8.1 リズムに乗せた一斉練習

■会話は相手と連関する運動なので、その身体感覚を育てる必要がある。

・頭の中で正確な表現を組み立ててから間を置いて発話するやり方では、そのような身体感覚は育たないが、多くの中高生が陥りがちである。

・学校では積極的に英語を話していた生徒も、中学生になると流暢さより正確さを重視するためか発話が激減する。

・会話する二人の動きが同じリズムで反復されることをインタラクティブ・ループという。

 

8.1.3 会話テスト

■「会話ピンポン」の指導の効果は,会話テストで調べることができる。

・実際に,「会話ピンポン」指導を行ったクラスと、通常の指導を行ったクラスで会話テストをした結果を報告する。

・「会話ピンポン」指導のクラスでは上記8.1.2の指導を、もう1つのクラスでは同じターゲットセンテンスを使った通常の指導(分析的説明,音読練習)を、それぞれ3時間の授業で連続して行った。

・その後、両クラスで4時間目に会話テストを実施。

・会話テストは教師と11で行い、教師が順不同で出す5つの質問(ターゲットセンテンス)に生徒が答えるという形である。

・レベル1ばかりでなくレベル2を不正解としたのは、「会話ピンポン」指導の目的が相手とタイミングを合わせて即興で流暢に発話できるようにすることだから。

 

8.2  即興の一言を引き出すペアワーク

■一般的な会話の授業:「買い物」「空港の入国審査」など場面を決めて教師が作成した会話文を使い,台本を練習する活動。

・台本そのままの会話,あるいは一部(商品名や値段を変えての会話にとどまりがち。

 

8.2.1  「設定カード」

■起立させ(身体の動きが制約されない)、小道具を与え、感情を設定するだけで演技するモードへチェンジできる。

・普段のペアワークのように早く座ろうとせず、他のペアより少しでも工夫した会話を長く続けようとする姿が見られる。

・他のペアを参考にするためか、次に同じような活動をした時には、前回すぐに座っていたペアがより長く続けようとしたり、より面白く「オチ」を工夫しようとしたりしている姿が見られる。

 

8.2.2  教師のショートスピーチとペアワーク

■教師がショートスピーチを行う。

■ショートスピーチは実話であることが鉄則。

・生徒の興味を引くものであるほど、生徒の発話は活発になる。

 

8.3  補足資料を使ったレポート活動「20世紀の偉人たち」

■日常会話を越えたレベルでのスピーキング活動をさせるためには、教科書とは別に資料を用意し、その内容を読みレポートするタスクが適している。

・レポートする時の定型表現や補足資料にある表現が足場かけ(scaffolding)となり、質量ともに一定のレベルの発話をすることが可能となる。

 

8.3.2 足場かけ(scaffolding)となる定型表現と相互評価シート

■評価シートを先渡ししておくのは、レポートする時に評価基準を意識させるため。

ABC評価だけなく内容を書き取る作業を入れておくと、少しでも聞き取れないと聞き返すなど集中力が上がり、さらに生徒間のインタラクションが生まれる。

<留意点>

 原稿を読み上げる活動ではなく、即興で話す活動であることを強調し、さらに即興には大変な抵抗感、不安が伴うので、励ましが必要。

 いくら原稿を作らないようにと指示しても作る生徒がいる。それを防ぐ意図で、準備時間を5分間しか与えないことと、順序を予告しないこと、評価基準に「紙を見ないで発表していたか」という項目を入れるという3点を設定。

B 教師の合図で全グループが一斉に話し始め、話し終えるというルールを作

 ることで、消極的な生徒にもスピークアウトのきっかけを与える。

 

8.4  ジェスチャーとスピーキング

■人間の運動にはリズムがあり、運動リズムとことばのリズムは強く相関する(IF p.346)

■英語を話す時に身体が豊かに動く生徒とそうでない生徒がいる。ジェスチャーと発話をうまく組み合わせられる生徒は、スピーキング能力も高い。

 

8.4.1 ストーリーリテリング

■ストーリー・リテリング:ストーリー・テリングを聞いた生徒が、今度は自分のことばでお話を語る。

■英語でお話を語るという難易度の高い活動であるが、教師のジェスチャーを再現しながら何とかして発話しようとする生徒が多かった。

■教師が使わなかったジェスチャーを使うケース(思い出せなかった、英単語の意味を捉えて身体表現化した)

■身体の動きとともに受けたインプットは、身体の動きとともにアウト・プットに変換でき、より多くの意味を相手に伝えることができると考えられる。

 

8.4.2  ジェスチャーを自然に使うための指導

■ジェスチャーはほとんどの場合無意識のうちに起こる。

■教師自身がジェスチャーをクラス全体に広げる手助けをしてあげることも大切。

■身体を動かす活動は、文字通り発話に向けて身体を温める「ウォーミング・アップ」としてもお勧め。

 

DP】ペアワークなどの際に雑談させないための教師の対策は何か。

→練習後に発表させるなどして、練習に対して結果を求める。

→仕方ない。