応用言語学特講T

人文学類3年 K.S.

スピーキング・アクティビティ

〇小学校英語の指導法

●スピーキング指導

・リスニングとスピーキングは連動して成長し、コミュニケーション活動という観点からは切り離すことができない。

・第一言語習得においても、また第二言語習得においても、リスニングの発達に比べるとスピーキングは遅れて発達する。

→リスニングに比べスピーキングでは

 @相手の言っていることを正確に理解し、

 A適当な語彙を選択し、

 B文法を正しく使い、さらに

 Cその場にふさわしい話し方(大人の場合は特に大切) 

ができる能力が求められるからである。           

・初めから子どもたちにスピーキングを要求すると、繰り返して覚えるだけの意味のないやり取りに終わってしまう可能性があることを指導者としては覚えておくべきである。

 

●語彙指導

5.3.1 意図的学習 (intentional learning)

◎意図的学習・・・語彙を学ぼうと意図的に行う学習

 

・日常生活で英語に接することが少ない日本人の子どもにとって、英語学習環境として最も大切なのが授業である。

・子どもの語彙学習がスムーズに進むような効率の良い授業をしていくにはどのような点に気をつければよいか。

 

5.3.1.1 語彙の導入方法

・文字学習が始まる前の学習者は、音声のみで語彙を認識することになるので、実体と言葉(ここでは英語)がしっかり結びつくように提示することが大切である。

@絵を使う

A写真を使う

Bジェスチャー、または演技する

C黒板に絵などを描く

D聴覚教材が用意できる単語にはそれらを使う(例:動物の鳴き声など)

・しかし、一度に覚えられるわけではない。時間をかけて、様々な文脈の中で提示するように工夫することが大切であり、そうすることにより実物(事象)とそれを表す言葉が強く結びついていく。

 

5.3.1.2 語彙指導の留意点

Nation (2000) は、形(スペル)や意味が似ている単語を同時に教えないように警告している。

→この指摘は英語を教えている多くの教師によって、今までとは異なる視点を与えてくれるものとして重要

(1)関連する進出単語を同時に教える危険性

Nationは単語を教える際、関連する単語、つまり同意語、反意語、またはスペルが似ている(したがって発音も似ている)単語を同時に教えると、意味や形が似ているため学習者が意味を思い出す時にそれぞれが干渉し合い、学習を妨げると主張している。

Ex) about-above, Tuesday-Thursday

 

(2)カテゴリー別の語彙指導の不自然さ

Nationは単語をカテゴリー別に教えることについても、単語どうしが干渉し合い、記憶を妨害するという理由だけではなく、単語の使用頻度、また文脈の不自然さから同カテゴリーの単語を同時に導入することに反対している。

Ex) 授業では当たり前のように色や曜日をまとめて教えている           

   しかし、whiteorangeの使用頻度は大きく異なる

  →使われ方が異なる単語を、教室の中では同じような時間配分や指導量で取り扱うの

   はおかしい??

 

5.3.1.3 語彙の定義を教える方法

・新しい単語の意味を教えるときは、次のような方法が考えられる。

rake”「熊手」

@単語を定義する(例: This is a gardening tool that you can gather leaves with.

A文脈の中で単語について説明する(例:A rake gathers leaves.

B子どもの母語に訳す(例:熊手)

・しかし、いつも訳を与えていると学習者は自分で意味を考えようとしなくなり、記憶に残らなくなる。

・単語について学習者同士が話し合うことで単語の理解を深めるとともに、その定着が強くなると言われている。

1.同意語、反意語 (例:small-little

2.反意語、対義語 (例:hot-cold

3.子どもたち自身が言葉の定義を考える。(例:A dog is an animal.

