7.4 文字と音を結び付け、読みにつなげる

 中高学年になると自然に文字に興味を示すようになる。文字を見ないで音声だけでスピーキング活動を行うことに不安を感じる児童も増え、日

本語にない音にとまどいながらも聞こえた英語をカタカナで書くことで記憶の助けにしようとする子も多い。このような時期を逃すことなく、文字に触れさせるチャンスを十分に与えることが大切。

 

(1)アルファベットに慣れ親しむ(名称と形)

普段大文字のアルファベットは目にすることは多いが、小文字は少ないので読みにつなげる指導として、小文字のアルファベットを目にする機会を多く与える。

 

◇活動の例

@黒板に書かれたアルファベットを教師が指さしながら何度もアルファベットソングを歌う。歌に慣れてきたら音楽抜きでアルファベットを発音してみる。

A文字の形とアルファベット読みが結びつくように順番を変えてアルファベットを書いたものをみんなで歌にのせて歌うなど楽しい活動で慣れ親しませる。

B2人に1枚アルファベットが書かれたシートを渡して、交代でアルファベットを押さえながら言ってみる。

CZからAまで反対から言ってみる。(文字を見るか見ないかは教師の判断)

Dアルファベットのチャートを用いてペアが言った文字を指さす。

Eアルファベットの文字を5つ選びその上におはじきを置き、教師に読み上げられたアルファベット文字からそのおはじきをとっていく。すべてのおはじきがなくなったところで「ボンゴ!」と叫び、一番早くボンゴが言えた児童が勝ちとする。

 

(2)文字と音の結びつけ

音と文字を結びつけることを一般にフォニックス指導と呼ぶことが多く日本でも英語の初学習者対象に行われてきた。しかしまだ英語の音声にも馴染みがあまりなく、単語知識などもほとんどない小学生を対象にした場合、ルール中心に学ばせる形でのフォニックス指導はあまりふさわしくない。初頭音の音韻に注意を向けさせ気付きを促す指導(アルファベットジングルを用いた音韻認識向上指導)を提案する。

 

◇手順

@基本となるキーワードをaから始まるものからzまで26セット準備する(1参照)

AA./a/a/apple. B./b/b/bearのようにアルファベット読み、音素読み、キーワードを並べたモデル音声の後について何度も繰り返す。

B全員でのコーラス読み・班ごとにパートを分けて言うグループ読み・ペアワークなどバリエーションをつけることで飽きさせることなく何度も26の英単語に触れて、初頭の音韻を意識させる。

C基本のセットに慣れたら今度はaからzまでの初頭音で並んだ動物の名称、食べ物の名称、身の回りの物の名称、動詞、国の名前などを紹介し、初頭音に気づかせる音韻認識活動をすると同時に語彙指導もする。

D導入した語彙を使ってカルタ取りやビンゴゲーム、3ヒントクイズの活動にヒントとして音韻を頻用したりする。

 

(3)読み始めの機会を豊富に与える歌・チャンツの指導

 歌やチャンツを小学校での英語指導に用いることの効用は以下の通り。

・児童が楽しく取り組め英語学習への動機づけとなる。

・英語の強調・リズム・イントネーションを自然な形で学ぶ。

・語彙ある井はフレーズをコンテンツの中で学べる。

・文化的違いを学べる。

・音をよく聴き歌詞を見ることで文字と音への自然な気付きを与えられる。

 

◇手順

@CDなどの音源を用いて曲を流す。(歌詞は見せない)

A生徒に聞こえた英語を挙げさせる。(何度か繰り返す)

B教師が音源に合わせてゆっくりジェスチャーを付けながら歌う。

C動作を付けながら歌える部分だけ一緒に歌うよう指示する。

D全員に見える形で歌詞を表示、歌とともに歌詞を見るように促す。

E歌いながら、ハイライトされている文字の部分では手をたたくなどの動作をさせる。

F内容を推測させるイラスト付きの歌詞を配布し、歌いながら文字を押さえたり、歌詞に沿って指を動かすよう指示する。

 

(4)絵本の指導

 絵本には英語がわからなくても内容を推察させる絵があり、文字が示されて

いる。子供の発達レベルに合わせた絵本の読み聞かせは談話理解を促進すると

ともに、読みの指導導入に有効な手段となると言われている。

 読み聞かせの際はできるだけ読み手の周りに集まらせ、絵や文字が見える状

態で行うのがよい。表紙の題名を指しみんなで読み、タイトルから想像できる内

容を考えるのも良い。どこを読んでいるかがわかるように指し棒や指でなぞる

ようにして読む。この活動で大切なことは、安易に教師がRepeat after meと繰

り返さないで児童から自発的に始まる読みを待つことである。

 

背景情報3 絵本の読み聞かせからアウトプットへ

 絵本の読み聞かせは教師が一方的に読むのではなく、読み手聞き手が双方向

でやり取りを行いながら意味を大切に気持ちが開いた状態で行うべき。

 

読み聞かせの前に

絵本の内容と流れを理解しておく。発話を促す場合、質問はどの場面でどんな風に行うかを事前に考えておく。

 

表紙を見せて

 表紙をみんなで読む時間を作る。タイトルを指で示しながら、一緒に読み、どんな物語であるか予想させる。

 

読み聞かせ中のやり取り

(1)語彙のインプットや既習事項の確認

 すでに紹介した主人公の名前を聞いたり、読み聞かせた後に絵を示しながら進出の単語を確認しながら進める。

 

(2)次の展開を予想させる

 ページをめくる前に次の展開を児童に自由な発想で考えさせる。

 

(3)単純な返答や繰り返し

 児童に意味が分かりそうな場面では単純な返答をさせたり、繰り返し部分をキューを与えて言わせてみる。

 

読み聞かせの発展活動

 絵本の中で繰り返し使われた表現を使って、子供のオリジナルストーリーを考えさせる活動も可能。

 

絵本のドラマ化

 読み聞かせ後祖の話をもとに簡単な英語ドラマに仕立て、児童に役割を与えて演じさせる活動。

 

◎ディスカッションポイント

・小学生を対象に文字や音声に慣れるということをこの章では見てきたが、高学年になった児童にもこういったことを続けるべきなのか、あるいは本格的に英文法やリーディング、リスニングといったことを学ばせるべきか(理由も合わせて)

・高学年であっても専門的なリーディング、文法事項は学ばせるべきではない。小学生の英語の指導において最も重視すべきなのは「楽しみながら行うこと」「英語に対する苦手意識を持たせないこと」であるから、文法やリーディングといったいかにも「勉強」というイメージがつきそうなことは避けるべきである。

・文法やリーディングといった専門的な活動をする前に、英語の土台となるボキャブラリーの向上、会話や挨拶、自己紹介などのコミュニケーションでよく使われる定型表現を定着させることが小学校の時点では大切(具体的には穴埋め問題にしたり等)。

・英文法は中学1年生でも必ず行うし、小学校高学年から始めたとしても12年早く始めたところで大きな差は出ないから、文法やリーディングは学ばせるべきではない。

・リスニングについては音声に慣れさせるという目的には有効的であるから、活動の中に取り入れるのは良い。