己評価

・結果は以下の通り。

1. リラックスしており容易     6(7%)

2. 少し緊張する                                       11(20%)

 

3. 楽しいが、少し緊張する     17(31%)

4. 楽しいが、ストレスを感じる           8(15%)

5. ストレスを感じる                 10(19%)

 

5.3 外国語を話す不安に関与している話す構成要素

・外国語不安で最も一般的にストレスの要因とみなされうるスピーキングの構成要素を調べることを目的とした。

・質問は以下の通り:あなたのスピーキング不安の理由は、いずれの場合があるか?(あてはまるものすべて選択せよ)

・語彙知識

・文法知識

・流暢さ

・発音

・発音が、ネイティブ・スピーカーのそれとあまりに遠く離れていること

・話の内容(より的確にしたい)

・分析は、以下の通り。

構成要素は、ストレスの多いものから少ないものの順に配置された。

・流暢さ            43(63%)

・語彙知識        30(56%)

・発音                28(52%)

・発音が理解できること                                       19

・ネイティブのような発音でない                       9

・内容                             11人(50%

・文法知識        24(44%)

・正確さ           20(37%)

 

5.4  ストレスに対する身体・感情・表現やことばの反応

・研究の最後の一部は、外国語不安の兆しと関係があった。

・最も一般的な結果において、パーセンテージを計算した。

44(81%)37人の(68%)回答者が、動悸と、頬のほてりで熱いと感じていることが一般的であることを示した。

・最も一般的な感情面での反応は、集中に関する問題と頭が真っ白になることであった。これは学生の半数以上によって経験された(31(57%)30(51%))。

・言葉における反応は、前に述べた2つより頻繁でなかったが、言語障害、話すテンポの変化と発言の短縮傾向が見受けられ、参加者のおよそ40%に経験されていた。(それぞれ21人、21人、20人)

・最後に、表現における反応は最も少なく、普通であるとわかった。20人の(37%)回答者は、身振りをすることの変化(14(26%))と、笑っている、微笑んでいる等の表情における変化(12(22%))に気がつくと報告した。

・アンケート調査には自由回答欄が設けられていたが、不安の結果として未完全で曖昧な反応を取ってしまうと、3人の回答者が回答していた。

 

6. まとめ

・アンケートの分析として、46(83%)の英語で上級者に分類された回答者は、外国語を話している間、ストレスを感じていて緊張していると感じると主張した。

・そして、外国語についての上級知識が、ストレスなしでのスピーキングを意味しないことが明らかになり、それは北野(2001)Ewald (2007)Marcos-Llinas and Garau (2009)によって実施された研究の結果を補強した。

・学生が彼らのスピーキング技術に完全には満足しておらず、話している間、スピーキング不安で苦しんで、ストレスを感じていると感じると認識していることを研究は示した。

・ネイティブのような方法で話す必要があるのではないかという不安は、最も少ないストレスの要因の1つ。

・英語上級者は、話している外国語に対する不安を、多数の身体面や、ことば、表現、感情面での反応で経験する。

・現在の研究の結果に用心して取り組む必要があるのと同様に、英語の上級者や成人の学習者の間の外国語不安は、更なる調査が必要である。

20代や50代の大人が不安のいろいろなレベルを示す可能性や、異なるストレス要因に反応する可能性があるため、成人グループ内で年齢差を研究することも面白いかもしれない。

 

【考察】

・多数の面で不安を感じることは仮説として立てていたので、どの種類がどういう結果かもう少し詳細な結果を出したほうが良いのではないだろうか。

・年齢差での差異があるかもしれないと指摘している一方、4人の男性被験者と女性被験者の差についてはまったく言及していないのが気になった。男性の被験者が4人と少ないのでもしかしたら有効な数値が出なかったのかもしれないが、少しでも述べておくとわかりやすいと考えた。

・英語の熟達度と不安が相関するかどうかで一貫した結果が出ていないと先行研究をもとに述べていたが、本研究でのスピーキングスキルの自己評価と不安の関係がどうようであったかに触れておくのもよいのではないだろうか。

 

DP】上記の例以外でのスピーキング不安の反応の経験の有無。