4.言葉を使った例文を与える。(例:A walrus lives in the sea.)セイウチ

5.新しい言葉と今まで学習した言葉の中で関連したものについて話し合う。

  (coldcoolなど)

 

5.3.2 付随的学習 (Incidental Learning)

◎付随的学習・・何か他の学習をしていて結果的に語彙を学ぶという形式の学習を意味

し、リーディングやリスニングの学習をする過程で体験する語彙学習。

 

5.3.2.1 リスニング活動と語彙学習

例:リスニング活動のなかでもストーリーテリングと結びついた語彙学習

・ニュージーランドで行われた研究より、聞かせるだけの付随的な学習よりも、学習し

 てほしいと思う単語についてある程度説明を加える意図的学習の方が効果的であること

がわかった。

 

5.3.2.2 リーディング活動と語彙学習

・リスニング同様に、読んでいるだけでは語彙学習はあまり効果的には進まない。

・リーディングからの付随的な語彙学習に関して、リーディングだけのクラスより、それ   

 に語彙指導を加えたクラスのほうがより語彙習得が進むと報告されている。

・リーディングを通して付随的に単語を習得するためには、基本的な語彙力とリーディング能力がある程度なければ無理である。

・そのため意識的な語彙学習をさせるほうが効果的であるが、文脈を通して未知の単語に出会うことは、子どもたちの英語力全体の発達にはとても重要。

 

●スピーキング・アクティビティ

「語彙を定着させる」ことを目標としたアクティビティ

 

  I’m going to go on picnic.

進め方

・必要ならば、ゲームの前にゲームに出てくる可能性のある単語を復習する。

・子どもたちを78人のグループに分けて、円座させる。

・ピクニックに持っていくものを各自考えさせる。

・先生が最初に“I’m going to go on picnic. I will take an apple.”という。

・先生の右隣の人が自分の考えたものを追加する。例えばオレンジだったとすると、“I’m going to go on picnic. I will take an apple and an orange.”と続ける。

3番目の人がbreadを考えたとすると、“I’m going to go on a picnic. I will take an apple, an orange, and bread.”と続ける。

 このルールを応用して下の例のように他のカテゴリーの単語で楽しむ方法もある。また、時制に関しては現在、過去、未来、子どもたちの状況に合わせ使わせることができる。

 

1.クラスを1グループ5人に分ける。ピクニックに行くという想定で何を持っていきたいか考えさせる。

 Please make a group of five. Let’s go on a picnic. What would you like to take?

 (1グループ5人になってください。ピクニックに行きましょう。何を持っていきたいですか?)

2.自分が持っていくものを言い、子どもの決めたものを聞く。 

 I will take an apple. How about you? Oh, you will take an orange. OK.

 (私はりんごを持っていくけど、あなたは?そう。オレンジを持っていくのね。OK

3.ゲームのやり方を説明する。

 I say, I’m going to go on a picnic. I will take an apple.Next, you’ll say, I’m going to go on a picnic. I will take an apple and orange.Yes, you add what you’ll bring.”

 (私は、「I’m going to go on a picnic. I will take an apple.」と言います。次の人は、「I’m going to go on a picnic. I will take an apple and orange.」と自分のものを足してください。)

 

使用するトピック例:For a Christmas present I want (ほしいもの)

          I went to the town and I saw (町で出会った人、もの、もしくは動物など)

 

◎ディスカッションポイント

生徒の語彙の定着のために、意図的学習と付随的学習どちらが重要か。もしくは、意図的

学習と付随的学習の両方をどのように取り入れることが効果的か。

 

*参考文献*

・アレン玉井光江、『小学校英語の教育法--理論と実践』、2010、大修館書店

 

〇まとめ

・生徒の語彙学習のために、意図的学習と付随的学習、一方だけでは不十分であると考えられる。

・意図的学習だけでは、語彙は豊かになるだろうが、それを応用させる場面がないため、ただの知識にしかならない。

・付随的学習だけでは、実際のデータにも現れているように、何の説明もなければ単語や語彙はただの音声や文字として流れていってしまう。

・生徒の力になる英語学習では、意図的学習と付随的学習の両方を取り入れることが効果的である。

・はじめに、単語カードを見せ、発音を繰り返すなどして意図的学習を行う。ここで、生徒に覚えさせたい単語や語彙を頭に入れさせるようにする。

・次に、その単語や語彙を使ったアクティビティなどをして付随的学習を行う。ここで、先ほどの意図的学習で頭に入れた単語や語彙を、活動の中で繰り返すことによって、さらに単語や語彙の定着が進む。加えて、応用させて、コミュニケーションをとることができるようになる。

・教師は、これらの活動を通して、もし生徒がアクティビティの際に語彙や単語が曖昧になっていたら、もう一度確認してみるなど生徒の様子をよく見て、授業を進めることが重要である。

・意図的学習と付随的学習をうまく取り入れることによって、より生徒の語彙の定着を図ることが可能となるだろう。