4 本文の内容理解を進める:高等学校

4.1 概要をつかませるための質問

教科書の本文に入る際、本文の中心となる内容をつかませるための質問、すなわち、Focus Question(以下F.Q.)を提示する(教材例p5253参照)

 

・自分で質問を作る際の注意点および手順

注意点

決して細部について問うのではなく、そのパートで内容上最も重要なことを聞く。

質問は1つで良い

手順

@教科書を閉じさせ、F.Q.を口頭で与える(本文や生徒の状況によっては黒板やワークシート等で質問を提示するのも可)Prequestion(以下PreQ.)として与えておくことが大切。

Aモデルの音声を1~2回聴かせる。

B先に与えたF.Q.の確認、Questions&Answers(以下Q&A)をする。

 

これらを行う上での指導ポイント

生徒のレベルに比べ、本文の難度が高い場合、選択問題にしたり、穴埋め問題にするなどといった工夫をするとよい。また、Q&Aを行う際には「答えを棒読みしたりボソボソと答えたりするのではなく、顔を上げ、自分が英語を話している姿をイメージして」答えるように指導する。

単なる答え合わせではなく、スピーキングにつながる活動をしているという意識を持たせられる。

 

4.2 内容の細部を理解させるための質問

 F.Q.の場合と同様、PreQ.を与えてから音声を聴かせ、質問も各パラグラフの中心的な内容を問うものにする。

説明文の場合…事実を見つける質問(factfinding question)

ストーリーの場合…登場人物や場面、プロットなどを確認する質問 (質問例p54参照)

 

・手順および活動上の指導ポイント

手順

@教科書を閉じさせ、F.Q.を口頭で与える

Aモデルの音声を1~2回聴かせる。

B先に与えたF.Q.の確認、Q&Aをする。

Cさらに細部を読み取らせるための細かいQ&Aを行う。

D音声を聴かせながら黙読させる。

Eさらに細部に注意を向けさせるためや、行間を読ませるための質問をする。

 

これらを行う上での指導ポイント

Aの時:生徒の状況により、テキストを見ないで聴かせるか、見ながら聴かせるかを選択する。

Bの時:ワークシートに質問を示しておくと、生徒間で行わせることができる。その際はワークシートから顔を上げ、相手を見ながら実際に質問しているようにQ&Aを行うように指導する。

Cの時:各パラグラフに数問用意し、その中に文構造を確認する質問、代名詞などの指すものを確認する質問などを含めても良い。

Eの時:事実を見つける質問だけではなく、推測が必要な質問、背景知識と結びつける質問をするとよい。→協同学習で取り組むと効果的である場合がある。

 

4.3 さらに深く内容を理解させるための質問

 各パラグラフについて細部を問う質問の後、再度パート全体を見渡すような質問をする。そこで用いたいのは生徒自身と関連させる質問(personal involvement questions)である(質問例p55参照)

テキストと生徒との間の距離を縮めて一層深く内容理解を進めさせるのに効果的

目標は相手の答えを聞いてさらに突っ込んで質問(Successive Questions)し、それにこたえるというやり取りまでできること。

 課全体を読み終えた段階で、再度通して読ませた後に、生徒自身と関連させる質問をし、それに対する自分の考えや感想を述べさせる機会を与えるのも効果的。

 

4.4 インタビューとしてのQ&A    

 ある人物についてのセクションの場合は「その人物にインタビューしてみる」という設定で、インタビュワー役の生徒の質問にその人物役の生徒がテキストで学んだことをその人物になりきって答えるということに挑戦してみても良い(p57【インタビューの例】参照)

→教科書と生徒間との距離を一挙に縮めることができる。

 

4.5 生徒の主体的な学びのために

 授業は教師と生徒(と教材)で成り立つものであり、生徒を質問づくりに参加させるのも大いに推奨する。なぜなら生徒の主体的な学びを実現し、より活発に英語で話すことに取り組ませる機会を与えられるからである。生徒一人一人に質問を考えさせるより、ペアあるいはグループワークとして取り組ませる方が効果的。

 

 

◎ディスカッションポイント

・熟達度の高低に拘わらずこの章で書かれているような手順で行うのが内容を理解する方法として適切なのか。

F.Q.について

F.Q.は教科書を読む前かつ口頭で与えられるため、リスニング力が試される。したがって熟達度が高い学習者にとってはこの章のような手順で行うのがよい。しかし、学校教育の現場においては熟達度が高い生徒も低い生徒も混在しているため、全員が理解できるようにするにはF.Q.を黒板に書いたりするなど教師の手助けが必要な場合もある。あるいは最初は難易度の低いテキストを選んで生徒に解答させる方法も考えられる。慣れてきたら口頭でF.Q.を与える。

テキスト全体の内容理解について

 熟達度の高い生徒にとっては英文を読むことに苦労を感じないと考えられるため、この章で書かれている手順で行っても問題はないと考えられる。

一方で、熟達度の低い生徒にとってはいきなりテキスト全体を読むことはモチベーションの面であまり好ましくないと考えられる。長い文章をすべて読むということはそれなりの苦労を要するし、読むのに時間がかかり、今読んでいるところに集中してしまい、先に読んだ部分を忘れてしまう可能性がある。また、先にF.Q.を提示した場合、熟達度の低い生徒はそれに答えることに集中してしまい、細部を理解できなくなる可能性がある。こういったことから、テキストに書かれていないことを推論する問題についても正しく答えることは難しいと感じられる。したがって質問を作り、それを提示する側はパラグラフごとに重要である点を順に質問し、最後にテキスト全体の質問をするとよいのではないだろうか。そうすることで各パラグラフにおける最も重要なことを一つずつ確認でき、これまでの内容を問題の順に沿って理解できるため、熟達度の低い生徒にとってはやりやすいのではないかと考える。

つまり、ディスカッションポイントの答えとして、F.Q.に関しては熟達度の高い生徒には口頭で与え、熟達度の低い生徒には文字化して与える、テキスト全体の質問に関しては熟達度の高い生徒はこの章で書かれている手順で行うのがよいが、熟達度の低い生徒は第一パラグラフ、第二パラグラフという順で行い、最後にテキスト全体の質問をするとよい。