応用言語学特講Ta

7章「小学校における代表的な指導法」(前半:pp.91-98)

人文学類3 R.K.

はじめに

小学校の英語の授業リスニング中心の指導の中でスピーキング指導を始めたい。

Ex.)    ・豊富なインプットで日本語の音の違いに気づかせる

・体を使ったTPR(Total Physical Response:全身反応教授法)の活動で
音声と意味を結びつける

・教員やALTのスモールトークなどを類推しながら聞く

Q.なぜリスニング中心からスピーキングに段階的に指導を変えていくのか?

A.十分な準備をしないまま、みんなの前でスピーチをするといったアウトプットを急ぐ指導は決められた表現で間違いなく話すことが英語学習の目標であるという誤った認識を児童に持たせてしまう。また、心理的なプレッシャーを感じて人前で英語を話すことに苦手意識を持ってしまう。小学校では発話を急かすことなく、十分な助走期間を与えた上で、自分の思いを「第二のことば」を使って相手に伝えることが重要である。

歌・チャンツの指導

(1) 歌の指導

教員が自動に聞こえた英語を問うことで、歌を何度も聞く必然性を与える。そのことにより、絵カードで聞こえた単語と意味を結びつけることができる。児童が歌い始める前に何度も歌詞を聞くことで、内容を理解しているため自信を持って歌うことができる。歌を使って、語彙や表現を導入する場合の手順としては他の曲でも応用が可能。

(2) TPRを用いたチャンツの指導例

リズムに乗せて体を動かす活動である。教員あるいは児童(ミニティーチャー)のデモンストレーションを見て、意味を理解し、実際に指示を聞いて反応し、繰り返すことで反復練習を行う。指示を聞いて体を動かして従えること、また表現が使えるようになることが目標。体を使って表現に慣れ親しむことで、インフォメーションギャップの活動などに自信持って取り組むことができる。

模倣・反復を目的としたゲーム活動

(1) お互いに聞き合う活動

児童に興味を持ってもらう内容であるように流れを作ることは大前提である。

やりとりが交わせるように、その表現を反復し定着させる活動を行う。

(2) 質問の答え方の練習のためのゲーム活動

一斉に児童が答えることで各自の答えがわかりにくくなることを利用し、よく聞き取れないという状況を作ることでなんども質問する必然性を与える。また、答える児童ははっきり伝えるための工夫をする。何度も繰り返すことでしっかり発話できるようにし、次の活動でこの表現をやり取りする児童が自信を持って言えることを目標とする。

教科書で口元を隠したり、正面ではなく横を向いて答えたり、と行った工夫をして聞き取りの難度を調整することも可能である。また、少し長い文を反復・練習する場合にも使える。

本当の情報を用いたやり取り

(1) 将来なりたい仕事?世界の子どもたち?

世界の子どもたちがなりたい職業トップ3の表を児童に見せながら、やり取りをする活動。既習の語彙を自分の考えを伝えるために発話させる場面を与える。その際、せめて単語レベルで児童に積極的に発話させたり、挙手で全員を活動の中に巻き込んだりする。教師は表や写真などの実物を助けに、できるだけ英語で進めることが望ましい。

(2) 興味深い話、身近な話題を使ったスモールトーク

できるだけ児童の学齢を考慮に入れつつ、興味深い話題を児童に紹介する。その内容を児童とやりとりしつつ伝える。実際の画像や映像を用いることで、児童自信が知っていることを単語レベルでも伝えたくなるような状況を作る。始業時の5分に帯活動(教科書から離れて行う5?10分の継続的な活動)のスモールトークとして行ってもよい。

児童の発話が日本語であったり、英語の単語であったりしても、このような活動を教師が根気よく英語で続けることで、しっかり相手の英語を聞きつつ、自分の思いをインタラクティブに伝えようとする態度を養うことができる。

 

ディスカッションポイント

!   小学校の英語の授業では英語を専門とする先生が指導するべきなのか。それとも担任の先生が指導するべきなのか。

専門とする先生が教える場合:

■児童に不安感があるのではないか。しかし継続的に指導する中で信頼関係が生まれる。

■英語の教科としての目的はコミュニケーション能力を育成することであり、指導する側がまず高いコミュニケーション能力を要していなければならず、児童との円滑なコミュニケーションが取れるはず。

ALTとの打ち合わせを綿密に取ることが可能。

■イントネーションや発音の点から専門とする先生が教えるメリットが大きい。

 

担任の先生が教える場合:

■事前に授業の準備をする必要がある。

■生徒一人一人の個性や興味を把握しているため、そのような教材を選ぶことが可能。

■負担が大きいのではないか。

 

教科化し、成績をつけることで緊張感が生まれて真面目に取り組む児童が増えるのではないか。