応用言語学特講Ta 期末課題 人文学類3年 R.T.
英語のスピーキング指導実践例
〇本コースのスピーキング指導における主眼点
1. 正確な音声で発話する能力を養う。
2 . 教師の話す時間を極力少なくして、できるだけ学習者の発話訓練のために授業時間を費やす。
3 . 単なる暗唱ではなく、自分の語彙力・文法力を駆使して文を作り出す(つまり、考えを自由に英語で表現する)能力を養う。
上の1のためには、毎回授業で5分から10分程度の音韻教育を行った。
2のためには、指導技術としてペア・プラクティスを採用した。
また、最後の3のためには、次のような1?5の5種類の訓練方法を採用した。この指導技術を用いたのは、自然な発話を促す上では最も有効な方法と考えられるからである。また、ストーリー・テリング
による訓練の種類を多くしたのは、学習内容をなるべく単調なものにしたくなかったからある。
1 .日本語のパッセージを聞き(あるいは読み)、その内容を英語で説明する。
2 .短い英語のパッセージを聞き、その内容を英語で説明する。
3 . 無セリフの4コマ漫画を見て、ストーリーを英語で説明する。
4 . 何かを皆に見せながら、それについての説明を英語でする (Show & Tell)。
5 .2人1組のペアをつくり、各人にそれぞれのタスクを与え、 そのタスクを英語で遂行する。この際、会話の運び方の実際の例を日本語で示す場合もある。
ストーリー・テリングはペア同上で行うのが基本である。そしてこの際、教師は時間を決めて発話者を適宜交代させるようにするのがよい。これは、決められた時間内でペアのどちらにも話す機会を等しくもたせるためである。
先に挙げた5番目の方法は、ペアを組む双方にそれぞれのタスクを与えて会話を左折方法で、ストーリー・テリングの手法とは全く異なるものである。次に示すのは、このタスクの例である。
対象:関西学院大学経済学部の大学生
〇タスクの例
タスクA:買い物中の客。母へのお土産のバッグを探している。予算は300ドル。色はできれば白がよい。
タスクB:店員。なるべく高いものを客に買わせようとする。白のハンドバッグは400ドル
↓
結局客は黒の300ドルのハンドバッグを買う。
使える表現の例・May I help you? ・Oh, it’s too expensive! ・How much can you
pay for? ・Is there anything else? ・Have a nice day!
会話の前に会話の運び方の例を日本語で示しておき、それからペア語と英語で自由に会話をさせる方法もある。この際は、本来聞かせる手段を通して例を示すのがよい。読ませる手段を通して示すと、手元に和文の教材が残るために、学習者はどうしてもそれを頼りに翻訳しようとするからである。
〇本学習による効果
・生徒の音声能力の向上
・生徒のコミュニケーション能力の向上
〇スピーキング学習に対する示唆
本コースのスピーキング学習は週1回90分の授業が8か月26回あっただけであり、しかも途中夏休みという長いブランクが長期の学習継続を不可能にした。この実験授業を通し、英語のスピーキング指導を授業で行う場合、短期集中型で行えばさらに成果の上がるスピーキング指導が可能になるのではないか。
〇ディスカッションポイント 短期集中型と長期型ではどちらがよいか。
・短期集中で詰め込んでもその後継続的にやらないと意味がない。
・長期型で授業ごとに復習を必ず入れるなど、忘れない工夫をする。
・夏休みなどのブランクをなくす方法が焦点となる。
参考文献
『英語のスピ-キング指導 : 理論と実践』 1998,大高 博美,「言語と文化 = 語言与文化 1」, pp69-83
考察
今回、タスクAとタスクBにそれぞれ役割と設定を与え、その上結論も示したうえで自由にディスカッションをしてもらった。私は、今回行ったディスカッション活動は以下の点においてとても効果的であると考える。
・ある程度の縛りがあることで、比較的発話がやりやすくなる。
・実践的な場面における会話を考えることで、スピーキング能力の向上が見込める
1つ目については、「できれば白のバッグが買いたい」「客に高いものを買わせようとする」などといった縛りがあることで、「客は予算内におさめたいが、欲しがっている白のバッグは予算を超えており、そこで高いものを買わせようとしてくる店員と何かしらの駆け引きが起こるだろう」といったある程度の会話の流れが予測できた。大学生といってもなんのヒントや流れがつかめないままディスカッションをさせられるのは難易度が高いので、これはとても有効だといえる。
2つ目については、今回は設定が「買い物をする客と客にものを進める店員」となっており、非常に実践的な会話を発話することができる。つまり日常の中で使うMay I help you?など、出てきそうで出てこないような定型表現を身につける絶好の機会となる。また、使える表現の例をあらかじめ示すことで、それらを会話の中のどこに組み込むのかを考えながら発話をすることができる。
指導を行う期間については、本論文の中では、長期の学習継続が不可能なため、短期集中で行う方が効果的であると述べている。しかし、短期の間に身に着けた能力というのはやはり失ってしまうのも早く、本来ならばもっと時間をかけてじっくりと能力を養っていくのが理想だろう。しかし現実、週1コマの授業でしかスピーキング能力養成に時間を割くことができないという状況がある。そこは長期休暇中も生徒が自分の力だけでも確実にできるような課題を与え、ブランクがないようにすることが必要だ。