英語スピーキング指導ハンドブック
導入編
人文学類3年Y.N.
スピーキング指導のQ&A(Q6~10)
Q6 インプットからアウトプットに持っていくにはどうすればよいか。
A.
インプット→プラクティス→アウトプットという流れが一般的である。
【インプット】
大量の良質の英語を読ませたり聞かせたりすることで英語に触れさせ、読解や聴解などを通して、受容的能力を育成し、基礎体力を鍛える。
ex.)プリ・リスニング/リーディング、ホワイル・リスニング/リーディング、ポスト・リスニング/リーディング
【プラクティス】
精読や速読で内容を理解したテキストを何度も音読する。飽きないような工夫を凝らした音読が有効。
ex.)インテイクリーディング、シャドーイング
【アウトプット】
本文のQ&Aを作る、口頭要約、内容に関する討論や発表をするなど活動は様々あり、即興のものや準備を要するもの、個人、ペア、グループでおこなうものなどに分かれる。
Q7 L2学習における年齢要因:小学校で英語を教えるメリットは何か。
A.
小学校で外国語を導入するメリットとして一般に「The older is faster, the younger is better.(大人の方が早いが、子どもの方がすぐれている)」と言われている。つまり、大人の方が発達した認知能力を使って短期的には早く学習することができるが、長期間での習得を見ると、若い時に始めた人の方がより母語話者に近い外国語を身につけるようになるということである。それには以下に示す三つが根拠として考えられる。「臨界期仮説・敏感期仮説」
「全体的理解と曖昧さに耐える力」
「柔軟な対応力と失敗を恐れず積極的に取り組む態度」
これらは初めて出会う外国語学習には大切な要素と言える。小学校から異なる言語や文化、またコミュニケーションに対して興味を持たせ、積極的な態度で取り組む姿勢を育てること、また聞いて理解する力を育てることが重要である。
Q8 スピーキングの指導にはどのようなものがあるか
A.
外国語教授法としてはこれまで様々なメソッドやシラバスが提唱されてきたが、近年では教科書をもちいて授業を行う中で、4技能の育成を図ろうとする指導が中心となっている。まず英語の音を習得し、正しく発音できるようになることが大切である。その上で音読を繰り返すことで読むことから話すことへつなげていく。様々な話題について聞き手に正しく伝えられるように、様々なテーマを与えて意見を言わせたり、発表したりする機会をつくることが大事であり、最終的に読み聞きして取り込んだ情報をアウトプットできるように語彙や表現、内容の英文を取り込んでそれらを応用し、発展的に用いて自己表現や議論につなげることが大切である。それ以外にも学校内外のコンテストやプロジェクトに参加することが望ましい。授業中のスピーキング指導の留意点としては、話しやすい雰囲気をつくること、間違いを恐れず話し続けることを奨励すること、また、教員が間違いをどのように訂正するかといったことも大切である。さらに様々なタスクをもちいてスピーキング指導を行い、評価することも指導と評価の一体化の点から大切である。
Q9 教室英語とはどのようなもので、どの程度必要であるか。
A.
「教室英語」
クラスルームイングリッシュ:教師生徒間で指示や質問のために日常的に用いる英語
教師発話:教師が生徒にわかるように話す英語
「教室英語の程度」
英語の授業では基本的に英語を用いた言語活動が行われなければ、英語の習得は起こらないため、教室英語は英語のインプット・アウトプットの機会として大変重要であり、本来はAll Englishで授業を行うことが望ましい。教室英語の使用は、小学校から基本的な挨拶やルーティーン的な質問、簡単な質問などで慣れさせ、コミュニケーション活動では基本的に英語を用いる。中高でも英語を用いて進めていくが、文法事項の説明、難解な構文等、必要な場面では日本語を効果的に用いることも大切である。教師発話ではあらかじめ答えがわかっている質問だけではなく、答えがわからない質問や推論発問や評価発問、個人に関する質問などに用いることにより、生徒に考えさせる機会を与え、思考・判断・表現力を伸ばしていく。
Q10 スピーキングの評価にはどのようなものがあるか、またその際の留意点は何か
A.
スピーキングでよく用いる評価には、実際に英語を話させて評価するパフォーマンス課題がある。例えば、暗唱、スピーチ、インタビュー、ロールプレイなどを行う。テストは個人、ペア、グループで行うものに分かれ、その際に必要になるのは評価基準を明記したルーブリックと呼ばれるものである。評価の際に留意することとしては、以下の5つである。
・強勢、イントネーション、区切りなど英語の音声の特徴を捉え正しく発音すること
・自分の考えや気持ち、事実などを聞き手に正しく伝えること
・読み聞きしたことについて問答したり意見を述べあったりすること
・繋ぎ言葉を用いるなどの工夫をして話を続けること
・与えられたテーマについて簡単なスピーチをすること
ルーブリックではパフォーマンス評価のレベルがわかる評価基準表を作成すると、評価の妥当性、信頼性が保てる。作成にあたっては担当者一人ではなく英語科全体で取り組むことで、より客観的な評価にすることができ、評価基準を共有することで信頼性が保てる。
観点 |
内容 |
正確さ |
発音 |
コミュニケーション |
A |
自己の夢や考えを具体的に説明し、適切に話すことができた |
評価基準 |
評価基準 |
評価基準 |
B |
自分の夢や考えをおおむね説明し、話すことができた |
評価基準 |
評価基準 |
評価基準 |
C |
自分の夢や考えの説明が不十分でうまく話すことができなかった |
評価基準 |
評価基準 |
評価基準 |
ディスカッションポイント2 :言語の熟達度によってスピーキング力の向上の度合いに差が出るのか。
・ 熟達度に差があるということは、インプットされている量にも差があるはず。インプット量に差があるなら、スピーキング習得までの流れの「インプット→プラクティス→アウトプット」の視点から向上の度合いに差はあると考える。
→入試の勉強を頑張って、語彙や文法力などの知識がある人の方が伸びやすいかもしれない。インプットが済んでいる分、最初からアウトプットに力を入れるだけですむ、そういった可能性はあると思われる。
・ 熟達度が高いほど、自分への自身が大きく、スピーキングを用いる環境に参加していく自主性が高まるため、向上度に差はあると考える。
→サークル活動で週に三回ほどお昼に集まり、スピーキングの練習を行うだけでも向上する。
・ インプット量が多ければ、自分の思考からの産出量にも差がでるため、差はある。
→話すためには自分で考えて言葉や文を発話していかなければならない。その際、インプット量が多ければ、文法項目や語彙の知識でより多くのことを産出できる。
【まとめ】
熟達度が高いほど、スピーキングの習得と運用の視点から向上度は大きいと思われる。習得のプロセス、使用環境に参加するための自主性の向上、どちらもともに基盤となる知識が必要であって、スピーキング習得以前の段階で話すこと以外の知識の学習が大きく関わり、必要であると考える。